聖姫絶唱セイントシンフォギア   作:BREAKERZ

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一夜明けて

ーレグルスsideー

 

『キャロル・マールス・ディーンハイム』と、『オートスコアラー』と名乗る新たな敵と遭遇した翌日、レグルスと響はリディアン音楽院で授業を受けていた。

 

『うおおおぉぉぉぉぉぉぉぉんんっ!!』

 

「どうしたのみんな?」

 

突然のクラスメート(男子)の雄叫びに“エプロン姿のレグルス”は首をかしげる。

 

「獅子堂! お前は今日の授業を分かっているのかっ!?」

 

「うん、“家庭科の調理実習”だよね?」

 

本日、リディアン音楽院で授業に“家庭科の調理実習”でレグルスと響達は家庭科室で調理をしていた。

今年で共学になっても男子生徒の数は少なく、レグルスを含んでも6人位の男子生徒しかいない。。

男子生徒の言葉にレグルスが答えると、同じように“エプロン姿の男子生徒達”は奇妙だがスタイリッシュなポージングを取る。レグルスは「(みんな身体軟らかいな~)」と的外れな事を思った。

 

「そう、本日の授業は女子の皆さんのエプロン姿が拝める事ができる家庭科の調理実習・・・!」

 

「去年まで女子校、つまり女の子ばかりの楽園だったこのリディアンに編入する事が出来た俺達にとって」

 

「この事は非常に重要な事なのである、女子の皆さんはあまり多くの食事を取る事は出来ない」

 

「何故ならば、カロリーを気にして料理の量を少なくする。しかし女の子の基本少食なのであまり食べない」

 

「そこで動くのが我ら男子組、我らが女子の皆様がお作りなり残してしまったお料理を我らが美味しく平らげる・・・!」

 

「ふ~~ん、それで?」

 

『鈍いやつだなおのれはぁ!! つまりあわよくば“女の子の手料理が食べられる”って事だろうがぁっ!!!』

 

「あぁ、そっか成る程」

 

気合が入った男子達の魂の雄叫びにレグルスも納得した。ちなみに家庭科室には現在女子生徒がいるのだが、男子は構わず熱弁し。担当教師や女子は呆れたり、苦笑いを浮かべたり、面白そうに眺めていた。

 

「気づかなかったのか貴様ぁっ!?」

 

「これだからモテる男はぁっ!!」

 

「獅子堂お前! この間一年生の後輩から恋文<ラブレター>を貰い、隣のクラスの女子からデートに誘われ、三年生の先輩から告白を受けていただろうっ!?」

 

ダァアンッ!!

 

何故か響と未来と弓美と詩織と創世のグループから包丁を叩き付ける音が響いた(包丁を持っていたのはクラスの問題児とも言われている少女)、男子は構わずにレグルスに詰め寄る。

 

「うん、でも全部断ったけど?」

 

「何をしとんじゃ貴様はぁ!?」

 

「せっかく気持ちを込めて手紙を書いてくれた人や勇気を出した人達に!!」

 

「そんな不実な行いをするとは、テメェには人の情や仁義っつーモンが欠落している!!」

 

「だって良く知らない相手とお付き合いなんてしたくないし・・・・」

 

『ブゥワァカタレがぁっ!! んなもん付き合ってから知っていけば良いではないかぁっ!!!』

 

「知ってるぞ! テメェ、“三年生のマドンナ 雪音クリス先輩”と知り合いらしいではないかっ!?」

 

「日頃から美人と知り合いだから、そこら辺の並の女子では靡かないと言いたいのかっ!?」

 

「貴様のような男がいるからこの世の中から貧困や差別や紛争が無くならんのだっ!!」

 

『この贅沢者めぇっ!!!』

 

それを聞いた女子は「三年の雪音先輩、確かに美人だよね~?」とか、「街で有名な名物カップルの片割れだっけ?」とか、男子の話に便乗していた。

 

「“三年生のマドンナ”???」

 

「そう! ご存知の通りこのリディアン音楽院は、今や世界に羽ばたく日本のトップアーティストである風鳴翼が在籍していた学校!」

 

「だぁが! 俺達が編入した時、風鳴翼さんは卒業してしまっていた!!」

 

「風鳴翼さんの制服姿や、あわよくば“風鳴先輩”と呼びたかった俺達の願いと希望は潰えた!」

 

「あの時流した悔しさの涙の苦い味は!」

 

「心に沸き上がる憤懣と悲哀は一生忘れん!」

 

それ聞いた女子は、「風鳴先輩とお近づきになりたかったな~」とか、「今や手の届かない人だもんね~?」と便乗する。

 

「しかぁし! そんな我らの目の前に“救世主<メシア>”が御光臨なされたのだぁ!」

 

「・・・・それがクリスの事??」

 

『呼び捨てか貴様ぁっ!!??』

 

マドンナであるクリスを呼び捨てに憤るが、直ぐに話を戻す。

 

「あんな一年生、イヤ下手をすれば中学生とも思ってしまいかねない程の小柄体型!」

 

「靡く銀色の長髪と気の強そうなツリ目!」

 

「妖精のような美貌とプロポーション!」

 

「そして何よりも、あの凶悪なバストッ!!」

 

それ聞いて女子連中は、「確かに大きいよね~?」とか、「何食べたらあんなアルプス山脈になるんだろう?」とか、「そのくせウェストや手足も細くてキレイって反則っしょ?」と便乗した。

 

『男の夢が現実になった美少女とお友達とか! 貴様のような男は地獄の業火にその身を焼かれてもまだまだ足らんわっ!!』

 

「いや、そんな事言われてもさ・・・・」

 

「ちくしょう・・・・ちくしょう・・・・なんでこんなに格差が生まれるんだよ・・・・!」

 

「顔か?・・・・顔がものをいうのか・・・・?」

 

「神様は不公平だ・・・・生まれた時からモテる人間とモテない人間を作るなんて・・・・!」

 

「人類皆兄弟ではないのか?・・・・人は平等ではないのか・・・・!」

 

「雪音先輩もこの男の毒牙に殺られたのか・・・・?」

 

「一応言っておくけど、クリスって年上の彼氏がいるけど?」

 

『神は死んだああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっっ!!!』

 

レグルスの言葉に男子は絶望し、四つん這いになって項垂れた。

 

「はいはい、男子の皆さん。遊んでないで、作業に取り組んでください」

 

「は~~い!」

 

『・・・・・・・・・・・・・・・・・・はい』

 

呆れたように眺めていたが流石にもう止めるべきと考えた教師からの言葉に、レグルスは元気良く返し、他の男子はまさに死屍累々の様子ではあったが、一応返事した。

 

 

ー響sideー

 

「「「「「♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪」」」」」

 

一方響達のグループは、何故か全員でミュージカルクッキングをやりながら調理作業をしていた。

 

「いや~、男子は賑やかだね~♪」

 

「しかし雪音先輩が三年生のマドンナ扱いだったとは驚きですね」

 

「でも気持ち分かるな~、私も初めて雪音先輩見たときはアニメのヒロインか?って思ったし、夏服で薄着になった先輩の胸元を見たら、思わずありがたや~ありがたや~って拝みたくなったもん」

 

「確かにクリスちゃんって、けしからんおっぱいしてるもんね~♪」

 

「響、それクリスが聞いたら絶対怒られるよ・・・・」

 

 

ークリスsideー

 

「へっくちっ!」

 

「雪音さん、風邪ですか?」

 

「い、いえ、大丈夫です。すみません(なんだ? この悪寒は?)・・・・」

 

クリスは言い様のない悪寒が全身を走った。

 

 

 

ー響sideー

 

「あうっ!」

 

「あっ!」

 

包丁で材料を切っていた響は人差し指を少し切ってしまい。空かさず未来が絆創膏を貼った。

 

「包丁を扱っている時に、うっかりしてるんだから」

 

「そうだよね・・・・お料理の道具で怪我するなんて、良くない事だよね・・・・」

 

「ん?」

 

「(シンフォギアは、“みんなを守る人助けの力”なんだ。その力で誰かを傷付けるなんて、したくない・・・・!)」

 

先日の出動でキャロル・マールス・ディーンハイムに言われた言葉が響の心に棘のように突き刺さっていた。

 

「この間の出動で何があったの? 調ちゃんや切歌ちゃんも、検査入院してるんでしょう?」

 

 

ー切歌&調sideー

 

「・・・・・・・・・・・・退屈デェス!!」

 

「病院食は、味が薄い・・・・」

 

検査入院している切歌と調だが、雑誌を放り投げる切歌と、病院食に不満を漏らす調はベッドの上で暇を持て余しまくっていた。

 

「ぐちゃぐちゃ言うない、面倒だが必要なんだからよ」

 

バイトの時間まで二人の見舞いに来ていたカルディア。すると病室の扉が開き。

 

「おうお前ら、暇を持て余しまくっているか?」

 

「「「マニゴルド!?」」」

 

横浜に調査に行っていたマニゴルドが帰って来た。

 

「ほれ、横浜土産に中華街で買ってきた点心だぞ」

 

「「「おおっ!」」」

 

そして桃饅頭やシュウマイや小籠包やらでどんちゃん騒ぎを繰り広げ、医療スタッフに怒られたのは10分後の事である。

 

 

ー響sideー

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

「響、未来がむくれてる」

 

「えっ?」

 

「む~~~~!!」

 

近くを横切ったレグルスの忠告で未来を見るとむくれていた。

 

「あぁっ! うん、でも心配しないで! 話し合えばきっと分かってくれるから!」

 

「・・・・・・・・いっつもそう」

 

見るからに空元気の響に、未来もぼやいてしまった。

 

 

ーレグルスsideー

 

「(ふ~~む、前にマニゴルドやカルディアが言ってたなぁ、“響は人間や物事や力の綺麗な部分しか見ていない”って、あながちそうかもな。また溜め込んで暴発しないといいけど・・・・)」

 

レグルスも響の空元気に不安を抱いていた。

 

ちなみにレグルスのいる男子グループはレシピを見ながら真面目に調理をし、レグルスはその容姿を生かして女子達から少しでも手料理を貰えるように交渉役を任されていた。レグルスの人柄のおかけで女子の皆さんは快く了承したが、男子は「なあ? 今から男子全員で貯金出しあって、○ル○13に暗殺を依頼しようか?」、「青酸と塩素係、どっちの毒性が殺傷能力高いかな?」、「出っ歯包丁でマグロの解体ショーツやってみようぜ? 解体するのはマグロじゃないけど・・・・」等と『モテる男のレグルス』に対して、物騒な会話が繰り広げられていのをレグルスは知らなかった。

 

 

 

ー翼sideー

 

その頃、日本へ戻ろうと飛行機に乗っている翼とエルシド、マリアとアルバフィカ。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

翼は日本に戻る際、自分の海外進出を後押ししてくれている。メトロミュージックのプロデューサー、トニー・グレイザーとの会話を思い出していた。

 

 

* * *

 

 

【日本に戻ると?】

 

【世界を舞台に歌うことは、私の夢でした。ですが・・・・】

 

【それが君の意思なら尊重したい。だが、いつかもう一度自分の夢を追いかけると、約束して貰えないだろうか?】

 

【・・・・・・・・それは・・・・】

 

また再び戦場に戻る翼は、また舞台に戻れるか約束出来なかった。

 

* * *

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

翼の様子に、勿論エルシド達も気づいていた。

 

《間もなく着陸体制に入ります。シートベルトの着用をお願いします》

 

アナウンスが鳴り、翼達は日本に戻ってきた。

 

 

~一時間後~

 

空港に着いた翼とエルシド、マリアとアルバフィカ、そして緒川は通路を歩く。

 

「翼さーーん! エルシドさーーん! マリアさーーん! アルバフィカさーーん!」

 

声がする方に目を向けると、出迎えに来た響とレグルス、クリスとデジェル、切歌と調がいた。

 

「・・・・フッ」

 

仲間達の姿を見た翼は、小さく微笑んだ。

 

 

 

ーS.O.N.G.基地ー

 

そしてS.O.N.G.基地であるも潜水艇ブリッジに響達シンフォギア奏者組とレグルス達聖闘士組が集まったが、マニゴルドとカルディアはそこに居なかった。

 

「ん? 切歌くん、調くん、マニゴルドとカルディアはどうした?」

 

「あぁ~、そのデスね・・・・」

 

「バックレた・・・・」

 

『ええっ!?』

 

言いづらそうに呟いた切歌と調の言葉に響と翼とクリス、弦十郎達S.O.N.G.オペレーター陣も驚くが、レグルス達聖闘士組とマリアだけは、やれやれと言わんばかりに肩を落としたり片手で顔を被ったりしていた。

 

「あの不良聖闘士共! 何考えてやがる!?」

 

「また新しい敵が現れたと言うのにあの者達は!」

 

「切歌ちゃん! 調ちゃん! マニゴルドさんとカルディアさんは今どこにいるの?!」

 

クリスと翼は憤然としながら毒づき、響は二人を呼び出そうと切歌と調に聞くが、切歌と調も肩を落とし。

 

「マニゴルドはデスね、“気分が乗らないから”って言ってどっか行ったデスよ・・・・」

 

「カルディアも、“爪が疼かない”って言ってマニゴルドと一緒に出掛けた・・・・」

 

「あの二人はもう・・・・!」

 

マリアも二人の性格は知っているが、こんな事態にも関わらずの二人に呆れた様子を浮かべながら額に手を置きながらハアと吐息をする。

 

『・・・・・・・・・・・・・・・・』

 

レグルスとエルシドとデジェルとアルバフィカは、あの二人が来るとは欠片も思っていなかったから平然としている。“ギブ&テイク好き”のマニゴルドが無償で動くわけはないし、聖衣を纏っていないデジェルとエルシドに呆気なく敗北するオートスコアラーに“戦闘狂”のカルディアは興味を抱かなかったんだと推察した。

 

「マニゴルドとカルディアの事は後回しにするとして、シンフォギア奏者も勢揃い、とは言い難いかも知れんからな」

 

ため息をつく弦十郎の後ろのメインモニターに、『天羽々斬』と『イチイバル』の『シンフォギアクリスタル』の状態が表示された。

 

「これは・・・・?」

 

「新型ノイズに破壊された、天羽々斬とイチイバルです。核<コア>となる聖遺物の欠片は無事なのですが・・・・」

 

「エネルギーをプロテクターとして固着させる機能が、損なわれている状態です・・・・」

 

「セレナのギアと同じ・・・・!」

 

緒川の問いに藤尭と友里が詳しく解説し、マリアは懐に入れていた“亡き妹のセレナ・カデンツァヴナ・イヴ”のシンフォギア、『アガートラーム』のシンフォギアクリスタルを取り出した。

 

「勿論直るんだよな?」

 

「“櫻井理論”が開示された事で、各国の異端技術研究は飛躍的に進行しているが・・・・」

 

「それでも了子さんでなければ、シンフォギアシステムの修復は難しい・・・・」

 

『・・・・・・・・・・・・』

 

破滅の巫女フィーネ、櫻井了子はシンフォギアシステムの第一人者であった。その彼女がいない現状、シンフォギアの修復は不可能となっていた。

 

「弦十郎殿、俺達の黄金聖衣の使用許可は下りたのか?」

 

「イヤ、国連は今回の事態はS.O.N.G.の力のみでどうにかしろとお達しだ・・・・」

 

「はぁ、まだ上層部は我々を危惧しているのですか?」

 

「先日の襲撃で勝手に派手に暴れたからな。上層部はお前達を好き勝手にさせるのが好ましくないんだ」

 

「ふん、そこまで柔軟な対応ができるような奴等ならば苦労はしない。所詮安全な場所で口先だけ動かしている連中に、現場の状況を考える脳ミソなど持ち合わせていないからな」

 

エルシドとデジェルとアルバフィカは、頭でっかちな上層部に呆れ、響達奏者も、弦十郎達大人組も、今まで共に戦ってきた仲間達を未だに危険物扱いする国連上層部に納得できない顔をしていた。

 

「現状、動ける奏者は響くんただ一人」

 

「私だけ・・・・」

 

「そんな事ないデスよ!」

 

「私達だって・・・・」

 

「ダメだ・・・・!」

 

マリアと切歌と調の出撃を弦十郎が却下した。

 

「どうしてデスか!?」

 

「“LiNKER”で適合係数の不足値を補うシンフォギアの運用が、どれ程身体の負荷になっているのか・・・・」

 

「君たちに合わせて調整した“LiNKER”が無い以上、無理を強いる事は出来ないよ・・・・」

 

友里と藤尭も却下したが、調達は納得しない。

 

「・・・・どこまでも私達は、“役に立たないお子さま”なのね・・・・!」

 

「メディカルチェックの結果が思った以上に良くないのは知っているデスよ。それでも・・・・」

 

「こんな事で仲間を失うのは、二度とゴメンだからな」

 

「その気持ちだけで十分だ」

 

“LiNKER”を使った仲間を失った翼や後輩思いのクリスは優しい言葉をかけるが、マリア達は納得していなかった。

 

「・・・・・・・・・・・・俺が初めて黄金聖闘士として任務に赴いたのは、いつの頃だったけデジェル?」

 

「ん?」

 

今まで黙っていたレグルスがボソッと呟き、デジェルを初め、響達も首をかしげた。

 

「・・・・確か、12歳の頃に獅子座<レオ>の黄金聖闘士として選ばれ、直ぐにある地方の異変調査の為にたった一人で任務に赴いたな」

 

12歳と言えばまだまだ小学生の年齢、その頃に一人で任務に赴いた事に響達は少し驚く。

 

「俺だってその頃には一端の聖闘士として任務をこなしていたんだから、切歌や調だって「やめろレグルス」アルバフィカ・・・・」

 

「立花響達も風鳴司令達も、“平穏な時代に生きてきた人間”だ、私達のように“戦争の時代で生きてきた人間”とは価値観が違うのだ。お子さまを戦わせる事に抵抗を持っているのだ」

 

「未成年の響達だって戦っているのに?」

 

「安全なやり方が大好きな者達に、それを言っても栓無き事だろう」

 

『・・・・・・・・・・・・・・・・』

 

何か棘の有る物言い方をするアルバフィカとエルシドに、響と翼とクリス、弦十郎達は訝しそうに見る。

 

「「「・・・・・・・・・・・・」」」

 

ただ、マリアと切歌と調は、遠回しに自分達を援護してくれたレグルス達に小さく笑みを浮かべた。

 

「(やれやれ、この場にマニゴルドとカルディアが居たら、“ガキだ、子供だと見下してんじゃねぇぞ、この平和ボケ軍団がっ!”と、盛大に喧嘩を売っていただろうな・・・・)」

 

デジェルは誰に気付かれることなく、静かに重いため息を漏らしていた。

 

 

 

ーキャロルsideー

 

その頃、禍々しい玉座の前の広間に、翼とマリア、クリスと交戦した『オートスコアラー』の内の三人が、マネキンのようなポーズを取りながら、それぞれの台座に鎮座していた。

 

黄色を基調としたジャズダンス衣装を着た『レイア・ダラーヒム』。

 

緑を基調としたフラメンコ衣装を着た『ファラ・スユーフ』。

 

赤を基調としたゴスロリ服に赤い髪を大きなロール髪に巻き、手には禍々しいかぎ爪を装備した『ミカ・ジャウカーン』。

 

そして玉座に座るのは、プラチナブロンドのセミロングヘアの少女『錬金術師 キャロル・マールス・ディーンハイム』が座っていた。

 

「行きま~す! ちゅっ」

 

青を基調としたメイド服を着た『ガリィ・トゥーマーン』が、『ミカ・ジャウカーン』に口づけした。すると、ガリィからミカへ“何か”が流れる音が響いた。

 

「・・・・あっ・・・・」

 

「フフフ」

 

ガリィが口を離すと、ミカが静かに動き始めた。

 

「あっ・・・・あぁ・・・・はぅぅ・・・・」

 

ギクシャクと動いていたミカはそのまま腰を落とした。

 

「最大戦力となるミカを動かす“思い出”を集めるのは、存外時間が掛かったようだな?」

 

「イヤですよ~、これでも頑張ったんですよ? なるべく目立たずに、事を進めるのは大変だったんですから~」

 

ガリィがミカを動かす為に、何人もの人間達の命を奪ったか、キャロルは知っていたが、大概が世の中のゴミのような人間達だったので気にも止めなかった。ガリィも自分の台座に戻り、ポージングをした。

 

「まぁ問題無かろう、これでオートスコアラーは全機起動、求める闘士達の事は“あの人”に任せるとしても、“計画”を次の改訂へ進める事ができる」

 

「あぁ・・・・ああぁぁ・・・・」

 

ミカがひもじそうにうめき声をあげる。

 

「どうした? ミカ?」

 

「お腹が空いて、動けないゾ・・・・」

 

「・・・・ガリィ」

 

「あぁはいはい、ガリィのお仕事ですよね~」

 

「ついでにもう一仕事、こなしてくると良い」

 

「そう言えばマスター、“エルフナイン”は連中に保護されたみたいですよ?」

 

「把握している」

 

「マスターがご要望の“獅子”は、こちらに来るでしょうかね~?」

 

「フッ、レオも直ぐにわかる。この世でレオを“真に理解出来る”のはオレだけ。そしてレオの“才覚を十全に引き出せる”のは、“あの人”だけだとな」

 

「それで? 件の“あの人”はどうしたのですか~?」

 

「こちらに加わる闘士を集めるようだ。何、“あの人”の行う事に無駄な事等無い」

 

キャロルは口角を小さく上げて笑みを浮かべた。

 

 

 

ーマニゴルド&カルディアsideー

 

そしてその頃、S.O.N.G.の会議をサボったマニゴルドとカルディアは、公園のベンチに腰掛けていた。

 

「・・・・・・・・んで?」

 

「あん?」

 

「わざわざこんな所に連れ出して何のようだよ? 俺はもうすぐバイトなんだけど?」

 

「まぁそう言うな、S.O.N.G.の会議もサボったんだから少しの暇潰しだ・・・・来たぞ」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

マニゴルドの言葉にカルディアは身構えると、二人の周辺の“空間“が歪んだ。

 

「コイツは・・・・!」

 

「・・・・・・・・・」

 

カルディアは犬歯を剥き出し、好戦的な笑みを浮かべ、マニゴルドは睨むように辺りを見渡し、空間が割れ、そこからアタッシュケースを持った青い長髪をした端正な美丈夫が現れた。

 

「久しぶりだな、マニゴルド、カルディア?」

 

「アスプロス・・・・!!」

 

ドオゥッ!

 

カルディアはその男を見や否やスカーレットニードルを放つように爪を突き出すと、アスプロスは余裕でかわした。

 

「おいおい、随分な挨拶だな?」

 

「へっ! まさか裏切り者のテメェも甦ってこの世界にいたとはなっ!? 丁度良いぜ、前々からテメェとは殺り合いと思っていたからな! ここで仲良く殺し合おうぜ!」

 

「待て待て、ここで暴れてはせっかく俺が作った空間も破壊してしまうぞ?」

 

「あん?」

 

「周りを見てみろ、カルディア」

 

「・・・・・・・・こいつは?」

 

カルディアは辺りを見渡すと、奇妙な事に気づいた。まだ昼間の公園には幼い子供連れの親や愛犬と戯れている少年、散歩中の老人、離れた所にはカルディアとマニゴルドを監視している筈の国連の諜報員達ですら、異次元から現れたアスプロスや暴れているカルディアにまるで気づいていない、いや関心すら示していなかった。

 

「空間を歪ませているのか?」

 

「あぁ、俺達三人の周囲の空間を歪ませて、周りの人間達には俺達がベンチで駄弁っている風に見えてんだろうよ、双子座<ジェミニ>の黄金聖闘士だからできる芸当だな」

 

「その通りだ、わざわざ出向いてくだらん諜報員達に騒がれてはウザったいからな」

 

「それで? テメェは何の目論みで俺達に接触したんだ? わざわざ横浜で精神体を飛ばして、カルディアを連れてここに来いなんて回りくどい事までしてよ? 『お師匠<教皇セージ>』を裏切った侘びを入れたいなら今すぐ土下座して地べたにドタマ擦り付ければ、死なない程度に加減してやる事も考えてやってもいいぜ?」

 

『教皇セージ』。聖闘士達の司令官と呼べる存在であり、マニゴルドの師。どん底で生きていたマニゴルドを聖闘士にし、“命の尊さと美しさ”、“生の素晴らしさ”を教えてくれた大恩人。アスプロスも教皇に恩義が有ったにも関わらずに、“最悪の裏切り行為”を行ったアスプロスには、はらわたが煮えくり返る思いであった。

 

「フフフ、この俺が許しを乞うような真似をすると思っているのか? 蟹座<キャンサー>のマニゴルドともあろうものが抜けた考えをするようになったな?」

 

「ま、俺も一応言ってみただけだ。さて、それじゃ殺り合うか? あぁ!?」

 

ゴオォウッ!!

 

マニゴルドとカルディアの全身から、闘気と殺気を放出され、木々はざわつき、大気は震え、アスファルトの地面に亀裂が走る。

 

「まぁまぁそう結論を急ぐな、俺もお前達と殺り合うつもりなら、聖衣を纏ってきているだろう? 流石にそんな無謀な事をしない」

 

普通の人間なら二人の圧力<プレッシャー>に押し潰されて腰を抜かすのだが、アスプロスはそんな二人からの圧力を涼やかにいなしていた。

 

「なんだぁ? 傲岸不遜、唯我独尊、自信過剰生姜焼き定食のテメェらしくねぇ事をほざきやがって、気持ち悪いな・・・・!」

 

「“二回も死んで”遂にようやく“謙虚”って言葉でも覚えたのか? お前には最も縁遠い上に似合わない言葉だぜ?」

 

性格は兎も角、黄金聖闘士の中でもトップクラスの戦闘力を持ち、その実力に見合った“我の強さ”を持ったアスプロスとは思えない言葉にカルディアとマニゴルドは不審そうに睨むが、アスプロスは気にせずに、高圧的かつふてぶてしい笑みを浮かべ。

 

「お前達、窮屈だと思わないのか? 今の自分達の現状が?」

 

「「あん?」」

 

「国連の愚か者共の監視を受け、シンフォギアと言う聖遺物のオモチャではしゃいでいる子供の保育をし、人命優先、専守防衛などと甘い大義名分を掲げる組織の庇護を受けて、仮初めの平和に現を抜かし、牙の抜けた怠惰な日々をのうのうと過ごす。死刑執行人<マニゴルド>、戦闘狂と呼ばれたお前達が、何とも落ちぶれたモノだな?」

 

「「・・・・・・・・・・・・・・・・・」」

 

アスプロスの言葉に、マニゴルドとカルディアは何も言わず黙って聞いていた。

 

「どうだマニゴルド、カルディア、俺達の組織に加わらないか? お前達にはあのように、“息を吐くように綺麗事をほざく連中”の空気は肌に合わない、どちらかと言えば“こちら側の人間”だろう? 我等の下につけ、お前達にもメリットが有るぞ?」

 

「俺達にもメリットだと?」

 

「それってまさか、そのアタッシュケースか?」

 

「そうだ。これにはお前達にとっても為になる」

 

アスプロスがアタッシュケースを開け、中に入っている“モノ”をマニゴルドとカルディアに見せた。

 

「「っ!?」」

 

それを見た瞬間、マニゴルドとカルディアは目を鋭くして、アタッシュケースの中身を睨んだ。

 

 

 

 




スパロボTがまだ途中ですが、発売前に書いていたのを投稿しました。また再来週には続きを書きます。
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