金の姉妹   作:ジャオーン

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第二話 「アースラ」

「私をフェイトと同じ部屋にしてください。リンディ艦長」

 

時の庭園から脱出後一日がたった頃。

場所は、今回のジュエルシードに端を発する事件を担当することとなった艦。

時空管理局所属L級次元航行艦船の8番艦アースラ艦長室。

そこで、一人の少女と女性が向かい合っている。

 

「……貴方も分かっていると思うけれどフェイトさんは、今回の事件に関わる重要参考人よ? もちろん色々と配慮はするけれど、それでも簡単に人に会わせられるわけにはいかないの。それは分かるっているわね?」

 

そうアースラ艦長であるリンディ・ハラオウンが問いかける。

見かけ上の年はどうみても二十代であるがこれでも一児の母だ。

そして今回の事件の現場総責任者でもある。

問いかける様子は笑みを浮かべながら優しげではあるけれども、それでも眼には真剣な色が帯びている。

 

「そんなことは分かっています。けれどリンディ艦長。事件の重要参考人と言うのなら私こそがそうでしょう? 今回の事件の発端は私にこそあるわ。私が死んでしまったからお母さんはあんな暴挙に出たのだから。だからもしも今回の事件で罪を問うと言うのなら私にこそあるわ。決してフェイトが望んであのようなことをしたわけじゃないのだから」

 

アリシアもまた真剣な顔でリンディに答える。

今回の事件。

それはユーノ・スクライアが輸送するジュエルシードを積んだ輸送艦がプレシア・テスタロッサによって撃墜された所から始まる。

そして撃墜された輸送艦からジュエルシードは解き離れ。

第九十七管理外世界『地球』へと落ちてきた。

そしてその落ちたジュエルシードを回収させるためプレシア・テスタロッサは、自らが造りだしたアリシア・テスタロッサのクローンであるフェイト・テスタロッサにその回収を命じた。

その後フェイトはジュエルシード回収中にユーノや現地協力者である高町なのはとの戦闘等も行われた。

そしてそれから時空管理局の介入が行われ、最後はプレシアの居城である時の庭園での決戦となった。

プレシアはその決戦においてジュエルシードを発動。

自らが失った愛娘であるアリシアの命を取り戻す為に失われた都『アルハザード』へと向かおうとした。

けれどその時になってアリシア・テスタロッサは自らの力によって復活を果たすこととなった。

そして、最後はプレシア・テスタロッサが自らが起こした次元震により虚数空間に飲み込まれこの事件は終幕となった。

これが今回問題となっている事件の概略となる。

 

「…………もちろんフェイトさんに責任が無いことは分かっているわ。全ての違法行為は自らの意思では無く、母親に命じて行ったこと。だから今すぐと言う訳にはいかないけれど、必ず彼女は無罪にしてみせるわ。だからそれは心配しないでちょうだい。それになにより、アリシアさん……」

 

重要参考人ではあるけれど、罪を負わせるつもりはない。

リンディはしっかり言い聞かせるようにアリシアにそう言うと一度言葉を区切った。

そしてアリシアの名前を呼びしっかりとその目を見て話し始める。

 

「貴方こそ罪を感じることは何一つないのよ。貴方はただもう一度この世界に生を受けれたことを喜べ良いの。貴方が背負わなければいけない責任なんてないわ」

 

そうはっきりとリンディはアリシアに向けて伝えた。

それは時空管理局アースラ艦長としての言葉か。

それとも一児の母としての言葉か。

はたまたその両方か。

 

「…………ありがとうございますリンディ艦長。そう言ってもらえと少しだけ気持ちが楽になります」

 

未だ憂いは帯びているけれども、それでも心からこちらのことを心配してくれいるであろうリンディの言葉をアリシアはしっかりと受け取った。

顔にや僅かではあるけれど笑みを浮かべて。

けれどその笑みをすぐに納めアリシアは再び真剣な顔でリンディに向き合う。

 

「……けれど先ほどの願い出は撤回しませんよ。もう一度言います。私をフェイトと同じ部屋に入れてください」

 

もう一度先ほどの言葉を繰り返す。

先ほどよりも強い口調で。

決して聞き届けて貰えるまで引き下がるつもりはないと言う気持ちを込めて。

 

それを聞いたリンディは再び難しい顔をする。

そしてしばらくの間、リンディとアリシアはお互いの顔を見つめ続けた。

二人とも決して顔をそらさずに。

 

そしてその睨み合いにも近いを続けた後、先に折れたのはリンディであった。

彼女は一度だけ目を瞑ると溜息を付いた後に言葉を発した。

 

「……はぁ。先ほども言ったけれどアリシアさん。私たちはフェイトさんに罪を着せようだなんて決して思っていないわ。それはこのアースラ乗組員の総意だと思ってもらって構わないわ。けれどね、彼女が今回の事件の容疑者の一人であることに変わりはないの。いくら彼女が自ら望んで行ったわけではないけれど、彼女が実行犯であることはどうしようもない事実。だからこそ、彼女は現在監視の付いている監視部屋に入れられている。こういった部分を疎かにすれば、それこそ裁判の時に面倒になったりすることもあるわ。だから、これはあくまでも裁判の時に彼女の無罪を勝ち取る為にしている処置なのよ。それは分かるわね?」

 

「ええ、それは分かっています」

 

問いかけるリンディにアリシアはしっかりと頷きかえす。

 

「そしてアリシアさん。貴方も確かに重要参考人ではあるけれど貴方は容疑者ではないわ。だから貴方にはこの船の一部ではあるけれど自由に行き来が出来る許可が与えられている。けれどもフェイトさんと同じ部屋に入るとなると貴方も許可なくその部屋から出られなくなるわ。それでも貴方はフェイトさんと同じ部屋になるのね?」

 

再度確認するように。

彼女にしっかりと言い聞かせるようにリンディはアリシアに問いかける。

 

「もちろん構いませんよ。その程度のことであの子と同じ部屋になれると言うのならなんの問題もありません。あの子が――フェイトが背負わなければいけないものは全て私も背負います。だってあの子は私の半身――いえ、私の全てなのですから」

 

そう何の迷いもなくアリシアは言い切る。

それは決して盲信ではなくて。

彼女の目にあるのは確かに正気の色である。

その上でアリシアは言い切るのだ。

自らのことりも全てのことでフェイトを優先すると。

 

「…………はぁ。そこまで言い切るのなら仕方ないわ……貴方にフェイトさんの部屋への入室を許可するわ。

場所は分かっているわね? 監視員への連絡は私のほうからしておくからそのまま行けば入ることが出来るわ」

 

アリシアの言葉を聞いたリンディはもう一度溜息をつくとフェイトの部屋への入室を許可した。

そしてそれを聞いたアリシアは、本当に嬉しそうな顔をする。

それまで話していた顔は、決して子供がする顔ではなく何処までも大人びた顔であったが、その笑みを浮かべた顔はまさに年相応の顔であった。

 

「ありがとうございますリンディ艦長!!」

 

そしてそのまま立ち上がると風のように駆けて部屋を出て行ってしまった。

その変わり身にリンディはやや驚いた顔をしたが、すぐに優しげな顔をして彼女が出て行った先を見送った。

 

そうして、先ほど注いだのは未だ口を付けていなかったお茶へと手を伸ばしそれを飲み干した。

そして彼女がお茶を飲み終えたころに閉まっていた扉が再び開く。

 

「よろしかったのですか艦長」

 

入ってきたのは一人の男性――いや、見た目上は少年と言うほうが適切だろう。

アースラ所属の時空管理局執務官クロノ・ハラオウンである。

そんな彼が艦長室へとやって来て艦長であるリンディに問いかける。

やや不機嫌そうな声色をして。

 

「今は二人っきりだから母さんで良いわよ。それでそれは何について聞いているのかしら?」

 

それに対してリンディは、朗らかにややからかいの成分も含まれているかのような声色で問い返す。

 

「……アリシア・テスタロッサのことですよ。彼女をフェイトと同じ部屋にいれてよかったのですか? 彼女は今回の事件における重要参考人だけでなくその存在にも未だ多くの謎が残っているんですよ?」

 

「確かにねぇ。生き返るだけでも驚きなのにそれに魂の存在だなんて言われても俄かには信じられないわ。それでも、彼女が話してくれた生前の記憶とこちらが確認した記録は確かに一致している。それは、フェイトさん自身も知らないことが多く含まれていた。だから、彼女がアリシア・テスタロッサ若しくはその記憶に完全に受け継いでいるという存在であるこは間違いない。そして――何よりも彼女がフェイトさんのことを思っている気持ちは本物だわ。だから、きっと彼女の願い出をここで聞き届けなくても彼女は今度は力尽くでフェイトさんの部屋に行ってしまうかもしれないわ。だったら、先にこちらで許可を出しておいた方が良いでしょ?」

 

リンディは何処か気楽そうな感じではあるけれどそう言った。

元々はフェイトを監視部屋に入れているのも形式上の為だ。

だから先ほどは厳しめに言ったが、それでもこのぐらいのことなら大した問題は無いと思っている。

 

「けれど母さん…………」

 

それでも、クロノは未だ何処か渋るような口調で言う。

けれどリンディはそれを遮って言葉を続けた。

極上の笑みと共に。

 

「それに何よりあんな可愛い子にあれほど真剣にお願いされたらダメだなんて言えないわ」

 

リンディ・ハラオウン。十四歳になる息子を育て上げたが実は女の子の子供もずっと欲しかったと思って居たりもしたとか。

 

「はぁ…………分かりましたよ。監視の方には僕の方から言っておきます」

 

こんなふうになった母にはもう何を言っても無駄だろうと思ったクロノは、一度溜息を付くと部屋を後にしようとした。

そしてそんなクロノにリンディは最後に言葉をかける。

ちょっと、お使いに行って来てというような口調で。

 

「あ、そうそう。私あの子たちの保護責任者になろうと思っているの。だからそっちの書類の準備もお願いして良いかしら?」

 

「…………………………了解。艦長」

 

しばしの沈黙の後にクロノは返事をする。

自分に一切の相談が無かったのはどういうことかと問いただそうかと思ったけれど、この人なら仕方ないかと思ったクロノは再び溜息をついて部屋を後にしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 




実はですねこのssを書くためにもう一度アニメや映画を見直していたんですよ。
そしたら、リンディ茶ってあるじゃないですか。
砂糖とミルクを緑茶にドバドバしたあれです。
よくssでもネタになっているあれなんですど、映画の中でリンディさんがあれ飲んでるの見てふと思ったんですよ。
あれ……意外とあれって美味しいんじゃないかって思って実際にやってみたんですよ。
そしたらですね……あらまビックリ。
普通に美味しかったんですよw
今までリンディ茶とか言ってバカにしてすみませんでしたって思いましたね。
なのでみなさんも是非一度お試しあれ。
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