聖姫絶唱セイントシンフォギア   作:BREAKERZ

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迷いの撃槍

マリア・カデンツァヴナ・イヴは司令部で、ガリィとガリィが召喚したアルカ・ノイズと遭遇した響達の状況を見ていた。『天羽々斬』と『イチイバル』が破損され、こちらの戦力を削られ、キャロル達が今度は響の『ガングニール』を狙ってくるとデジェルが予測し、それが見事に当たったが。

 

「響が、ガングニールを起動できない・・・・?!」

 

響が聖詠を歌うことができなくなり、直ぐにレグルスが駆けつけて安心したのも束の間、ガリィが『エレメントアームズ』なる装備を付け、霜柱や雹や氷柱を出してレグルスを攻め立てた状況を見て、聖衣を纏っていないレグルスが苦戦しているのを見て、直ぐに緒川と共に現場に急行し、丁度空中に飛ばされたガングニールのシンフォギアクリスタルを手にして、マリアが聖詠を歌い、ガングニールを纏った。元々響のガングニールは『フロンティア事変』の最後にマリアから譲り受けた物で有ったからマリアが纏う事が出来たのだ。

 

「マリア・・・・ぐぅっ!」

 

「レグルス君、しっかりしてください!」

 

「(レグルス、あんな負傷した身体で戦っていたのね。貴方の稼いでくれた時間、無駄にはしないわ!!)」

 

右腕の凍傷と左足の沸騰による負傷でヨロけるレグルスを緒川が支える。それを一瞥したマリアは、両手のガントレットを合わせて飛ばし、突撃槍のアームドギアに変形させ、シンフォギアの力を高める聖詠を歌うマリア。

 

「♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪!!」

 

『HORIZON†SPEAR』

 

LiNKER無しでの戦闘の負担を押して、突撃槍の矛先を展開させエネルギー砲撃でアルカ・ノイズを凪ぎ払って行く。

 

「(私も戦える! この力さえあれば!)」

 

「黒い、ガングニール・・・・!」

 

戦うマリアの姿を、響は険しい顔で睨んでいた。

 

 

ー弦十郎sideー

 

「緒川さんとマリアさん、到着!」

 

「ガングニールでエンゲージ!」

 

「マリア君! 発光する攻撃部位こそが解剖機関! 気をつけて立ち回れ!!」

 

 

ーマリアsideー

 

弦十郎からの通信を聞いたマリアの見据える先にいたガリィはさらに『アルカ・ノイズの結晶体』を出してばら蒔き、アルカナ・ノイズを召喚した。

 

「♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪!!」

 

しかしマリアは負担に顔を僅かに歪ませながらも、アームドギアの突撃槍を振り回し、アルカ・ノイズを蹴散らしていく!

 

「想定外に次ぐ想定外。捨てておいたポンコツが、意外な位にやってくれる・・・・」

 

奮戦するマリアをガリィはニヤケながら見据えていた。

 

「♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪!!」

 

突撃槍のアームドギアをアルカ・ノイズの一体に向けて投げて貫き、徒手空拳でアルカナ・ノイズを炭化消滅させて、直ぐにアームズギアを回収して大立ち回りを繰り広げるマリア。

 

 

ー響sideー

 

「“私のガングニール”で、マリアさんが戦っている・・・・」

 

尻餅をついたままマリアを見る響の目には、僅かな憤懣があった。

 

 

ーマリアsideー

 

マリアは飛び上がり、アームドギアをガリィに向けて突き刺そうとするが・・・・。

 

ガキンッ! ビキビキビキビキビキビキ・・・・!

 

「あっ!?」

 

ガリィは向かってくる突撃槍を平然と『水のエレメントアームズ』で白刃取りのように止めると、マリアのアームドギアが凍りついていく。

 

「モニターで見ていなかったのですか? 私の『水のエレメントアームズ』は“水分”さえあれば、“空気中”だろうが“大地の中”だろうが“生物”だろうが凍てつかせる。空気中に存在するモノは皆“水分の中にいる”と言っても良いのです。そして私の籠手に触れた瞬間、氷結させる事ができる! 例えアームドギアであろうともね!!」

 

「くっ! それでも!!」

 

「おや!」

 

余裕の笑みを浮かべるガリィに険しい顔になるマリアは、表面が凍った突撃槍のアームドギアの表面の装甲を切り離し、ガリィの両腕を広げさせ、胴体をがら空きにさせた。

 

「フッ!」

 

空かさずマリアは装甲を外し小さくなった槍でガリィの胴体を突き刺すが。ガリィの胸元に、六角形の青い障壁が展開され防がれた。

 

「なっ!?」

 

「『エレメントアームズ』を封じれば勝てるとでも? 元々氷を操るこのガリィだからこそ、『水のエレメントアームズ』を与えられたのですよ」

 

徐々に六角形の青い障壁が広がりにガリィの身体を被う程の大きさとなり。

 

「はっ!」

 

「頭でも冷やしなーーーーーーーーーー!!!」

 

展開された障壁から氷が広がり、巨体の氷柱が伸びて、マリアに襲いくる!

 

「くっ!うぅっ!」

 

間一髪で後方に跳んで回避するマリアだが、LiNKER無しの適合の負担でスパークが走る。

 

「決めた、ガリィの相手はアンタよ」

 

「くぅぅ・・・・」

 

「いっただきまーーーーーーーーーーす!!」

 

ガリィは足元に氷の道を作り、ジグザグに移動しながら籠手から氷の剣を生み出し、マリアに突き刺そうとした!

 

「(ダメだ。もう、身体が・・・・!)」

 

LiNKER無しの負担で動けないマリアにガリィの氷刃が突き刺さる瞬間ーーーーー。

 

シュン・・・グワシャァァァァァァンンっっ!!

 

「何・・・・!?」

 

「あっ・・・・」

 

『っ!?』

 

「フッ・・・・」

 

突然“何か”がマリアのガリィの間を横切り、ガリィの氷刃を砕き、地面に突き刺さる。ガリィとマリアも意表をつかれ、響達と緒川も驚き、レグルスだけは何が起こったのか分かりニヤリと笑う。

 

「これは、まさか・・・・」

 

「そう、“薔薇”だよ」

 

「・・・・アルバフィカ!!」

 

ガリィは後方に飛び、地面に刺さったモノを睨み、レグルスが何が刺さったのか呟き、マリアは喜色の顔で薔薇が飛んで来た方を見る。

 

「危機一髪、だったなマリア・・・・」

 

ウェーブがかかった水色の長髪を靡かせ、黒いスキニーパンツに黒いワイシャツを着用し、美術品のように美しい顔立ちをした“絶世の美男子”と言っても過言ではない美丈夫。魚座<ピスケス>の黄金聖闘士 アルバフィカ。

 

「うわ~~、ビッキーから聞いてはいたけど、魚座の人って本当に超が付くほどの美形・・・・」

 

「少女漫画のアニメキャラみたい・・・・」

 

「とても綺麗な殿方ですね」

 

「三人共、アルバフィカさんは自分の顔の事を言われるの凄く嫌がるから本人の前では言わない方が良いよ」

 

翼やマリアで美形馴れしていたつもりが、初めて見るアルバフィカの絶世の美顔に見惚れる創世と弓美と詩織に、未来がやんわりと忠告した。

 

「さて、ガリィとやら。これ以上戦ると言うなら、私が相手になろうか?」

 

「・・・・ニィ!」

 

鉄をも噛み砕く黒薔薇『ピラニアンローズ』を構えるアルバフィカにガリィはギザギザの歯を剥き出して笑みを作りながら、『水のエレメントアームズ』を構える。しかしーーーーー。

 

《そこまでにすると良いガリィ・・・・》

 

『っ!!?』

 

突然戦場に声が響くとガリィの後ろの風景が歪み、その風景がひび割れ、黒い背広を着用した1人の男性が現れた。青い長髪に端正な顔立ち、佇まい全てに気品を感じるが、その眼差しは自信に溢れた高圧的であり、強者の風格と貫禄の力強さに満ちていた。

 

「あらあら、貴方様がわざわざおいでになることもないと思いますよ?」

 

「フフフフフ何、かつての仲間の顔が見たくてな。それにキャロルも彼を欲しているからな」

 

男性は負傷して緒川に肩を貸してもらっているレグルスとアルバフィカを一瞥する。

 

「「・・・・・・・・・・・・・・・・」」

 

レグルスも男性を静かに見据え、アルバフィカは敵意を込めて睨む。レグルスとアルバフィカの様子にマリアは突然現れた男が誰なのか察した。

 

「アルバフィカ、まさかあの男が?」

 

「あぁ、あの男が双子座、ジェミニの黄金聖闘士、聖域<サンクチュアリ>の最大の裏切り者、アスプロス!」

 

「この人がアスプロス、さん・・・・?」

 

「聖域<サンクチュアリ>を裏切った聖闘士?」

 

響と緒川、未来達も新たな黄金聖闘士に驚く。

 

「久しいなかつての同志達よ。レグルス、その負傷はガリィとの戦闘で受けたのか? ぬるま湯の学校生活で相当に鈍ったのではないか?」

 

「久しぶりだね、アスプロス。本当にキャロルの、協力者になったんだな?」

 

「あぁ、ところでその凍傷と負傷、ガリィの『水のエレメントアームズ』にやられたか? ほぉ! 聖衣を纏っていないとは言え、レグルスをこれほどまで追い込むとは! ガリィよ、『エレメントアームズ』を上手く扱っているようだな?」

 

「当然ですよ。このガリィちゃんと『水のエレメントアームズ』は相性抜群なんですから!」

 

自慢するように『水のエレメントアームズ』を見せながらガリィは自慢気に話すが、アスプロスは含み笑みを浮かべていた。

 

「しかし、黄金聖闘士を甘く見過ぎたな。『エレメントアームズ』を良く見てみろ」

 

「ん? なっ!?」

 

ビキビキビキビキ・・・・!!

 

『水のエレメントアームズ』を見たガリィの顔が驚愕する。『水のエレメントアームズ』の籠手にひびが走り、今にも籠手が砕けそうになっていた。

 

「あれは、レグルス・・・・?」

 

「そう、簡単に、防がれる程、黄金聖闘士の攻撃は、軽いモノじゃないよ・・・・」

 

「流石だな」

 

マリアがレグルスの方を振り向くと、レグルスはしてやったりと言わんばかりに笑みを浮かべる。

 

「こ、これは一体・・・・!」

 

「ガリィ、レグルスの手足を破壊する際、お前はどうした?」

 

「そ、それは勿論、右腕と左足に触れて氷結と沸騰の攻撃を・・・・」

 

「その時、レグルスの攻撃を受け止める形で触れたのだな?」

 

「は、はい」

 

「それが失敗だったな。我ら聖闘士が使うのは“破壊の究極”とも云える『小宇宙<コスモ>闘技法』。お前が不用意に受け止める事をすれば、その時の攻撃の衝撃で『水のエレメントアームズ』の強度が耐えられなかったのだ」

 

「!?」

 

ガリィはレグルスを凍傷させる際、攻撃したレグルスの右腕を受け止めた、レグルスが反撃する時に受け止めた左足を沸騰させた、その衝撃で『水のエレメントアームズ』が、少し触れれば砕けてしまいそうなほどの状態になっていた。

 

「まさか、私が獅子座<レオ>の攻撃を受け止めた時点で・・・・」

 

「そうだ。お前の『エレメントアームズ』はとうに破壊されていたのだ。流石は我ら黄金聖闘士の中でも『戦闘の天才』と言われたレグルスだ。それに、アルバフィカがこの場に来たと言う事は、直にエルシドとデジェル達、他の黄金聖闘士が来るだろう」

 

「チィッ!」

 

ガリィは苛立たし気に舌打ちをする。

 

「言った筈だ。その『エレメントアームズ』はまだ“未完成”だとな。当初の目的である“思い出集め”に、『エレメントアームズ』の性能テストも十分な成果を上げたのだ。これ以上は蛇足だぞ?」

 

「レイラちゃんとファラちゃんの獲物の二人が来るのですか。確かにそれは後々面倒になりそうですね。でも、せっかく面白くなってきたんですよ~」

 

「フッ、もう終わるのにか?」

 

「ん~~?」

 

アスプロスがマリアの方を見据え、ガリィも目線を追うと。

 

「っ! マリア!」

 

「ぐぅあっ!!」

 

マリアが纏っていたガングニールが砕け散った。

 

「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、ハァ・・・・」

 

四つん這いになり激しく息切れを起こすマリアの目と口から血が流れていた。

 

「LiNKER無しでの無理な適合によるバックファイアだ」

 

「あ~ぁ、せっかく面白くなりそうだったのにこの程度。何よこれ? マトモに歌えるヤツが1人もいないなんて! 聞いてないんだけど?!」

 

途端に不機嫌な様子のガリィはマリアと響に侮蔑の言葉を吐き捨てる。

 

「そうか、むしろ俺はマリア・カデンツァヴナ・イヴには素晴らしき戦士と称賛したいがな」

 

「何ですと?」

 

アスプロスは侮蔑の目にならずにマリアを見据える。

 

「マトモに戦える状態で無いにも関わらず、仲間の窮地に駆けつけ、自らの事を省みずここまでの“戦う意志と決意”を見せた。マリア・カデンツァヴナ・イヴよ、お前の“戦士としての覚悟”に俺は敬意を払おう!」

 

「・・・・!!」

 

侮蔑の眼差しではなく、マリアに敬意を持った目で称賛するアスプロスだが、マリアは敵意を持ってアスプロスを睨む。それをアスプロスは意に介さず、響の方を一瞥すると目を細め見下した眼差しを向けて言い放った。

 

「・・・・惨めで無様、だな」

 

「っ!?」

 

「ガリィ、最早この場に用は無い、帰還するぞ」

 

「くっそ面白くないっ!」

 

響には嘲弄の態度のアスプロスに響はショックを受けたような顔になり、アスプロスは響に微塵も興味無く、そのまま空間を歪めて穴を作りこの場を去り、ガリィも悪態を付きながらクリスタルを足元に叩きつけて転移魔法陣で転移した。

 

「逃げたか、いや正しくは見逃してくれたか・・・・」

 

「アスプロスと、アスプロスとキャロルが造った『エレメントアームズ』、驚異だね・・・・」

 

アルバフィカとレグルスも新たな驚異に苦言を漏らした。

 

 

ー弦十郎sideー

 

「“空間移動”、アレもまた錬金術の・・・・」

 

藤尭が呟くと同時に、モニターでバイクで急行したエルシドとデジェル、ジープで来たマニゴルドとカルディアが映し出され、司令室に翼やクリス、切歌と調、そしてエルフナインが入ってきた。

 

「現代に新型ノイズを完成させるとは、移送空間に干渉する技術を備えていると言う事です。そして“四大元素”を自由自在に操る『エレメントアームズ』、もうあそこまでの完成度になっていたとは・・・・」

 

「んな事より! みんな無事なのか!?」

 

「未来ちゃん達は無事だけど、レグルス君は右腕と左足を負傷、現在デジェルさんとエルシドさんとアルバフィカさんが小宇宙での治療を行っているわ。マリアさんがガングニールを纏って戦ってくれたわ」

 

「マリアがデスか!?」

 

「それってつまり、私達のように・・・・」

 

マリアが戦ったことに切歌は嬉しそうにするが、調は目を伏せた。

 

「シンフォギアからのバックファイアに、自分の身体を苛めながらか。ムチャをしてくれる・・・・」

 

モニターに映るマリアは、マニゴルドとカルディアに肩を貸されながら起き上がっていた。

 

 

ーマリアsideー

 

「オラマリア、シャンとしろ」

 

「ほれ、ハンカチ」

 

「え、えぇ・・・・」

 

マニゴルドからハンカチを貰い、顔の血を拭いたマリアは、マニゴルドとカルディアに手伝って貰いながら立ち上がり、ガングニールのシンフォギアクリスタルを見つめていた。

 

「(もしも私が、ガングニールを手離していなければ・・・・いや、それは“未練”だ・・・・)」

 

マニゴルドとカルディアに肩を貸して貰いながら響達の元に向かう。

 

「ケガは無い・・・・?」

 

「はいだけど、マリアさんが傷だらけで・・・・」

 

「歌って戦ってボロボロになって、大丈夫なんですか!?」

 

心配する創世と弓美や未来と詩織にマリアは大丈夫と言わんばかりに笑みを浮かべ、ガングニールのシンフォギアクリスタルを自分に背を向けている響に渡そうとする。

 

「君のガングニール・・・・」

 

「私のガングニールです!!!」

 

「響?!」

 

マリアが渡そうとしたガングニールを響は乱暴に奪った。

 

「これは! 誰かを助ける為に使う力! 私が貰った! 私のガングニールなんです!!」

 

まるで“大切な玩具を捕られた子供”のように喚く響に、黄金聖闘士達の眼差しが静かに冷たくなっていった。

 

「おい、何言ってんだよ、響・・・・!」

 

「レグルス・・・・?」

 

レグルスは片足で立ち上がると、響の胸ぐらを掴む。

 

「あっ!」

 

「“誰かを助ける為の力”だって、じゃさっきまでの体たらくは何だ!?」

 

「レ、レグルス君・・・・」

 

「ガングニールを起動できなくなって、“戦おうとすらしなかった響”が! “戦ってくれたマリア”に対して何だその態度は!?」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

今まで見せたことが無いほど怒り出したレグルスの剣幕に、マリアや未来達は黙り、聖闘士達は静かに見守り、響は愕然としていた。

 

「マリアが来なかったら未来はどうなっていた? 創世はどうなっていた? 弓美は? 詩織は? 危うく皆が殺されていたかも知れないんだぞ! “誰にも守って貰えない”って言うのは凄く怖いんだよ! 響は“守る事”ができるのに、“その為の力”を持っているのにぐぅっ!!」

 

響に詰め寄ろうとするレグルスだが、凍傷と沸騰の傷が悲鳴を上げ、響の胸ぐらを離し倒れそうになるが、エルシドとデジェルが支えた。

 

「レグルス、無理をするな」

 

「もうすぐ医療チームが来る」

 

「あぁゴメン・・・・」

 

デジェルとエルシドに支えられながら立ち上がるレグルスの響を見る目はどこか厳しい目だった。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

言われた響は悔しそうに顔を俯かせていた。

 

「良かったなガングニールよ」

 

「レグルスが動かなかったら俺らがひっぱたいていたぜ」

 

「・・・・・・・・ごめんなさい」

 

マニゴルドとカルディアは響を冷徹に見据え、響はマリアに対して一応申し訳無さそうに謝罪するが、その顔はまるで不貞腐れた顔をしていた。

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

マリアの記憶には以前の響との会話がよぎった。

 

【逃げているの?】

 

【逃げているつもりじゃありません! だけど、適合してガングニールを自分の力だと実感して以来、この“人助けの力”で誰かを傷つける事が、凄く嫌なんです・・・・】

 

「そうだ、ガングニールはお前の力だ! だから、目を背けるな!」

 

「目を、背ける・・・・」

 

「立花響、力を持つ者には、責任と覚悟を背負わなければならない。それが出来ないならば、君に“力”を持つ資格は無い・・・・!」

 

「っ! (アルバフィカさんに、レグルス君に、黄金聖闘士の皆には分からないよ。“怖いと思う弱い人の気持ち”だなんて・・・・!)」

 

冷淡に話すアルバフィカの言葉を響はただ、“黒い感情”を渦巻かせていた。

 

 

ーアスプロスsideー

 

キャロルの本拠地の玉座に転移したガリィ。キャロルはガリィを静かに睨む。

 

「ガリィ・・・・」

 

「そんな顔しないでくださいよ~。“録に歌えない”のと、“歌っても対した事無い相手”だったんですから~。あんな歌をむしりとった所で、役に立ちませんって」

 

「自分が造られた目的を忘れていないのならそれで良い。しかし、獅子座<レオ>の捕獲の失敗と試作品とは言え、『エレメントアームズ』の破損は反省しておけ」

 

「は~~い」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

気の抜けた返事をするガリィを一瞥すると、キャロルは響の言っていた言葉を思い出す。

 

【“人助けの力”で、戦うのはイヤだよ・・・・】

 

【お前も“人助けして殺されるクチ”なのかっ!?】

 

忌々しい綺麗事をほざく響にキャロルは不愉快な気持ちになる。

 

「だが次こそがアイツの歌を叩いて砕け。これ以上の遅延は“計画”が滞る」

 

「“レイラインの解放”、分かってますとも。ガリィにお任せです♪」

 

歪んだ顔からわざとらしく可愛く喋るガリィにキャロルは少し辟易したようなため息を漏らす。

 

「お前に戦闘特化のミカを付ける。良いな?」

 

「良いぞ!」

 

「そっちに行ってんじゃねぇや!!」

 

元気良く挨拶する赤く大きな縦ロールを結わえたオートスコアラー『ミカ・ジャウカーン』にガリィは口汚く叫ぶ。

 

「チィッ!(せめてあの時、ハズレ奏者<マリア>のギアが解除されなければ・・・・!)」

 

「ほぉ今度はミカも出るか?」

 

「アスプロス!」

 

暗がりの玉座の空間が歪み、ソコからアスプロスが現れると、キャロルは玉座から離れ、年相応の少女のような笑みを浮かべてアスプロスに抱きつき、アスプロスもキャロルを抱き止めて頭を優しく撫でた。

 

「(うぇ、マスターのあの変わり身には未だ馴れねぇ・・・・)」

 

ガリィはさっきまでと雰囲気が180度変わったキャロルにゲンナリとした顔色になった。

 

「アスプロス。ガリィが『水』を壊したと聞いたが大丈夫なのか?」

 

「問題無いな、しかしやはり最後の難問は“装甲の強度の問題”だな。いかに優れた力を持ってもそれに“耐えきる強度”が必要だ、それに今回のように攻撃の衝撃にも耐えられるようにしなければな」

 

「何とかなるか?」

 

「あぁ安心しろ、目処は立っている。しかしまだ実戦データが必要だな」

 

アスプロスはミカに向けて『赤いグリーブ』を出した。

 

「おぉ!」

 

「ミカよ、お前も使ってみると良い。『火のエレメントアームズ』をな」

 

アスプロスは不敵な笑みを浮かべた。

 

 

ー響sideー

 

そしてその夜、自室のベッドで未来と一緒に寝ようとした響は昼間の事で思い悩んでいた。

 

「眠れないの?」

 

「あっ、ゴメン。気を使わせちゃった・・・・」

 

「今日の事を考えてるんだよね?」

 

「・・・・戦えないんだ、歌を歌って、この手で誰かを傷つける事がとても恐くて、私の弱さが皆を危険に巻き込んだ、私がちゃんと戦えていたらレグルス君はあんな傷を負わずに済んだし、マリアさんが戦う事もなかった、なのに・・・・!」

 

自分の不甲斐なさに響は悔しそうに自分の拳を握るが、未来はその手をソッと優しく手を乗せる。

 

「私は知ってるよ。響の歌が、誰かを傷つける歌じゃ無い事を、レグルス君やみんなも分かってくれている筈だよ・・・・」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

「(響・・・・アスミタさん、私は響に何も出来なのかな?)」

 

響は未来と静かに眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー未来sideー

 

「あれ? 私、何で外にいるの?」

 

未来は不思議な世界にいた。自分は確か響と眠りついた筈なのに、いつの間にか外に出ていた。

 

しかも、そこは不思議な小道だった。空を見れば満天の夜空の星が宝石のように美しく煌めき、周りを見ると美しい花が咲き乱れた花畑、前に図鑑で読んだ事があり、“沙羅双樹の花”であると分かった。風が小さく吹くと花弁を少し飛び、沙羅双樹の花吹雪と星光りが映える幻想的な風景だった。

 

「あ、これって“夢”だ・・・・」

 

賢い未来はこれが“夢”であると見抜いて、少し小道を歩いていた。すると、沙羅双樹の小道の向こうに、2本並んだ木と、その木の中間に岩の台座をあった。

 

「・・・・・・・・??」

 

未来はその台座をジッと見ていると、一瞬目の前に沙羅双樹の花弁が横切ると、誰もいなかった台座に袈裟を纏った金色の長髪をした盲目の僧侶が座禅を組んで鎮座していた。

 

「あっ! アスミタさん!」

 

「小日向未来か・・・・」

 

そこにいたのは、『乙女座の黄金聖闘士 バルゴのアスミタ』だった。

 

「どうして私の夢に?」

 

「私は君の声が聴こえたから君の夢に干渉しただけだ」

 

「私の声?・・・・あっ!」

 

未来は眠りに付く寸前、アスミタに呼び掛けていた事を思い出していた。

 

「アスミタさん・・・・」

 

「・・・・またガングニールか?」

 

未来の沈んだ顔を見て、アスミタは「またか」と言わんばかりに肩をすくめる。

 

「はい・・・・」

 

「(全くあの半端者め。また些末な事で迷走しているのか・・・・)話して見たまえ小日向未来」

 

未来はアスミタの座る台座に向かい合うように座った。

 

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