ドラえもん のび太と仮想世界   作:断空我

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34:パラレル西遊記(中編)

「悟空よ!お前が本当に反省したというのなら妖怪のために忠誠を誓うのだ」

 

「はい、牛魔王様」

 

「よろしい、ならば、今までのことは水に流し、粉骨砕身、妖怪のためにすべてをささげるのだ」

 

 のび太は目の前の光景に息をのむ。

 

 勿論、のび太だけではない。和人、里香、武、琴音も目の前の光景に驚いていた。

 

「え、なにこれ?」

 

「何か、みんな、おかしいぞ」

 

「俺たち以外、まるで別人みたいだ」

 

「なんか、西遊記の内容も違うよ?」

 

「でも、みんなは平然と受け入れているよね」

 

 のび太の言葉通り、目の前で悟空が牛魔王に忠誠を誓い、三蔵法師が食べられるというあり得ない光景だ。

 

 演じているメンバーは当たり前のように行っている。

 

「キミ達、何こそこそ話をしているのさ?」

 

「ジャイアンも様子がおかしいよ?」

 

 出木杉とスネ夫が尋ねてくる。

 

「いや、おかしいのはそっちだろ!?なんで三蔵法師が妖怪に食べられているんだよ!」

 

「何を言っているのさ?ジャイアン、当たり前の流れじゃない」

 

「!?」

 

 スネ夫の言葉にのび太は目を丸くする。

 

「人間が滅びないと僕達、妖怪がこの世界を支配することがなくなってしまうんだよ?」

 

 出木杉の頭から角が飛び出す。

 

「つ、角ォ!?」

 

「これは……」

 

「やぁ、劇の具合はどうかな?先生も楽しみにしているよ」

 

 ドアを変えて学校の先生がやって来る。

 

「先生、彼らが劇に協力してくれないんです」

 

「いや、俺達は」

 

「こんなのおかしいですよ!」

 

「そ、そうよ!人間を食べて妖怪が支配するなんて」

 

 里香と武の言葉に先生の視線が鋭いものになる。

 

「おかしくはない!そんなことを言い出すなど、お前達は何者なんだぁああああああ!」

 

 服を切り裂き、先生は人から巨大な悪魔のような怪物へ姿を変えた。

 

『ぎゃあああああああああああああああああああああああ!!』

 

 その姿にのび太達は全力で逃げだした。

 

 後ろ振り返らずに逃げ出したのはグリーム・アイズ以来だなぁと和人はどうでもいい感想を心の中で漏らす。

 

 何をどうやったのか覚えていないがのび太達はいつもの集合場所である空き地へたどり着いていた。

 

 全員が荒い息を吐いていた。

 

「と、とにかく、何か原因があるはずだ。調べないといけないな」

 

「いいか、のび太。ドラえもんと一緒に調べるんだぞ」

 

「え、僕だけ!?」

 

「いや、俺も行く……」

 

「アタシらはいったん、家へ帰るわ。気のせいだったかもしれないと思いたいし」

 

「二人とも、無理はしないでね」

 

 武、琴音、里香は一旦、解散して。

 

 のび太と和人は野比家へ向かう。

 

 周りに見つからないよう注意しながら二人は二階へ上がっていく。

 

「ドラえもん!」

 

「わかっている!様子がおかしいっていうんでしょ?」

 

「そうなんだ、実は」

 

「のび太!帰ってきていたのね?」

 

 玉子が上がってくる。

 

「あら、和人君も来ていたの?」

 

「あ、はい」

 

 少し警戒している二人、玉子は鋭い目でのび太をみる。

 

「のび太、帰ってきたのならただいまをいいなさい。それとも何か言えないこともであるのかしら?」

 

「え、あ」

 

「まさか、零点を取ったの!?」

 

 ニョキと玉子の頭から角が二本、そして鋭い牙が覗いていた。

 

「滅相もありません!!!」

 

 土下座してのび太は言う。

 

 和人とドラえもんはママの変貌にぎょっとしていた。

 

 のび太がウソをついていないとわかったのか角などが引っ込み、部屋から出ていく。

 

「ドラえもん!あんなのは嫌だよぉ」

 

「俺も、スグがあんな姿になっていると思ったらぞっとする」

 

 あんなママは耐えられない。

 

 もし、直葉に角とかが生えたら笑いごとで済まない。

 

 二人の言葉にドラえもんは頷く。

 

「まずは街をみてみよう。何かわかるかもしれない」

 

 ドラえもんからタケコプターを受け取り、三人は街へ繰り出す。

 

 彼らが普段利用している街はいつもと大差がないように見えた。

 

「普段と変わらないように見えるけれど」

 

「なんだろう?この肌寒い、変な気分」

 

「どことなく、妖気みたいなものが漂っているみたいだね」

 

「お、おい、何だよ。あれ」

 

 街の中心。

 

 ビルが並んでいる場所のど真ん中。

 

 そこに真っ赤な建物が存在していた。

 

「なにこれ!?僕達の街にこんなものはなかったよ!?」

 

「作りが中国風というか、日本じゃ、寺でしかみないようなものだぞ」

 

「やっぱりかぁ……」

 

 心当たりがあったのかドラえもんは確信する。

 

「ここは妖怪に支配された世界なんだ」

 

「「え!?」」

 

 ドラえもんが詳しい説明をしようとした時、建物から大量の蝙蝠が三人へ襲い掛かって来る。

 

「逃げろぉ!」

 

「わ、わぁ!」

 

「のび太!」

 

 和人に手を引かれてのび太は逃げる。

 

 どういうわけか蝙蝠はドラえもんよりものび太と和人へ狙いをつけていた。

 

「ひとまず、公園へ逃げよう!」

 

 ドラえもんの誘導に従い、彼らは公園の木々の中へ隠れる。

 

 しかし、蝙蝠は二人へ狙いをつけているようでぞろぞろと集まってきていた。

 

「こうもりホイホイ銃!」

 

 ドラえもんは独特なデザインの銃を構えると発砲する。

 

 放たれた槍のようなものに蝙蝠が集まっていく。

 

 やがて、それは巨大な蝙蝠傘に変わった。

 

「おいおい、これはすごいな」

 

「傘になっちゃった」

 

「……どうして俺達のことを狙っているんだ?」

 

「多分、二人が人間であることを気付いたんだよ……待てよ」

 

 ドラえもんが考える。

 

 あの蝙蝠は人間を狙う。

 

 街には妖怪しかいない。

 

 もしかして。

 

「ドラえもん!」

 

「みんなの危険が危ない!」

 

「明日奈!」

 

 三人は急いで探すために走りだす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 結城明日奈は町中を走っていた。

 

 その目は涙で濡れている。

 

 逃げるように走っていた明日奈の前に和人達が降りてきた。

 

「和人君!」

 

 最愛の人をみて明日奈は抱きしめる。

 

「明日奈……大丈夫か?」

 

「みんなが……みんなが妖怪に」

 

 嗚咽を漏らしながら明日奈は悲しみを漏らす。

 

 和人は優しく彼女を抱きしめ返す。

 

「明日奈さんは見つかったから、あとはシリカちゃんにリズ、フィリア、ジャイアンか」

 

「とにかく、家へ戻ろう」

 

 ドラえもんの提案に彼らは頷く。

 

 タケコプターで家の前へ降りた時。

 

「おい」

 呼ばれて彼らは身構える。

 

「アタシたちよ」

 

 茂みから現れたのは里香、珪子、ジャイアン、琴音だった。

 

 珪子は涙をこぼしてのび太に抱き着いた。

 

「ノビタニアンさん、皆さんが……」

 

「大丈夫だよ、シリカ」

 

 優しく珪子の頭をなでながら彼らは静かに二階へ上がる。

 

「おそらく、原因はヒーローマシンだ」

 

「どういうことだ?」

 

「あの時、のび太君を外に出すためにヒーローマシンの入り口を開けっぱなしだったんだ。多分、そこから妖怪たちが外へ出ちゃったんだ」

 

 ドラえもんの言葉にのび太達は戦慄する。

 

 話によれば、妖怪たちは三蔵法師を倒すためにプログラムされていたという。

 

「だったら、三蔵法師を倒して終わりなんじゃないのか?」

 

「ここからが問題なんだ。おそらく三蔵法師を倒したことで妖怪たちに自我が生まれて、この世界を支配しようとしたんだと思う。妖怪は原作にあるような力を持っているから普通の人間たちじゃ対処できない。だから」

 

「今の妖怪世界になったということか」

 

「どうにかできないのかよ!」

 

「シー!」

 

 叫ぶジャイアンを琴音が鎮める。

 

「方法はあるんだ」

 

 ドラえもんに全員の視線が集まる。

 

「あの時代に戻って妖怪たちをヒーローマシンで回収するんだ。勿論、僕達もヒーローマシンのヒーローになって戦うんだ」

 

「俺、また豚かよ!?」

 

「……アタシたちはどうすればいいのよ!?」

 

「落ち着いて」

 

「のび太?」

 

 階下から玉子の声が聞こえてきた。

 

「まずい、急ごう!」

 

 ドラえもんがポケットからヒーローマシンを取り出す。

 

 全員がヒーローマシンの中へ入り、システムによってヒーローが決められる。

 

「のびちゃん、帰ってきているの?のび太、帰ってきているなら返事しなさい。のびちゃん?のび太!」

 

「ママ……ごめんね」

 

 のび太はそういってタイムマシンに乗り込む。

 

「……あら?気のせいだったかしら、確かに声がしていたような気がしたのに」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 タイムマシンに乗り込んだはいいが、そこで問題が発生していた。

 

「だから、そんなに時間の変化はないんだよ」

 

『ピピ!時空法第一条一項、故意、もしくは事故によって時間が歪んだ場合』

 

「もういいよ!」

 

 ドラえもんがコンピュータのスィッチを切る。

 

「ドラえもん、大丈夫?」

 

「なんとかなるよ……そうだ、あれが使える」

 

 ドラえもんはポケットから秘密道具“気配アラーム”を取り出す。

 

 “気配アラーム”は警官がホイッスルをつけたような道具。

 

「これで妖気をたどれるはずだ」

 

「ドラえもんを信じるしかないな」

 

「それより、僕達はともかく、他の皆は大丈夫?」

 

 ヒーローマシンによって設定された悟空達一行とは異なり、里香や珪子、琴音は西遊記に出てくる天界の兵士たちの格好をしていた。

 

 しばらく時空間を進んでいたが急に気配アラームが音を立てる。

 

「反応があった!」

 

 ドラえもんが時間を計測してタイムホールから出ていく。

 

「う、うわっ!?」

 

 最初に外へ出たのび太だが、目の前に広がる崖に落ちそうになった。

 

 そののび太の腕をジャイアンと和人が掴む。

 

 タイムホールから全員が出たところで、ドラえもんが“ほんやくコンニャク”を与える。

 

「また、コンニャク?」

 

「これを食べたら、どんな言葉でも理解できるんだ」

 

 首を傾げる明日奈に和人が説明する。

 

「あ、ありがとう」

 

「すっげぇ、崖だな」

 

「このところに妖怪がいるのか?」

 

 狭い道を彼らは進む。

 

「ここに妖怪がいるの?ドラえもん」

 

 里香が尋ねる。

 

「間違いないよ」

 

「その道具、宛になるのかよ」

 

「あ、見て!」

 

 琴音ががけ下を指す。

 

 落ちていく岩の隙間をボロボロの法衣を纏った男性と乗っている馬を引いている少年がいた。

 

「あれ、三蔵法師じゃないかな?」

 

「多分、そうですよ!」

 

「……キリト君、この落石、おかしくないかな?何か、三蔵法師様を狙っているような気がするわ」

 

「もしかして、いたぞ!」

 

 ドラえもんの言葉通り、崖上から岩を落としている悪魔のような妖怪がいた。

 

「いよいよ、回収作業をはじめるよ」

 

「ドラえもん、タケコプターを」

 

「あのね」

 

 のび太にドラえもんが呆れた声を出す。

 

「いっておくけれど、キミ達はヒーローマシンで西遊記のキャラになっているんだ。のび太君は孫悟空としての力を使えるんだよ?」

 

「もしかして……筋斗雲!」

 

 のび太が叫ぶと目の前に雲が現れる。

 

「凄い……先に行くよ!」

 

 落下してくる岩を如意棒ではじきながらのび太は上昇していく。

 

「ドラえもん!」

 

「はい、タケコプター!明日奈さんは三蔵法師をお願い!」

 

「わ、わかったわ」

 

「みんな、無茶しないでね」

 

「シリカ、アタシたちは上の妖怪を殴りに行くわよ!」

 

「は、はい!」

 

 ドラえもんからタケコプターを受け取る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「見つけたぞ!妖怪……って、もしかして、金角、銀角じゃない?」

 

「あ?なんだ、貴様は」

 

 のび太が崖の天辺へ行くと“キン”“ギン”と書かれた鎧をまとった鬼みたいな角を生やした妖怪がいた。

 

「そうだが、なんだ、貴様!?」

 

 金角がのび太へ叫ぶ。

 

「……僕は、おっと」

 

 襲い掛かろうとする悪魔を如意棒で弾き飛ばしてのび太は叫ぶ。

 

「孫悟空、だい!」

 

 最後に妖怪のタックルを受けてしりもちをつきながらのび太は言う。

 

「「孫悟空!?」」

 

「その仲間、沙悟浄だ!」

 

「同じく、猪八戒!」

 

「ドラえもんだ!金角、銀角!大人しくマシンに戻りなさい!」

 

「黙れ!こんな奴ら、とっとと倒してしまえ!」

 

 銀角の言葉と共に妖怪たちが襲い掛かって来る。

 

  和人は持っている武器で悪魔を追い払う。

 

「VRと比べると鈍いが……行ける!」

 

 持っている武器を見ながら和人は駆け出す。

 

 ジャイアンは手持ちの桑で悪魔たちを一掃していく。

 

 少し遅れて里香と珪子がやってくる。

 

「のび太さん!」

 

「うわ、悪魔だらけ」

 

「二人とも!ドラえもんの手助けを頼む!」

 

 和人は一人、金角銀角と対峙しているドラえもんの手助けを頼む。

 

「急いで!あいつらの持っているヒョウタンは答えちゃうと、吸い込まれちゃうから!」

 

「行くわよ、シリカ!」

 

「はい!」

 

 二人は武器を構えて悪魔を蹴散らしていく。

 

 ドラえもんは金角銀角へ訴えていた。

 

「今すぐ、マシンに入っちゃいなさい!」

 

「何なんだ、このタヌキは!」

 

「タヌキじゃなーい!僕はドラえもん!」

 

 銀角を突き飛ばしてドラえもんは叫ぶ。

 

「ほう、ドラえもんか」

 

 金角は怪しく笑う。

 

「危ない!」

 

 里香が悪魔のような妖怪を蹴散らしてドラえもんへ向かおうとする。

 

「ドラえもんさん!答えちゃダメです!」

 

 珪子も叫ぶが妖怪に阻まれてしまう。

 

「ドラえもんというのだな?」

 

「そうだって……あれぇ~~~~」

 

 ヒョウタンに吸い込まれてドラえもんは消えていく。

 

「あ、ドラえもん!!」

 

 一足遅く、里香がその場に到着するも間に合わなかった。

 

「そんな、ドラえもんが」

 

「……ふふふ、これでおいしい狸酒が飲めるわ」

 

 金角は笑いながらヒョウタンを揺らす。

 

 ヒョウタンの中、ドラえもんはのそりと体を起こした。

 

「全く……僕はロボットだから、溶けないってのに」

 

 ポケットからどこでもドアを出す。

 

「そんな、ドラえもんさんが溶けちゃう!?」

 

「このぉ!」

 

 のび太が如意棒を振り下ろすが金角はひらりと躱す。

 

「早く溶けろ、溶けて」

 

「心配無用~」

 

 どこでもドアが出現してそこからドラえもんが現れる。

 

「ドラえもん!?ウソ!?」

 

「よかったです……でも、どうして」

 

「あのね、僕はロボットなんだ。溶けることはないよ。それより」

 

 ドラえもんは金角を睨む。

 

 ポケットからヒーローマシンを取り出す。

 

「やい、金角!」

 

「なんだ!?」

 

 ドラえもんの叫びに答えた金角はヒーローマシンに吸い込まれていく。

 

「金角!?おのれぇ、ならば、三蔵だけでも!」

 

「なっ、待て!」

 

 竜巻になって飛んでいく銀角を、和人は追いかける。

 

「あ」

 

 迂闊にも和人はALOのような感覚でいた。

 

 しかし、ここは現実。

 

 沙悟浄の力を持っていたとしても和人は飛べない。

 

「し、しまっ」

 

 落ちるという瞬間、筋斗雲に乗ったのび太がその腕を掴む。

 

「急ぐよ!」

 

「おう!助かった!」

 

 二人ががけ下へ向かうと三蔵法師をかばっている明日奈、琴音。その前に銀角が立っていた。

 

 今にも三蔵法師へ襲い掛かろうとする銀角だが、三蔵法師の傍に控えている少年を見て険しい顔になっている。

 

「うぉおおおおおおおおおおおおお!」

 

「うわぁあああああああああああ!」

 

 上空からのび太と和人の武器が銀角の体目がけてへ振り下ろされる。

 

 しかし、二人の攻撃を受けても銀角は平然としていた。

 

 二人はがむしゃらに攻撃を仕掛けるが、やがて竜巻となって銀角は飛んで行った。

 

「あ、あれ?」

 

「逃げた……か」

 

 二人はぺたんと地面へ座り込んだ。

 

 銀角が逃げていくと悪魔――天狗蝙蝠は逃げ去っていく。

 

 戻ってきた仲間たちと合流したところで三蔵法師が尋ねる。

 

「あなた方は一体?」

 

「あ、えっと、僕達は三蔵法師が天竺へ行くまでに阻む妖怪を倒すためにやってきました。僕達がいれば大丈夫です。安心して旅を続けてください」

 

「ありがとうございます」

 

 三蔵法師はぺこりと頭を下げて、彼の弟子ことリンレイが前に出てくる。

 

「悟空様、沙悟浄様、三蔵様は私が必ず守ります。ご安心ください」

 

 ぺこりと頭を下げて彼らは旅を再開する。

 

「なんとか妖怪を回収できたね」

 

「だが、まだまだ妖怪はいるんだ。僕達も行こう」

 

 ドラえもんの言葉にみんなが頷く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜。

 

 砂漠のど真ん中でデラックス・キャンピングカプセルという巨大な宿でのび太達は休息をとっていた。

 

 晩さん会を楽しみ、あとは寝るだけになっている。

 

 和人も用意された部屋で寝ようとした時、控えめに扉がノックされた。

 

「はい」

 

「キリト君、少し、いいかな?」

 

 扉を開けて顔をのぞかせたのは明日奈だった。

 

 三蔵法師の法衣ではなく、部屋に用意されていた寝間着を纏っている。

 

「明日奈、どうしたんだ?」

 

「少し、お話、しない」

 

 和人は頷いて部屋へ招き入れる。

 

「まだ一日しか過ぎていないけれど、とんでもない一日だったね」

 

「そうだな、俺たちの住んでいる世界が妖怪だらけになって、まぁ、今回は俺達が原因なんだけどな」

 

 小さく和人は苦笑する。

 

「それと、驚いたよ」

 

「え?」

 

「キリト君とのび太君……SAOで聞いていた冒険。ここまで凄いものだって思わなかったなぁ」

 

「まぁ、ドラえもんがいるからなんとかなっていたんだけどな」

 

「……私達、元の世界に帰れるよね?」

 

「当然だ。俺達はSAOもクリアしたんだ。世界を戻すことだってできるさ。何より、俺達は今、三蔵法師一行だからな」

 

「キリト君……」

 

「だから、大丈夫だ。必ず元の世界に帰れる」

 

 二人はそういって顔を近づけていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

別の場所。

 

 寝間着姿ののび太は外に出て景色を見ていた。

 

「ノビタニアンさん?」

 

「やぁ、シリカちゃん、どうしたの?」

 

「少し寝れなくて……ノビタニアンさんは」

 

「僕も、少し外で涼めば寝れるかなぁって」

 

 二人はちょこんと砂の上に座り込む。

 

「少し考えていたんですけれど、ノビタニアンさんが孫悟空のモデルだったんじゃないでしょうか?」

 

「僕が?」

 

「はい」

 

「うーん、僕としては少し複雑かな。今回の騒動は僕が原因だから」

 

 のび太がヒーローマシンを外で起動しなければ。

 

 孫悟空のモデルを探すなんてことを考えなければ。

 

 ヒーローマシンでその場しのぎの対処を考えなかったら。

 

 こんなことにはならなかった。

 

 表情はそのままでのび太は言う。

 

 彼は後悔していた。

 

「でも、ノビタニアンさんはそれを止めようとしているじゃないですか!」

 

「……そうだね、でも」

 

「ノビタニアンさんはキリトさんと同じくらい自分だけで背負い過ぎですよ」

 

「僕は」

 

 珪子の言葉にのび太は言葉を詰まらせる。

 

「私達だって、仲間です。ドラえもんさんも、キリトさんも、リズさん、アスナさん、フィリアさん、ジャイアンさんも、多くの皆が仲間です。だから、少しくらい、頼ってください」

 

「……ありがとう、シリカちゃん」

 

 のび太は心の底から感謝する。

 

「い、いえ、私もノビタニアンさんの役に立てるなら!」

 

 力拳を作って珪子は叫ぶ。

 

 その姿にのび太は頷いた。

 

 


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