ドラえもん のび太と仮想世界   作:断空我

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08:紅の殺意

 アインクラッド第五十五層主街区、そこは鉄の都といわれている。

 

 全てが鋼鉄製であり、無機質で冷たい雰囲気が街を覆いつくしていた。

 

 そんな街に血盟騎士団の本部がある。

 

 広い空間に腰かけている男性こそ、血盟騎士団団長であり最強と言われる剣士、ヒースクリフ。

 

 そんな彼とキリト、アスナが集っていた。

 

「久しぶりだね、キリト君。前に会ったのはいつだったかな?」

 

「第六十七層のボス攻略の時だ」

 

「そうか、あれはつらい戦いだったな。我々も犠牲を出しそうになりながらもかろうじての勝利だった。あれは君たちがいたからこそ」

 

「世間話をするために呼び寄せたわけじゃないだろ?アスナの話だと少し休みたいと言えば、問題あるそうじゃないか」

 

「話の腰を折ってしまってすまないね。常に我々はギリギリの戦力で挑んでいる。そんな中でうちの副団長をかっさらわれてしまっては困るのさ」

 

「そんな愚痴をこぼすためだけに俺を呼んだわけじゃないだろう?」

 

「キリト君、アスナ君が欲しければ君の二刀流で奪いたまえ、私とデュエルをするのだ。勝てばアスナ君を連れて行くのだ。負ければ血盟騎士団へ入るのだ」

 

「決闘は受ける。ただし、ギルドへ入ることはできない。俺はノビタニアン達とパーティーを組んでいる」

 

「ふむ、ならば、血盟騎士団としていくつか仕事を引き受けてもらうということにしてもらう」

 

「それなら、問題ない」

 

 ヒースクリフからの提案をキリトは受け入れた。

 

 血盟騎士団主催のヒースクリフVSキリトのデュエルが決まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「バカじゃないの?」

 

 巨大なコロッセオのような建物。

 

 その一室で待機していたキリトへノビタニアンが罵倒する。

 

「アスナさんを休ませたいならキリトが戦う必要はないでしょ?」

 

「そうかなぁ?譲れないものがあるなら戦え。ボクならデュエルしたと思うなぁ!それに一度、やり合ってみたかったんだよねぇ。ヒースクリフの神聖剣と」

 

 ヒースクリフのユニークスキル、神聖剣。

 

 盾と剣による一体化した攻撃。

 

 噂によると一度もHPがイエローゾーンに達したことがないという。

 

 そんな相手と決闘するキリトを戦闘大好きユウキは羨ましがっていた。

 

 やれやれとノビタニアンは肩をすくめる。

 

「ごめんね、ノビタニアン君、私のことなのに」

 

「アスナさんは悪くないよ。キリトが悪いことだから」

 

「仕方ないだろ?あれ以上、こじれたらどうしようもなかったんだから。それに負けても手伝いをするだけだ。安いもんさ」

 

「どうだか」

 

 やれやれというノビタニアン。

 

 時間となりキリトは会場へ向かう。

 

「頑張ってね」

 

 アスナに声援をもらい、キリトは舞台へ立つ。

 

「随分と派手に宣伝したみたいだな」

 

「私は許可していなかったのだがね」

 

「その発言、管理が行き届いていない証拠だな。ノビタニアンがうるさくなりそうだ」

 

「手厳しい。手伝いとしてギルドの管理も手伝ってもらうとしよう」

 

「すでに勝ったつもりか、始めようぜ」

 

 試合開始のカウントダウンが始まる。

 

 キリトはエリュシデータとダークリパルサーの二つを構え、ヒースクリフは盾とインセインルーラーを構えた。

 

 ブザーと共に二人は同時に駆け出す。

 

 

「はじまったね!」

 

「キリト君……」

 

「大丈夫」

 

 心配そうに戦いを見守るアスナへノビタニアンは微笑む。

 

「キリトは強い。必ず勝つよ」

 

「うん……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 コロシアムの中央、そこで黒と赤、二つの剣と一つの剣がぶつかりあう。

 

 砂煙をまき散らしながら激しく打ち合う黒の剣士と最強の剣士の戦いは一進一退を繰り返す。絶妙なバランスの上に成り立っていた。

 

「こうして戦うのは初めてだが、成程。これほどの実力。流石だ」

 

「鉄壁の防御は文字通りみたいだな。それにしても、しゃべっていると」

 

 ヒースクリフの背後へ回り込んだキリトの一撃が捉える。

 

 とっさに盾で防ぐも少し遅ければダメージは免れなかった。

 

「ケガするぜ?」

 

「そのようだ」

 

 目の前の戦いにおいて、キリトは一度もソードスキルを使っていない。

 

 しかし、繰り出した斬撃は既に百を超え始めていた。

 

 わずか五分なれど、彼がこれだけの攻撃をできていたのは一重にパーティーメンバーのおかげだった。

 

 スピード重視の連続攻撃を得意とするユウキ。

 

 盾で攻撃を防ぎ、重たい一撃で敵を倒すノビタニアン。

 

 自分と同じ、もしくはそれ以上の力を持つ彼らと共にスキルを鍛え上げたからこそ、キリトの力はかなりのものになっていた。

 

 だからこそ。

 

「ここだ」

 

 キリトはソードスキルを使うことにした。

 

 十六連撃ソードスキル、スターバースト・ストリーム。

 

 突然のソードスキルにヒースクリフは驚きながらも盾で防ぎ続ける。

 

 しかし、勢いを増す斬撃に押され始めていた。

 

 スターバースト・ストリームの十五撃目においてヒースクリフは体勢を崩す。

 

 今まで防御に意識を置きすぎたことで疲労が溜まり、目が剣を追うことに限界を迎えてきていたのだ。

 

 体勢を崩したところでキリトがダークリパルサーを突き出す。

 

 この攻撃が決まれば、キリトの勝利。

 

「(なに?)」

 

 剣が直撃するという瞬間、ヒースクリフの盾が動き、弾き飛ばす。

 

 突然のことに動きが止まった隙を彼の剣が迫る。

 

「私の勝ちだ」

 

 ヒースクリフが勝利を確信した時、キリトは手の中で剣を回す。

 

 彼の剣がぶつかるという瞬間、エリュシデータが盾となって剣を防ぐ。

 

 しかし、無理な体勢に加えてとっさのことだったことで完全に殺しきれず、剣がキリトの肩を貫いた。

 

 試合終了のブザーが鳴り響く。

 

 勝者はヒースクリフだった。

 

 剣をしまい、二人は向き合う。

 

「良き試合だった。キリト君」

 

「こちらこそ、流石だな」

 

 二人はそういうと互いに握手を交わす。

 

 観客たちは大興奮で拍手を送る。

 

 互いに背を向けて控室へ戻った。

 

 戻る途中、キリトはヒースクリフの後姿を見る。

 

 その目は何かを秘めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「では、キリト敗北の残念会を開始しようと思います。乾杯~」

 

「おい!?」

 

 ノビタニアンの乾杯音頭に待って!と言うようにキリトが意見するも、参加者は静かにグラスをぶつける。

 

 参加者はエギル、ユウキ、アスナ、リズベッド、ノビタニアンだ。

 

 リズベッドはアスナが誘ったのだ。

 

「アタシも観ていたけれど、あの神聖剣ってスキルとんでもないわね。それと真っ向からぶつかりあう、アンタもアンタだけど」

 

「いいなぁ、本当に羨ましいなぁ~、ボクもデュエル申請しようかなぁ?」

 

「神聖剣と黒の剣士の次は紫の剣士が相手って、金取られるわよ?」

 

「確かに、今回のことであれだけの観客がいたんだ。かなり稼いだだろうな」

 

「流石商売人、抜け目がないなぁ」

 

 ノビタニアンが感心している中、アスナはキリトと話をしていた。

 

「ごめんね、私のことでキリト君を巻き込んじゃって」

 

「別に気にしていないよ。俺としては強い奴とデュエルできた得があったし、血盟騎士団も手伝いだから。問題もない」

 

「焦ったよぉ、もし、キリトがギルドに入ったらどうしようって~」

 

「いや、それはないから」

 

「安心したよ。キリトがいなくなったらノビタニアンがタゲを取ることで苦労しそうだから」

 

「お前がやるってことはないんだな」

 

 ユウキの言葉にキリトは苦笑した。

 

 もし、二人だけとなったら昔みたいにノビタニアンが泣きついてくるのだろうかと思ってしまう。

 

 あの時の光景を思い出してキリトは笑う。

 

「どうしたのさ?」

 

 こちらの視線に気づいたのだろうノビタニアンが尋ねてきた。

 

「なんでもないさ。それよりも数日抜けるけど、頼むぜ?」

 

「了解だよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なぁ、本当にこれ、着ないといけないのか?」

 

 キリトはアスナに尋ねる。

 

 今の彼は黒い装束ではなく、血盟騎士団のユニフォームを待っている。

 

 二人がいる所は第五十五層の主街区グランザムの血盟騎士団本部。

 

 今日からギルドの手伝いということでキリトはここにいた。

 

 しかし、手伝いである以上、血盟騎士団へ貢献してもらうということでキリトはその制服を着ていた。

 

「ごめんね、巻き込んじゃって」

 

「別にいいさ。多分、ここで関わらなかったらノビタニアンに怒られていただろうし」

 

「……ずっと前から気になっていたけれど、キリト君とノビタニアン君って」

 

「おぉ!そこにいたか!」

 

 キリトへ向けて野太い声がかけられる。

 

 大斧を背負ったもじゃもじゃの巻き毛が特徴な大柄男性。血盟騎士団の幹部で名前をゴドフリーという。

 

「俺に何か?」

 

「ウム、これより訓練を行う。私を含む四人のパーティーを組み、五十五層の迷宮区を突破して五十六層主街区まで到達するというものだ。手伝いとはいえ、参加してもらうぞ」

 

「ちょっと、キリト君は私が」

 

 アスナの抗議にゴドフリーは大きく笑う。

 

「いくら副団長と言われても、彼は新入り。規律を蔑ろにするわけにはいきません。何より手伝いとはいえ、血盟騎士団に名を連ねるのならその実力を見せてもらうのが筋というものでありましよう!」

 

「あ、アンタなんか問題にならないくらいキリト君は強いわよ!!」

 

「アスナ、落ち着いてくれ……集合場所と時間を教えてくれ」

 

「聞き分けがよくてよろしい!三十分後に街の西門だ!」

 

 ゴドフリーはそう言うとその場を後にした。

 

「キリト君、私も、その、一緒に行こうか?」

 

「ここから一層上へいくならすぐに到達できるさ。大丈夫だ」

 

 心配そうな表情のアスナにキリトは言う。

 

「気を付けてね」

 

「あぁ、またあとで」

 

 言葉を交わしてキリトとアスナは別れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これはどういうことだ?」

 

 ゴドフリーの指定された場所へ到着すると、そこにはゴドフリー以外に二人のプレイヤーがいた。

 

 その中の一人、先日、キリトと決闘したクラディールの姿があった。

 

「キミ達の事情は聴いている。だが、これを機会として今までの騒動を水に流してはどうかと思ってな!」

 

「先日は、ご迷惑をおかけしまして、申し訳ありません」

 

「い、いや、こちらこそ」

 

 項垂れるクラディール。

 

 今までの態度が嘘のような姿にキリトは面食らってしまう。

 

「一件落着したところでそろそろ出発だな。その前に今日の訓練は限りなく実戦に近い形式で行う。諸君らの危機対応能力も見たいので、結晶アイテムはすべて預からせてもらう」

 

 攻略に身を投じるプレイヤーにとって結晶アイテムは緊急時の生命線。

 

 唯一の離脱手段である転移結晶などがそれにあたる。

 

 この話を一般プレイヤーが聞けば、無茶苦茶だと言うだろう。

 

 しかし、キリト達は何も言わずにアイテムを差し出す。

 

 ゴドフリーを先頭にクラディール、もう一人、最後にキリトが歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 キリトは後悔した。

 

 主街区のグランザムを出てから目的の迷宮区が近づいてくる。

 

 ビーターであるキリトがいながらあまりの遅さに辟易していた。

 

 その理由は筋力特化型のゴドフリーがパーティーを率いているからだろう。これがノビタニアンやユウキと一緒なら今よりも早く到達できただろう。

 

「よし、ここで休憩!」

 

 迷宮区手前、そこにある安全エリアへ入ったところでゴドフリーが叫ぶ。

 

 各々、身近な岩に腰かけて休みを取る。

 

「では、食料を配布する」

 

 ゴドフリーはウィンドウを操作してアイテムを取り出す。

 

 受け取ったアイテムの中身を見る。

 

 水の入った瓶とNPCショップで格安で売られているパンであった。

 

「(アスナの料理を恋しいと思うなんてなぁ)」

 

 目の前のパンを手に取り、キリトは咀嚼する。

 

 その時、視線を感じた。

 

 キリトが周りを見るとクラディールと目が合う。

 

 彼は何かを待つようにキリトを見ていた。

 

 その顔の端が歪んだ。

 

「うぐっ!?」

 

 瓶を落としたキリトの視界にバッドステータスが表示されていた。

 

 麻痺。

 

 ゴドフリーやもう一人も地面に崩れ落ちた。

 

「ど、どういうことだ、この水を用意したのは……クラディール!!」

 

「クッ……クックックッ!」

 

 怪しく笑うクラディールを見ながらキリトは叫ぶ。

 

「ゴドフリー!解毒結晶を使え!早く!」

 

 キリトの叫びにゴドフリーは回収した結晶アイテムを詰めた袋へ手を伸ばすも。

 

「ヒャッハァァッァァァァァ!」

 

 クラディールはゴドフリーが手を伸ばした袋をその足で蹴り飛ばす。

 

 未だに目の前で起こっている出来事が信じられないという風にゴドフリーは見上げる。

 

「クラディール、何のつもりだ、こんなことをして」

 

「ゴドフリーさんよぉ、バカだバカだと思っていたが、アンタは筋金入りの脳筋だよなぁ!」

 

 狂気を孕んだ嘲笑と共に腰へ差していた剣を抜いて、ゴドフリーの体めがけて振り下ろす。

 

「やめろ、クラディール!」

 

「いいか!俺たちのパーティーはぁ!」

 

 振り下ろされる刃に悲鳴をあげて震えるゴドフリー。

 

「荒野で大勢の犯罪者プレイヤーに襲われて」

 

 もう一人のメンバーに剣を振り下ろす。

 

「勇戦むなしく三人が死亡!」

 

「がはっ!」

 

 高笑いして剣を振り上げる。

 

「俺一人になったものの、見事、犯罪者を撃退して生還しましたぁああああ!ヒャッハハアハハハハハア!」

 

 圧倒的優位であることの余裕からからクラディールは楽しそうに笑う。

 

「この毒……お前、まさか、笑う棺桶の生き残りか?」

 

「やっぱりあの討伐戦で活躍した黒の剣士様は違うねぇ!毒でここまで予測するなんてよぉ!この麻痺テクもそこで教わったのよ。さて」

 

 クラディールの刃がゴドフリーを切り裂く。

 

 HPが一気に減少してキリトの前で彼は死んだ。

 

 もう一人が必死に逃げようとするが追いつかれてクラディールに殺される。

 

 最後に残ったキリトへ近づいて、その体に剣を突き立てる。

 

「ほら、死ね!死ね!死ねぇえええええええ!」

 

 体に突きつけられている刃を前に、キリトは恐怖する。

 

 このまま死ぬ?

 

 急速に減っていく自分のHPを見てキリトはそんなことを考える。

 

 もし、自分が死ねば。

 

 

――キリト君!

 

 

――キーリト!

 

 

 脳裏に浮かんだのは大切なものたち。

 

「(アスナ……ユウキ……)」

 

 そして、

 

 

――キリト、早くいこうよ。

 

 

「っぐ!」

 

 クラディールの剣をキリトは掴む。

 

 腕に刃が食い込みながらも、その手で押し戻そうとする。

 

「おいおい、なぁにやってんだよ。大人しく殺されろよ!」

 

「……俺は」

 

 さらに力を籠めようとするクラディールに抗いながら、キリトは押し戻していく。

 

「俺は、まだ」

 

 しかし、現実は非常だ。

 

 刃が体に刺さっていることでHPがどんどん減っていく。

 

「まだ……!」

 

 イエローからレッドになる。

 

「まだ、死ねない!!」

 

 剣が抜ける。

 

 クラディールが笑いながら再び刃を突き立てようとした時、横から白い影が現れた。

 

 衝撃と共にクラディールが派手に吹き飛ぶ。

 

「キリト君、大丈夫!?」

 

 痺れて動けないキリトの前に現れたのはアスナだ。

 

 大急ぎでやってきたのだろう。彼女は呼吸を乱しながらキリトへ解毒ポーションを飲ませる。

 

「どう、して」

 

「あ、アスナ様!?」

 

 クラディールはアスナが現れたことに驚きを隠せないようでひどく動揺している。

 

「待っていて」

 

 傍にいるキリトへそう言うとアスナは鞘から細剣を抜く。

 

 未だに弁明を続けるクラディールにアスナの細剣が煌めいた。

 

 恐るべき速度で繰り出される突撃にクラディールのHPはあっという間にレッドとなる。

 

「や、やめてくれ!このままじゃ、死んじまう!!俺はまだ、死にたくない!!」

 

 怒りで半ば我を失っていたアスナは“死にたくない”という必死の訴えに剣を止めてしまう。

 

 にやりとクラディールが不気味に笑った。

 

「バカめ!」

 

 笑いながらクラディールがアスナの剣を弾き飛ばす。

 

 がら空きとなった胴体、そこへ狂剣が迫る。

 

 衝撃と共に刃がアスナの体を貫くことはなかった。横からキリトの手がその刃をつかむ。

 

 掌に突き刺さった刃によってキリトの体が破損される。

 

 片方の手でキリトは鞘からエリュシデータを引き抜き、ソードスキルを放つ。

 

 狙いは急所。

 

「へ?」

 

 茫然としているクラディール。

 

 攻撃を受けて彼のHPはゼロとなる。

 

「や、やりやがったな、この、人――」

 

 最後まで言葉を告げることなく消滅する。

 

 クラディールがいなくなったことでキリトは膝をついた。

 

「キリト君!」

 

「アスナ、大丈夫か?」

 

 振り返ったキリトは言葉を失う。

 

 目の前でアスナが泣いていたのだ。

 

「ごめんなさい」

 

 アスナは何度も謝罪をする。

 

 どうして、謝罪をするのか。

 

 困惑しているキリトの前でアスナが漏らす。

 

「私が悪いの、私がキリト君にかかわったから……キリト君が殺されかけたのも全部、私が悪いの……だから」

 

――もう二度とあなたの前に現れない。

 

 キリトは泣きながら微笑もうとするアスナを抱き寄せてキスをする。

 

 これが正しいのかわからない。

 

 だが、彼女の涙を見たくないというキリトの思いをそのまま伝えた。

 

 

 

 

 




活動報告に今後について記載をしますので、意見などがあればお願いします。


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