聖姫絶唱セイントシンフォギア   作:BREAKERZ

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惑う剣

ー未来sideー

 

「ここは・・・・」

 

そこは美しい場所。沙羅双樹の花が地面一帯に咲き誇り、そよ風が吹くと花の花弁が空を舞い、雲一つ無い夜空の星達は宝石のように煌めき、空に舞う花弁と星の輝きが重なり、神秘的かつ幻想的な世界の一本道の真ん中に、リディアンの制服を着た未来は立っていた。

 

「(あ、これ夢の世界だ・・・・。と言う事は・・・・!)」

 

未来は一本道を走っていくと、二本の木が並ぶ野原の石の台座に、その人物はいた。

僧侶のような袈裟を着た金糸の長髪に、端麗な顔をした盲目の男性。

 

「アスミタさん!」

 

「・・・・小日向未来」

 

その名を『乙女座<ヴァルゴ>のアスミ』。

 

「アスミタさん、今大変な事が!」

 

「うむ、分かっている。どうやらかつての同士が暗躍を始めているようだな」

 

「アスミタさんは、来てくれないんですか?」

 

「・・・・少々気難しい者の説得に手を焼いている」

 

「気難しい人?」

 

「ウム、その者こそ、これからの事態に必要な人間だ」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

「小日向未来よ、ガングニールはまた『へいきへっちゃら』などとほざき、分かりやすい空元気を出しているのかね?」

 

「・・・・はい」

 

辛そうな未来の顔から、アスミタは響に対して「もういい加減にしてほしい」と言わんばかりに肩を竦める。

未来はポツリポツリとこれまでの事を話した。

 

「・・・・アヤツもとことん厄介な性分をしているものだ」

 

「でも、響の気持ちも少し分かるんです。響がお父さんを許せないって思うのも・・・・」

 

「(フン。父親の情けない姿を見て、父親を拒絶するか、人間や物事の“綺麗な部分”しか見ず、“汚い部分”は見て見ぬフリをしていたツケが、ようやっと来たと言った所だな・・・・)」

 

「このままじゃ響は・・・・」

 

「・・・・小日向未来よ」

 

「はい・・・・」

 

「誰しも、心には大きな傷や闇を抱えている。大抵の者はそれから目を背け逃げるか、その傷と闇に立ち向かおうとする。前者がガングニール、風鳴翼と雪音クリス。後者がマリア・カデンツァヴナ・イヴと月読調と暁切歌だ」

 

「翼さんとクリスも?」

 

「アヤツらも、自分の心と真に向き合わなければならないのだ。そして、ガングニールはこの試練を乗り越えなければならない。それが出来なければ・・・・」

 

「出来なければ・・・・」

 

「アヤツは、戦士どころか、装者失格だ。自らの掲げる“信念”ですら、“偽り”にしようとしているからなーーーーーー」

 

「えっ?・・・・・・・・」

 

そこで、未来は目を覚まし、ベッドを下りてカーテンを開けると、ちょうど朝日が世界を照らし始めていた。

 

 

 

 

ーキャロルsideー

 

「ぐぅっ!」

 

チフォージュ・シャトーにて。そこでは復活を果たしたキャロルが王座に座り、彼女はオートスコアラーに指示を出すため立ち上がるのだが、突然キャロルは苦しそうな顔を浮かべ、その場に膝をついてしまう。

 

「マスター?」

 

「最後の予備個体も不調ですか?」

 

「負荷を度外視した、『思い出の高速インストール』・・・・。さらに自分を殺した記憶が、拒絶反応を起こしているようだ」

 

「いかがなさいますか?」 

 

キャロルはファラの質問にそう答え、レイアはキャロルに尋ねるが、それに対しキャロルは宣言する。

 

「無論、まかり通る!! 歌女どもが揃っている、この瞬間を逃す訳にはいかぬのだ!!」

 

「マスター。アスプロス様は何処に?」

 

「アスプロスは、少し余興の準備に出た。ガリィとミカの修復も間もなく終わる。そして、あと一つの足りない物が有れば、完成する」

 

「ああ、やっと、完成する・・・・」

 

「我々オートスコアラーの鎧が・・・・」

 

キャロルの言葉に、ファラとレイアは待ちきれないと言わんばかりの笑みを浮かべ、キャロルも口の口角を上げていた。

 

 

 

 

ー響sideー

 

その頃、とある病院の病室にて、響は前回の戦いでの肉体へのダメージなどを調べるため、検査入院しており、今は未来が来て、彼女の着替えなどを手伝っているところだった。

 

「もぉ~、ただの検査入院なのに大騒ぎしすぎだよ」

 

「響のせいで大騒ぎしてるんでしょ?」

 

響の言葉に未来は呆れたように言い返す。

するとその時、響のスマホから着信が入り、彼女がスマホを取って画面を見るとそこには【お父さん】と名前が表示されていたのだが・・・・。

 

「・・・・・・・・・・・・検査、行かなきゃ」 

 

響は着信を拒否して切り、彼女は表情1つ変えようとせず、何時もの様子で、未来に心配させまいとしてか笑顔を見せて立ち上がる。

 

「響・・・・」

 

それに心配そうに響を見つめる未来だが・・・・。

 

「へーき・・・・「へっちゃらじゃない!!」・・・・」

 

響が無理に明るく振る舞おうとしているのを見据えてか、未来は響の言葉を遮るようにそう言い放ち、響は一瞬立ち止まる。しかし、それでも彼女はうっすらと口元に笑みを浮かべ、無理しているのが分かる笑顔を作る。

 

「未来がいる、みんなもいる! だからお父さんがいなくたってへっちゃら!!」

 

響は未来にそう言い残して病室を立ち去り、検査のある部屋へと向かうのだった。

が、途中で手足の検査に来ていたレグルスと付き添いのデジェルとすれ違う。

 

「デジェルさん。・・・・レグルスくんの検査ですか?」

 

「あぁ、連れてこないとレグルスは絶対来ないのでね」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

レグルスと響は無言ですれ違い、レグルスがポツリと呟く。

 

「少しは周りの事とか、気にかけたらどうだ?」

 

「・・・・レグルスくんには、関係ないでしょ」

 

明らかに喧嘩腰の響にレグルスはそれ以上言わず、そのままレグルスと別れた。

 

 

ー洸sideー

 

「響・・・・」

 

とあるファミレスにいる響の父親・洸は、娘の携帯に連絡したが、着信を拒否され、険しい顔色を浮かべ、向かい側に座る背広にメガネを掛けた男性が話しかける。

 

「いかがでしたか?」

 

「拒否されました・・・・。あの、本当なのですか? 私の娘が、あの野蛮な少年に、騙されていると・・・・?」

 

「ええ、私が調べた結果、響さんは同じクラスの生徒である、レグルス・L・獅子堂くんと懇意な関係なのですが、彼は色々と不穏なウワサの絶えない生徒でして、彼と一緒にいる響さんもそれに付き合わせて、よからぬ連中と関わっているらしいんです」

 

「響が・・・・! あのクソガキ! 響をたぶらかしやがって・・・・!!」

 

洸は初対面でいきなり自分の頬を殴り、この間は自分の胸ぐらを掴んだレグルスに対して、怒りを滲ませた。

それを見て、背広の男性は一瞬、ニヤリと笑みを浮かべると、すぐに顔を真剣かつ善意ある顔で洸に切り出す。

 

「このままでは娘さんにも悪影響を及ぼします。私どもに協力していただけますか?」

 

「もちろんです! 私がもう一度響と家族に戻るのに、あの野蛮者が響に悪影響となるなら、私にも協力させてください!」

 

洸は、『響の学校教員』と名乗った人物に頭を下げて懇願する。

 

「“アスプロス先生”!!」

 

「ええ、もちろんですとも・・・・(フフフ、単純な男だ)」

 

アスプロスは笑みを浮かべながら洸に手を出すと、洸はその手をとって握手した。アスプロスの内心の嘲笑にまるで気づかず・・・・。

そして、洸と別れたアスプロス先生は、人気の無い場所に移動し、空間に穴を開けて姿を消したーーー。

 

 

ーエルシドsideー

 

その頃、エルシドと翼とマリアと緒川は、とある日本家屋に車でやって来た。

 

「ここが・・・・?」

 

「風鳴八紘邸。翼さんの生家です」

 

「何年ぶりに帰って来たんだ翼?」

 

「・・・・10年だ。まさか、こんな形で帰ってくるとは思わなかった・・・・」

 

 

 

~数時間前~

 

 

 

レグルスとデジェルがS.O.N.G.本部に戻ると、そこには現在集められるメンバーが、司令室に来るように指示を受け、一同が集まる。

先日帰還したマニゴルドはサボろうとしていたが、同じくサボろうとしていたカルディアと共に、腰に縄をくくりつけられ、その縄の先を切歌と調がそれぞれ握っていた。

 

「検索結果、出します」

 

オートスコアラーの狙いを探るために友里がモニターにある画面を映し出す。

 

「これは・・・・?」

 

「電力の優先供給地点になります」

 

「こんなにあるデスか!?」 

 

レグルスの質問に藤尭が答えて、その画面を見て切歌は驚きの声を上げた。

 

「その中でも一際目立っているのが・・・・」

 

「『深淵の竜宮』・・・・」

 

調と弦十郎が、画面を見ながらそう呟く。そこは異端技術に関連した危険物や未解析品を封印した絶対禁区であり、 秘匿レベルの高さから、S.O.N.G.にも詳細な情報が伏せられている、拠点中の拠点である。

 

「オートスコアラーがその拠点を割り出していたとなると・・・・」

 

「狙いはそこにある危険物!!」

 

恐らくオートスコアラーはほぼ間違いなくそこを狙って現れるであろうと翼とマリアは推論する。

 

「だったら話は簡単だ!! 先回りして迎い撃つだけのこと!!」

 

「浮かれるなクリス。こういう状況こそ、慎重かつ冷静に対応するのだ」

 

相手が何を狙っているのかが分かれば迎え撃って出れば良いと考え、いきり立つクリスだったが、デジェルに諌められ、大人しくなる。

 

「だが、襲撃予測地点はもう1つある」

 

弦十郎があおいに指示をしてそのもう1つの襲撃された地点の場所をモニターに映すとそこに映ったのは、翼にとって、よく知る場所であり、それに彼女は驚きの声をあげる。

 

「ここって!?」

 

そこに映し出されていたのは『風鳴八紘邸』。

つまりは、翼の生家だった。

 

「気になる出来事があったので調査部で独自に動いてみました。報告によると事故や事件による神社や祠の損壊が頻発していまして・・・・」

 

それらの出来事はほぼ間違いなくオートスコアラーによる犯行と思われ、その報告を聞いてデジェルはそんなことをするオートスコラー達に対して思案顔を浮かべた。

 

「緒川殿。今までオートスコアラーによって破壊された神社・仏閣には、何か共通点がありましたか?」

 

「ええ、とても気になる共通点がありました・・・・。これまで破壊された神社には、いずれも明治政府の帝都構想で、霊的防衛機能を支えていた龍脈、『レイライン』のコントロールを担っていた要所になります」

 

「“錬金術”と“レイライン”、敵の計画の一環と見て間違いないだろう」

 

「風鳴の屋敷には要石もある、狙われる道理はあるというわけか・・・・」

 

弦十郎と翼がそれぞれそう口にし、弦十郎は、検査入院している響が欠けてしまってはいるが、打って出る好機かもしれないと考え、彼はエルフナインに視線を映すと、エルフナインはそんな弦十郎の考えに同意するように頷く。

 

「キャロルの怨念を、止めてください」

 

真剣な眼差しでレグルスとエルシド、デジェルとマニゴルドとカルディア、マリアと翼、クリスと切歌と調にそう頼むと、一同はエルフナインに力強く頷いた。が、翼は少し浮かない顔をしていた。

 

「よし、チームを編成するぞ!!」

 

弦十郎により『八紘邸』には、緒川、エルシドとマリア、そして翼が行くことになる。

『深淵の竜宮』には、マニゴルドとカルディア、クリスとデジェル、切歌と調が向かい、レグルスは他の場所で現れる可能性を考慮して、遊撃要員として基地に残ることになるのだった。

 

 

ーエルシドsideー

 

「了解しました。クリスさん達も、間もなく『深淵の竜宮』に到着するそうです」

 

早速屋敷の中へと入り、エルシド達はその屋敷にある今回守る物、巨大な要石を発見した。

 

「翼さん・・・・」

 

「っお父様・・・・!」

 

するとそこへ翼の父である『風鳴八紘』がSPである黒服の男性達と一緒に現れた。

 

「ご苦労だったな、慎司。久しぶりだな、エルシド」

 

八紘は緒川とエルシドに労いの言葉をかける。

 

「それにS.O.N.G.に編入された君たちの活躍も聞いている」

 

「あっ、はい」

 

「(ペコッ)」

 

八紘の言葉にマリア少し戸惑いながらも答え、エルシドは会釈する。

 

「アーネンエルベの神秘学部門より、アルカノイズに関する報告書も届いている。あとで開示させよう」

 

「はい」

 

「お父様!!」

 

八紘は緒川に対してそれだけを言い残すと、八紘はその場を立ち去ろうとし、それを見て翼はハッとなって八絋に声をかける。

 

「・・・・っ、沙汰もなく、申し訳ありませんでした」

 

翼はあまり八紘に連絡などを入れられなかったことを謝罪する。しかし・・・・。

 

「お前が居なくとも風鳴の家に揺るぎはない。務めを果たし次第、戦場に戻るがいいだろう」

 

翼に対して少し冷たい印象を与えるような言い方をする八紘。

 

「待ちなさい!」

 

そんな彼に対し、マリアは八紘の言い方に腹を立て、また立ち去ろうとする八紘を呼び止める。

 

「あなた翼のパパさんなんでしょ!? だったらもっと他に・・・・!!」

 

「マリア!! いいんだ・・・・!」

 

「翼! でも・・・・!」

 

「いいんだ・・・・!」

 

八紘に対し文句の1つでも言ってやろうと思ったマリアだったが、翼に必死に止められ、マリアは黙り込み、そんな彼女等の一部始終を黙って見ていたエルシドは小さな溜め息を吐いた。

 

「(全く、どこもかしこも親父とのいざこざ抱えてやいるものだな・・・・だが、今はそれよりも)・・・・そこにいるのは分かってる」

 

「っ!」

 

エルシドは斬撃を飛ばし、緒川はも拳銃を取り出して、ある方向へと弾丸を放つとそれらを光学迷彩で姿を消していたファラが自分の周囲に緑の竜巻を起こし弾丸を弾いて登場。 

 

「野暮ね? 親子水入らずを邪魔するつもりなんてなかったのに・・・・」

 

「あの時のオートスコアラー!!」

 

「レイラインの解放。やらせていただきますわ」

 

「やはり狙いは要石か!!?」

 

ファラの姿を見て翼は驚きの声をあげ、ファラは要石を壊してレイラインの解放を宣言し、それを聞いてマリアは声をあげる。

 

「ダンス・マカブル!」

 

ファラがアルカ・ノイズの結晶体を地面に叩きつけると、そこからアルカ・ノイズが顕現した。

 

「ああ! 付き合ってやるとも!!」

 

翼とマリアはシンフォギアクリスタルのペンダントを外して聖詠を歌い、それぞれ、『天羽々斬』と『アガートラーム』を纏った!

 

翼はアームドギアの剣で迫り来るアルカ・ノイズを斬り伏せ。

マリアは籠手から短剣を取りだし、次々と投げつけ、次に蛇腹剣を鞭のように振り回し、アルカ・ノイズを切り裂く。

 

「ここは私が! エルシド! お父様を頼む」

 

「ああ」

 

「務めを果たせ」

 

エルシドは八紘とSPを連れて退避するが、翼は一瞬顔を曇らせたが、すぐに引き締め、アルカ・ノイズを斬り裂く!

 

「さあ、捕まえてご覧なさい!」

 

 

ファラは足下に緑色の竜巻を起こして空中に浮かび上がり、翼に向かって行くがファラは空を舞いながらそれを回避する。

翼はファラに向かって、アームドギアを大剣に変形させて振るい、巨大な青いエネルギーの斬撃を放った。

 

『蒼ノ一閃』

 

だが、ファラが武器である剣、『ソードブレイカー』を振るって緑の斬撃を放ち相殺した!

翼は空中に跳び、投擲したアームドギアを巨大な刃に変形させ、その後部を蹴り込んで切先で敵に突貫する!

 

『天ノ逆鱗』

 

「フフ、なにかしら?」

 

しかし、ファラはそれを切っ先で受け止めると、『ソードブレイカー』が突如として赤く光りーーーーーー。

 

「なに!?」

 

巨大化した翼のアームドギアが、徐々に錆び付いていく。

 

「(剣が・・・・砕かれていく!?)」

 

次の瞬間、翼のアームドギアは粉々に砕け散り、その際に発生した衝撃により、翼は吹き飛ばされる!

 

「うわああああああっ!!??」

 

吹き飛ばされた翼は地面に激突し、気を失ってしまった。

 

「翼!!?」

 

「私の『ソードブレイカー』は、“剣と定義されるもの”であれば高度も強度も問わずに噛み砕く哲学兵装。さぁ、いかがいたしますか?」

 

「強化型シンフォギアでも、叶わないのか・・・・!」

 

ファラは余裕の笑みを浮かべながら『ソードブレイカー』を構え。

また、それを見た緒川は驚きの表情を浮かべていた。

 

 

「たあああああああああっ!!」

 

「無駄よ」

 

今度はマリアが複数の短剣のアームドギアをファラに投げつけるのだが、ファラの放つ風の斬撃によりマリアのアームドギアも、“剣”であるためあっさり砕かれ、そのまま真っ直ぐに斬撃はマリアに向かって行く。

 

「なっ!・・・・!」 

 

それにマリアは慌てて回避するのだが。

 

グワアアアアアアアアアアアアアアンンンッ!!

 

斬撃は彼女の背後にあった要石に直撃し、要石は粉々にに破壊されてしまうのだった。

 

「あら? 『アガートラーム』も剣と定義されていたかしら?」

 

「哲学兵装・・・・。概念を干渉する呪いやゲッシュに近いのか?」

 

「ウッフフフフ♪ ごめんなさい、あなたの歌には興味がないの。それに、私の『ソードブレイカー』の“天敵”とも言えるお方が、彼処で睨んでいますしね」

 

ファラが目を向けると、そこにはエルシドが屋根の上から睨んでいた。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

「私の『ソードブレイカー』は、“人体を剣と定義していない”。ゆえに、手刀で戦う山羊座<カプリコーン>は唯一の天敵と言えます」

 

するとファラは緑色の竜巻に身を包み込む。

 

「剣ちゃんに伝えてくれる? 目が覚めたら改めてあなたの歌を聴きにうかがいます」

 

ファラはそれだけを言い残すとその場から消え去るのだった。

 

「くぅっ・・・・!」

 

惨敗したような気持ちのマリアは歯噛みし、エルシドは静かに翼を見据えていた。

 

 

ー弦十郎sideー

 

それから緒川は、S.O.N.G.本部にいる弦十郎に要石の防衛に失敗してしまったことを報した。

 

《要石の防衛に失敗しました。申し訳ありません・・・・》

 

「二点を同時に責められるとはな・・・・・・」

 

《二点? まさか!》

 

「あぁ、『深淵の竜宮』にも侵入者だ!セキュリティが奴等を補足している!」

 

『深淵の竜宮』の監視カメラを通し、弦十郎達は、キャロルとアスプロスとレイアの三人が侵入し、建物の奥へと入って行く姿を確認した。

 

「キャロル・・・・!」

 

あの時死んだと思われたキャロルが生きていることに、エルフナインを始め、一同は驚きを隠せないでいた。

 

「くっ! 閻魔様に土下座して蘇ったのか?」

 

「アイツ土下座するようなタイプじゃねえだろうが」

 

「おそらく例の錬金術で甦ったのだろう」

 

「奴らの策に乗るのは小癪だが、見過ごす訳にも行くまい・・・・! デジェルは、クリスくん達の一緒に向かってくれ」

 

クリスの言葉にカルディアとデジェル応え、弦十郎が指示を飛ばす。

 

「了解しました。マニゴルド、カルディア、不本意だろうが従ってもらうぞ」

 

「へいへい」

 

「その代わり、アスプロスと交戦するようになったらお前達に戦らせてやる」

 

「そうこなくっちゃな!」

 

デジェルの言葉に、マニゴルドとカルディアは好戦的な笑みを浮かべる。

そして、レイアの射出したコインが、映像を砕いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー???ー

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

その人物は、まるで古代ローマの遺跡のような場所で、石の台座に座り、瞑想眠っているかのように目を閉じていたが、ふと、その人物が目を開くと、1人の少女が目の前にいた。

 

『ここにいたのかよ・・・・?』

 

白いドレスのようなローブを纏った、“燃えるように赤い髪をした少女”は、少し肩を竦めながら、その人物に話しかける。少し顔を上げて、その人物は少女を見据える。

 

「ーーーーーーーーー」

 

『あぁ、ずっと探してたんだ。・・・・まったく、こんなところで寝てたのかよ。几帳面で真面目なお前が寝坊だなんてらしくもない』

 

「ーーーーーーーーー」

 

『お前の甥っ子や、仲間達が大勢やって来たんだぜ。私の後輩達も出てきてさ・・・・』

 

「ーーーーーーーーー」

 

「うん、私はもう、お前と一緒に風を感じられない。・・・・悪いな、こんな身勝手な女でさ・・・・」

 

「ーーーーーーーーー」 

 

『私も後悔なんてしてないさ。後を託せる奴らがいっぱい出来たんだからな』

 

「ーーーーーーーーー」

 

『へへへへ、どうやら私は、“男を見る目”は有ったみたいだな。・・・・それじゃ、ちょっと先に逝ってるぜ。いつか会おう・・・・先の未来でさ・・・・』

 

そう言って、立ち去ろうとする少女。

 

「っ・・・・!」

 

しかし、台座に座っていた人物は立ち上がり、その少女を背中から抱きしめ、少女も立ち止まり、自分を抱きしめる人物の手を握り、その瞳に一筋の涙を流す・・・・。

 

『ホント、ゴメンな・・・・! 置いていかれる辛さは、私が一番良く知ってるのに・・・・! 私は、よりにもよって、お前にそれをしちまうだなんてさ・・・・!』

 

「ーーーーーー! ーーーーーーーー!!」

 

『私も、愛してる・・・・! 世界で一番・・・・! 誰よりも・・・・! 愛してるぞ・・・・!!』

 

「ーーーーーーーーー!!」

 

『私だって! 本当は逝きたくない! お前と一緒にいたい・・・・! でも、私はいるから・・・・! 風になって、お前の傍に、いるから・・・・!!』

 

「・・・・・・・・・・・・奏!!!」

 

その少女、『天羽奏』を抱きしめていた人物が奏の名前を呼ぶと、その世界が光に包まれたーーーーーー。

 

「・・・・っ!」

 

その人物が目を覚ますと、目の前に煮えたぎるマグマと、その中にある岩石の上に横たわっていた。

 

「ーーーーーー?」

 

「君が眠りについて、3年の月日が経ったぞ」

 

「っ!?」

 

「さて、彼も目を覚ましたのだ。君も動く気になったかね?」

 

「・・・・・・・・」

 

金髪の僧侶、アスミタが、“3年も眠っていた男性”から、“マグマの中に座っている人物”に、目を向けた。

 

「君の“兄上”が暗躍を始めた。もはや無関係は気取れぬぞ。・・・・・・・・“デフテロス”!」




八紘って、やはり翼の父親なんだなって思います。
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