「ゴールデンウィークだあああぁぁ!」
五月三日。ゴールデンウィークの真っ只中の今日、暇を持て余し
そうして部屋に招き入れられ俺の第一声を無視する
「ゴールデンウィークだあああぁぁ!」
「……おい姫島、声掛けられてるぞ構ってやれよ」
「今クエストしてて手が離せない。東雲が構ってやればいいだろう~。あいつ、ほっとくと後でメンドウだぞぉ?」
「ボクだってそんなことはわかってるよ。でもすでにテンション高くて相手するのがめんどくさいんだ」
「客として呼んでおいてこの仕打ちですかそうですか」
俺のツッコミすらも無視を決め込み二人。腹が立った俺は助走をつけるため数歩下がり、肩を並べて遊んでいる二人の間に、
「どーん!」
「「ちょっ」」
ダイビングを決行した。
「ぬおおおぉぉぉぉ! 目にコーラがあああぁぁぁー!」
「レイたそ! 可愛いよレイたそ!」
「う、うわぁ! やめろ、抱き着くなー!」
「目がぁ、目があああぁぁぁ!」
「髪が綺麗だよ! 綺麗だよレイたそー!」
「わっ、馬鹿、そんな恥ずかしいこと言うなー!」
「人がゴミのようだあああぁぁぁー!」
「クンカクンカ! レイたそクンカクンカ!」
「気持ち悪っ! だ、誰か、誰か助けてくれぇー!」
◇
「あ、あの」
「誰が発言していいと言った」
「発言してもよろしいでしょうか東雲隊員」
「いいだろう。喋ろ」
「あの、確かにやり過ぎたなとは思いますが、僕を縄で縛った挙句ここまでボコボコにする必要があったのでしょうか?」
「どう見ても反省が足りていないな。自分の胸に手を当ててよ~く考えてろ」
「今縄で縛られてて無理です」
「考えてみろ」
「……髪の匂いを嗅ぐのではなく、お尻を撫でるべきだった?」
「あっ、すみません警察ですか? はい、はい、そうです、痴漢に遭いまして今目の前に」
「すみませんでしたあああぁぁぁ!」
おでこを床にくっつけ誠心誠意の土下座をかます。渾身の想いが通じたのか、俺の頭に足を乗せた東雲は「次はないからな」と言い放ちピッとスマホの通話を切った。
危うくこの歳で前科を背負うところだった……。
「な~いつまでイチャついてんだよ~。もういいから早くゲームやろうぜーゲームー」
「イチャついてなんかいない! どう見たらイチャついてるように見えるんだ」
「そう言いながらも縄を解いてくれる東雲たそマジ萌え」
「オマエ実は反省してないだろ」
「滅相もございません」
姫島の
「そういえば東雲、さっきスマホでなにか録ってなかったか?」
「あぁ。ドサクサに紛れてボクに抱き着いたコイツとボクの姿を録ってたんだ。いざというときにはこの動画をネット上にバラまいてコイツを社会的に抹殺してやろうかなと」
「お~すげ~」
……性別を超えた俺たちの友情は永遠に不滅である。だからそんなことを東雲がしないことくらい俺にはわかっている。根拠もなにもないけど、でも、きっと、たぶん、おそらく、めいびーそんなことはしない。しないよね? ね?
「ほらーさっさと始めるぞ~。有坂の
「まったくだ。無駄に出席する羽目になったじゃないか」
「五月の一日と二日をズル休みして自分らだけゴールデンウィークを存分に楽しもうったって、そうはいかないからな。俺の目の黒いうちは、俺がズル休みできない分お前たちを巻き込んで出席させてやる」
「はた迷惑過ぎるだろオマエ……」
「家から一歩も出ないとわめこうが引きずり出してやる。たとえ居留守を使おうがお前らがッ、泣くまで、スタンプ爆撃を、やめないッ!」
「あれ本気でやめたまえよきみぃ……。スマホの挙動がおかしくなって、再起動しないと動かなくなるんだぞぉ」
「ボクなんか、スマホ開いた瞬間に落ちたんだけど」
「まったく、どうしようもないダメ人間だなお前らは」
「「有坂にだけは言われたくない!」」
ぺーえすぺーを各自持ち出し、モン〇ンをやることとなった俺たちはアドホックにて集合した。
「なんで数あるゲームの中から、もう古くなりつつある実機とソフトをチョイスするかなオマエたちは」
「とかなんとか言いながらちゃんと持ってきている東雲に萌えて仕方がないんだが」
「ふむ。よく見ておけ有坂隊員。あれがツンデレというものだ」
「ち、違うから! ほら、早くやるぞ! おっ、もう集合浴場来てるじゃん」
キノコ>(゚Д゚)ハァ? モンハ〇といえばガンランス一択でしょ。馬鹿なの? 死ぬの?
シオン>初心者ガンランスはPTではただのお荷物。くやしいのうwww
キノコ>そんなことよりおうどんたべたい
シオン>お前それサバンナでも同じこと言えんの?
キノコ>ブーメラン乙
シオン>m9(^Д^)プギャー
「……なぁ。こんな至近距離でわざわざゲームやってるのに、なんでチャットで煽り合ってんだよやめろよ」
「ねぇねぇ今どんな気持ち? ねぇどんな気持ち?」
「お前がそう思うんならそうなんだろう。お前ん中ではな」
「現実世界でもやめろ」
「ここまでがテンプレだよ東雲」
「つまりお前は釣られたんだよ東雲」
「巻き込むのもやめろ腹立つ」
なんてことをやりながらも、すでにクエストを請け狩りをしている俺たちは視線をゲーム画面から動かさない。
なにかするたびに「とりゃー! ぬおー!」とツインテールを揺らしオーバーアクションで奇声を上げる姫島に、その姫島にゲーム内で何度も砲弾で吹き飛ばされリアルでもぶつかってくる姫島を足で攻撃する俺に、一人黙々とやりながらも合いの手を入れてくれる東雲。
コイツらとも思えば長い付き合いだし、それなりに色々あった。けども本当になんの根拠もないんだけどもずっと友達であり続けられる、そう錯覚してしまうくらいこの二人は俺にとっては居心地が良い存在で。だからそんな二人に俺は学校を休んでほしくないわけで。
二人が俺をどう思っているかは知らない。別に訊くつもりもないし興味もないけども。でももし許されるというのであれば……。
「……なぁ姫島、東雲」
「ん~?」
「なんだ?」
ゴクリ、と喉を鳴らす。ほんの僅かな緊張感を孕ませ二人に
「二人のことさ、あだ名で呼んでもいいか?」
俺にしては大胆な申し出をする。女の子を下の名前呼びやあだ名呼びするのは慣れてないし、今のところ美知留ともう一人くらいしかいない。どうなるかと様子をうかがっていると、
「いーよー」
「なんだそんなことか。別にボクは構わないよ」
あっけらかんと答えが返ってきた。
なんだろうな。ホント、なんなんだか。
「わかった、じゃあこれからは姫島のことキノコって呼ぶわ」
「おーけー把握ー」
「そんでもって東雲、お前のことはレイモンドって呼ぶわ」
「えっ、ちょっと待って。ボクのあだ名だけなんかおかしいだろ!」
「やべー! リオレウ〇狩ってる最中にリオレイ〇来た! レイモンドこやしこやし!」
「大丈夫かキノコぉ! レイモンド早く!」
「定着させるつもりか!? 確かに言ったけど、構わないとは言ったけど!」
ほら見ろ。
緊張していたのが馬鹿馬鹿しく思うくらい二人は優しくて。こんなダメ人間な俺でも、二人の前でならいつもよりもアホらしく笑っても良いんだって思えるんだ。
「よ~し、景気付けに歌ってやれ有坂隊員!」
「君の前前前戯からぼーくはアヘ顔を晒してたよー」
「やめろぉ! いろんな所から怒られかねないからやめろ!」
「お、おい。このクルペッ○って確か」
「やべ仲間呼んだ……って」
「「「イビル○ョー来たああぁぁ!」」」
「おい早くこやし玉投げろよこやし! なにやってんだよこやし! こやし!」
「こやし隊員ー! ハリーハリー!」
「ボクのことをこやしと呼ぶなぁ! まだレイモンドの方がマシだ! あっ、こやし玉忘れた……」
「なに忘れてんだよ! お前はウンコ係だろうがウンコ! このウンコ!」
「クソが! 東雲のクソ!」
「酷い会話だなぁこれ……」
「よ~し、気合を入れるぞ有坂歌えー!」
「君の便便便器からぼーくは」
「だからやめろよ怒られるから!」
それから時計の短針が六の位置になるまで俺たちは遊び尽し、窓から見える夕日を見てそろそろお開きモードへと移行していた。
「いや~遊んだわ~。そろそろ帰ろうかな」
「あっ、ボクも」
「はあ!? なに言ってんだまだまだ遊びはこれからだろ! ねーねー遊ぼうよ~ゲームしよ~ゲーム~~~」
「お、おい、やめろ引っ付くな。見てないで有坂も引き剥がすの手伝ってくれ」
「えっ、ヤだよ。キノコはお前の担当だろ? お前でどうにかしてくれよ」
「担当ってなんだよそんなの持ったこともないよ!」
「そーだぞ! 遊ぶんならちゃんと最後まで責任持って遊べ!」
「オマエも調子に乗るな!」
ちっこい東雲がさらにちっこい姫島に絡まれているのを視界の端で見やり、着替えを済ませ荷物をまとめようとした矢先に、コンコンとドアが叩かれる。
「開けますね~」
「あっ、ママンだ」
ドアを開いた主、姫島のお母さんがお盆片手にドアを開く。そのお盆の上にはジュースとお菓子が乗っかっている。
「ジュースのおかわり持って来たわよ~。あら有坂くん、もう帰るの?」
「あっ、用意してくださったのにすみません、どうぞお構いなく。そろそろ帰ろうかなって思ってましたので」
「あら残念。せっかく皆でご飯でも食べようと思ってピザを頼んだのにぃ」
「……せっかく用意してもらったわけだし、ボクはもう少しだけ残ろうかな」
「お前、ピザに釣られただろ」
「釣られてないよ」
「釣られただろ」
「釣られクマー……」
クマーじゃねぇんじゃクマーじゃ。
「あのすみません、それでしたら俺もお言葉に甘えてご合判させてもらいます。ホントすみません」
「まぁ! 良かった、じゃあすぐ仕度するわね。あっ!」
「あ」
「あ」
「あ」
姫島のお母さんがコケる。俺はお母さんを、東雲はお盆を
「っぶね。大丈夫ですか? お怪我はありませんか?」
「え、えぇ。ありがとう、大丈夫よ」
「よく反応できたな有坂」
「お前もなレイモンド。二人とも大丈夫か?」
「ボクは大丈夫だよ。姫島はなにもしてないけど……お、おい姫島どうした青い顔して、怪我でもしたのか!?」
見ると確かに姫島は顔を青ざめ震えている。どうしたのかと声を掛けようと近付くと姫島は一点を見つめ震えた手でそこを指差す。
「ほ、わ、ほわ、はわ、ほっ、ほー」
「何語だよ。一体なにを見て……いる…………」
視線の先、そこを俺も辿るとそこには持ってきてくれたジュースの蓋が開いて倒れており、カーペットにぶちまけられている。
そしてジュースの池の真ん中に浸かるは三台のぺーえすぺー。
「「「のおおおおおおおぉぉぉぉぉぉ!」」」
姫島宅にて三人の悲鳴が遠く
全然関係のない余談であるが、見事に俺のデータだけが消えました。
ちなみにゴールデンウイークは今年のカレンダー基準です。