金の姉妹   作:ジャオーン

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第四話 「目覚め」

「ん……う……んん………」

 

うす暗がりの中フェイトは未だ微睡の中に居た。

普段のフェイトは寝起きが良く一度目が覚めればすぐに起きだすのだが、今日はどうしてもそうはならなかった。

覚えてはいないけれどあまりにも気持ちの良い夢を見たような気がしたから。

最近は眠ると悪夢ばかりを見ていたから。

昨日も嫌な夢を見た。

目が覚めたらみんなが自分のことを嫌ってしまっている夢だった。

自分のことを役立たずだと罵られている途中で目が覚めたのを覚えている。

 

けれども、今日は久しぶりに熟睡をした。

どうしてこれほどまでに安心を覚えられるのだろうか。

それは先ほどから感じる温もりのおかげだろうか。

この温もりが自分に安心を与えてくれているのだろうか。

そんな思いと共にフェイトは再び微睡の中へと入っていこうとした。

 

「あら……やっと起きたのかしらお寝坊さん」

 

「…………え?」

 

けれどその時になって自分のすぐそばから声がした。

とても優しげに、けれど何処かからかいの混じった声で。

 

「お……姉ちゃん?」

 

フェイトはまだ寝ぼけ眼であるのかトロンとした声で声のした方を振り向くと。

そこにいるであろう人物を確かめるかのように声を出した。

まるでこれが夢か現実か確かめるかのように。

 

「ええそうよ。おはようフェイト」

 

そしてその相手は、しっかりとした声で返事をした。

これが現実であるとフェイトに確かに伝えるように。

 

その声を聴いてフェイトはやっと意識が覚醒した。

そして此処が何処で自分がどういった体勢に居るのかを理解すると体を跳ね起こした。

 

「……っ!? ど、ど、ど、どうしてお姉ちゃんが私のベットに居るの!?」

 

「あら……昨晩一緒に横になったのをもう忘れてしまったのかしら? それとも……お姉ちゃんと一緒に寝るのは嫌だった?」

 

フェイトが心臓をドキマギさせて顔を赤らめながら必死に喋っているのに対してアリシアは着崩れた寝間着を直しながら、落ちついた様子でフェイトにからかいの言葉を懸ける。

けれどアリシアは十分にからかいの声色なのだが、フェイトは慌ててそれを否定する。

目には少しばかりだが、涙を浮かべながら。

 

「ちがっ、ちがうよっ! ちょっと寝ぼけてただけだから! お姉ちゃんと一緒に寝るの嫌じゃないよ!!」

 

そしてそれをアリシアは眩しそうに嬉しげな顔で見た後にフェイトを抱きしめる。

 

「もう~……冗談に決まっているでしょう。このぐらいで泣かないで頂戴」

 

優しく髪を撫でながらアリシアはそう言い聞かせる。

そしてフェイトもそれで落ち着きを取り戻したのか大人しくアリシアの胸に顔をうずめる。

 

「ごめんなさい…………でも……お姉ちゃんに嫌われたらって思ったら……」

 

「……もう。バカな子ねフェイト。私が貴方を嫌うことなんて絶対にないわ。どんな時だろうと貴方のことを愛しているのだから。お姉ちゃんを信じなさい」

 

心から愛おしくて愛おしくてたまらない。

それが本当に分かるような声でアリシアはフェイトに伝える。

そしてフェイトにもそれは伝わったのかやっと安心したような顔をする。

 

「うん……ありがとうお姉ちゃん」

 

「あら貴方がお礼を言うことなんて何もないのよ。それにね、私の方こそお礼を言わなくちゃいけないわ」

 

「…………え?」

 

フェイトは何故自分がお礼を言われるのか分からずに子首かしげてアリシアを見つめ返した。

 

「あのね、貴方の寝顔が凄く可愛くてずっと眺めていたのよ。そしてら朝から凄く幸せな気持ちになれちゃった! だから、ありがとね! フェイト」

 

そう言ってアリシアは満面の笑みを浮かべた。

そしてそれを聞いたフェイトはボフンと音が出るのではという勢いで顔を赤らめると。

 

「………………へにゅぅ」

 

そのまま謎の鳴き声と共にベットにつっぷしてしまった。

そもそも抱きしめられて愛してる等と言われる時点でフェイトの羞恥心メーターは振り切っていたのだ。

その上であれほどの幸せそうな顔で恥ずかしいことを言われれば簡単にフェイトの心も限界を迎えると言うものだ。

そしてそのままつっぷしてしまったフェイトの頭をしばらくの間アリシアは撫で続けていた。

フェイトまたうつ伏せのままながら、その手を払いのけることもなくなされるがままとなっていた。

そうして、しばらくの間穏やかな時間が流れた後にアリシアは撫でる手を止めるとフェイトを抱き起した。

 

「さて、そろそろ起きましょうかフェイト。本当はもうしばらくこうして居たいのだけれど、もう少ししたらリンディ艦長かクロノ執務官がこの部屋へやってくるはずだわ」

 

「そうだね。お姉ちゃん」

 

そうして二人は寝間着を脱ぐとアースラから与えられた服へと着替えたり、寝癖がついた髪を整えたりした。

二人とも未だ化粧をするような年齢ではないので朝の準備と言ってもそれほど時間をかけずに終えてしまった。

なので二人ともベッドへ再び腰かけるとこれからのことについて話をすることにした。

 

「今日は、これから事情聴取の続きなんだっけ?」

 

「ええそうね。昨日は事件を終えてからすぐだったから簡易的なもので終わったからね。今日はより詳しく話すことになると思うわ」

 

フェイトの問いかけにアリシアが答える。

するとフェイトは少しだけ顔俯けてしまった。

 

「…………どうしたのフェイト?」

 

そんなフェイトの様子にアリシアは心配げな顔をして問いかけた。

 

「うん…………なら今日は母さんのことについても詳しく話さなくちゃいけないのかなって思って」

 

その問いかけにやや躊躇いがちながらフェイトはそう言った。

そしてそれを聞いたアリシアは優しく肩を抱いてやりながらフェイトに声をかけた。

 

「大丈夫よ……フェイト。事情聴取は私と一緒に行われるはずだから。どんなに貴方が辛くても私が支えて上げるから。だから……ね? 安心してフェイト」

 

「うん……」

 

フェイトにとって未だ母とのやりとりは完全に拭い去ることの出来ない傷となっている。

だからそのやりとりを詳しく聞かれるのは怖い。

それを話すのはやっぱり怖いと思う。

 

けれど、昨晩の姉の言葉。

そして今もこうやって隣に居て自分に安心を与えてくれる姉の腕。

それがあれば自分はきっと大丈夫。

そう言い聞かせてフェイトは俯いていた顔を再び上げることにした。

そうして横を見てみれば、そこには変わらぬ顔がそこにある。

出会ってからまだ二日しか経っていないけれど。

それでも自分に絶対の安心とそして温もりを与えてくれる存在。

そんな姉が隣に居てくれると思うと先ほどまであったフェイトの中にあった暗い気持ちはいつの間にかだいぶ薄れてしまっていた。

 

「それにねフェイト。私もフェイトとお母さんのことをずっと見守ってきていたのだから。だからあそこで何があったのかは全部しっているわ。だからね、フェイトが言いずらいことは代わりに全部私が言ってあげるね」

 

「うん……ありがとう。お姉ちゃん」

 

「いいえー。可愛いの妹の為なら当然ですよ」

 

そう言って笑ってくれる姉の姿がフェイトにはどうしようもないほど眩しくて頼りがいのある姿に映っていた。

もはや、全幅の信頼を寄せてしまうほどに。

そうしてフェイトがアリシアの顔にしばらく見惚れているとフェイトはふと思った。

 

「そういえば……お姉ちゃんって今いくつなの?」

 

肉体的な面で見ればアリシアの年齢は五歳ととなっている。

なので今年で九歳となったフェイトはアリシアよりも見た目上は成長していたりする。

けれどフェイトにとってアリシアが姉だということは決して変わらぬ事実であった。

アリシアは確かに見た目的には子供だ。

けれどそこから滲み出る雰囲気や普段の口調や行いは決して子供のそれでないのは明確だった。

なのでフェイトから見たらアリシアは自分よりもずっと大人に見えていたのでのこの問いであった。

 

「そうねぇ……それは難しい質問ね。それは肉体的な年齢ではなくて魂とか精神的な意味での年齢を聞いているのよね?」

 

「うん」

 

「うーん……確かに私の精神的な年齢は、この肉体の年齢より上だわ。魂になってからも意識があったから精神的な意味では成長していると言って良い。けれど、今が幾つかと聞かれると何と答えれば良いのか迷うわね」

 

「どうして?」

 

アリシアの言葉にフェイトは首をかしげながら問いかける。

 

「魂と呼ばれる状態になって居たころの時の流れと、肉体を宿しているころの時の流れは同価値ではないからね。だから精神的に今が幾つかって聞かれたら年齢不詳としか言いようがないわ」

 

「へぇ……」

 

そんなアリシアの言葉にフェイトはただただ相槌を打つことしかできなった。

 

「上手く説明出来なくてごめんね?」

 

「う、ううん! 私こそきちんと理解出来なくてごめんなさい……」

 

そしてそんなフェイトの様子を見てアリシアが謝罪するとフェイトは慌てて首を振った。

 

「それは仕方ないわ。魂と一言で言っているけれど本来はもっと概念的な存在だからね。だけど、これをきちんと説明できる言葉はたぶん無いわ。だって、一度魂となった存在が再び肉体を得るなんて本来はあり得ないからね。だから魂の存在も確認されていないからね」

 

「そうなんだ…………お姉ちゃんってやっぱりそれだけ凄い存在だったんだね」

 

そうしてアリシアの言葉を聞いたフェイトは尊敬のまなざしを姉へと向ける。

自分の姉がどれほど凄い存在なのかを再認識するかのように。

そして、そんな妹の様子を見ながらアリシアは苦笑をしながら妹の髪を撫で続けいた。

そうしてちょうどお互いが沈黙を迎えた頃部屋の扉からノックをする音が聞こえてきた。

 

「アリシアさん、フェイトさん入って良いかしら?」

 

「どうぞー」

 

それはリンディ艦長の声でありアリシアがそれに答えた。

そうして入ってきたリンディは二人で肩を並べてベッドに座っている姉妹を見ると笑みを浮かべながら挨拶をしてきた。

 

「二人ともおはよう。昨晩はよく眠れたかしら?」

 

「はい」

 

「ええ、良く眠れました」

 

その二人の答えにリンディは頷きを返すと少しだけ真面目な表情で言葉を続けた。

 

「そう、それは良かったわ。それじゃあ……早速で悪いんだけど事情聴取の続きをするから私の部屋に来てもらっても良いかしら?」

 

そうしてその問いかけに頷きを返すと三人はその部屋を後にしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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