聖姫絶唱セイントシンフォギア   作:BREAKERZ

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命かけて挑むバトル

ー翼sideー

 

エルシドやデジェルとそれぞれに別ルートから攻めようと三手に別れ、一人になった翼はノイズと交戦しながら進んでいたが、バイクを停め、本部からの通信で響とレグルス、調とマニゴルドの事を聞いていた。

 

「立花とレグルスがあの奏者<調>と蟹座<キャンサー>と一緒に、ですか?」

 

少し驚くが直ぐにフッと微笑む。

 

「(想像の斜め上過ぎる・・・)了解です、直ちに合流します。エルシドとデジェルは別ルートから侵入を試みるそうです・・・はい、はい、立花達と合流しだい、エルシド達と連絡し合流します」

 

通信を切った翼はそびえ立つ巨大遺跡を見ると。“紫色の矢”が大量に襲い掛かる!

 

「はっ!」

 

いち早く気づいた翼はバク転しながら回避すると、攻撃してきた人物を睨む。

 

「どうやら誘い出されたようだな・・・!」

 

「・・・・・・・・」

 

「デジェルと分断したのだから、そろそろだと思っていたぞ、雪音!」

 

翼の睨む先には、イチイバルを纏った雪音クリスが無表情で佇んでいた。

 

 

ー調sideー

 

遺跡に向かう調とマニゴルド、レグルスに背負われた響が調に話しかける。

 

「あそこに皆が?」

 

「わからない・・・だけど、そんな気がする・・・」

 

「気がするって・・・」

 

「ごちゃごちゃ考えてもしゃあねぇだろ? こう言う場所ではな、古くて偉そうな所に人が集まるモンなんだよ・・・!」

 

「俺達聖闘士の総本山聖域<サンクチュアリ>も一番重要な所はそうだったからなぁ・・・」

 

「そう言うモン?」

 

「「そう言うモン」」

 

何て駄弁りながら進む一同だが、不意に調が急停止し、レグルスも土煙をあげながら止まる。

 

「ど、どうしたの?」

 

戸惑う響は三人が見据える場所を見ると、石造りの塔の上に立つ、暁切歌がいた。

 

「切歌ちゃん!」

 

切歌は祈るように手を組むと歌を歌う、『戦いの歌』をーーーーーーーーーーー。

 

「♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪」

 

切歌の服が弾け飛び、その身を黒と緑のギアが包み、頭に魔女の帽子のようなギアが展開され、帽子に×のマークが付く、『シュメール神話の戦女神ザババ』が調の纏うシュルシャガナと共に振るった刃、『イガリマ』。

 

「デェスっ!」

 

気合いを入れた切歌は響達と言うより調とマニゴルドを見据える。

 

「切ちゃん・・・!」

 

「まだ分かんねぇのかお前は・・・?」

 

「調、マニゴルド、どうしてもデスか!?」

 

切歌は緑の刃の大鎌を構える。

 

「ドクターのやり方では、何も残らない!」

 

「野郎は人類救済なんざ、欠片も考えちゃいねぇ! 自分の事しか考えてない野郎だぞ!」

 

「ドクターのやり方で無いと何も残せないデス! 間に合わないデス!」

 

「三人共、落ち着いて話し合おうよ!」

 

「「戦場で何をバカな事を!!!」」

 

「おぉ、ハモった」

 

「バーカ、話し合いで何でもかんでも解決すんなら、この世に戦争も謀殺も暗殺もねぇんだよ」

 

響の言葉に調と切歌は声をハモらせ、マニゴルドは否定する。

 

「貴女は先に行って、貴女ならきっとマリアを止められる。手を繋いでくれる・・・!」

 

「調ちゃん・・・」

 

「私とギアを繋ぐLiNKERにとって鍵がある、だから行って、胸の歌を信じなさい・・・」

 

「でも・・・」

 

「ごちゃごちゃ言ってンじゃねぇで行けや、コイツら二人の面倒は元々俺の仕事だからな、お前らはお前らのやるべき事をやれ・・・!」

 

「「・・・うん!/応ッ!」」

 

レグルスは再び響を背負って、遺跡に向かった。

 

「させるもんかデス・・・あっ!」

 

響達を追撃しようとする切歌を調の丸鋸が襲うが切歌は大鎌を回して防ぐ。

 

「調! 何でアイツを!? アイツは調が嫌った“偽善者”じゃないデスか?!」

 

『γ式 卍火車』を構える調は切歌に応える。

 

「でもアイツは、“自分を偽って”動いてるんじゃない! 動きたい時に動くアイツが、眩しく羨ましくて、少しだけ信じてみたい!」

 

「マニゴルドも、アイツを信じるデスか?」

 

「“偽善”も“芯”を持って貫き通せば“正義”になる。アイツにそれができるのか、見定めるのも一興だからな」

 

「さいデスか・・・でも、アタシだって引き下がれないデス・・・! アタシがアタシでいられる内に、何かの形を残したいンデス!」

 

「切ちゃんでいられる内に・・・?」

 

「・・・・・・・・」

 

調は何の事か分からなかったが、マニゴルドは事情を知るゆえに黙った。

 

「マニゴルドや調やカルディア、アルバフィカやマリアやマムが暮らす世界を、アタシがここに居たって言う“証”を、残したいンデス!」

 

「それが“理由”・・・?」

 

「これが“理由”デス!」

 

調の足にローラーで展開され、切歌の大鎌が三枚刃になる。

 

「フンっ!」

 

飛び上がった切歌は調に『切・呪リeッTぉ』を放つ!

 

「ハァッ!」

 

調も『γ式 卍火車』で迎撃した!

 

緑の刃と桃の丸鋸が空中でぶつかる!

 

「(さ~て、どうしたものか・・・)」

 

「(マニゴルド・・・)」

 

「(アスミタか?)」

 

二人の戦いを見守っていたマニゴルドにアスミタからのテレパシーが聞こえた。

 

「(あの少女<切歌>は、自身が“フィーネの器”となったと思っているのか?)」

 

「(まぁな・・・)」

 

「(フム・・・マニゴルドよ・・・)」

 

「(何も言うない、もしも切歌が“器”になったのなら、そのときは・・・!)」

 

マニゴルドは指先に小宇宙<コスモ>を集めた。

 

 

 

ーデジェルsideー

 

「むっ!」

 

デジェルはバイクを停めて気配を探ると、クリスと翼、調と切歌の気配がぶつかるのを探知した。

 

「クリス・・・・・居るのだろう? 姿を現せ、カルディア!!」

 

呼ぶのと同時にデジェルは拳圧を遺跡に放つと、当たった遺跡の箇所が凍てつき、そこから蠍座<スコーピオン>の黄金聖衣を纏ったカルディアが獰猛な笑みを浮かべながら現れた。

 

「嬉しいぜデジェル、調に伝えた伝言で俺の意図を理解してくれてよ・・・!!」

 

「お前の拙い浅知恵を察せないと思ったか? わざわざ一人になる状況を作ってやったのだ。感謝してほしい所だな・・・!」

 

「あぁ、感謝してるぜぇ! 俺が調に、『俺の“心臓の熱”を鎮静できるのはデジェルだけだ』と伝え、俺の相手をするのはお前になるように、こんな回りくどいマッチポンプしたのは、俺の命を救って貰う為じゃねぇ・・・!」

 

「お前の目的は、“私と戦う事”!」

 

「その通り! 俺もお前も! あの海底都市で死んだ者同士! 仲良く殺し合おうぜっ!!」

 

カルディアが紅く伸びた爪から放たれる衝撃波をデジェルに向かって放つが、デジェルは苦もなく避ける。

 

「殺り合う前に一つ確認したい事がある・・・」

 

「あん?」

 

「マニゴルドの蟹座<キャンサー>聖衣は何処だ?」

 

「ンなのエアキャリアに置きっぱなし、だっ!」

 

「そう、かっ!」

 

カルディアとデジェルの拳圧が空中でぶつかり、衝撃波が辺りに拡がる!

 

「(ピッ!)エルシド。こちらデジェル、蟹座<キャンサー>聖衣はエアキャリアにあるようだ・・・」

 

《分かった。こっちで回収する。丁度見えてきた・・・》

 

「ンだよ、蟹座<キャンサー>の聖衣の回収が目的かよ・・・?」

 

「同然だ、アレは我等聖闘士にとって大切な鎧、ソレをあのような“下衆”の近くにいつまでも置いておけるか・・・!」

 

「それはそうだが、連れねぇな。折角お前の大事なイチイバルを抱き込んだって言うのによ・・・!」

 

「お前に抱き込まれるまでもなく、クリスはお前達の所に行っていた・・・」

 

「そうかよ、エルシドも聴こえてるか? 今イチイバルと天羽々斬が殺り合ってるぜ?」

 

「と言ってるが・・・?」

 

《分かっている。だが、如何に相手が雪音であろうと、翼は遅れをとるヤツではない・・・》

 

「私としても、クリスの独断には少々腹に据えているからな・・・」

 

《もしも負けたら・・・》

 

「この事件が終わったら・・・」

 

《一から徹底的に鍛え直す!》「たっぷりとお説教だ・・・!」

 

「良いねぇ・・・♪」

 

そして再びカルディアとデジェルはぶつかる!

 

 

 

ークリスsideー

 

「「(ゾクッッ!!!!!)」」

 

交戦していたクリスと翼の全身に悪寒が走る!

 

「(な、なんだよ、この悪寒は・・・!?)」

 

「(この悪寒、何やら覚えがあるぞ・・・!?)」

 

先程まで交戦していたクリスと翼は距離を開けると、言い様のない強烈な悪寒に身体を奮わせるが、直ぐに気持ちを切り替えて戦闘を続行する。

接近戦で攻め立てる翼、迫る刃を拳銃で止め、もう片方の手にある拳銃で攻めるクリス。剣で攻撃する翼の一撃一撃をギリギリで交わしながら弾丸を放つクリス、弾丸を防ぎ、かわしながら刃を振る翼。一進一退の攻防が続いた。

 

 

 

ー切歌sideー

 

「♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪!!」

 

切歌が歌でフォニックゲインを高めながら、背中のブースターに火を吹かせ、調に攻めると、調はツインテールの装備を2つずつに分割するように展開し、四つの大型丸鋸を生成する!

 

『裏γ式 滅多卍切』

 

大型丸鋸で空中から向かってくる切歌を迎撃する!

 

「♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪!!」

 

今度は調が歌いながら大型丸鋸で切歌に攻めると、切歌はもう一丁の大鎌を取り出す!

 

「この胸に!」

 

「ぶつかる理由が!」

 

「「あるならああああああああああああああああああああああああああああああっっ!!!!」」

 

マニゴルドは本気でぶつかる二人の様子をただ見守っていた。

 

「(もしも切歌の魂が、本当にフィーネに塗り潰されるのなら、俺の取るべき方法は・・・!)」

 

 

ークリスsideー

 

クリスは2丁拳銃のマガジンをクロスさせて翼の一撃を受け止めると、押し出し後方に宙返りする。マガジンから弾倉を取り出すとイチイバルの腰パーツから新しい弾倉を装填させる!

 

「ハアアアアアアアアアアアッッ!!」

 

翼は滑空しながらクリスに接近するが、クリスは弾幕を張って近づかせない!捻り込みでクリスの頭上から攻撃しようとする翼から逃れるクリス!

 

「ウオオオオオッッ!!」

 

「くっ・・・!」

 

クリスの弾丸から逃れるようにバク転した翼は、水が保った窪みに入った!

 

「フッ!」

 

「フンっ!」

 

剣を構える翼と、銃を向けるクリスは再び睨み合う!

 

 

 

 

 

 

しかし、そんな二人を遠くから眺めている者がいた。

 

「フフフフ、ウェッへへへへへヘヘヘヘヘヘへへへへへへへへへへッッ!!」

 

“ソロモンの杖”を持ち、“小さな黒い玉”をぶら下げ、アルバフィカに潰された片目を“ネフィリムの細胞”の自己修復能力を使って、ぐちゅぐちゅと音を立てながら再生させているウェルは、ぶつかり合う翼とクリスを見世物のように眺めながら、下卑た笑みを浮かべて嘲笑していた。

 

 

ーデジェルsideー

 

デジェルとカルディア、黄金聖闘士同士の対決はまさに光の速さ、光速のバトルは正に目にも止まらぬ処か、目にも映らない戦いであった!

 

「フッハァ!」

 

「ハァッ!」

 

ドドドドドドドドドドドっ!

 

カルディアとデジェルはお互いの掌を握り合い、力押し状態になると同時に、二人の周辺の大地が音を立てて砕け、土煙が舞う!

 

「「ッ!!」」

 

二人は力押し状態から距離を開けて睨み合う。

 

「フゥ~~~!!」

 

カルディアはうつ伏せになるように上体を寝かせ、片足で身体を支えながら、もう片方の脚を上げて背中の上にまで曲げる、身体にかなりの柔軟性とバランス性がなければ出来ないその姿はまるで、“蠍”のような構え!

 

「ハアァ~~!!」

 

デジェルも身体を鳥が羽ばたくように舞いながら、ゆっくりと拳を構え、カルディアを見据える!

 

「「・・・・・・・・」」

 

二人の黄金聖闘士は、お互いに睨み合いながら殺気をぶつけ合い、脳内戦闘で鍔迫り合いを繰り広げる!

 

 

 

ーマリアsideー

 

起き上がったマリアはアルバフィカと共に、水晶に映る翼とクリス、デジェルとカルディア、調と切歌の姿を見て戸惑う。

 

「どうして・・・仲の良かった調と切歌までもが・・・私のせいだわ・・・!」

 

仲良しだった二人の戦いを見て、マリアは膝を付き手を付く。

 

「こんなモノを見たいが為では無かったのに・・・!」

 

ウェルの口車を信じて結果、調と切歌が戦う事になってしまった現実にマリアは打ちひしがれる。

 

《マリア・・・!》

 

「はっ! マム?!」

 

《今、其処にいるのは貴女とアルバフィカだけですね? 『FRONTIER』の情報を解析して、月の落下を止められる手立てを見つけました・・・!》

 

「えっ!?」

 

《最後に残された“希望”・・・! ソレには、貴女の歌が必要です!》

 

「私の、歌・・・?」

 

「・・・・・」

 

戸惑うマリアの後ろ姿をアルバフィカはただ見つめていた。

 

 

 

ー翼sideー

 

上昇を続ける『FRONTIER』の上で、翼とクリスが交戦を続ける。

 

「ハッ!!」

 

刀を大剣に変形させ、『蒼ノ一閃』を放つ翼。

 

「あっ!」

 

「ツアアアアアアアアアっ!!」

 

しかし、上を見ると2丁拳銃で弾幕を張るクリス。

 

「っ! 何故弓を引く雪音!?」

 

「・・・・・」

 

「その沈黙を私は“答え”と受け取らなくてはならないのか!?」

 

「・・・・・っ!」

 

クリスは翼に向かって走る、翼は剣を振り下ろすが、クリスは飛び上がって回避し、弾丸を放つ!

 

「ハアアアアアアアアアアアッッ!!」

 

着地したクリスに刀を振り下ろす翼、クリスは片手の拳銃でそれを防ぎ、鍔迫り合いをする。

 

「何を求めて手を伸ばしている!」

 

「くっ・・・・・!」

 

クリスは翼を払い、弾丸を放つが、翼はこれを回避し接近戦を繰り広げる! 元々クリスのイチイバルが得意な戦術は中距離射撃、それを行わせないようにした戦法である。

 

「アタシの“十字架”を! 他のヤツに! ましてや兄ぃに背負わせる訳にはいかねぇだろ!!」

 

「何・・・はっ・・・!」

 

この時、翼はクリスの首に巻かれている“黒い首輪”が目に入る。

 

「うわっ!」

 

ソレに気を取られ、クリスの弾丸を防ぐも押し飛ばされる!

 

 

ーデジェルsideー

 

睨み合いを続けていたデジェルはカルディアに話し掛ける。

 

「良いのかカルディア? あの少女は、月読調は私がお前を助けてくれると思っているのだぞ・・・!」

 

「知ったこっちゃねぇな、アイツがどう思おうが、ここが何処だろうが、んなことは些末な事だ。俺は俺の心のまま、この爪が赴くまま、俺の命を燃やすだけだ!」

 

「月読調が悲しんでもか・・・?」

 

「言ったろうが、知ったこっちゃねぇってよ!!」

 

再び交戦を開始し、二人の拳が、脚が、肘が、膝が、一瞬の内に何百回もぶつかり、衝撃波が起こり、土煙が舞う!

 

《デジェル、良いか?》

 

「エルシドか?! 今は! 少し! 手が! 離せん! のだがっ!」

 

《手短に言う。今マニゴルドの元に向かっているが、暁切歌と月読調が交戦している》

 

そう言って、エルシドは通信を切った。しかし、デジェルはエルシドの謂わんとした事を察した。

 

「(なるほど、そう言う事か!) 付いて来い! カルディア!!」

 

「おいおいおいおいおいおい! 逃がすかよ!!」

 

デジェルとカルディアは交戦しながら移動を開始した。

 

 

 

ー調sideー

 

「切ちゃんが切ちゃんでいられる内にって、どういう事・・・?」

 

「アタシの中に“フィーネの魂”が、覚醒しそうなんデス・・・!」

 

「っ!」

 

「・・・・・」

 

切歌の言葉に調は驚くが、知っていたマニゴルドは目を鋭くする。

 

「施設に集められた“レセプターチルドレン”だもの、こうなる可能性はあったデス・・・!」

 

「だとしたら、尚更私は切ちゃんを止めて見せる・・・!」

 

「えっ!?」

 

「これ以上、切ちゃんの魂が塗り潰されないように、大好きな切ちゃんを守る為に・・・!」

 

鋸を構える調を見て切歌も大鎌を構え直す!

 

「大好きとか言うな! アタシの方がずっと調の事が大好きデス!」

 

泣きそうになる切歌は慟哭する。

 

「だから! 大好きな人達がいる世界を守るんデス!」

 

「切ちゃん・・・!」

 

調は鋸をプロペラのような形に変えて空に飛ぶ!

 

『緊急Φ式 双月カルマ』

 

「調・・・!」

 

切歌は肩のパーツを刃を付けたマジックアームにして構える!

 

『封伐・PィNo奇ぉ』

 

「「大好きだってええええええええ、言ってるでしょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッッ!!!」」

 

空中に飛んだ二人はぶつかる!

 

 

そして、二人の戦いを見守るマニゴルドの後ろに1台のバイクが現れた。

 

「エルシドか・・・?」

 

「届け物だ・・・」

 

エルシドはマニゴルドにエアキャリアから回収したモノを投げ渡す。

 

「・・・良いのか? 二課の連中がうるせぇんじゃねぇのか?」

 

「月の落下が早まった事態だ。なりふり構っていられん・・・!」

 

「大事の前の小事ってか・・・?」

 

「そう言う事だ。それよりもあの娘達は良いのか?」

 

「まぁ、いざとなったら・・・」

 

ゴキッ! ゴキッ! ゴキッ!

 

拳を握るようにして拳の関節を鳴らすマニゴルドを見てエルシドはバイクのエンジンを吹かす。

 

「一応言っておくが、カルディアとデジェルが交戦を始めた・・・」

 

「そうかよ・・・!」

 

短い返事を聞いたエルシドはバイクを走らせ去っていった。

 

「(さ~てと、そろそろ終わらせないとだな・・・!)」

 

マニゴルドはエルシドが届けてくれたモノ、“蟹座<キャンサー>のクロスレリーフ”を眺めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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