ドラえもん のび太と仮想世界   作:断空我

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このモチベーション、いつまで続けられるかな?

今回から大長編に行きます。第一弾はこれからです。


33:パラレル西遊記(前編)

 花果山の上に落雷が落ちる。

 

 落雷は天辺にあった丸い岩へ落ちたとともにその中から一匹の猿が生まれた。

 

「やぁやぁ!われこそは野比のび……違った!斉天大聖孫悟空であーる!」

 

 岩から生まれたのは野比のび太、間違い。孫悟空。

 

「筋斗雲!」

 

 彼は特殊な雲、筋斗雲に乗り、七十二の術を操る石猿だ。

 

 乱暴者で術を使うのも死ぬことが嫌だったからというほど自分中心。

 

「うん、出たな!妖怪!」

 

「「あぁ!悟空!」」

 

 ジャイアンとスネ夫みたいな姿をした妖怪は悟空の姿を見て逃げようとする。

 

 悟空は如意棒と呼ばれる測定用の道具を武器として利用していた。

 

 如意棒で二人を乱暴に叩きのめす。

 

 二人は泣きながら逃げていく。

 

「ガッハッハッ!俺様にかなう相手はいないのだ!」

 

「これ、悟空よ」

 

 名前を呼ばれて悟空は振り返る。

 

 そこには雲に乗った丸い狸……もとい、ドラえもんがいた。

 

「ドラえもんじゃないか」

 

「ドラえもん?違うぞ。われはお釈迦様だ」

 

 ドラえもん、もとい、お釈迦様は試すように悟空を見る。

 

「悟空よ。お前は誰よりも強いと言っているようだな」

 

「当然だ。おいらに勝てるものは誰もいないぞ!」

 

「ほおう、ならば、この私の手を飛び越えることも造作ないというのだな?」

 

「その手を?当然だ!饅頭みたいな手を飛び越えることくらい造作もない!」

 

「わぁ!」

 

 筋斗雲でお釈迦様を飛び越えて悟空はどこまでも飛んでいく。

 

 地の果て、空を超え、どこまでも遠い世界へ。

 

 やがて、この世界の果てともいえるような場所までたどり着いた悟空は目の前の丸いもので止まる。

 

「ここでいいかな」

 

 悟空は髪の毛を抜いて筆を作ると丸い物体にあるものを描いていく。

 

「まるかいてちょん……よし、これでどうだ」

 

 目の前に描かれたドラえもんの顔に満足して悟空は地球へ戻ろうとする。

 

「そ、そんなぁ」

 

 お釈迦様の高笑いが響く中、悟空は顔を青ざめる。

 

 目の前にいるのは巨大な姿をしたお釈迦様。

 

「悟空よ、これがお前の力か?お前が果ての目印と思っていたのは私の手のひらだぞ?おぬしは乱暴者で周りを傷つけるばかり」

 

 逃げようとするがお釈迦様の力で筋斗雲から落とされ、そのあま山の下敷きにされる。

 

 山の表面に一枚の札が張られた。

 

「ここで三千年ほど、反省するのだ」

 

「三千年!?そ、そんなぁ!?いやだぁああああああ!」

 

 しばらく暴れていた悟空だが、山は動かず。

 

 いつの間にか眠り続けていた。

 

「のび太!のび太!」

 

 聞こえる声に悟空は体を起こす。

 

 そこにいたのは白い法衣に身を包んだ桐ヶ谷和人こと、三蔵法師。

 

「あ、三蔵様!!」

 

「おい!のび太、起きろって、いいから、起きろ!」

 

 体を揺らされて野比のび太が目を覚ますとこちらをみている和人の顔があった。

 

「あ、あれ?三蔵様?」

 

「は?何を寝ぼけているんだ?それより、お前の出番だぞ」

 

「出番?」

 

 不思議に思いのび太が周りを見るとそこは学校の教室。

 

 周りには描かれた山や馬の置物があり、教壇には源しずか、剛田武、骨川スネ夫、出木杉英才の姿があった。

 

「あ、ごめん、えっと……セリフはなんだっけ?」

 

「お前は村人その一、助けてくんろーだろ!」

 

 武ことジャイアンに言われてのび太はあぁ、と頷く。

 

「でも、のび太のセリフは飛ばしまーす!」

 

「えぇ!?」

 

 ジャイアンの言葉にのび太は驚きの声を上げる。

 

「駄目だよ。勝手にそんなことしちゃ」

 

 出木杉が待ったをいい、脚本を担当したもとひらへ声をかける。

 

「脚本を担当したもとひら君、君の意見を聞きたいんだけど」

 

「勝手に変えられるのは困るね……今日は目玉の部分をやろうか、豚の妖怪と戦う悟空!」

 

 ページをめくるもとひらの言葉でスネ夫がからかう。

 

「ほら、豚の妖怪!豚の妖怪、出番ですよ?」

 

「うるせぇ!」

 

 ゴチンとスネ夫を殴ってジャイアンは教壇へ立つ。

 

 教壇へ立ったところでジャイアンは困った顔をする。

 

「えっと、なんだっけ?」

 

「おぉ、これはなんてうまそうな娘なんだ」

 

「おぉ、なんてうまそうな肉まんなんだ」

 

 もとひらの言葉に続いてジャイアンが言うがずれていた。

 

「やや、娘と思えば、サルだったぞ」

 

「やや、肉まんと思っていたら饅頭だったぞ?」

 

「あぁあああ」

 

「(もとひら、同情するよ)」

 

 和人が小さく合掌する中、劇は続く。

 

「やい、この豚!僕が退治してやる!」

 

「なにぃ、勉強やスポーツができるからって偉そうに!」

 

 怒ったジャイアンが武器を振り下ろす。

 

 出木杉は如意棒で受け止めるが力のあるジャイアンに勝てず押され始める。

 

「ちょっ、ちょっと!」

 

 慌ててスネ夫やのび太、和人が止めに入った。

 

「武さん!」

 

「アンタが悟空を倒したら物語が終わっちゃうでしょ!」

 

 暴れるジャイアンを止めるべくしずかや里香が叫ぶ。

 

「だから、俺が悟空をやればいいんだよ!」

 

「滅茶苦茶だよ!人には当てはまる役割というものがあるんだよ!?」

 

「だから、お前が沙悟浄なんだろ!!」

 

「ジャイアン、嫌い!」

 

「とにかく、今日はここで終わりにしよう」

 

 もとひらの言葉で全員が解散となる。

 

 のび太と和人は教科書などをまとめたカバンを手に取り、学校を出た。

 

 二人と一緒に帰るのはSAOでともに駆け抜けた仲間たち。

 

 SAO帰還者が集まった学校。

 

 今回、彼らは地元の幼稚園児たちと交流を深めるため、劇を披露することになり、配役などを決めて行っているのだが、進行は思った以上に悪い。

 

「僕の意見で西遊記になったのに、まさか村人一で配役が決まるなんてなぁ」

 

「私なんて、猪八戒の生贄だよ?」

 

 のび太の言葉に琴音が苦笑しながらいう。

 

「仕方ないって、くじ引きだったんだからさ」

 

「その割には猪八戒や沙悟浄はあたりなのよねぇ」

 

 のび太、和人、里香、琴音は道を歩きながら話をする。

 

「まぁ、ジャイアンは納得してないけど」

 

「アイツが大人しく劇をしてくればスムーズに済むのに、ったく、元ネタのモデルでもあれば、納得するんじゃないか?」

 

「モデルって、西遊記は架空の話だよ?」

 

「でも、三蔵法師は実在しているはずだ」

 

「そっか!モデルを見つければいいんだよ!」

 

 ポンと拳を叩いてのび太が言う。

 

「モデルって、本でも漁るっていうの?」

 

「古いから大変だと思うなぁ」

 

「いい方法がある」

 

「そうそう!」

 

 のび太と和人が笑っていると校門の前で明日奈と珪子の二人が待っていた。

 

「ノビタニアンさーん!」

 

「キリトくーん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ドラえもん……って、いないや」

 

「おいおい、これヒーローマシンじゃないか?」

 

「何ですか?それ」

 

 のび太の部屋へやってきた和人たち。

 

 部屋の中央に置かれている機械をみて珪子が尋ねる。

 

「未来のゲーム機ね。なんでこれが出ているのかしら?」

 

 前の騒動で使用した和人や明日奈はこの機械が出ていることに首を傾げる。

 

「ドラえもんが使っているのかな?」

 

「それはいいけれど、のび太の家へ来て、どうやって調べるの?」

 

「簡単だよ」

 

 のび太は机の引き出しを開けて中へ飛び込む。

 

「えぇ!?」

 

「の、ノビタニアンさん!!」

 

「机が壊れていない!?」

 

「き、キリト君!?」

 

「みんなもついてきてくれ。すぐにわかるから」

 

 和人に言われて明日奈達はおずおずと引き出しの中へ入る。

 

 中は真っ暗だが、とても広い。

 

 降りた先には奇妙な機械が存在していた。

 

「え、なにこれ」

 

「タイムマシンさ」

 

 和人がドラえもんの道具“タイムマシン”について説明する。

 

 のび太が何やら顔をしかめながらタイムマシンをいじっていた。

 

「つまり、これに乗っていれば過去や未来へいけるということですか?」

 

「そう、基本的な操作はのび太ができるから、任せて大丈夫だと思う」

 

「凄いねぇ、ドラえもんのいる未来って」

 

 琴音が素直に感心しているとタイムマシンが動き出した。

 

「のび太君、どこへ向かっているの?」

 

「一応、三蔵法師がいるっていう時代」

 

「だ、大丈夫なのよね?」

 

 里香が少し震えながら尋ねる。

 

「多分、ねぇ」

 

「ほ、本当に大丈夫ですよね!?」

 

「うん、ただ」

 

「ただ?」

 

 和人が尋ねる。

 

「タイムマシンにコンピュータが搭載されているみたいで、多分、大丈夫なんだろうけど」

 

 そんなことを話していると目的地に到着して入り口が開く。

 

 丸い入り口と共にタイムマシンが動いて全員を放り出した。

 

「ぶべっ!?」

 

「きゃあっ!」

 

「わ、わわ!」

 

「あぶなっ!」

 

「リズさん!」

 

「きゃあああああ!」

 

 のび太が地面に倒れるとともに上から明日奈、琴音、和人、珪子、里香の順番で放り投げだされた。

 

「おいおい、乱暴なコンピュータだな」

 

 土ぼこりを払いながら和人は立ち上がる。

 

 のび太も起き上がり周りを見た。

 

「うわぁ、砂ばかりだね」

 

「砂漠かしら?」

 

「ねぇ、本当にここは過去なの」

 

「そうだよ?」

 

 のび太は頷いて歩き出す。

 

 皆も慌てて後を追いかけた、その時だ。

 

『え?』

 

 上空を赤い衣をまとった少年が雲に乗って飛んでいた。

 

 そう飛んでいたのだ。

 

 のび太達は目の前の光景を茫然としてしまう。

 

「あの、今の……」

 

 誰もが沈黙している中、おろおろと珪子が言葉を漏らす。

 

「人が飛んでいた、わよね?」

 

 確認するように里香が尋ねる。

 

「うん、なんか……ノビタニアンに似ていたような」

 

「俺も、あれは間違いない」

 

「私も、あれはノビタニアン君だと思う」

 

 全員がそういって前を見ているのび太をみた。

 

「え、今の、もしかして!?孫悟空!?」

 

「それしか思いつかないな」

 

「あ、あそこ!誰かいるよ!」

 

 琴音が遠くを指す。

 

 よくみると一人の少年がふらふらと歩いていた。

 

「あ、倒れたわよ!?」

 

「行きましよう!」

 

 里香と明日奈が慌てて駆け寄る。

 

 砂漠の上に倒れている少年は緑の衣に帽子をかぶり、荷物などが地面に落ちていた。

 

「キリト君!」

 

「おう!のび太!」

 

 二人の男子が頷いて少年へ駆け寄る。

 

「大丈夫!?キミ!」

 

「……み、みず」

 

「のび太!水とかないか!?」

 

「調べてみる!」

 

 のび太はタイムマシンへ戻る。

 

 タイムマシンのコンピュータが蒸留水を積んでいると伝えて、珪子と共に水をもってやってきた。

 

「さ、飲んで」

 

 水を飲んだ少年は起き上がるとのび太から水筒を受け取って一気に飲み干す。

 

「はぁ、はぁ、ありがとうございます……悟空様!?それに沙悟浄様!!」

 

「え、僕!?」

 

「沙悟浄……って、俺か!?」

 

 のび太と和人が少年の指摘に驚きの声を上げる。

 

「ありがとうございました。では、私はこれで」

 

「あ、待って」

 

「はい?」

 

「キミは僕を孫悟空といったけれど、間違いない?」

 

「はい、その通りですけれど」

 

「そう……うん、ありがとうね」

 

 少年は頭を下げると砂漠の道を歩いていく。

 

「……何が、どうなっているのかな?」

 

「そんなの、アタシが聞きたいわよ」

 

「夢、じゃないよね?」

 

「キリト君が沙悟浄でノビタニアン君が孫悟空?……実在しない筈だからモデルってことかな?」

 

 明日奈の言葉に誰も答えられなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ALO、空都ライン。

 

 いつものたまり場になっている店でキリト達は砂漠で見た悟空について話し込んでいた。

 

「あれは、夢とかじゃないし、何だったんだろ?」

 

「西遊記は作者不明だから、モデルが何なのかもわかっていないのよね」

 

「そうなんだ?知らなかったなぁ」

 

「それ以前に、アンタ達は何をしているのよ」

 

 エギルの店で話をしていたキリト達の話を聞いてユウキが興味深そうに、シノンは呆れた表情をしていた。

 

「でも、本当だよ?間違いないんだ」

 

「それにしても、キリトが河童でノビタニアンがお猿さんなんだね!」

 

「ユウキ、合っているけれど、合っているけれど」

 

「その表現だとなんか、違う感じに思えるね」

 

 フィリアが苦笑する。

 

「ノビタニアン達が悟空のモデルだったとして、それを劇の話に使えるのかしら?」

 

 シノンの問いにキリトとノビタニアンは唸る。

 

「うーん、信じてもらえるかなぁ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そんなわけねぇだろ」

 

 翌日、教室で話をしてみたのび太だが、ジャイアン達は信じていなかった。

 

「僕だけじゃないよ?和人や里香、珪子ちゃんたちだって見ているんだ」

 

「写真とかあるのかよ?」

 

「それは、ないけれど」

 

「でも、全員がみたから」

 

「……よし!のび太、ウソだったらどうする?」

 

「ウソだったら?ALOの攻略を手伝うよ」

 

「いいや、ドラえもんの道具を自由に使わせる権をよこせ」

 

「それは駄目だよ。ドラえもん抜きで勝手に決めていいことじゃないし」

 

「よーし、なら一つだけ使わせろ!いいな?」

 

「え、えぇ、まぁ、うん」

 

 半ば、ジャイアンに押し切られたがのび太は頷いてしまう。

 

 大丈夫か?と隣にいた和人は少し心配になった。

 

 スネ夫としずかは習い事があるということでジャイアンに昨日のメンバーを加えた一行となる。

 

「ドラえもん!」

 

「あ、のび太君。みんなも、どこにいくの?」

 

「これから孫悟空に会いに行くんだ」

 

「孫悟空!?」

 

 驚くドラえもんを連れてタイムマシンに乗り込む。

 

 しかし、タイムマシンは同じ時間に行けず、二十四時間の誤差があるという。

 

 なおも渋るコンピュータに激怒したジャイアンに怯えて、猛スピードで発進した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ま、また!?」

 

「ぶべっ!?」

 

「わきゃっ!」

 

 のび太、和人の上にジャイアン、明日奈、珪子、里香、琴音が落ちる。

 

「昨日と場所が違うような?」

 

 明日奈の言葉通り、砂漠だけだった場所と違い、岩山などが存在していた。

 

「おい、本当に孫悟空を見たんだろうな?」

 

「見たよ!」

 

 ジャイアンにのび太が叫ぶ。

 

「あの、今の音なんでしょう?」

 

「僕とのび太君で周りを見てくるよ」

 

 珪子の疑問にのび太とドラえもんが先行する。

 

 しかし、慌てた様子で駆け戻ってくる。

 

「みんな!隠れて!」

 

「へ?」

 

「急いで!」

 

 慌てて岩場へそれぞれが隠れた直後、馬に乗った団体がかけていく。

 

「な、何なの?」

 

「盗賊か?」

 

「ものすごい迫力ね」

 

 明日奈、和人、里香が目の前の光景に息をのむ。

 

「のび太ぁ!なんとかしろぉ!」

 

「ノビタニアンさーん!」

 

「二人とも、もう少し、声を落として」

 

 ジャイアンと珪子、琴音は叫ぶ。

 

「のび太君、これはどういうこと?」

 

「実は」

 

 のび太はドラえもんに孫悟空を見たこと、ジャイアンにその証拠を見せるという約束をしたこと。あと。

 

「何だって!?僕の道具を一個、使わせる!?なんでそんな約束したのさ」

 

「最初よりマシだったんだよ!?」

 

「それより、孫悟空を見たって、本当に?」

 

「本当だよ。それに僕を孫悟空って言った男の子がいたんだ。その子に会えば証拠になるんじゃ」

 

「男の子って、のび太君。中国語わかるの?」

 

「あ、そういわれれば……」

 

「もう……こういうのはあまり使いたくなかったんだけど」

 

 少し離れたところに移動してドラえもんはある道具を取り出す。

 

「これって、ヒーローマシン?」

 

「そう、西遊記のソフトをいれたから、のび太君が孫悟空になって誤魔化すしかないよ」

 

「な、なんとかなるかな?」

 

「いいから、入って!」

 

 ドラえもんに促されてのび太はヒーローマシンへ入る。

 

 しばらくして、ドラえもんに呼び出されて孫悟空として彼らの前に現れたのだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「駄目だった」

 

「もう!のび太君が変なところでドジ踏むから!」

 

「僕だけが悪いわけじゃないでしょ!?」

 

 のび太とドラえもんがいがみ合う。

 

 珪子と琴音がまぁまぁとなだめる中、ジャイアンに言われてドラえもんがヒーローマシンを取り出す。

 

「何のソフトで遊びます?」

 

「もちろん、西遊記!そんで悟空の役ぅ!」

 

「……今の話題だもんね。仕方ないわ」

 

「キリト君、私達もいかない?」

 

「そうだな、いいかもしれない」

 

「私は後にするわ」

 

「あ、私も」

 

「だったら、のび太、行こうぜ」

 

「え、あぁ、うん」

 

 和人に言われてのび太、明日奈、ジャイアンの四人でヒーローマシンに入る。

 

「全く、のび太君は!」

 

「仕方ないですよ、私達も少し混乱していたので」

 

「まぁ、慌てていたのは事実だけど……」

 

「もう!」

 

 怒りながら窓の外を見たドラえもんは驚きの声を上げる。

 

「えぇ、なんだぁ!?」

 

 外はどこか不気味な暗雲が広まっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『それではプレイヤーに合うキャラクターを設定させてもらいます』

 

 頭上からの音声と共にのび太や和人たちの衣装が変わる。

 

「おぉ!やーやー、我こそは孫悟空……じゃない!?」

 

 ジャイアンは自分の服装が猪八戒のものであることに気付く。

 

 さらに、のび太が孫悟空であることを見つけると叫ぶ。

 

「あ、のび太!どうゆうことだ!?」

 

「落ち着けよ。これはコンピュータが設定したものだ。どうしようもないだろ?」

 

 沙悟浄の格好をした和人がジャイアンをなだめる。

 

 かくいう明日奈も三蔵法師のような法衣を纏っていた。

 

「落ち着きなさい。猪八戒」

 

「明日奈……三蔵法師になりきっているな」

 

「凄いね」

 

 のび太と和人が感心している中、ゲームが始まる。

 

「なぁ、のび太、西遊記なんだよな?」

 

「そうだよ。僕達はそのキャラクターになって妖怪を倒して天竺へ向かう」

 

「なら、明日奈を守らないとな」

 

「え?」

 

「そうだろ?妖怪は三蔵法師を狙っているんだ。俺達、三人でなんとかしないといけないわけだ」

 

「成程、うし、俺様に任せろ……早速、お出ましのようだな」

 

 バチバチと雷を纏った雷雲のようなものが現れる。

 

「悟空、沙悟浄!抜かるなよ!」

 

 全員が武器を構えた時、まばゆい光が全員を包み込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ヒーローマシンの中に入ったのび太達だが、彼らはすぐに戻ってきた。

 

「あれ、早かったね?」

 

「それがさ、妖怪が一匹も出ないまま終わったんだ」

 

「え!?一匹も?」

 

「この道具、壊れてんじゃねぇだろうな?」

 

「いや、そんなことないだろ?でも、あれはおかしかったな」

 

「ドラえもんさん、私達、そろそろ帰らないと」

 

「そうだな、ドラえもん。帰るよ」

 

「和人、みんなも気を付けてね?」

 

「あぁ」

 

 みんなを見送りのび太とドラえもんが一息をつこうとした時。

 

「おい、ドラえもん」

 

 ぬぅとジャイアンが顔を出す。

 

「明日もその道具、遊ばせてもらうからな?」

 

「わかっています!」

 

「じゃーなー」

 

 のび太とドラえもん互いを見てそっぽを向く。

 

 孫悟空がのび太だとばれたことで小さな喧嘩をしていた。

 

「二人とも、ごはんよ~」

 

 一階から呼ばれて二人は階段を駆け下りる。

 

「いただきます!」

 

 机の上にはご飯、みそ汁、から揚げにサラダが置かれていた。

 

 から揚げを食べたのび太は目を見開く。

 

「ん~!この唐揚げおいしいよ!ママ」

 

「うん!おいしい!」

 

「パパ……ご飯の時くらい新聞を読むのをやめてくださいな」

 

「そうだよ、パ……」

 

 のび助へ言おうとしたのび太は言葉を失う。

 

 新聞の影に映っているのび助の姿が人ではなく異形の姿をしていた。

 

「はいはい、おぉ、うまそうだな」

 

 新聞をたたんでから揚げを手に取ってのび助は微笑む。

 

「えぇ、今日はのびちゃんの大好物のヘビとカエルのから揚げです」

 

「!?」

 

「ブハッ!」

 

 玉子の言葉にのび太は言葉を失い、ドラえもんはご飯を吐き出す。

 

「そして、パパの大好物、トカゲのスープ!」

 

 ラーメン皿を置いた玉子。

 

 その中身を見た、のび太達は脱兎の勢いで二階へ上がっていく。

 

「「ごちそうさまぁ!!」」

 

 

「あら?」

 

「どうしたんだ?」

 

 二人は首を傾げる。

 

 机に置かれているラーメン皿には不気味な肌の色合いのトカゲがスープの中に浸かっていた。

 

 


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