聖姫絶唱セイントシンフォギア   作:BREAKERZ

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GX編スタートです。

注意事項:GX編の最初、ナスターシャ教授の遺体を乗せたシャトルの救助はハショリます。ごめんなさい。


戦士達の日常

『ルナアタック事変』、『フロンティア事変』、数々の地球存亡の危機が起こり、その度に“歌で繋がる絆”で戦うシンフォギア奏者と彼女達と共に戦ってくれた最強の闘士達。

地上の愛と正義を守る為に遥か神話の時代と次元を越えてやって来た闘士達、戦女神アテナの聖闘士の最高峰、黄金聖闘士達により、終結を迎えた。

そして奏者達はそれぞれの“平和の道”を歩み、聖闘士達は次なる戦いに備えて行動を起こしていた。

 

 

ーリディアン音楽院ー

 

ここはリディアン音楽院、かつてはシンフォギア奏者となる戦姫を選抜する為に創られた学校だが、現在は普通の音楽院として経営を始めた。

そんな中、昨年の冬の始めに編入した男子生徒、レグルス・L・獅子堂こと『獅子座<レオ>のレグルス』は『琴座<ライラ>の白銀聖闘少女<セインティア>候補』である小日向未来、未来の友人である寺島詩織、板場弓美、安藤創世と屋上で談笑していた。

 

「レグっちがウチの学校に編入してからもう三ヶ月は経ったんだね」

 

「あぁ~、もうそんなに経つんだね・・・・」

 

「もう長いこと一緒にいる気分ですね」

 

「うんそうだな。俺も皆とは長く一緒にいるような感覚だよ」

 

「あの、レグルス君・・・・」

 

「何、未来?」

 

「その・・・・重くないかな私・・・・?」

 

現在、未来は身体を仰け反らせブリッジしたレグルスのお腹の上に座っていた。

 

「全然! むしろ軽すぎるよ。未来はちゃんとご飯食べてるのって心配になっちゃうほどだよ」

 

「もしかして響が未来の分までご飯食べてたりしてwww」

 

「あり得そうだね、ビッキーなら♪」

 

「立花さんですから」

 

「もう皆、いくら響でもそんな事無いよ・・・・・多分」

 

「多分って・・・プっ」

 

『あはははははははははははは』

 

和気藹々と会話に花を咲かせていた“響がいない”一同。創世と弓美と詩織が飲み物を買いに屋上を出ると、レグルスと未来の雰囲気がスッと静かになり、目線で会話を始める。

 

「(未来、気付いてる?)」

 

「(うん、後ろのビルの屋上に一人、向かいの建物の中から何人か、私達を“監視”しているね)」

 

「(正確には二人だね、後左向こうのホテルの7階に一人、双眼鏡を使って俺達を“監視”している)」

 

「(何処の情報局かな・・・?)」

 

「(弦十郎から聞いた話じゃ、アメリカのCIA、イギリスのMI6、ドイツのBDN、ロシアのFSB、フランスのDGSE、中国のMSS、オーストラリアのASIS。世界各国の諜報機関が俺達聖闘士を“監視”しているんだって)」

 

『フロンティア事変』が終息してしばらく経った頃、現在日本に留まっている黄金聖闘士、獅子座のレグルスと水瓶座のデジェル、蟹座のマニゴルドと蠍座のカルディアは世界各国の諜報員達から秘密裏に“監視”を受けていた。

原因は単純明快、現存する国連軍を圧倒する戦闘力を有する黄金聖闘士達の存在を危惧した国連の上層部によるものであった。

 

「(ごめんな、未来。未来まで“監視対象”にされてしまって・・・)」

 

「(気にしないでレグルスくん。『フロンティア事変』で“琴座の白銀聖衣”を纏ったのは私自身なんだし)」

 

そして未来もまた、『フロンティア事変』の際、琴座<ライラ>の白銀聖衣を纏い『白銀聖闘少女<シルバーセインティア>』となった事で、レグルス達程では無いが未来にも“監視の目”が付いていたのだ。

一時的だが『聖闘少女』へとなった未来はある程度の感性が上がり、“監視の視線”を感知するようになっていた。

 

「(デジェルもマニゴルドもカルディアも、『監視されているのは気分悪い』って愚痴っていたし、エルシドとアルバフィカも旅先で各国の諜報員の視線を感じているようだしね。お陰で響達の任務を見届ける事もできないよ・・・・)」

 

「(響に翼さんにクリス・・・大丈夫かな?)」

 

「(・・・・『ナスターシャ教授の遺体を乗せたシャトルの救助』だったね。まぁ、響達なら大丈夫だと思うけどね)」

 

レグルスと未来は青空を見上げながら『シャトル救助の任務』へと赴いた響と翼とクリスを心配した。

 

 

 

 

 

ー???ー

 

その男は一本の高い木の上で数キロ離れた所に、シンフォギア奏者達と救助されたシャトルを眺めていた。

 

「フム・・・あれが北欧神話の撃槍ガングニールのシンフォギア奏者、立花響。同じく北欧神話の魔穹イチイバルのシンフォギア奏者、雪音クリス。日本神話の絶剣天羽々斬のシンフォギア奏者、風鳴翼か・・・」

 

高い身長に透き通るような白い肌、サラサラとなびく青い長髪に整った顔立ちの美男子。しかしその目は高圧的で何処か見下した光りを宿していた。

 

「全く、せっかくの風光明媚な景色が台無しだ・・・聖遺物と言う“オモチャ頼みの小娘共”を好き勝手させるとこのような不粋な結果になる・・・」

 

その男はシャトルの救助の為に“奏者達が破壊してしまった山脈と森林”を見て、嘆かわしいと言わんとばかりに頭を振る。

 

「もうここに用はない、そろそろ戻るかな」

 

そう呟くと、男の背後の景色が男の等身大位に“割れた”。男は“割れた空間”に飛び込むと響達を一瞥して不敵な笑みを浮かべて呟く。

 

「俺の“計画”の良き“駒”になってくれよ。シンフォギア奏者・・・!」

 

そして男は姿を消し、空間も元通りになったーーーーーーーーーーー。

 

 

 

 

 

それから更に三ヶ月。夏が始まる時期になり、『特異災害対策起動部二課』によるシャトル救助の一件の後、二課は正式に国連直轄下にて再編成された。

 

その組織名を『超常災害対策起動部タスクフォース “S.O.N.G.”<Squad of Nexus Guardians>』。

 

これにより安保理が定めた規約に従って、日本国外での活動認められるようになった。

二度に渡る聖遺物により起こった、『大規模な超常的脅威に対して広範囲で即応する為』と“表向きの理由”だが、その“裏の理由”は、『日本政府が保有する異端技術を出来る限り目の届くところに置き』、『国連が最警戒している黄金聖闘士達の動向を監視する』と言う、各国の思惑も絡んだ末の結果であった。

 

勿論この国連の聖闘士達への対応をシンフォギア奏者達と弦十郎やS.O.N.G.の他の隊員達が異議を唱えたが、聖闘士達の返答はーーーーーーーーーーー。

 

「別に構わないよ」

 

「私達が監視されていれば国連が安心するなら、私も構いません」

 

「所詮人間なんざ、『自分たちより強くて正しい存在』を煙たがるモンだからな」

 

「俺の戦いの“邪魔”さえしなければ何も言わねぇよ」

 

海外にいるエルシドとアルバフィカは。

 

《“任務の邪魔”をしなければ問題無い》

 

《私は言うなれば“犯罪者”だからな、監視は必定だろう》

 

通信越しで了承し、現在何処にいるか分からないアスミタを除いた聖闘士達が了承したので渋々と奏者達と弦十郎達も黙った。

 

そして聖闘士達はあくまでも『善意ある民間協力者』と言う事でタスクフォースS.O.N.G.に所属し、聖遺物による超常災害の際、国連から許可が下りた時のみS.O.N.G.の活動に参加できるようになった。

 

 

ー切歌&調sideー

 

朝日が閉めきったカーテンの隙間から零れる部屋、暁切歌と月読調が“同棲”している3LDマンション(リディアンまで切歌と調の足で歩いて15分、デジェルとクリスのマンションは歩いて3分も掛からない向かい側)の一室、『切歌と調の部屋』とデフォルメされた熊さんと兎さんが付いた可愛いドアプレートが付けられたドアを“誰か”が静かに開いた。

 

「す~・・・す~・・・す~・・・」

 

「むにゃむにゃ・・・」

 

可愛らしく寝息を立てて金色の髪のショートヘアーの少女、暁切歌と、いつもはツインテールにしている髪を下ろし黒い長髪にしている月読調であった。

部屋に入った“人物”は眠りこけている二人にニィッと悪い笑みを浮かべると、両手に持った“道具”を上げて、その手を動かし、“道具”を叩き合わせたーーーーーーーーーーー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

“お玉”と“フライパン”を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンッッ!!

 

 

「デデデデェェェェェェェェェスッッ!!」

 

「ッッッ!!!」

 

突然鳴り響く騒音に切歌と調は跳ねるように飛び起きるとそのままベッドから二人とも転げ落ちる。

 

「デフッ!」

 

「あうっ!」

 

「おう、おはようお二人さん」

 

二人が顔を上げると、黒い無地のエプロンを着て、お玉とフライパンを持った蟹座<キャンサー>のマニゴルドが立っていた。

 

「マニゴルド! その起こし方やめてって言ったデスよ!」

 

「ビックリした・・・!」

 

「やかましい。もう7時になってんだよ、それよりもテメェ等、何だこの部屋の惨状は!?」

 

「「うぅっ!」」

 

恨みがましそうに睨む二人をマニゴルドは部屋の惨状を見せて黙らした。

 

「テーブルの上は袋から開けたお菓子が散らかってるわ、机は漫画本やファッション誌の山が出来てるわ、床には脱いだ服が散乱しているわ! 何だこの部屋は!? 小学生のお子ちゃまのお部屋ですか!?」

 

「イヤ~それはデスね・・・」

 

「こ、高校生生活も色々と忙しくて・・・」

 

目を泳がしまくる切歌と調は朝から冷や汗を垂らして言い訳にならない言い訳をする。

 

「今日帰ったら部屋の片付けをやれ。俺が帰ってくるまでに掃除がされてなければ、俺がお前らの部屋を勝手に掃除するからな・・・!」

 

「ええぇぇぇぇぇぇっ!! そんなのプライバシーの“深海”デスよ!」

 

「それを言うなら“侵害”だボケ! オラ、とっとと起きて朝飯食って学校に行け!」

 

「「は~~~い(デス)・・・」」

 

 

~十数分後~

 

顔を洗って髪をとかし終え、昨夜にマニゴルドがアイロンをかけたリディアンの制服(夏服ver.)を着た切歌と調は、リビングでテレビを見ながら、マニゴルドが作った朝食(メニューはご飯と味噌汁と卵焼きとししゃも焼きとほうれん草のおひたし)を食べていた、マニゴルドは二人のお弁当を詰めていると。

 

「たで~~ま・・・」

 

「おぉう」

 

「「おかえり(デス)~~」」

 

蠍座<スコーピオン>のカルディアが、警備員のバイト(夜勤)から帰って来た。

 

「カルディア、眠そうだね・・・?」

 

「あぁ、交代のオッサンが遅刻してきてよ。ようやっと帰れたんだよ・・・」

 

フラフラと足元がおぼつかないカルディアはそのままリビングのソファーにぶっ倒れると高鼾をかいて爆睡した。

 

「がぁぁぁ・・・がぁぁぁ・・・」

 

「うわっスッゴい寝つきデェス!」

 

「最近夜勤続きだったからね・・・・」

 

「後で部屋に放り込んでおくか・・・・」

 

それから少しすると、テレビに海外にいる翼とマリアが映し出された。

 

「あっ、マリアと翼さんデス」

 

「今どこにいるんだっけ?」

 

「確か英国<ロンドン>だったな。ホレホレ、んな事よりももうすぐ8時だぞ、学校へ行け、学校へ」

 

「うわっ! もうこんな時間デス?!」

 

「急ごう切ちゃん・・・!」

 

二人は急いでお弁当とリディアン指定の鞄を持って出ていこうとした。

 

「「いってきま~~す!」」

 

「おう行ってこい!」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「おい・・・・」

 

「あんだよ・・・・」

 

切歌と調が出て静かになった部屋で、マニゴルドは寝ていたカルディアを起こす。

 

「“何人”いた?」

 

「ずっとバイトしている時・・・つか、バイトへ出勤した時から監視されていた。て言うか今も監視されてる」

 

カルディアが薄目に開けた目線の先に、マンションの近くの建物からキランと光る箇所があった。マニゴルドも一瞬一瞥するとハァとため息をついた。

 

「最近監視の目が増えたと思わねぇか?」

 

「流石にうざったいよな・・・・」

 

少し辟易しながらもマニゴルドはジャーナリストの仕事へ行こうと準備を始め、カルディアはバイトが休みなので暇を持て余していた。

 

 

 

ーデジェルsideー

 

同じ頃、朝食を食べ終え、今年リディアン音楽院の三年生へと進級した雪音クリスが学校に登校しようとすると、同じく今年の春先に医大を首席の成績で合格した水瓶座<アクエリアス>のデジェルが見送りに来た。

 

「クリス、少し乱れている・・・」

 

「あ、ありがとうお兄ちゃん////」

 

少し乱れていた制服と白銀の髪をデジェルが整え、顔を赤らめるクリス。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・//////(チラッチラッチラッチラッチラッ)」

 

「・・・・・・・・・・・」

 

デジェルに何か言いたそうにチラッと見つめるクリスをデジェルは少し優しく微笑み見つめるとーーーーーー。

 

 

チュッ❤

 

 

クリスの額に口づけをした。

 

「いってらっしゃい、クリス」

 

「うん♪ お兄ちゃん、いってきます!」

 

クリスは上機嫌で部屋を出て、学校へ向かった。

 

「さて、私も大学に行かないとな」

 

デジェルも医大へ行こうと鞄を持って部屋を出ていった。

 

 

ーエルシドsideー

 

そしてここはロンドンの山地で山羊座<カプリコーン>のエルシドは現在交戦中であった。

 

「フハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッッ!! 俺の名は、『天退星 玄武のグレゴー』!! 遥か時を越えて、今甦ったぞ!」

 

『冥王ハーデス』が支配する死者の世界である冥界を象徴する、黒曜石のように妖しい輝きを放つ漆黒の鎧、冥衣<サープリス>を纏う巨漢の冥闘士<スペクター>が、その二メートル以上の巨体を丸めてエルシドに突進してきた!

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

「死ねえええええええええええええええっ!!」

 

フッ!

 

転がりながら突進するグレゴーの横をエルシドがヒラリとかわす。

 

「上手く避けたなアテナの聖闘士! だが、次は「ズリュッ!」・・・・ハレ・・・?」

 

通りすぎたグレゴーの巨体が“縦に割れた”。すれ違い際に手刀で切り捨てた。グレゴーは悲鳴を上げる間もなく絶命した。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・」

 

エルシドはグレゴーの亡骸に近づくと、グレゴーの身体は黒い霞となって消滅し、残ったのは冥衣の待機状態である『黒い宝玉』へと変化した。エルシドは宝玉を拾い指で弾き、眼前まで宝玉が落ちてくると。

 

「っ!」

 

 

エルシドの手刀で一閃された宝玉はそのままグレゴーと同じように消滅した。

 

「冥衣破壊完了・・・・」

 

エルシドは静かに呟くと、そのまま山地を降っていった。

 

 

 

ーアルバフィカsideー

 

そしてエルシドと別にロンドンの海岸では、魚座<ピスケス>のアルバフィカが冥闘士と交戦していたが。

 

「バ、バカな・・・!? この俺が・・・! この『地暗星 ディープのニアベ』が・・・! こんな聖衣を纏ってすらいない聖闘士にぃ・・・!!」

 

『地暗星ディープのニアベ』、冥衣から吹き出す毒の香気を操り、敵を麻痺させ死に至らしめる冥闘士。だが、相手が悪かった。

 

「生憎と私の使う魔宮薔薇<デモンローズ>は猛毒なのでね、毒に対しては免疫があるのだよ」

 

魚座<ピスケス>のアルバフィカは手に持った純白の薔薇、『ブラッディローズ』を持ち、ニアベを見据えると、ニアベの心臓の位置に同じように『ブラッディローズ』が突き刺さっていた。

 

「あ、あぁぁぁぁ・・・吸われるぅぅ・・・俺の・・・血が・・・・・・・!!」

 

「『ブラッディローズ』。相手の血液を吸い続ける吸血の薔薇。その純白の花弁が真っ赤に染まりし時、君の命が尽きる・・・」

 

アルバフィカが言い終わるや否やニアベは事切れ、胸に刺さった純白の薔薇はニアベの血を吸い赤く染まり僅かに血が滴り落ちていた。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

スッ、パチン!

 

アルバフィカが指を鳴らすと薔薇の花弁が散り海風に乗って消え、ニアベの身体が黒い霞に消滅し、後には『ディープの冥衣』だけが残された。

 

「『ピラニアンローズ』・・・!」

 

今度は鉄をも噛み砕く黒い薔薇、『ピラニアンローズ』で『ディープの冥衣』を破壊した。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

アルバフィカはそのままニアベの消滅した場所に一瞥もくれずに去って行った。

 

 

ー翼&マリアsideー

 

元FISのシンフォギア奏者、マリア・カデンツァヴナ・イヴは『フロンティア事変』で“破滅の巫女フィーネの転生者”として“人類の敵”となったが、世界中の人々の想いと言う『フォニックゲイン』を集める重大な役割を果たし、“人類の英雄”の一人となったが、今も屈強な男二人の国連からの監視を受け、がんじがらめの生活をしながらも『世界の歌姫』として仕事をこなしていた。

 

「マリア、息が詰まらないか?」

 

「大丈夫よ翼」

 

そんなマリアの心配をするのはS.O.N.G.のシンフォギア奏者であり『日本のトップアーティスト』である風鳴翼。彼女もまた同じS.O.N.G.所属のマネージャーである緒川慎司と共に世界に歌を届けるために歌手活動をこなしていた。

現在翼とマリアは次の公演に備えて控え室にいた。緒川とマリアの監視役の男達は控え室の外にいる。

 

「暁や月読の方はどうだ?」

 

「えぇ、響達が学校生活の良き相談役をやってくれているし、生活の方もマニゴルドやカルディアがいるから心配していないわ。あの二人以外と面倒見良いしね」

 

「そうか、こっちも立花達からのメールである程度は知ることが出来るからな」

 

翼がスマホを見せると、皆の楽しそうにしている写真を見せた。

 

「レグルスもデジェルも、学校生活を楽しんでいるのかしら?」

 

「楽しんでいるんじゃないのか」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

「どうした?」

 

「イヤね、響はレグルスと未来、クリスはデジェル、切歌と調もマニゴルドとカルディアも一緒にいる・・・でも私達は・・・・」

 

「言うな・・・何か悲しくなる・・・!」

 

翼の想い人のエルシド、マリアの想い人のアルバフィカ、二人とも非常にクールでストイックな性格(デジェルもクールだが、気づかいの出来る紳士的な性格)、今は自分たちの任務である『聖衣の探索と確保』、『冥闘士の排除と冥衣の破壊』、『射手座<サジタリアス>のシジフォスの捜索』と多忙な任務に付いているのは分かってはいるが、『フロンティア事変』から全く音沙汰なし(一応弦十郎には定期連絡はしている)、せめて連絡位はしてほしいと思ってしまうのは、翼とマリアの“乙女心”である。

 

「「ハァ~~~~~~・・・・・」」

 

まるでお通夜みたいなドンヨリとした雰囲気の二人は、緒川が話しかけるまで重いため息をついて落ち込んでいた。

 

 

ーレグルスsideー

 

「レグルスく~ん!」

 

「学校行こうーーー!」

 

「はいはーい」

 

レグルスが下宿しているアパートにリディアンの制服を着た立花響と小日向未来がやって来て、レグルスの部屋のドアのインターフォンを鳴らしてレグルスを呼ぶと、制服を着て、口にトーストをくわえたレグルスが出てきた。

 

「おはよう響、未来」

 

「おはよう!」

 

「おはようレグルスくん」

 

軽く挨拶した三人はそのまま学校へ向かっていった。

 

「ン~~・・・」

 

「レグルスくんどうしたの? 難しい顔して・・・」

 

「ン~~実はさ、昨日の夜に星を見てたら気になる事が起きてさ・・・」

 

「それって『星読み』の事?」

 

星座の闘士である聖闘士にとって『星読み』はこれからの事を占星する術である。

 

「うん。昨日星を見てたら変な兆しが見えたんだ」

 

「それって・・・・?」

 

「よく分からないけど、これから“何か”が起きるって事だけは分かったんだ」

 

「“何か”って?」

 

「さぁね」

 

レグルスが空を仰ぎながら呟いた。

 

 

 

 

そして間も無く、その“何か”が起きる事を今はまだ、誰も知りはしなかった。

 

『光と闇に別たれた数奇な運命の双子との出会い』と、『最大にして最高の英雄の帰還』が訪れる事をーーーーーーーーーーー。




年が明ける前に投稿できました。また一つ書いたらしばらく休みます。理由は、もうすぐ年末ですから。

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