「……犯人を確保した……そちらへ向かう。」
「了解した。バリアジャケットを解除した後合流地点に迎えをよこす。場所は・・・だ。
いいか、絶対にバリアジャケットは解除してから来い。絶対だ。」
「……了解。」
…………ハァ。
私は通信を切りため息をつく。
通信の相手は八雲二等陸佐。
魔力ランクはBとそれほど高いわけではない上、
魔道士には必須といっていい飛行魔法と射撃魔法が使えない。
そんな八雲が、今や検挙率は管理局の中でも五本の指に入るほどとなっている。
主な要因はアイツのバリアジャケットとデバイスだろう。
頭には麻の袋のようなものをかぶり、まるで処刑人を思わせるバリアジャケット。
手にはギロチンのような大斧型デバイス。
魔力のほとんどを身体強化に当てているせいで、魔法はおろか、実弾さえも効かない。
魔力主義社会の現代において、魔法をものともせず悠然と向かってくるのは恐怖だ。
その上、あいつの得意魔法『五感強化』のおかげで、どこに隠れていようが必ず発見される。
そんなのが夜中に追ってくるのだ、気が狂ってもおかしくはない。
現にアイツが逮捕した奴らの半数近くが精神的にやられている。
ほかのやつらは釈放されたのち、別人のごとく真面目に働いているという。
しかし1割は……
「……中将!……レジアス中将!!」
「うるさいぞ!!何だ!」
「緊急事態です!
不審者を発見、凶器を所持しています!至急応援を!」
突然聞こえてきたのは、迎えにやった隊員の冷静を失った声。
彼の声色は恐ろしいものを見たように震えている。
……まさか?
「おい……八雲……アイツはどうした?」
「八雲二等陸佐?
……まさか、あの斧を引きずってるのが二佐なんですか!?
局員があんな姿してんですか!?」
…………あぁ、見てしまったのか。
……あのバカ、だからあれほど解除しておけといったのに。
局員の様子を見て、なんとなく察しはついていたのだが、八雲のあの姿を見てしまったらしい。確かにあれは夜中に見ていいものではない。だからこそ、犯人逮捕には有効なのだが……
…………………………。
「…………とりあえずバリアジャケットを解除させた後こっちに寄こせ」
「えっ!ちょ!!……中しょ」 ブツンッ!
…………ハァ。
私は二度目のため息を吐いた。
…………わかっている。バリアジャケットはもう解いているのだ。
二佐が転移魔法を使えないのは、中将から聞いているので、
私の魔法陣の中に入るのも分かる。
だが、……それでも、
俺の背後に立たないでください…………。