聖姫絶唱セイントシンフォギア   作:BREAKERZ

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ようやくここまで来れた!


“道化”の敗北 目覚める“悪神”

ージェネレータールームー

 

「奮ッッ!」

 

ガアアアアアアンッッ!!!

 

ジェネレータールームに来ていた弦十郎と緒川は、操作パネルらしき岩柱を破壊した。

 

「司令、アレがおそらく“ネフェリムの心臓”です」

 

ジェネレータールームの中心にある巨大な柱の中央部にくっついている心臓のようなモノがあった。

 

「あれをどうにかしなければな・・・」

 

《司令、聴こえますか?》

 

「どうした友里、奏者達と聖闘士達は?」

 

《ハイ、響ちゃん達奏者はXD<エクスドライブ>モードとなってネフェリムを粉砕! 聖闘士達は現在、“聖衣を脱いだ”状態で、ウェル博士と交戦に入りました!》

 

「聖衣を脱いだって、司令・・・」

 

「・・・これはウェル博士の命は、“風前の灯”だな」

 

弦十郎と緒川は、“聖衣を脱いだ”時が、聖闘士達の“本気”であると知るが故に、ウェル博士に僅かな同情を抱いた。

 

 

ーウェルsideー

 

「(ウソだぁ!・・・ウソだぁ!・・・こんなのウソだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッ!!!)」

 

「オリャアアアアアアアアアアアッッ!!!」

 

「・・・・・・・・・・・・・・ッッ!!!」

 

「ハアアアアアアアアアアアアアッッ!!!」

 

「ウオラアアアアアアアアアアアッッ!!!」

 

「ソラソラァァァァァァァァァァッッ!!!」

 

「オオオオオォォォォォォォォォッッ!!!」

 

6体に分身したウェルは、レグルス、エルシド、デジェル、マニゴルド、カルディア、アルバフィカ、聖衣を脱いだ聖闘士達にタコ殴りにされていた。

 

「(ウソだぁっ! この僕が! この僕がぁっ!)」

 

「(この“新世界のスーパーヒーロー”がぁっ!)」

 

「(新時代の“真の英雄”がぁっ!)」

 

「(なんで、こんな旧時代の“遺物”共にぃっ!)」

 

「(別世界から来た“異分子”共にぃっ!)」

 

「(聖衣を纏っていない只の人間なんかにぃっ!)」

 

「「「「「「(素手でやられているんだぁっ!!??)」」」」」」

 

目の前に起こっている現実を理解したくないように、認めたくないように、6体のウェルは殴られながら混乱していた。

 

 

ーアスミタsideー

 

「「「「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」」」」」

 

あまりの事態に奏者達ならびに未来も口をポカーンと開けて、“生身の聖闘士”に一方的に殴られる“冥界の鎧を纏ったウェル博士”を見ていた。

 

「あの・・・アスミタさん・・・どうなっているんですか・・・アレ・・・?」

 

奏者達の代わりに未来が唖然となりながらも、現状の説明をアスミタに聞くとアスミタはため息混じりに答える。

 

「よもや君達も、我等黄金聖闘士が“完全聖遺物<黄金聖衣>の恩恵”で今まで戦って来たと思っていたのか?」

 

「え・・・?」

 

「確かに聖衣を纏えば“力”は上がるし、身を守るプロテクターとしては君達のシンフォギア以上と言えるだろう・・・だが、本来聖闘士とは“五体を武器に戦う戦士”、聖衣はあくまでも神話の時代にアテナが我等聖闘士の身を案じてお造りになられた“鎧”。むしろ聖衣を脱いだ時こそ、聖闘士の真骨頂なのだ・・・!」

 

「し、真骨頂って・・・」

 

「聖衣を身に纏っていない方が強いのか?」

 

「そうではない、黄金聖衣は確かに神話の時代から“一度も破壊されなかった最強の聖衣”だか、むしろ聖衣が有るからこそ、本気になりきれなかったと言えるだろう」

 

「どういうこった?」

 

「“最強の黄金聖衣”を纏っているとな、〔自分は聖衣に守られている〕と考え、精神的な“甘さ”が生まれる」

 

「精神的な、“甘さ”・・・?」

 

「デスか・・・?」

 

「そうだ、戦場において“甘さ”や“迷い”や“恐怖”を持つ事は最も愚かな事だ。聖衣を纏っているから生まれる精神的安心は“甘さ”となり、聖闘士の“根幹”を忘れてしまう」

 

「“聖闘士の根幹”・・・?」

 

「我等聖闘士の戦いは、聖遺物である“聖衣”で決まるのではない。聖闘士の戦いは“小宇宙<コスモ>”で決まる」

 

「“小宇宙<コスモ>”って、聖闘士の皆さんが使う、奏者にとっての“フォニックゲイン”でしたよね?」

 

響の質問に、アスミタは宇宙のビジョンを見せる。

 

「そうだ、“小宇宙<コスモ>”とは生きとし生ける者全てが持ち合わせている“生命の力”、我等聖闘士は極限に己を鍛え上げ、磨かれてきた肉体と精神と感覚によって生み出される“生命の力”、それが“小宇宙<コスモ>”。そして我等黄金聖闘士は、“小宇宙<コスモ>の真髄”を体得している」

 

『小宇宙<コスモ>の真髄・・・?』

 

「人間には、“視角”、“聴覚”、“嗅覚”、“味覚”、“触覚”。そして“直感”、“霊感”や“超能力”と言った第六感と呼ばれるモノがある。“小宇宙<コスモ>”はこの第六感を極め、燃焼し、爆発させる事で初めて体得できるモノ、そして我々黄金聖闘士はその真髄、小宇宙<コスモ>の究極、“第七感覚<セブンセンシズ>”を極めし者」

 

『小宇宙<コスモ>の究極、第七感覚<セブンセンシズ>・・・!?』

 

「そう、この“セブンセンシズ”を極めた聖闘士は“小宇宙<コスモ>”を最大限にまで増幅し、強大な奇跡を起こす事ができる・・・!」

 

アスミタはビジョンを消すと、再びウェルを殴り続けるレグルス達を見据える。

 

「“セブンセンシズ”は生半可な修行と精神では大抵到達出来ない“真髄”。しかし我等は長い年月を掛けて“研鑽”し続けてきた肉体と精神により体得した“力”は、決してヤツの“偽りの力”に遅れを取ることはない」

 

『“偽りの力”・・・・・・』

 

「所詮ゲトリクスが得たのは“LiNKER”でドーピングし、“盗んだモノ”で己を着飾った“偽物”。盗んだ強さなど、真の強さの前では塵芥に等しい・・・!」

 

「「「・・・・・・・・・・・・」」」

 

アスミタの言葉に“LiNKER”で“ドーピングしている奏者”のマリアと切歌と調に少し影が落ちる。

 

「君達とあの男は違う、君達があの男のように傲り高ぶり、力に溺れる愚を犯さず“正しい事”の為にその力を振るうならば、その力も“真の強さ”になる・・・」

 

「真の・・・」

 

「強さ・・・」

 

「デスか・・・?」

 

「そうだよ! マリアさんも切歌ちゃんも調ちゃんも! これから“正しい事”をすれば良いんだよ!」

 

「偽り等ではない、己の真なる想いを持てば良い・・・!」

 

「アタシが偉そうに言えないが、大切なのは“これまで”じゃなくて、“これから”なんじゃねぇか?」

 

「フッ、そうね・・・」

 

「大切なのは“これまで”じゃなくて・・・」

 

「“これから”、デスね・・・!」

 

響達の励ましにマリア達の顔色が戻る。

 

「響達が上手くフォローしてくれましたね?」

 

「フン。それよりも、もう終わるようだ・・・」

 

再び聖闘士達の戦闘を見る。

 

 

 

ーレグルスVSウェルー

 

「行くぜウェル博士! 『ライトニング・プラズマ』!」

 

「ギャバアアアアアアアアアアアアアッッ!!!」

 

『ライトニング・プラズマ』でボロ雑巾のようにズタボロになり消滅するウェル。

 

「ありゃ? こっちは“分身体”か・・・」

 

“分身体”であると知り、拍子抜けと言わんばかりのレグルスは肩を落とした。

 

 

ーエルシドVSウェルー

 

「これ以上“任務の邪魔”をするなドクターウェルよ・・・!」

 

「ひ、ひゃまらと(じ、邪魔だと)?」

 

顔面がほぼ潰れ、呂律の回らないウェルをエルシドは興味無さに気に一瞥し。

 

「我等はこれより“月の落下”を阻止しなければならん。お前と遊んでいる暇はない! 『乱斬』!」

 

「ギレエエエエエエエエエエエエエッッ!!!」

 

手刀により細切れにされたウェルが消滅する。

 

「くだらん遊戯だ・・・!」

 

エルシドにとってウェルとの戦いは“任務遂行の邪魔”でしかなかった。

 

 

ーデジェルVSウェルー

 

「ほ、ほくのひゅうひゅうなふのうふぁほまへふぁんふぁふぉり(ぼ、僕の優秀な頭脳はお前何かより)・・・!」

 

「如何に優れた頭脳を持っていても、それを“正しき事”に使わねば、誰にも認められん!」

 

「ヒギィッッ!」

 

「失せろ、外道! 『ホーロドニースメルチ』!」

 

「ギグナァァァァァァァァァァァァスッッ!!!」

 

凍気の竜巻に呑まれたウェルは“氷結”し砕け散った。

 

「お前のくだらん“英雄願望”にこれ以上付き合うつもりはない・・・!」

 

砕けた分身体に告げるデジェルの目は冷徹に徹していた。

 

 

ーマニゴルドVSウェルー

 

「ムグ、ムググガガガガガガガッッ!!!」

 

原型が無くなったウェルの顔を掴みながらマニゴルドは凶悪な笑顔を浮かべる。

 

「お前も悪党なら悪党らしい死に様を見せな、ウェルよ・・・!」

 

ウェルを掴んでいた手から“青い炎”が現れる!

 

「ムグゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ??!!」

 

「分身体ならコイツが通じるな、燐気の鬼火を食らってみるか?! 『積尸気鬼蒼炎』!」

 

「あじゃぱーーーーーーーーーーーーッ!!!」

 

青い炎がウェルの分身体を包み、焼きつくした!

 

「悪党らしく、汚く死んでな♪」

 

マニゴルドは手を払いながら、どっちが悪党だか分からない笑みを浮かべる。

 

 

ーカルディアVSウェルー

 

「あ、あぁ、あああぁぁ・・・!」

 

「さてと、今度は“ゲロ吐く”だけじゃすまねぇぜ、ドクターよぉ・・・!」

 

カルディアは人差し指の赤い爪を伸ばし、爪が赤く光る!

 

「『スカーレットニードル』を一転集中させて放つこの技、実験台になってもらうぜ!」

 

本来15発も放つ『スカーレットニードル』を一転集中させればその威力は計り知れない。

 

「とりあえず“5発分”の威力を試させてもらうぜ! 『クリムゾン・ランサー』!」

 

「ウギガアアアアアアアアアアアアアッッ!!!」

 

貫かれた胴体に巨大な風穴を開けて消滅する分身体。

 

「何だ、“3発分”でも良かったな。あ~ぁ、折角復活したってのに、歯ごたえのねぇ上にきったねぇ悲鳴を上げるぜ。ふあぁ~・・・」

 

カルディアは退屈そうに欠伸をした。

 

 

 

ー奏者sideー

 

「・・・・・・・・・・・・・・」

 

「冥界の鎧を纏ったウェル博士が・・・」

 

「全く相手になってねぇ・・・」

 

「て言うか、いくら相手がドクターとは言え・・・」

 

「容赦なさ過ぎデェス・・・」

 

「ってちょっと待って、レグルス君達が倒した五人が分身体だとすると・・・」

 

「本物のドクターが相手しているのは・・・アルバフィカ!?」

 

“覚悟”はしていたが、やはりキツいのか未来は目をそらし、奏者達はいくら“分身体”とは言え躊躇無くウェルを倒した聖闘士達の戦いに度肝を抜かれたが、直ぐにアルバフィカの方に目を向けると。

 

 

ーアルバフィカVSウェルー

 

「こ、こんなの“夢”だぁ・・・! “悪夢”だぁ・・・! 現実な訳が有るものかぁ・・・!!」

 

顔が血塗れのぐちゃぐちゃになったウェルは現状を受け入れられず、無様に這いつくばっていた。

 

「どこまでも情けないヤツだな、ドクターウェル!」

 

「ギニャアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」

 

アルバフィカの殺気に呑まれ、四つん這いの状態で逃げようとしていた。

 

 

 

ーアスミタsideー

 

あまりにも無様で滑稽なウェルの姿に、アスミタは冷めた態度でいた。

 

「やはりアルバフィカが相手取っていたのが“本体”だったか・・・」

 

「やはりって、アスミタさんは気付いてたのですか?」

 

「フッ。簡単な“消去法”でこれくらい分かる」

 

『???』

 

首を傾げる奏者達にアスミタが説明する。

 

「まずヤツ<ウェル>はレグルスに散々恐怖を与えられてきた。如何に聖衣を纏っていないとは言え、ヤツのような“小心者”にとって、そう言った苦手意識は簡単に消えないから、レグルスの相手はしない」

 

「成る程・・・!」

 

響は納得した。

 

「エルシドとデジェルには、“手刀”と“凍気”がある、聖衣が無くともそれらが使える可能性がある以上、ヤツは博打をしようとは考えない」

 

「確かにな・・・」

 

「兄ぃとエルシドなら聖衣が無くても充分に戦えそうだしな・・・」

 

翼とクリスが得心を得たように頷く。

 

「マニゴルドとカルディアは我等の中では悪党には特に容赦無く残虐になる性格の者達、そんな危険人物と戦う“度量”をヤツは持ち合わせていない・・・」

 

「あぁ~・・・」

 

「今までマニゴルド達には、散々な目に合わされてきたデスしね・・・」

 

マニゴルドとカルディアにブチのめされ、ゲロをぶちまけた事があったりした事を思い出して納得する切歌と調。

 

「それじゃアルバフィカさんを相手にしていたのは・・・?」

 

「あの男は、我々黄金聖闘士を“聖衣が無ければ無力な人間”と見下していたからな。アルバフィカの事も“顔が美しいだけで、毒薔薇を使うしか能がないカッコ付け”としか認識していなかった。“自分”以外の人間を全て見下していた故に、簡単に足元を掬われてしまうのだ・・・」

 

アスミタの言葉にマリアは頷き。

 

「アルバフィカの真価は、“美しい容姿”でも無ければ、“猛毒の薔薇”でも無いわ・・・どんな時でも、決して色褪せる事も、折れる事も無い曲がる事も無い、“誇り高き魂”よ!」

 

 

 

ーアルバフィカVSウェルー

 

「うぅぅ、うっ、うっ、ゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!」

 

ガタガタと追い詰められたネズミのように震えるウェルをアルバフィカが冷めた目で見る。

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

アルバフィカはまるで興味が無いと言わんばかりに背を向ける。

 

「な、なんだ・・・!?」

 

「ウェルよ、一度だけ“恩情”をかけてやる。このまま大人しく縛に付いて法廷で裁きを受けろ・・・!」

 

「な、何だと・・・!?」

 

「お前ごときを殺しても何の“益”も無い。それに我々は“月の落下”を止めなければならない。お前の“下らない英雄願望”に付き合っている“暇”など無いのだ・・・!」

 

そう言ってアルバフィカはウェルから離れる。それを見て奏者達はホッとし、聖闘士達は無表情に見ていた。

 

「僕の“願望”を下らないだと? 僕ごときを殺しても“益”が無いだと? この僕に、“裁き”を受けろだとぉ? この僕との戦いを“暇”だとぉ・・・・・・ふざけるな・・・ふざけるなぁ・・・ふざけるな ふざけるな ふざけるな ふざけるな ふざけるな ふざけるな ふざけるな ふざけるな ふざけるな ふざけるな ふざけるな ふざけるな ふざけるな ふざけるな ふざけるなァァァァァァァァァァッ!!」

 

発狂したウェルが“ネフェリムの細胞”を移植した腕でアルバフィカを後ろから殴ろうとした!

 

「アルバフィカっ!!」

 

「死ィィィィィィねェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェッッ!!!「グワシっ」ヒギグゥッ!?」

 

目の前にいた筈のアルバフィカはウェルの隣に一瞬で回り込み、脳天の髪を掴んで冷徹に見据える。

 

「どこまでも愚かだな、ジョン・ウェイン・ウェルキンゲトリクス。貴様の腕は“聖遺物”には有効だが、“生身の人間”には役に立たないのにな・・・!」

 

「ウギギギギギギギギギギギギッッ!!! ぼ、僕は英雄だぁ! 僕が英雄だ! 僕こそが英雄だぁ! 僕だけが英雄だぁ! 僕のみが英雄だぁぁっ!! 大体可笑しいじゃないか!? 何で“旧時代の遺物”であるテメェ等がっ!! “別世界の異分子”共がぁ!! この世界の“真の英雄”であるこの僕を差し置いてぇ、英雄気取りでこの世に蔓延ってンだよォォォォォォォォォォォォォォォッッ!!!」

 

癇癪を引き起こしながら喚くウェルを変わらず冷めた目線のアルバフィカは拳を振り上げてただ一言呟いた。

 

「おそらく我々がこの世界に来たのは、お前のような愚か者の好き勝手にさせない為だ・・・! それにな、我々黄金聖闘士は貴様を許せん!」

 

その時、アルバフィカを含んだ黄金聖闘士全員の言葉が重なった。

 

『俺達/我等の“盟友<アルデバラン>”と同じ声で、これ以上下劣な言葉を吐き出すなッッ!!』

 

そして、アルバフィカの拳がウェルに迫る。そのコンマ数秒の時間が、スローモーションになったように緩慢に感じたウェルは“一応優秀な頭脳”をフル回転させた。

 

「(こ、こんな夢だぁ! いや、そうか! これは秒読みだぁ! “奇跡”が頑張った、“努力”した“結果”によって生まれる物であるなら! 当然僕にも“奇跡”が起こる筈だぁ!!!)」

 

ウェルは気づかない、“冥衣の左足のパーツ”と“右足のパーツ”が離れてる事に・・・。

 

「(そうとも! 僕はこの世界に顕現した“真の英雄”! こんな所で終わる存在では無い筈だぁっ!!!)」

 

“腰のパーツ”が、“両腕のパーツ”が離れ、アルバフィカの拳がゆっくりと迫る。

 

「(さぁ! 今こそ目覚めろ! 僕の内に秘められたスーパーパワー!! 危機的状況こそ! ピンチの時こそ! スーパーヒーローの真の力が発現するんだぁ!!!)」

 

“両肩のパーツ”が離れ、アルバフィカの拳が眼前に近づく。

 

「(さぁ早く目覚めろ!! 早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早くぅッッ!!!)」

 

“胴体パーツ”が離れ、ついにアルバフィカの拳が鼻先に触れる!

 

「(さぁっ!!! 目覚めろ僕のスーパーパワーよ!! 今こそ“奇跡”を起こせぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッッ!!!)」

 

“背中パーツ”が、離れ・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バゴンッ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ・・・? 僕の、“スーパーパワー”は・・・?」

 

ウェルの顔面にアルバフィカの拳が深く深く、めり込んみ、肉と骨の潰れる音が耳に入った・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー???ー

 

「少しは楽しめたが、所詮はこの“程度”か・・・」

 

 

 

 

ーアスミタsideー

 

アスミタはウェルから離れた“冥衣”を睨んでいたが、レグルス達や響達は、殴り飛ばされズタボロになったウェルを見ていた。

 

「ウソだ・・・こんなの、何かの間違いだ・・・こんなの、きっと悪い夢だぁ・・・真の英雄である、筈の僕が・・・・こんな惨めな姿を・・・・めざめろ、僕の・・・スーパーパワー・・・早く・・・めざめるんだぁ・・・!」

 

顔面が血塗れでボロ雑巾のようになり、無様な姿を晒してもなお足掻こうとするウェルに奏者達はおののく。

 

「ここまで追い詰められていながら、まだ足掻こうとするなんて・・・!」

 

「敵ながら、そら恐ろしいヤツだ・・・!」

 

「だが、もう終わりだな・・・」

 

「でも、どうして“冥衣”は・・・」

 

「ドクターから離れたデスか?」

 

「以前、アルバフィカから聴いた事がある。聖闘士達が纏う聖衣はただのプロテクターではなく、“意志”を持っていると・・・」

 

「聖衣に“意志”が有るんですか?」

 

「小日向未来、ガングニール、天羽々斬、イチイバル、君達も“ルナアタック”の時に見た筈だ。“聖衣”に宿った“前任者の魂”をな・・・」

 

アスミタの言葉で響達は思い出す、射手座<サジタリアス>の黄金聖衣に宿った“シジフォスの残留思念”を。

 

「我等の聖衣に“意志”が有るように、冥衣にも“意志”が有るのだろう」

 

「それで、ドクターから離れたのは?」

 

「簡単だ、あの愚か者は“ネフェリムの細胞”で冥衣を操っていたつもりだろうが実はそうでは無く、冥衣に“見放された”のだ」

 

『見放された・・・?』

 

「そう、そしてここからが本当の戦いだ・・・!」

 

首を傾げる奏者達と違い、アスミタを含んだ黄金聖闘士達が、身構える!

 

 

「ま、まだだぁ・・・! は、早く・・・! もう一度だぁ・・・! もう一度“冥衣”を操って、今度こそ、あの“遺物共”を・・・! “異分子共”を・・・!!」

 

這いつくばって地面に散らばった冥衣にすがろうとするウェルに、イヤ、冥衣にアスミタが呟く。

 

「いい加減に、くだらん茶番劇を終わらせたらどうだ・・・・・・・・“アタバク”っ!!」

 

アスミタが一喝すると、冥衣が独りでに動き出し、空中で冥衣を展開した状態になり、空洞の部分から“黒い靄”が現れた!

 

「な、なんだぁっ!? なんなんだよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ??!!」

 

ほとんど撹乱状態になったウェルに構わず、“靄”の中から“人間”の形になり、声が響いた。それを見て、アスミタやレグルス達も臨戦態勢に入る。

 

「フフフフフフ、何時から気づいていた? 乙女座<ヴァルゴ>、イヤ、黄金聖闘士共よ・・・?」

 

「其処の愚か者が冥衣を持ち出した時に気づいたのだ。冥界の物とは言え冥衣もまた“完全聖遺物”。愚か者が左腕に仕込んだのは所詮“ネフェリムの一部”、言うなればシンフォギア奏者達と同じ“欠片”だ。“欠片ごとき”で自在に操作出来るほど、冥界の鎧は安い聖遺物では無いと推理しただけだ・・・!」

 

「成る程、道理だな・・・! では此方も姿を現そうかっ!!」

 

徐々に“靄”が人の“形”になると、その姿を現した!

 

禿頭と浅黒い肌、鍛えられているであろう肉体に、ウェルの時は若干ブカブカ感があった冥衣が完全にフィットし、妙齢で無感情な顔つきの男!

 

『・・・・・・・・・!!!』

 

『・・・・・・・・・』

 

戸惑う奏者達の近くにレグルス達が戻って来た。

 

「レグルス君・・・あの人は・・・一体・・・!?」

 

「俺も話で聞いただけだけど。あの男は、俺達が使える戦女神アテナの宿敵! 冥界を統べる“冥王ハーデス”に使える108の魔星に選ばれし闘士・・・! “地上で最も神に近い聖闘士”がアスミタならば、ヤツは“冥界で最も神に近い冥闘士<スペクター>”・・・・・・・・!!」

 

聖闘士達が声を揃えてその男の名を叫ぶ!

 

 

 

 

 

『“悪神 アタバク”!!』

 

 

 

 

 

 

響達はアタバクの方を見ると。

 

「・・・・・・(チラッ)」

 

ゴオォォウッッ!!!!

 

『ビクゥッ!!!!』

 

アタバクと目が合った瞬間、響達に戦慄が走る!

 

「(何なんだよ・・・?! アイツ・・・!)」

 

「(今まで相手取って来た者達とは、桁違いすぎる!)」

 

「(まるで“背骨の筋”に氷柱が刺さったような、この威圧感・・・!)」

 

「(ホントにコイツ・・・! 冥界の亡者なんデスか!?)」

 

「(違う・・・! ウェルなんてまるで足元にも及んでないと言って良いほどの存在感!! これが・・・!)」

 

「(この人が・・・冥闘士<スペクター>・・・!!)」

 

「(アスミタさんと同じ・・・! “神に近い闘士”!?)」

 

奏者達と未来は、アタバクから放たれる威圧感に容易く射竦められ硬直する。

 

「アワ、アワ、アワワワワワっ! アヒッ、アヒッ、アヒへッ!アヒフェェェェェェェェェェェッッ!!!!」

 

そしてアタバクの姿を眼前で捉えたウェルはその威圧感と迫力に尻餅を付き、失禁までして後ずさるがーーーーーー。

 

ガシッ!

 

その片足をアタバクの背中の腕が掴み、逆さ吊りになったウェルの眼前にアタバクの“無感情な顔”がいた!

 

「ヒィィィィィィィィィィッッ!!!!」

 

「フン、こんな“小物”でも分不相応の考えと力を持つとここまで愉快な“道化”に成るものだな・・・」

 

「(ど、“道化”だとっ!? ふざけるな! こ、この僕を愚弄しやがって! も、もう一度ネフェリムで、お前の冥衣を操ってくれるっ!!)」

 

ウェルは左腕をアタバクの纏う冥衣に当てる。

 

「ウェヘヘヘヘヘヘヘッッ! この旧時代の骨董品風情が! さぁ、冥衣! もう一度この僕にかしずけっ!!」

 

シーーーーン・・・・・・。

 

しかし、冥衣はまるで反応せず、アタバクは小馬鹿にした笑みを浮かべる。

 

「どうしたのだウェルよ? 我が冥衣を奪うのだろう?」

 

「な、何で?! 何で何で何で何で何でっ!!??」

 

全く反応しない冥衣にウェルの顔色が徐々に青ざめる。

 

「つくづく滑稽かつ愚かだな、お前は・・・」

 

アタバクの冥衣の腕がウェルの左腕を掴む。

 

「ヒイッッ!?」

 

「所詮お前の左腕に移植されたのは“ネフェリムの一部”。完全聖遺物である冥衣を操れていたと思っていたのか?」

 

「な、何だとっ!?」

 

「今までお前が使っていたのは冥衣の“上澄み”だけ、“本来の力”の少しも引き出してなどいないわ・・・!」

 

グシャッ!!

 

「ウギィヤァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!!!」

 

冥衣の腕がウェルの左腕を“握り潰した”!

 

「あ、あぁ・・・!」

 

「ガングニールよ、覚えておけ・・・」

 

愕然となる奏者達、そしてアスミタが響に説く。

 

「この世には、“話は通じても決して分かり敢えない存在”と言う者がある。話し合いで解決しようとするその心“だけ”は評価するが、そう言った存在がいると言う事を覚えておけ・・・」

 

「“話し合いが通じない存在”・・・!」

 

それは響の“信条”と“相反する考え”であり、響が決して“理解したくない事柄”であった。

 

アスミタは結跏趺座をすると宙に浮かび、アタバクと対峙する。

 

「ほぉ、乙女座<ヴァルゴ>の黄金聖闘士か・・・」

 

「悪神アタバクよ、そなたは“この世界のアタバク”で相違ないか?」

 

「成る程、どうやら“お前達の世界の私”はお前と遭遇していたようだな・・・」

 

アスミタとアタバクの会話に奏者達は首を傾げる。

 

「デジェル兄ぃ、どういう事?」

 

「“私達の世界”で冥王軍との聖戦が始まる前、アスミタはアタバクと交戦し、ヤツを倒した。アスミタにとってアタバクは因縁の有る冥闘士なのだ」

 

今目の前にいるのは、聖戦が始まる前にアスミタが倒したアタバクではなく、この“シンフォギア世界”のアタバクであると確信したアスミタはアタバクと対話を続ける。

 

「そなたが“この世界のアタバク”である事は分かったが、何故冥衣に宿っていた?」

 

「簡単だ、かつてこの地上を壊滅させた“神々の大戦<グレートウォー>”の折り、我等冥闘士はいずれ起こるであろう冥王ハーデスの復活に備え、“冥衣に己の魂”を封印したのだ」

 

「冥衣に・・・!」

 

「自分の魂を封印しただと!?」

 

「その封印された冥闘士が甦ったと言う事は・・・!」

 

「まさか・・・冥王ハーデスが甦るって言うの!?」

 

「かつて地上を滅ぼした“元凶の神”、冥王ハーデス・・・!」

 

「そいつが復活したら、どうなるんデスか!?」

 

奏者達はアタバクの言葉に、背中に冷たい汗が流れる。

 

「アタバクと同じように封印された108の魔星に選ばれた冥闘士達が、再び地上に進行するだろう・・・」

 

「やべぇな、こちとら聖闘士は今現在ここにいる黄金聖闘士だけだぜ・・・」

 

「そうなったら俺らだけでも戦い抜くしかねぇだろ」

 

「覚悟は出来ている・・・!」

 

「ま、それしか無いよな・・・」

 

「ふっ・・・」

 

「あの~、皆さん強気過ぎなんですけど・・・」

 

聖闘士達の態度に未来は苦笑いを浮かべながらやんわりとツッコム。

 

「安心しろ聖闘士達よ。まだ“ハーデス”も“双子神”も“魔女”も覚醒していない。私だけが覚醒出来たのは、この男のお陰だ・・・」

 

「ヒギ、ヒギィ! ヒギヒィィィィィィィィィィッッ!!」

 

「ソレのお陰・・・?」

 

吊らされたウェルを弄びながらアタバクは愉快そうに語る。

 

「この男とは“三年前から”の付き合いだ・・・そう、“射手座<サジタリアス>の黄金聖闘士”が行方不明になった時からな・・・!」

 

『っ!?』

 

レグルスの伯父にして、前ガングニール奏者 天羽奏の恋人、黄金聖闘士達の中心的人物であった射手座の黄金聖闘士、サジタリアスのシジフォスの名が出た事に聖闘士達と奏者達の顔に驚愕と戸惑いが入り混じった。

 

「何故そこでシジフォスが出る・・・?」

 

アスミタの問いにアタバクは笑みを崩さずに応える。

 

「教えてやろう・・・“三年前”、サジタリアスの身に起こった事をな・・・」

 

「や、やめろっ!」

 

ウェルが焦ったように喚き始めるが、アタバクは構うこと無く聖闘士達と奏者達に語ろうとしていた。

 

「やめろ! やめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてぇぇぇッッ! 僕の胸の内を暴かないでぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッッ!!!!」

 

ポゥッ!

 

アタバクは喧しく喚くウェルを完全に無視してアタバクは聖闘士達と奏者達や未来の脳裏にテレパシーを送る。

 

「この男はな・・・射手座<サジタリアス>に、貴様ら黄金聖闘士に、“嫉妬”していたのだよ・・・!」

 

「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッッ!!!!」

 

狂乱するウェルに構わず、聖闘士達と奏者達は見た! “三年前のツヴァイウィングのライブ襲撃”の“裏”で起こった出来事をーーーーーーーーーーーー。

 

 

 




次回はついに“神に近い闘士”達の決戦です!

そしてもしかしたら未来が“奇跡”を起こす、かも!
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