ドラえもん のび太と仮想世界   作:断空我

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オリジナル展開へ突入していきます。


11:歪んだ世界

「キリト君!大丈夫!?」

 

「アスナ……麻痺が解除されたんだな?」

振り返ると涙目のアスナが自分を見ていた。

 

「心配かけて!今度、あんな無茶をしたら許さないからね!」

 

「ごめん」

 

ヒースクリフが倒されたことで麻痺が解除されたのだろう。

 

倒れていたメンバーがぞろぞろと立ち上がる。

 

「ノビタニアン~?大丈夫?」

 

「うん、ありがとう」

 

ユウキがノビタニアンへ手を差し伸べる。

 

「もう!ずるいよ!キリトもノビタニアンも!」

 

「ユウキ、そういう話じゃねぇと思うぞ?」

 

二人の傍へエギルがやってくる。

 

「まったく、とんでもねぇ無茶をやりやがって」

 

「あはは、すいません」

 

苦笑するノビタニアンの頭をエギルはなでる。

 

「ま、よくやったな」

 

「お、おいおいおい!キリの字!とんでもねぇじゃねぇか!」

 

クラインが興奮した様子でキリトへ駆け寄ってくる。

 

「クライン……」

 

「とにかくよぉ、これでログアウトできるわけだよなぁ!」

 

「……そのはずだ」

 

しかし、いつまで経ってもログアウトされる様子がなかった。

 

次第に攻略組の中で不安が広がり始める。

 

「どうなっているんだ?」

 

茅場晶彦の言葉通りなら自分たちはログアウトできるはず。

 

それが起きないのはなぜか?

 

「キリト、どうする?」

 

「このままここにいても仕方ない……次の層へ向かおう」

 

「やっぱ、そうするしかねぇよな」

 

クラインがやれやれといいながらキリト達は次の層への階段を歩み始める。

 

「あ、そうだ、ノビタニアン、これ」

 

キリトは手の中にある“シルバーナイツ”をノビタニアンへ渡す。

 

「ありがとう……折れちゃったね。ダークリパルサー」

 

「ノビタニアンの盾も……次の層で補充しないとな」

 

「そういえば、あれのこと、聞けなかった」

 

「あぁ」

 

 ノビタニアンの言葉でキリトは思い出す。

 

 

 戦う直前、ヒースクリフは“ネコ型ロボット”という単語を放った。

 

 この世界においてそれを知っているものはキリトとノビタニアンの二人だけのはず。

 

 二人の頭に浮かんだのは青い彼のこと。

 

 もう会えない筈の存在をヒースクリフは、茅場晶彦はどうして知っていたのか。

 

 その謎を残しながらキリト達は七十六層へ到達する。

 

「うわぁ~!」

 

 次の層へ到着して広がる景色にユウキが驚きの声を上げる。

 

 緑が豊かな階層だ。

 

 青く広がる空に優しい風が彼らの頬を撫でる。

 

「これが第七十六層」

 

 第七十六層アークソフィアへキリト達は到着する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「キリの字。第七十六層のアクティベート完了したぜ!」

 

「ありがとう、クライン」

 

 街で装備などを整えて彼らが中央の転移エリアへ戻るとアクティベートを終えたクラインが待っていた。

 

「ごめんなさい、クラインさん」

 

「ただなぁ、ちょっと問題が発生してんだよ」

 

「問題?」

 

「ま、とにかく、どこでもいいから下層へ転移してみろよ」

 

「じゃあ、僕がやってみるよ」

 

 ノビタニアンが転移門の前に立つ。

 

 階層を選んで転移する。

 

 光に包まれてノビタニアンが消えた。

 

 ―と思うと光が現れてノビタニアンが姿を見せる。

 

「……あれ?」

 

 周りを見てアークソフィアにいることに気付いてノビタニアンは困惑した。

 

「どうゆうこと?」

 

「クライン、これは」

 

「それがよぉ。どういうわけか七十六層より下の階層へ転移できねぇんだよ」

 

「……そんな!」

 

「とにかく、何度か試していて、他の階層にいる連中に頼んで上がってこないように注意を促しているんだ」

 

「そうね、レベルの低い人がここへきて戻れなくなったら大変だね。リズに」

 

 その時、キリト達の前で光が現れたと思うと女性プレイヤーが現れる。

 

「あ、キリト、アスナ!ついでに二人も」

 

「リズ!?どうしてここに!!」

 

「どうしてって、ボス討伐でとんでもないことが起こったって聞いてね。アンタ達のことが心配になってやってきたのよ……」

 

「あ、あのリズ」

 

「それにしても、アンタ達、見たところ武器も大分、消耗しているみたいね~、任せなさい。鍛冶職人である私がしっかりメンテしてあげるからとりあえず武具店の方まで」

 

「あのさ、リズ、大事な話があるんだ」

 

「へ?何よ」

 

「実はね、今、システムに何か問題が――」

 

 バシュと転移門から新たにやって来るプレイヤー。

 

「ぶはっ!?」

 

 光が消えると同時に青い影がノビタニアンへとびかかった。

 

「ぴ、ピナ!駄目だよ!!」

 

 飛び出してきたのは深紅のようなドレスの装備を纏った少女。

 

「あれ~、キミって、シリカ?」

 

「ゆ、ユウキさん!?キリトさんも!お久しぶりです」

 

「ブハッ!シリカちゃん、久しぶりだね……もしかして、このフェザーリドラがピナ?」

 

「キュルルルル」

 

 ノビタニアンの腕の中にいるフェザードラゴン、ピナは嬉しそうにノビタニアンの顔をなめる。

 

「ピナ!もう……ノビタニアンさん、ごめんなさい」

 

「ううん、大丈夫。それにしてもシリカも、もしかして心配になって?」

 

「はい!ノビタニアンさん達に何か起こっているんじゃないかって不安になって落ち着かなくなって……」

 

「この子も、ね」

 

 アスナが神妙な表情で二人へ呼びかける。

 

「あの、リズ……それとシリカちゃん。大事な話があるの」

 

「どうしたのよ?さっきも何か言おうとしていたけれど」

 

「はい?」

 

「実はね……」

 

 アスナが転移門について説明する。

 

「嘘ぉ!?店へ戻れないの!!」

 

「そんな、私……どうしたら」

 

「大丈夫。僕達が手助けするから!」

 

「ノビタニアンさん……」

 

 ノビタニアンの言葉でシリカは安堵の表情を浮かべる。

 

「むぅ……ボクもいるからね!!」

 

 ノビタニアンを半ば突き飛ばすようにしてユウキが言う。

 

「そうだな、この層のフィールドに出ずに安全圏でクエストを受けてレベルの底上げをすればなんとかなるだろう

 

「キリト君!なにか光っているよ!?」

 

「なっ!?」

 

 驚くキリトの前で小さな光が起こるとそれは人の形となる。

 

 白いワンピースに腰まで届く黒い髪。

 

「パパ!!」

 

「ゆ、ユイ!?」

 

「ユイちゃん!?」

 

 現れたのは黒髪の小さな少女、ユイ。

 

 少し前まで一緒に生活していた少女だ。

 

「また会えてうれしいよ!ユイちゃん!」

 

「はい!」

 

「でも、どうして、会えたんだ?」

 

「実は……カーディナルが現在、問題を抱えていて、システムの何割かに膨大な負荷がかかっているようで、私もこの世界で活動できるようになったんです」

 

「そうなんだ!嬉しいよ!またユイちゃんと一緒にいられるんだね!」

 

「はい!パパ!ママ!」

 

「あのぉ」

 

 申し訳なさそうに三人へ割り込んだのはノビタニアンだ。

 

「申し訳ないんだけど。そこの方たちが目の前の事態に困惑しているので説明よろしく」

 

「え?」

 

「は?」

 

 キリトとアスナが振り返ると顔を真っ赤にしているシリカと面白いものを見つけたようなリズベットの姿があった。

 

「僕達はエギルが購入した宿へいっているから~」

 

「頑張って~~!」

 

 ひらひらと二人は手を振ってその場から離脱する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よぉ、ノビタニアン、ユウキ、お前達の分も部屋を抑えておいたぞ」

 

「ありがとう、エギルさん。それより大勢が押し掛けることになると思うけれど、大丈夫?」

 

「おう!事前に連絡を受けていたからな。ここでしばらく生活することになっちまうしなぁ」

 

「それより、ほかに大きな問題とかないですか?」

 

「……お前ら、スキルの方とかチェックしたか」

 

「うん、スキルのいくつかがリセットされていたよ」

 

 表情を暗くしてユウキが言う。

 

 七十六層に来てからステータスなどが一部リセットされていた。

 

 これもシステムに問題が起こっているのだろうと推測されている。

 

「新たに育て上げないといけないわけだが、モンスターがどんな動きをするのかわかんねぇしなぁ」

 

「そうですね。僕達も注意しないと」

 

「そうだ!」

 

 ポン!とユウキが手を叩く。

 

「どうせだし、二人でモンスター討伐行こうよ!」

 

「えぇ!?」

 

「周辺のモンスター相手ならなんとかなると思うんだ!試しに行こうよ。ソードスキルもレベル上げしたいし」

 

「……まぁ、行こうか。エギルさん、後でキリト達がやってくるからお願いします」

 

「おう、気をつけてな」

 

 エギルに手を振って二人はフィールドへ出る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アークソフィアから少し出たところのモンスターとユウキ、ノビタニアンが戦ってみたのだが、問題なかった。

 

「普通だね」

 

「普通というか、七十五層のモンスターより弱い気がするなぁ」

 

 剣を構えながらノビタニアンが首を傾げる。

 

「それより、ノビタニアンの盾、やっぱり性能が落ちているね~」

 

「そうだね。前の盾が砕けちゃったから、新しいものも前のと比べるとやっぱり、使いにくいところも……」

 

「はいはい、先を急ぐよ!」

 

 先を歩くユウキの姿を見て、ふとノビタニアンは気になった。

 

「もしかして、心配してくれている?」

 

「なんのこと~?先を急ぐよ」

 

「あ、待ってよぉ!」

 

 ずんずん進んでいくユウキの姿を見て慌ててノビタニアンは追いかけた。

 

 

 

 


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