これからもよろしくお願いします!
・・・・・夜、もう子供は夢の中に、親たちも床に就いているであろう深夜。一人の男がその闇の中を一心不乱に駆け抜けていた。
「・・・ッ・・・ハァハァハァ・・・まいたか?」
男は物陰に潜み、あたりを窺う。
まるで何者かに追われているかのように。
・・・ガリガリッ・・・ガリッ・・・
遠くから引きずる音が聞こえる。
そう、まるで金属を引いているように高く、重たいものを引いているかのように鈍い音が。
・・・・・ガリガリッ・・ガリガリッ・・ガリガリガリッ・・・ガリッ。
突如、引きずる音が止まる、・・・男を探しているようだ。
だが、男から姿は見えない。それほど遠くにいるのだ男と『ヤツ』との距離は。
・・・・・そうだ・・・そのはずだ。あいつから俺は見えていない!俺は助かるんだ!
男は考える。男は思う。まるで自分に言い聞かせるように・・・
・・・・・・・・・・。
世界に静寂が走る。
男の耳には何も聞こえていない。
・・・『ヤツ』は動かない。
男の額に汗がにじむ。額を伝い、頬を伝い、顎まで降り、そして地面へと・・・
・・・っ・・・ガリガリ・・・ガリガリガリ・・・ガリガリガリガリッ・・・
汗が地に落ちた時、突如『ヤツ』は動き出す。
まるで滴る汗の音に気づいたかの如く、ようやく探し物を見つけたかの如く、男めがけて一直線に。
ガリガリガリガリッ・・・ガリガリガリッ・・・
近づいてくる。
音が大きくなる。
引きずる音が早くなる。
「クソッ、クソッ!まだ死にたくねぇ!!」
男は物陰から飛び出し、走り抜ける。
振り向くと今度は、『ヤツ』の姿がハッキリと見える。
ヤツの手にある大斧、音の発信源はここからだ。血濡れてドス黒く変色し、ところどころ錆び付いている大斧。それは幾人もの罪人を断罪してきたかのようなギロチンを思わせる程大きく、無骨なものだった。
顔は見えない。
暗くて見えないのではなく、麻のような袋をかぶり顔全体を覆っている体長2mはゆうにあると思われる大男。その姿はまるで処刑人を思わせる。
「っ、たっ助けっ!」
しかし、男の声は誰の耳にも入らない。誰もいないのだ、男とヤツ以外には。
急に男のスピードが落ちはじめた。何時間も走り続けたためだろう、体は疲れきり、精神は衰弱し・・・
ガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリッ!!
近づいてくる近づいてくる近づいてくる近づいてくる近づいてくる近づいてくる近づいてくる近づいてくる近づいてくる近づいてくる近づいてくる近づいてくる近づいてくる近づいてくる近づいてくる近づいてくる近づいてくる近づいてくる近づいてくる近づいてくる近づいてくる近づいてくる近づいてくる近づいてくる近づいてくる近づいてくる近づいてくる近づいてくる近づいてくる近づいてくる近づいてくる近づいてくる近づいてくる近づいてくる近づいてくる近づいてくる近づいてくる
「ウッヴワァァァァァ!!」
男は銃を構え、放つ。弾は命中し土煙が巻き起こった。
「やったか!?」
男は声を上げる。これで終わってくれ、ここで終わってくれと祈るように。
・・・だが、現実はそうはいかなかった。当たったはずだ、直撃したはずだ。普通ならば掠っただけでも傷を負い、通常ならば直撃すれば重傷になるはずだ。
しかし相手は普通ではなかった。
男の思う通常とはかけ離れていた。
・・・ガリガリッ・・・ガリガリッ・・・
まただ、また聞こえる。大斧を引きずる音が、己を死に誘うあの音が。
「・・・ハハッ・・ハハハハハハハハハハハハハハハハハハ」
男は狂ったように笑い座り込む。もう体力は残っていない。武器は効かない。
男の目には絶望しか残っていない。
近づいてくる。でかく長い大斧を持つ手が動く。
・・・既に振り下ろせば届く位置にいる。
男の前で動きを止め、初めて『ヤツ』は口を開いた。
「・・・・・強盗の容疑で逮捕する・・・
・・・銃の出処も聞かせてもらおう。」
・・・・・その声はとても低く、そして地を這うような声だった。
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