ドラえもん のび太と仮想世界   作:断空我

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30:妖界大決戦(中編)

 激しいスパークと共にキリト達は地面に落下する。

 

「いってぇ……アスナ、大丈夫か?」

 

「うん、私は大丈夫……それより、ここが妖界なのかしら?」

 

 不気味な植物がうごめく森の中、黒衣の少年、キリトが上にいるアスナへ尋ねた。

 

「おいおい、不気味なところにきちまったなぁ」

 

 キッドが周りを見て呟く。

 

 森の中には無数の獣の骨や口や目のついた不気味な植物が蠢いていた。

 

「ここは、とらわれの森!」

 

「なんだか、不気味な名前だな」

 

 

 

――とらわれの森。

 

 

 

 それは百目王に反逆する者たちを捕まえては解き放ち、処刑人の韋駄天が追い立てては狩る、狩場。

 

「狩場!?」

 

「いきなり物騒なところにでてきちまったな」

 

「処刑場といったほうがいいかもしれないわ。なぜなら、韋駄天から逃げられたものはいないわ」

 

「おい!それよりも、みんなぁ!」

 

 マタドーラが真剣な顔で訴える。

 

「早く降りてくれぇえええ!」

 

 全員がマタドーラの上へ落ちていた。

 

「あ、ごめん」

 

 天辺のアスナが降りて、キリト達が降りていき、マタドーラは解放される。

 

「ふぅー、酷い目にあったぜ」

 

 降りたマタドーラは首をごきごきと鳴らして。

 

「じゃ、シェスタ」

 

「するなぁ!」

 

 寝ようとしたところでキッドが叫ぶ。

 

「で、どんな奴なんだ?韋駄天っていうのは?」

 

『トテモオソロシイヤツ!オソロシイヤツ!』

 

「なんだ!?」

 

「き、木がしゃべっているわ!」

 

 アスナの目の前、人の顔をした木々が楽しそうにしゃべっている。

 

「口先だけの人面樹よ。大ウソつきなの、どんな話も信じてはいけないわ」

 

 座敷童の言葉にキリトは周りを見る。

 

「どう?キリト君」

 

「SAOならまだしも、マッピングもされていない世界じゃ何もわからないな」

 

 ため息をこぼすキリト。

 

「とにかく、どこでもドアでどこかに」

 

 ドラえもんが四次元ポケットからどこでもドアを出し、場所を移動しようとした時。

 

 バチィと音を立ててドアからドラえもんが弾き飛ばされてしまう。

 

 ドアの向こうは不気味な光が渦巻いていた。

 

「な、なんだこれ!?」

 

「この妖界は百目王の妖力で空間が歪んでいるの」

 

「どこでもドアが使えないんだ!」

 

「じゃあ、歩くしかないな」

 

 キリトの言葉で全員が森の中を歩き始める。

 

 SAOの時と違い、マッピングできない以上、歩き回るしかなかった。

 

「ふぅ、疲れた」

 

「オカエリオカエリオカエリオカエリ!」

 

「元の場所に戻ってきちゃった!?」

 

「デグチハミギ、ミギ、ミギダヨ」

 

「本当!?」

 

 喜ぶドラえもんに対して座敷童が否定する。

 

「ウソよ!人面樹は何があっても本当のことを言わないの」

 

「……!?」

 

 ドラえもんが座敷童へ尋ねる。

 

「人面樹は本当のこと言わないんだよね?」

 

「そうよ」

 

 ポケットから嘴みたいな道具を取り出すと人面樹へつける。

 

「さぁ、教えてくれ。出口はどこなんだ?」

 

「デグチハワタシノウシロダウシロダウシロダ」

 

「また、ウソを」

 

 ドラリーニョが呆れていた時、人面樹の後ろから光が差し込む。

「出口だ!」

 

「不思議だわ……どうして?」

 

「人面樹にソノウソホントっていう道具をつけたんだ。これをつけたらどんなウソもホントになるんだ」

 

「キィィィィィ、クヤシイクヤシイ!」

 

 人面樹が悔しがる中でタケコプターを使って出口へ向かう。

 

「これでとらわれの森から脱出できるわ。よかった。本当によかったわ。韋駄天にみつからなくて」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それはどうかな?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「みんな、下がれ!」

 

 キリトがエリュシデータを抜く。

 

 雲に乗った妖怪、韋駄天が浮いていた。

 

「出口を見つけたのは褒めてやろう。だが、この俺を倒さない限り、ここからは出られないぞ」

 

 韋駄天が鎌を構える中、のび太を抱えているキッドが空気大砲を装着する。

 

「ならば倒してやるぜ!早撃ち0.1秒の空気大砲をくらえ!」

 

 キッドの空気大砲が韋駄天へ。

 

「何を狙ったんだ?」

 

 直撃せず、キッドの後ろに韋駄天が浮いていた。

 

「消えるなんてずるいぞ!」

 

 キッドが韋駄天の方向へ空気大砲を撃つ。

 

「消えているんじゃない!それだけ奴のスピードが速いんだ!」

 

「この野郎!!」

 

 キッドが乱暴に空気大砲を撃つ。

 

 しかし、すべてが直撃することはない。

 

「もっと、速いものを呼ぶであーる!ア・ブ・ラ・カ・タ・ブ・ラ」

 

 

 

――雷!

 

 

 ドラメッドが雷を呼び出すも韋駄天はそれを回避する。

 

「信じられんであーる!雷より速く動けるなど!」

 

「動きを止める場所がわかれば!」

 

「なんとかできる!」

 

 キリトとアスナが剣を繰り出す。

 

 しかし、韋駄天は俊足で即座にその場を離れる。

 

「アスナ!」

 

 鎌の斬撃がアスナへ繰り出されようとしていた時、キリトがエリュシデータとダークリパルサーを繰り出す。

 

 刃が輝いて二刀流のソードスキルが発動する。

 

 しかし、それを上回る速度で韋駄天は逃げていく。

 

「そんな、キリト君より速い!?」

 

「韋駄天のスピードは妖界一なのよ」

 

「だったら」

 

 ドラえもんはポケットから現実ビデオ化機を取り出す。

 

「これで韋駄天をスローにするからみんなで攻撃するんだ!」

 

「よし!」

 

 全員が韋駄天へとびかかる。

 

 しかし、韋駄天のスピードは変わらず、全員が傷だらけになっていく。

 

「おい!壊れているんじゃないのか!?」

 

「違うよ!これでもスローになっているんだ。韋駄天の元のスピードが速すぎるんだ!」

 

 マタドーラの叫びにドラえもんが答える。

 

「遊びは終わりだ!」

 

 韋駄天の鎌がキリトを襲う。

 

 攻撃を受けて、吹き飛ぶキリトの鼻にあるにおいが漂ってきた。

 

「……これは……」

 

 臭いにキリトは思考する。

 

「どうするんだ?全然、敵わないぜ!」

 

 目を見開いたキリトはドラえもんから道具を奪い取る。

 

「早送り!」

 

「キリト君!?」

 

 キリトはスローではなく、早送りに設定した。

 

 その途端、先ほどよりも韋駄天の速度が増す。

 

「やめろ!キリト!これ以上速くしたら手が付けられなくなる!死ぬつもりか!」

 

「いいや、これが起死回生の一手だ!さらに倍速!」

 

「わぁああああ、キリトが壊れやがったぁ!」

 

 キリトの手によってさらに速度があがった韋駄天は興奮していた。

 

「凄いスピードだ!この速度なら百目王にも勝てる!!」

 

 韋駄天は百目王に忠誠を誓っているわけではない。

 

 ただ、勝てないから従っているに過ぎなかった。

 

 このスピードがあれば、百目王を倒せると確信した。

 

「ありがとうよ!さぁ、死ね!!」

 

 鎌がキリト達に襲い掛かる。

 

 来る衝撃にドラえもん達が身構える中、韋駄天の体が燃えだす。

 

「いいや、俺達の勝ちだ。燃え尽きちまえ」

 

「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおお!?」

 

 止める暇もなく韋駄天の体は瞬く間に燃え尽きてしまう。

 

 

「……え、どういうこと?」

 

「もしや、空気の摩擦で燃やしたのですか?」

 

 困惑するマタドーラ。

 

 王ドラがキリトに尋ねる。

 

「あぁ、奴がぶつかった時に空気が焦げたようなにおいがしたんだ。だから、奴の速度をさらにあげたら」

 

「空気の摩擦で燃え尽きるというわけですね。成程」

 

「よくわかんねぇが、すげぇぜ」

 

 キッドが感心する。

 

「のび太君!」

 

 アスナの悲鳴にキリトが振り返る。

 

 立っていたのび太がぺたんと座り込んでいた。

 

「大丈夫か?」

 

「う、うん、ちょっと疲れただけ」

 

 荒い呼吸ののび太へドラえもんが駆け寄った時、目を見開く。

 

 のび太の口から長い牙が覗いていた。

 

「牙が!?」

 

「妖怪化が進んでいるんだ!」

 

「一刻も早く、百目王の城へ!」

 

「あれが百目王の城よ!」

 

 座敷童が不気味な建物を指さす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんか、霧がかかってきたな」

 

「周りが見えなくなってきたわ。このまま進むのは危険よ」

 

 百目王の城を目指すキリト達。

 

 城へ近づこうとすると霧が現れて、段々と城が隠されていた。

 

「このまま進むのは危険だ」

 

「……還らずの沼のせいよ」

 

「なんだそりゃ?」

 

「百目王の城のまわりにある巨大な底なし沼よ。城に敵が近づくと霧を出して城を隠してしまうの」

 

 座敷童が地上へ降りる。

 

「地上から沼づたいに進むしかないわね。待ってて、近道を探してくるから」

 

「私も行くわ」

 

 座敷童の後をアスナが追いかける。

 

「くそう、城までもう少しだっていうのに!」

 

「それにしても、女子たちだけに任せて大丈夫であーるか?」

 

「アスナの細剣技術はなかなかのものだ。そうそう油断はしないはずだ」

 

 

 

 

 

 アスナと座敷童の二人は霧が広がる道を歩く。

 

 

 

「おかしいわね、このあたりに近道があったはず」

 

「座敷童ちゃん、下がって!!」

 

 気付いたアスナが座敷童を守るようにランベントライトを抜く。

 

「そこにいるのは誰!」

 

 アスナの叫びと共に近くの木から一人の妖怪が現れる。

 

 黒い服を纏い、額に伸びている一本の角。

 

「よぉ、久しぶりだな、座敷童」

 

「天邪鬼!?」

 

「知り合いなの?」

 

「はい」

 

「おいおい、久しぶりにあった幼馴染にそんな態度はねぇだろー?妖界を裏切って変な連中を連れてきたくせに」

 

 天邪鬼は飄々とした態度で座敷童の傍にいるアスナを指す。

 

 座敷童は驚いて天邪鬼へ抗議する。

 

「裏切ったなんて、そんな!私はただ」

 

「おっと、言い訳ならあの方にするんだな!」

 

「座敷童ちゃん!!」

 

 アスナが座敷童を抱えてその場を離れようとした。

 

 しかし、すぐそばの湖から現れた巨大な影に飲み込まれてしまう。

 

 ニヤリ、と天邪鬼は笑い、顔に手を当てる。

 

 音と共に天邪鬼は座敷童へ姿を変えた。

 

 変装した天邪鬼は走り、待っているドラえもんズとキリトの前に姿を見せる。

 

「おまたせー!城への近道を見つけたぜ……いや!見つけたわ!」

 

「さっき、あっちで何か叫び声がしたけど?」

 

 マタドーラの質問に天邪鬼は知らないという。

 

「声が少し違う気がするであーる」

 

「そうなの。カゼひいちゃって……」

 

「なぁ、アスナはどうしたんだ?」

 

 キリトの問いにどきりと天邪鬼は焦る。

 

「アスナはどうしたんだ?それと、座敷童は右目の下にほくろがあったはずだぜ?」

 

「え!?」

 

 慌てて天邪鬼は右目へ手を近づけようとする。

 

「残念、ウソ」

 

 天邪鬼は目を見開く。

 

 キリトは表情を変えずに背中からエリュシデータを引き抜く。

 

「アスナと本物の座敷童はどこにいる?」

 

 エリュシデータを向けられて天邪鬼は冷や汗を流す。

 

 その時だ。

 

 近くの湖から白くて巨大な龍が現れる。

 

「な、龍!?」

 

「てめぇ!座敷童とアスナをどこにやりやがった!」

 

 キッドが空気大砲を天邪鬼へ向ける。

 

「い、今頃、龍神様の腹の中さ。急がないと……溶けちゃうかもなぁ!」

 

 本来の姿を現した天邪鬼はものすごい勢いで逃げていく。

 

 水面から飛び出した龍神が口を開けて威嚇する。

 

「この野郎!」

 

 キッドが空気大砲を撃つ。

 

 しかし、龍神の鱗に空気大砲は傷一つつかない。

 

「傷一つ、つかない!?」

 

「この!」

 

 ドラメッドが雷を繰り出すも龍神は無傷だった。

 

 マタドーラとキリトが駆け出そうとした時、龍神が口から衝撃波を繰り出す。

 

 とてつもない衝撃と風によって全員が吹き飛ばされる。

 

 龍神の繰り出した衝撃波は周囲の木々などを根こそぎ吹き飛ばす。

 

「な、なんて、ものすごい衝撃波だよ」

 

「たった一声で世界が震えているようだ」

 

 ドラえもんが目の前の光景に戦慄していると再び、龍神が衝撃波を繰り出す。

 

「龍神に弱点は!?」

 

「ありません!神となった龍は無敵です!」

 

 マタドーラの質問に王ドラは叫ぶ。

 

 少し離れたところで天邪鬼が挑発を行うが全員、聞いていなかった。

 

「も、もうだめだ……」

 

「次をくらったら、終わりだ」

 

「いや!手はあるぜ!」

 

 空気大砲を装着したキッドが前に飛び出す。

 

「俺に手がある!ついてこい!」

 

「無理だよ!逃げよう!」

 

 走り出すキッドにドラリーニョが呼びかけるが応じない。

 

「……」

 

「どうする?」

 

 マタドーラにドラえもんはタケコプターを装着する。

 

「行こう!友情を誓い合った僕達に迷いなんかない!」

 

 ドラえもんの言葉にキリトを含めた全員がキッドの後を追う。

 

「さぁ、その口を開けてみろよ。さっきの衝撃波をもう一度、やってみな!」

 

 キッドの挑発に龍神が大口を開ける。

 

「今だ、奴の口の中へ飛び込め!!」

 

 全員が衝撃波を繰り出される前に龍神の口から、胃袋の中へ飛び込んだ。

 

「キッド、これは?」

 

「龍神の奴、外は強くても中は弱いはずだ」

 

「なるほど!」

 

「みんな、中から攻めるんだ!」

 

 全員が胃の中で暴れる。

 

 キリトはエリュシデータとダークリパルサーで胃の中を切り裂きながら進んでいくと。

 

「キリト君!」

 

「キリトさん!」

 

「アスナ!座敷童、無事だったか?」

 

 アスナと座敷童。

 

 二人は龍神の胃の中にいたのだ。

 

「キリト君、来てくれるって信じていたわ」

 

 抱き合うアスナとキリトの二人。

 

「まさか、二人が胃の中にいるとはな」

 

 キリトが驚いていると胃液が流れ始める。

 

 どうやら龍神が胃袋から吐き出そうとしているようだ。

 

「ドラニコフ!出番だぞ!」

 

 全員が胃液で外へ流されようとしていた時、キッドが叫ぶ。

 

「ガル!」

 

 四次元マフラーから丸いものを取り出すドラニコフ。

 

 丸いものを見た瞬間、ドラニコフはスーパーウルフへと変身する。

 

 変身したドラニコフはタバスコを取り出して口に流し込む。

 

「ガルォォオオオオオオ!」

 

 叫びと共に繰り出される火炎。

 

 胃液を発火材として中から龍神を焼き尽くす。

 

 炎に包まれた龍神は暴れていたが力尽きて地面に倒れる。

 

「すげぇ、あいつら、龍神様を倒しちまうなんて、信じられねぇぜ!」

 

 驚く天邪鬼。

 

 龍神の口からドラえもんズ、キリト、アスナ、座敷童が出てきた。

 

「ふぅ、間一髪だったぜ」

 

 全員が安堵の息をついたとき、後ろの龍神が光に包まれるとともに老人が姿を見せる。

 

「見事じゃ、仲間を助けるためにわしの体内に飛び込んでくるとは……大した知恵と勇気じゃ」

 

「アンタ、さっきの龍神か?」

 

「さよう、悪かったの試すような真似をして」

 

「一体……」

 

「わしは妖界が始まって以来、ここで異世界の者から妖界を守ってきた、しかし、今の妖界は百目王によって地獄のあり様じゃ、だが、お前たちのように真の友情と知恵と勇気を持つものなら、この世界を良き方向へ導いてくれるかもしれん」

 

 龍神は懐から水晶のように澄み切った玉を取り出す。

 

「この龍玉を持っていきなさい。必ず、お前達の役に立つはずじゃ」

 

「あ、ありがとうございます」

 

 龍玉を受け取り、龍神から百目王の城に続く道を教えてもらう。

 

 彼らは道を進んでいた時だ。

 

「オーイ!待ってくれよう!」

 

 後ろから追いかけてきたのは天邪鬼だ。

 

「オイラは龍神様と互角に渡り合えたお前達の子分になりたいんだよ!どこまでもついていくぜ!」

 

「ちぇっ、調子のいい奴」

 

「なんか、SAOでもこんな奴いたなぁ」

 

「そうだっけ?」

 

「知らんぷりしてろ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これが、百目王の城……」

 

「みんな、覚悟はいいね!」

 

 ドラえもん達の手によって扉があけられる。

 

 その先に広がっているのは綺麗な花畑。

 

 西洋の城。どこまでも澄み切った湖が広がっていた。

 

「なんだこりゃ!?」

 

「これが百目王の城!?」

 

「綺麗だなぁ」

 

「あ、天使たちだ!」

 

 西洋のおとぎ話に出てくるような天使がキリト達を出迎える。

 

 

「これだけ綺麗な場所だと百目王も悪い奴じゃないかもしれないなぁ」

 

 一行が感想を漏らしながら歩いていると天使からキラキラした光が放たれる。

 

 その光を浴びた途端、キリト達はほんわかした気分になっていく。

 

 ふらふらと天使の誘導に従って進む。

 

 ふと、ドラえもんが湖を見る。

 

 その水面に映っていたのは目の前に広がる光景と全く違うもの。

 

 ドラえもんは目を見開き叫ぶ。

 

「みんな!騙されるな!」

 

 跳ねながら仲間たちを殴る。

 

「な、何するんだ!?」

 

「周りをよく見るんだ!」

 

 ドラえもんに言われて全員が周りを見た時、周囲の景色が歪む。

 

 しばらくして、綺麗だった城は土のようなものに、植物はとらわれの森のようなものへ、飛んでいる天使は鳥人間のようなものに変わっていく。

 

「アスナ!」

 

 キリトはアスナへ襲い掛かろうとする鳥人間へ剣を振り下ろそうとする。

 

 ひらりと躱した鳥人間はキリトへ爪を繰り出した。

 

 攻撃を受けたキリトは地面に倒れる。

 

「キリト君!?」

 

「みんな!急いで中へ入れ!!」

 

 空気大砲を装着してキッドが叫ぶ。

 

 倒れたキリトをドラえもんが担いで岩の洞窟の中へ入り込む。

 

「百目王がいる王の間は城の一番奥にあるはずよ」

 

「どんな奴かわからねぇが早く倒してやりたいぜ!」

 

「人間界に攻め込もうなんてこと考えやがって」

 

「でも、なぜ、百目王は人間の世界へ攻め込もうとするの?」

 

 アスナは座敷童へ疑問をぶつける。

 

「妖界と人間界は光と影のような存在なの」

 

 座敷童の話によれば、片方の世界によくないことが起これば、その影響が片方の世界に広まる。

 

 おそらく、人間世界の戦争や様々な負の問題が妖怪世界に悪影響を及ぼし、百目王のような存在を生み出したのだろう。

 

「オイラ、ちょびっと行ったことがあるけれど、人間界の方が怖かったぜ」

 

「だからといってのび太君をこんなことにしたやつを許せないよ!」

 

 ドラえもんが叫んでいると前方から何かが姿を見せる。

 

「こんな奥まできやがって、偽天使と一緒に行けば楽に死ねたものを」

 

「誰だ!」

 

 キッドが空気大砲を撃つ。

 

 しかし、相手は華麗に躱す。

 

「(避けた、なんて身のこなしの軽い奴だ)」

 

「ケケケ、今、なんて身のこなしの軽い奴だと思っただろう?」

 

「(俺の考えたことがわかるのか!?)」

 

「今、俺の考えたことがわかるのか?と思っただろう……」

 

「気をつけろ!コイツ、人の心が読めるぞ!」

 

「サトリ!あなたは百目王の新鋭隊長のサトリね!」

 

 座敷童の指摘で影から現れたのはサルとヒトを足したような外観の妖怪。

 

 サトリは不気味に笑う。

 

「俺はこれまでたくさんの人間の心を読んできてわかったんだ。心の醜い今の人間どもは百目王様に支配されるべきだ」

 

「違うわ!良い人間もいるわ!」

 

「私達は仲間を助けないといけないの!ここを通して!」

 

 アスナの叫びにサトリは答えない。

 

 ドラえもんズは作戦を立てようとして喧嘩をしていた。

 

「とりあえず、石ころ帽子で姿を消してサトリの注意をそらそう」

 

 ドラえもんは石ころ帽子をかぶって姿を消す。

 

「フフン、一人くらい、後で料理できるわ」

 

 サトリは腰の剣を抜く。

 

「さぁ、一人ずつ切り刻んであげよう……おっと、お前たちの攻撃は通用しないぞ。動きはすべて読めるぞ」

 

 空気大砲を構えようとしたキッドは悔し気に顔を歪める。

 

 サトリが剣を振り下ろそうとした時、背後から現れたキリトの二刀流ソードスキル“スターバースト・ストリーム”がサトリを倒す。

 

「な、なんだ!?何が起こったんだ?」

 

「キリト君……?」

 

「サトリの弱点をついたのさ」

 

「どういうこと!?」

 

「気絶した和人君に人間ラジコンをつけたのさ。いくら人の心読めても気絶している相手までは読めないからね」

 

「あれ……俺は何を?」

 

「キリト君、良かったぁ」

 

 意識を取り戻したキリトへアスナが安堵の声を漏らす。

 

 座敷童も驚いていた。

 

「凄いわ、サトリは妖怪の中でも実力者なのに」

 

「何度も戦ってコツをつかんだのさ」

 

「よーし!この調子で先を目指すぞ!」

 

「のび太が妖怪化しちまう前に!百目王のいる場所へ!いやしの泉へ!!」

 

 それから道を阻むように、釣り天井、振り子の斧といったトラップが現れるがそれを難なく突破する。

 

 しかし、彼らの前に妖怪の配下が現れる。

 

 触れただけでどんなものだろうと切り裂く爪を持つ、牛鬼。

 

 妖界一の乱暴者、両面スクナ。

 

 鳴き声で人を操る妖怪、ぬえ。

 

 吐く糸で相手をがんじがらめにしてしまう土グモ。

 

 炎を纏い、相手に突撃しようとしてくる火車

 

 それらの妖怪にマタドーラ、王ドラ、ドラメッド、ドラニコフ、ドラリーニョが相手をするために残り。

 

 王の間へ到着したのはキリト、アスナ、座敷童、天邪鬼、キッド、のび太だ。

 

 長い階段を抜けてやってきた王の間にキッドが安心の表情を浮かべる。

 

「よし、のび太!すぐにお前を」

 

 キッドに後ろからのび太がかみついた。

 

「いてぇ!?」

 

「えー!?間に合わなかったの!?」

 

「まだ完全に妖怪化していないわ、でも、その一歩手前で自分を見失うの!」

 

「だったら……気絶させればいいさ」

 

「キリト君!?」

 

 二本の剣を抜いて獣のようにうなっているのび太へ近づく。

 

「面白い」

 

「なんだ!?」

 

 目の前にあったいやしの泉が消えてのび太の前に一振りの剣が現れる。

 

「今の声は……」

 

「あそこをみて!」

 

 アスナは剣が飛来した奥、不気味に蠢く巨大な物体を見つける。

 

 それは全身が黒く、体中に目玉がついていた。

 

「あ、あれが、百目王よ……」

 

「なんてでかさだ」

 

「ひゃ、百目王、さま」

 

「人間の友が戦いあうさまはとても面白いものだ。私は見物させてもらおう」

 

「悪趣味な野郎だぜ!ブッ倒してやる!」

 

 キッドが空気大砲を構えようとした時、キリトが前に飛び出す。

 

 金属同士が派手にぶつかる音と共にのび太がキッドへ剣を振り下ろそうとしていた。

 

「なっ!?」

 

 あまりの速さにキッドは動けないでいた。

 

「おいおい、リアルでもここまで動けたことないだろ!?」

 

 キリトが驚きながらエリュシデータを振るう。

 

 獣のように唸りながらのび太は天井を走る。

 

「おいおい、獣丸出しじゃねぇか」

 

 驚きながら振り下ろされる剣をダークリパルサーで弾き飛ばし、エリュシデータを振るう。

 

 しかし、のび太はあっさりと躱して剣を振るう。

 

 ソードスキルを模した動きにキリトも対応をする。

 

「そういや、お前と剣をぶつけあうのって、SAO……背教者ニコラスの時以来じゃないか?」

 

 飄々としながらキリトはのび太の剣を躱す。

 

「覚えているか?自暴自棄になっていた俺を止めようと、お前やユウキ、クラインが止めようとしてさ……でも、最後は俺のためにたった二人でニコラスと戦ったよな?」

 

「う……ウァ?」

 

「それからはまた一緒にパーティーを組んでシリカを助けたり……ヒースクリフとデュエルしたり……本当に色々あったよな」

 

「あ、あぁああ」

 

 頭を押さえて苦しみだすのび太。

 

「のび太君!思い出してSAOで過ごした日々を!」

 

「のび太君!僕達は友達だよ!」

 

 アスナ、ドラえもんの叫びにより苦悶の声を上げるのび太。

 

「お前は人間だ!妖怪にはならない!!」

 

 叫びと共にキリトが駆け出そうとした時。

 

 のび太の背後に立っていた天邪鬼が剣を振り下ろす。

 

 ボクゥ!と殴られたのび太が気絶する。

 

「……うそぉ」

 

 

 目の前の光景にキッドが声を漏らす。

 

「あれ、やっちゃった?」

 

 ぽつりと天邪鬼が戸惑いの声を上げる。

 

 天邪鬼が持っている剣を見て座敷童が驚く。

 

「それはサトリの魔封剣!」

 

「咄嗟に持ってきたんだが、役に立ったぜ」

 

 手の中にある剣を見て天邪鬼は微笑む。

 

 倒れたのび太へキリトが駆け寄ろうとした時。

 

 百目王が叫ぶ。

 

「影よ!」

 

 眼から無数の妖怪が現れる。

 

「な、なんだ、ありゃ!?」

 

「百目王は一度見た相手を影として操ることができるの」

 

 座敷童が思い出したように叫ぶ。

 

「百目王はすべての目をつぶしたらその力を失うと聞いたわ」

 

「よし!やってやるぜ!」

 

 キッドが空気大砲で百目王の目をつぶしていく。

 

 順調に目をつぶしていた時、いやしの泉が現れて、百目王の体を癒す。

 

「傷が治っていくわ!」

 

「あれがいやしの泉の力。隣にあるのが死の泉よ!触れただけで相手の命を奪ってしまうわ」

 

「最悪すぎる!」

 

 キリトが悪態をつく中で百目王が最強の影を召喚する。

 

 

 一角大王、韋駄天、サトリ、牛鬼、両面スクナといった。かつて戦い、仲間たちが倒してきた妖怪たちが現れていた。

 

「前は全員でなんとか倒した相手なのに」

 

「くそう!これまでか!?」

 

 キッドが諦めようとしている中、キリトが剣を構える。

 

「敵が多くても、俺はのび太を人間に戻す!そのためならなんだってするさ!」

 

 叫びながらキリトが目の前に現れた牛鬼を切り裂き、両面スクナを薙ぎ払う。

 

「そうだわ!百目王を封印することができるという魔鏡!」

 

「龍神のおじいさんからもらった龍玉!」

 

「サトリの魔封剣!」

 

 なんとかできるかもしれない、と彼らは三種の神器のように三つを掲げる。

 

 しかし、何も起きない。

 

「何も起きないわ」

 

「使い方が間違っているんじゃねぇのか!」

 

 キッドが呆れた声を上げる。

 

「諦めろ、お前たちに勝ち目はない」

 

 百目王が諭すように問いかけた。

 

「そんなのやってみないとわからないだろ?命がけの戦いなら俺は何度も経験しているからな!」

 

「ならば、死ね!」

 

 一角大王が斧を振り下ろそうとする。

 

 その時、飛来した光線が一角大王を焼き尽くした。

 

「あ、あれは!」

 

 

 


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