あと、仕事が忙しくて更新がしばらく不定期になります。
なるべく、更新はしていきます。
大長編も資料を集めたりしていきますので、少しばかり時間がかかります。
「やぁ、野比君」
「出木杉君。ごめんね。忙しいのに」
学校の食堂。
そこで野比のび太は出木杉英才と話をしていた。
「いいよ。それより、どうしたの?」
「実はァ……デートのことについて相談したくて」
「え?」
飲もうとしていたコップをあやうく出木杉は落としそうになった。
慌ててのび太がキャッチしたので難は逃れる。
「あぁ、ごめん。少し驚いちゃって。えっと、デートの相手って、紺野君かな?」
「へ?」
「あ、もしかして、綾野君?」
「違うんだ。デートの相手は詩乃ちゃんで」
「朝田君?本当に?」
「いや、なんでそんなに疑うの」
「えっと、気にしないでくれるかな?」
のび太は知らないがALOをプレイしている中でシノンのような気の強い女性にいじられているノビタニアンをみていて、いじる、いじられる相手という関係なのだろうなというのがギルド、ジャイアンズの考察だった。
「(考えを改めないといけないね)」
「出木杉君?」
「ごめんごめん、デートだけど、どういうプランなの?」
「実は……」
朝田詩乃は一人暮らしをしている。
その家は少し前に滅茶苦茶になったが未来からやってきたネコ型ロボットの手によって綺麗になっていた。
シャワーを浴びて、詩乃は服を着替える。
普段はなるべくシンプルなものを選ぶのだが。
「薄めにして、攻めてやろうかしら」
彼女がこれからデートをする相手は超がつくほどの鈍感。
勿論、告白はまだしない。
あくまで相手に自分のことをちゃんとした女だと意識させるためだ。
「アイツは、女であろうと男だろうと仲間というくくりでしかない。少しくらい女として意識させてやる」
そうして、距離を取ろうものなら。
「寝込みを襲う……いやいや、こんな過激なことを考えるなんて駄目ね」
少なからず自分も緊張しているのかもしれない。
詩乃はそう思いながら時間を見る。
そろそろ約束の時間だ。
着替えを終えた詩乃は外に出る。
今日はのび太とデートだ。
よし、行こう。
「うぅ、緊張するよぉ」
約束の時間の二十分前。
野比のび太は待ち合わせの場所に一人来ていた。
出木杉と相談して、デートの心構えを教えてもらい、待っているのだが。
「ゾンビの射撃って、大丈夫かなぁ?」
詩乃のデートプラン。
期間限定のシューティングゲームに参加。その後は食事や映画という丸一日を費やしたデート。
流れを想像してのび太は緊張する。
果たしてうまくいくかどうか。
「ごめんなさい、遅れたわ」
考えていたら詩乃がやってくる。
「ううん。僕が少し、先についちゃっただけだから」
「そう……どうしたの?」
詩乃はのび太がじっと見ていることに気付く。
「いや、その服、似合っているなぁって」
白を基調とした服を着ている詩乃をみて、感想を漏らすのび太。
小さく詩乃は微笑む。
「そういってもらえると嬉しいわね。さ、行くわよ」
「え、ちょっ!?」
微笑みながら詩乃はのび太の腕を掴んで歩き出す。
思いっきり体で抱きしめられたから彼女のぬくもりを感じてしまってのび太は顔を赤くしてしまう。
「何、赤くなっているのよ?この程度、SAOやGGOでもあったでしょ?」
「いや、あれはVRであって、ほら、リアルとは」
「うるさい、行くわよ」
「えぇ!?」
少し頬を赤くしながらのび太を引っ張るようにして詩乃は歩き出す。
そんな二人を後ろからみている三人の姿に気付かず。
「な、なぁ、明日奈。ドラえもん、こんなこと、しなくていいんじゃないか?」
桐ヶ谷和人は目の前の二人へ静かに問いかける。
「何を言っているんだ!あののび太君がデートなんだよ!?変な問題が起きないか見守る義務が僕にはある!僕はネコ型ロボットである前に子守りロボット!それに、見守るだけだよ。ほら、温かい目!」
「だって、シノのんは少し前に色々あったんだよ!変な連中に絡まれないように見守るのは必要だよ!大事な友達の幸せを願うことは当然よ!ほら、温かい目!」
「二人して、その目はやめろ!」
目の前で変なスイッチが入ったのか尾行する気満々の和人の恋人の結城明日奈。そして、お世話ロボットのドラえもん。
この二人、のび太と詩乃がデートをすると聞いた途端、こんなスイッチが入ってしまった。
「(少し、恨むぞぉ。出木杉ィ)」
二人がデートする情報をリークした相手の顔を思い出して和人は溜息を吐く。
何よりドラえもんがやる気に満ち溢れていることが少し怖い。
相手は二十二世紀のネコ型ロボット、ドジな部分はあるが、本気を出したらとにかく止められない。未来の道具はどれも強敵なのだ。
「二人に見つかるとまずい!これを使おう!」
ドラえもんが取り出したのは“透明マント”。
三人は透明マントを装着して、尾行する。
「(これ、ユウキがデートするときになったら明日奈がどうなるか、少し怖いな。のび太、頼むから変な気を起こすなよ?そうなったら、骨だけは拾うように努力するから)」
親友の未来を想像して和人は小さく合掌した。
「ブルッ!?」
「どうしたの?」
「ううん、少し寒気が……エアコンが強いのかな?」
三人に尾行されていることを知らない二人はあるビルの中へ入っていた。
二人がいるのは期間限定で行われているゾンビを倒すシューティングゲーム。
「そういえば、詩乃ちゃん。これって、警官と女性がゾンビと戦うゲームみたいだけどさ……どっちが警官なの?」
「私に決まっているでしょ、お嬢さん」
「あははは、じゃあ、頑張ってサポートするよ」
支給されているおもちゃの拳銃をみながらのび太は答える。
内心、警官はのび太だろうと思っていたが、狙撃手としてのプライドと、恥ずかしいから自分がヒロインに向いていないと思っているから、詩乃は素直に言えなかった。
「来るわよ、準備は良い?」
「怖いけれど、なんとか」
足が震えているのび太をみて詩乃は小さく笑う。
「何かあれば私が手を引いて、連れて行ってあげるから」
「あははは、お願いします~」
二人はやって来るゾンビに発砲する。
攻撃を受けたゾンビは倒れて、のび太と詩乃にポイントが与えられていく。
不意打ちで襲い掛かって来るゾンビが出てくるがそれはSAOなどの経験からかろうじて回避して撃ち倒す。
「これ、六連発バーストできないなぁ」
「GGOや西部の星みたいなチートするんじゃないわよ」
「だよねぇ……」
そんなことを考えながら逃走をしているが、ゾンビは追いかけてくる。
「どうしょっか!?」
「どちらかが囮になるべきかしらね」
「囮かぁ……あれ?」
ゾンビたちが急に向きを変えたと思うと走り出した。
どうしたのだろうと思うと何かに向かって走っている。
同時にバタバタと悲鳴みたいなものが聞こえていた。
「何、かしら?」
「さぁ、でも」
「「チャンス!!」」
二人は同時に銃を構える。
このゲームにおいて二人は最高得点をたたき出した。
その頃、透明マントで隠れていた和人達は。
「いゃああああああああああああああああああああああああ!」
「明日奈、それはロボット!ロボットだから!振り回さなくていいから!」
暴れる明日奈の手を引いて和人はその場から逃げようとする。
ちなみにドラえもんは足元にやってきた鼠を見て気絶していた。
「くそぉ、なんで、こうなるんだよぉぉぉぉおお!」
和人は二人を連れて全力でゾンビから逃げ続けた。
昼。
のび太と詩乃の二人はファミレスに来ていた。
ハンバーグセットをのび太は選ぶ。
詩乃はピラフをチョイスした。
「それにしても、最後のゾンビたち、あれは苦労したね」
「よく言うわよ。無駄弾使わずにポイント稼いでいたんだから。これでGGOをプレイしていなかったというのが信じられないわ」
「まぁ、ほら、僕、和人としかゲームとかしてこなかったからさ、あまり一人でプレイしようなんて考えなかったんだよねぇ」
「そうなの?」
「うん。ドラえもんがいなくなってから、和人と遊ぶことが多かったから」
「…………そうだったわね。アンタ、ドラえもんがいなくなってからは」
「まぁ、少しやさぐれていましたから」
誤魔化すように口調を変えたのび太。
ハンバーグを食べ終えてから詩乃へ尋ねる。
「えっと、次って」
「映画よ……少し、みてみたいものがあるから」
少し歯切れの悪い詩乃に首を傾げながらのび太は映画のタイトルを尋ねる。
「なんでどら焼きがないのさ!?」
「ファミレスにどら焼きは普通ない!」
「のび太君!そこはシノのんにあーんをするところだよ!」
「明日奈、声を小さくしないと見つかるから!」
「和人「キリト君、静かにしないと見つかる!」」
「……すいません」
二人に怒られて理不尽だと和人は心の中で呟いた。
「いやぁ、星野スミレさん、復帰していたんだね」
「アンタがSAOに囚われてからしばらくして、復帰したみたいよ。噂だと結婚するから引退するみたいな話だったらしいけれど。詳しいことは知らないわ」
星野スミレが主演の恋愛映画を二人はみてきた。
「結婚?」
「えぇ、色々と噂があったわ。落目なんとかとデキていたとかくだらない話もあったけれど、それは違うみたいだし」
「そっか」
のび太は遠い目をして頷いていた。
「アンタ、どうしたの?」
「ううん。ほら、僕らもいつか、大人になるわけじゃない?だから……その、誰かといつかは結婚するのかなぁって」
小学生の頃はしずかちゃんと結婚すると思っていた。しかし、未来は変わる。
彼女は今、出木杉といい雰囲気だし、のび太自身、祝福はしていた。
こんな自分と結婚してくれる人なんているのだろうか?
「……ちょっと、ついてきて」
詩乃はのび太の手を引いて歩き出す。
連れてこられるのは小さな児童公園。
のび太は彼女に言われるまま、ブランコへ腰かける。
その隣へ座って詩乃は無言でブランコをこぎ始めた。
「あの、詩乃ちゃん?」
「結婚」
「え?」
「アンタ、今、付き合いたい人とかいないの?」
のび太の顔を見ないまま、詩乃は尋ねる。
その言葉の真意をわからないのび太は首を振った。
「わかんないかなぁ」
「わからない?」
「うん、少し前まではしずかちゃんと結婚したい!と思っていた。でも、今は違う。それにSAOで生き残るのに必死で恋愛なんて考えてこなかった」
「今は?アンタは色々と親しい女子がいるでしょ?ユウキ、シリカ……私とか」
「そうだけど……」
のび太は悩む。
どうしても、答えを出すことができない。
「……そう、わかったわ」
ブランコから降りると詩乃はのび太の前に立つ。
「詩乃、ちゃん?」
何かする暇もないまま、のび太は詩乃に抱きしめられる。
突然のことに目を白黒させるのび太に囁く。
「アンタは誰かを好きになることが怖いんじゃないの?」
「怖い?」
そんなこと、と否定しようとするが言葉が出ない。
「きっと、アンタは今の幸せな時間が壊れることが嫌で嫌で仕方ないのよ。だから、無理に自分から進もうとしない」
「それは」
「でも、関係ないから」
「え?」
「アンタのことを本気で好きな私達はそんな気持ちを上塗りさせるくらい、愛して見せるから」
「あ、愛して?」
「私はアンタのことが好きよ」
「!?」
のび太は目を見開く。
「何をいまさら驚いているのよ。GGOでも、その……キス、したじゃない」
「あ、いや、あれは」
「初めて、だったのよ」
詩乃の言葉にのび太の顔が真っ赤になる。
あの時のことを思い出したようで二人とも真っ赤。
しばらく、沈黙が場を支配する。
「とにかく!これから私はアンタにどんどんアタックしていく。今が幸せだけじゃなくて、これから私と一緒にいることが幸せだと思えるようにね……」
「詩乃ちゃん」
「言っておくけれど、私を強くしてくれたのはアンタだってこと、忘れないで」
詩乃はそう言って離れる。
「さ、帰りましょう」
彼女の手を掴んでのび太は立ち上がる。
「その前に」
二人はそろってある場所を見た。
「アンタ達、いつまで隠れているつもり?」
「そろそろ、出てきてほしいな。和人、ドラえもん、明日奈さん」
ギク!と音を立てて近くの茂みが揺れた。
「出てこないなら」
「こっちから行くよ」
「ま、待った!」
茂みから透明マントを脱いだ和人が現れる。
「和人……」
「アンタ」
「いや、悪いのはこっちなんだが、すまん。ほんの少しだけ待ってくれ」
「「え?」」
和人の様子がおかしいことから二人は茂みの中を覗き込む。
見なければよかったと二人はすぐに後悔した。
「うわぁあああん!のび太君!ごめんね!僕はそんなことすら気づけなかったよ!お世話ロボット失格だぁあああああ!」
「シノのん!かっこいいよ!うん、私も頑張るよ!キリト君と頑張って幸せになるからシノのんも幸せになってねぇ!いえ、幸せにしてみせるよ!!」
地面に座り込んで泣きじゃくっているドラえもんと明日奈。
その光景を見たのび太は和人へ尋ねる。
「なに、これ?」
「二人の会話を見たらこうなったんだよ……その、すまん」
謝る和人の姿に二人は自然と笑ってしまった。