最弱無敗の神装機竜 ~天翔る紅き彗星~   作:メガボイジャー

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ようやくバルファルクの戦闘描写が書けました。
では、どうぞ!


決闘 ~DUEL~

side:メビウス

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ルクスと更衣室前で別れ、俺達は決闘を観戦するために学園にある装甲機竜(ドラグライド)の演習場に向かっている。ちなみに数時間前、ルクスは機竜格納庫でアイリと共に機竜のチェックを行い、さらにアイリからリーシャ対策を教えてもらったそうだ。リーシャが強敵だというのは俺も確信しているが、情報が無いよりはマシだろう。

演習場の入り口まで行くと、そこには青髪の少女と茶髪のポニーテールの少女がいた。そういえばあの二人、ノクトと同じく学園長室での会話の際にいたな…。

 

 

「おっ、やっと来たかノクト……ん?それに君は、彼の妹の…。」

「シャリス先輩、気にしないでくださいね。今回の件は完全に兄さんの自業自得です。兄さんは単純過ぎるバカなんですよ。お人好しな性格で、半端な正義感を持ち合わせているから…毎回毎回余計な事件に巻き込まれるんですよ…。」

「…意外に面白い子だな、君は。」

 

 

青髪の少女はシャリスと言うらしい。それにしても、アイリのルクスに対しての評価は散々だったな…まぁよくある話だ。

 

 

「…それと君は、さっき学園長室にいた…。」

「どうも、メビウス・バジーナです。よろしく。」

「私の名前はシャリス・バルトシフト、この学園の3年生だ。よろしく頼む。」

「私の名前はティルファー・リルミットだよ。ちなみにこの学園の2年生だよ。よろしくね~。」

 

 

シャリス、およびティルファーと名乗った少女と、俺は挨拶を交わす。挨拶は古事記にも書かれてるぐらい大事だってお祖父ちゃんが言ってたな………って何処のニンジャだよ。

 

 

「ちなみに、シャリス先輩とティルファー先輩、そしてノクトの三人は三和音と呼ばれていて、この学園を守っているんです。」

 

 

アイリがシャリス先輩達の詳細を説明してくれた。三和音…この学園の風紀委員や自警団みたいなものか…。

 

 

「君は確か、女王様の命でここにやってきたんだったな。巻き込まれたのは不運としか言い様がないな。」

「はぁ……過ぎてしまったものは何しても訂正できないですよ。今俺に出来るのは、ルクスを応援。それだけですよ。」

 

 

シャリスの皮肉な言葉に俺は溜め息をつきながら言った。リーシャの某弁護士めいた八つ当たりは俺もイラッと来たのは確かだ。学園から出ていけだったらまだいい。だけど牢獄行きは完全に理不尽。だがこうなってしまってはもう訂正が効かない。あの頑固な性格上、訂正なんて効くはずがない。俺の命運は全てルクスに委ねられている。

 

 

「皆さん、そろそろ模擬戦が始まりますから、演習場に入りましょう。」

「そうだな、早く入ろうか。」

 

 

アイリの言葉にシャリスが頷く。俺達は演習場に入っていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side:ルクス

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

更衣室で機竜を纏うのに適した“装衣”に着替えると、僕は演習場のリングに入場した。リングには同じく装衣を纏った王女様がいた。

 

 

「これより新王国第一王女リーズシャルテ対、旧帝国第七王子ルクスの機竜対抗試合を執り行う!」

 

 

審判役と思われる教官の声が響き、それと同時に演習場内が熱気と歓声に包まれた。

演習場は石壁が周囲を円状に覆い、僕と王女様が立っているリングには土が敷かれていた。観客席には強靭な鉄格子が張られており、さらに機竜を纏った数名の生徒達が障壁を展開しているため、巻き添えの心配はない。

僕は辺りを見渡してみる。大人数の女子生徒達、教官達がこの決闘を見に来ている。アイリとメビウスも何処かで観戦しているだろう。

 

 

「何で…こんなに人が集まっているんだろう…?」

 

 

周りを見渡していた僕は再び緊張する。こんな大勢に見られて…緊張が起きない訳がない。

 

 

「理由を知りたいか?ルクス・アーカディア。私が何故お前に戦いを挑んだのか。」

「…僕が、“旧帝国の王子”だから…?」

 

 

不敵に笑いながら言う王女様に、僕は答えた。アーカディア帝国とアティスマータ新王国、国と国という因縁故に戦いを挑んできた……もしくは昨夜の事故が理由なのか…理由は前者か後者か、もしくはその両方なのだろう………しかし王女様は

 

 

「私に勝ったら教えてやる。」

 

 

それだけしか言わなかった。

 

 

「えっと…戦いの前に一つ確認していいかな?」

「何だよ?怖じ気づいたのか?今更“命乞い”は見苦しいぞ?」

「僕を殺す気だったの!?……じゃなくて、その…もしこの勝負が引き分けになったら、この勝負は無かったことにしてくれませんか?」

 

僕は引き分けになった時の頼みを王女様にお願いした。すると、僕の頼みを聞いた王女様の雰囲気が変わった。

 

 

「…ふっ、私の気のせいか?この期に及んで、寝言が聞こえた気がしたのだが…。」

「寝言じゃなくて、僕は本気で…。」

「そうか。なら、いいぞ?」

 

 

どうやら交渉は成立したようだ。引き分けでもいいなら、それでいい。

 

 

「両者、接続の準備を!」

 

 

審判が僕達に機竜の装着を促してきた。僕は二本の機攻殻剣(ソード・デバイス)の内、白い方の機攻殻剣(ソード・デバイス)を鞘から抜剣する。

 

 

「ーー来たれ、力の象徴たる紋章の翼竜。我が剣に従い飛翔せよ、《ワイバーン》!」

 

 

機攻殻剣(ソード・デバイス)のトリガーを引きながら詠唱符(パスコード)を唱えた。僕の背後に光が集まり、ワイバーンが召喚された。

 

 

接続開始(コネクト・オン)!」

 

 

ワイバーンの装甲が展開され、僕の身体を覆った。この機竜は三つある汎用機竜の内の一つ、飛翔型のワイバーンだが、僕が纏うワイバーンは装甲を追加した防御特化のカスタムを施しているため、通常のワイバーンよりもマッシブな外見になっている。

 

 

「その“もう一つの剣”は飾りか?ルクス・アーカディア。」

「っ…!?」

 

 

一方、王女様が纏う機竜は見たこともないものだった。全体的に赤く、僕のワイバーンよりもさらに巨大な外見だ。王女様は余裕に満ちた表情で僕が帯剣している“黒い機攻殻剣(ソード・デバイス)”を指摘してきた。

 

 

「新王国の王族専用機。神装機竜《ティアマト》。この機竜は、そこいらのものとは訳が違うぞ?」

 

 

王女様の言う通り、その赤い神装機竜・ティアマトからは絶大なオーラが漂っていた。

 

 

模擬戦、開始(バトルスタート)!」

 

 

お互い機竜を装着したところで、審判の声が響き、決闘はスタートした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side:メビウス

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ついにルクスとリーシャの決闘が始まった。ルクスの機竜は、装甲を追加して防御特化にした汎用機竜・ワイバーン。それに対しリーシャの機竜は、神装機竜・ティアマト。汎用機竜と神装機竜と比べて見ても、性能差は天と地の差だった。とはいえ、ルクスも機竜の操作技術に関しては長けている。性能差があるとはいえ、問題なのはいかに機竜を思いのままに操れるかがポイントだ。

決闘がスタートして、まずリーシャが機竜息砲(キャノン)をルクスに向けて構えた。

 

 

「初っぱなから撃つのか…?」

 

 

機竜息砲(キャノン)…竜が吐く強烈な炎を連想させる機竜の主砲であり、機竜の動力である幻創機核(フォース・コア)からエネルギーを充填して発射するものだ。主砲というからには威力は絶大であり、まともに受ければ大ダメージは避けられない。だが弱点もあり、充填してから発射するまでにかなりのタイムラグを要する。本来、機竜息砲(キャノン)は初っぱなからぶっ放す武器じゃない。何よりタイムラグのせいで容易に避けられてしまうからだ。機竜息銃(ブレスガン)などで敵を怯ませてから撃つのが通常の使い方だ。

リーシャは機竜息砲(キャノン)の充填が完了すると、ルクスに向けて…ではなく、何故かルクスより少し横に照準をずらして発射した。これは“動かなければ”まず当たる事はない。そう、“動かなければ”…。

その時、ルクスに向かって“流線型の何か”が四基突撃してきた。リーシャが操るティアマトの特殊武装だと思われる遠隔投擲兵器は、ルクスを押し飛ばした。ルクスが押し飛ばされた場所は、リーシャが放った機竜息砲(キャノン)の射線だった。

突然の不意打ちを受けて回避が間に合わないと判断したルクスは、機竜牙剣(ブレード)幻創機核(フォースコア)のエネルギーを充填させると、それを盾代わりに機竜息砲(キャノン)を防御した。何とか防いだものの、機竜牙剣(ブレード)が半分に欠け、機竜にも多少のダメージを負った。

空挺要塞(レギオン)》…リーシャの操るティアマトの特殊武装の一つ。それら自体が推進力を持つ小型の流線状の遠隔投擲兵器。恐らくリーシャは開始と同時に空挺要塞(レギオン)をルクスから隠して射出し、ルクスの視線を機竜息砲(キャノン)に向けさせた後、機竜息砲(キャノン)を発射すると同時に空挺要塞(レギオン)でルクスを射線に押し飛ばし、機竜息砲(キャノン)の威力を以て速攻撃破を狙おうとしたのだろう。

幸いルクスは機竜牙剣(ブレード)を盾に何とか耐え凌いだが、俺はこの光景を見てここで一つ確信した。

 

 

「あいつ…本気でルクスを殺しにかかってるな…。」

 

 

そう、リーシャが本気でルクスを殺そうとしている事だ。威力は絶大だが隙の大きい機竜息砲(キャノン)空挺要塞(レギオン)で補うテクニカルな戦法。リーシャはただ単に火力に物を言わせるのではなく、死角を徹底的に突いて不意打ちを狙う頭脳プレーを行っている。

あんな戦法を使われたら並の機竜は一撃で撃破されるのは確実。まさに一撃必殺を狙う残虐で容赦ない悪魔じみた戦法だ。

そんなリーシャの一撃必殺の戦法を凌いだルクス。すると二人の機竜の動きが止まった。様子を見る限り、何やら会話をしているのだろう…。

そして会話から数秒後

 

 

「ティアマトよ、本性を現せ! 七つの竜頭(セブンスヘッズ)!」

 

 

リーシャの高らかな声と共に、ティアマトの右肩と右腕に巨大な砲身が転送、接続された。

七つの竜頭(セブンスヘッズ)》…ティアマトのもう一つの特殊武装で、その名の通り七つの砲口を持つ巨大な大砲だ。

 

 

「ルクス…絶対“余計な事”言っただろうな…。」

「そのようですね…全く兄さんは…。」

 

 

俺とアイリは呆れながら呟く。どうやらあの会話でルクスがいらん事を言ってしまったらしく、リーシャはそれで躍起になって七つの竜頭(セブンスヘッズ)を呼び出したらしい。さらに転送されたのは七つの竜頭(セブンスヘッズ)だけじゃない。空挺要塞(レギオン)も追加で転送したらしく、その数は四倍の16基になっていた。目に見えて分かる通り、ルクスは完全にリーシャの逆鱗に触れてしまった。

これには教官達も慌てており、模擬戦の域を越えてしまうとリーシャに注意を促した。だがルクスはまだ戦う意思はあると発言したためか、“模擬戦という名の殺し合い”は続行された。

突撃してくる16基もの空挺要塞(レギオン)を、ルクスは折れた機竜牙剣(ブレード)で弾きながら逃げていく。ルクスが上昇しながら防御と回避を繰り返す中、リーシャはルクスに向けて七つの竜頭(セブンスヘッズ)を構える。砲口に数秒間エネルギーが収束した後、リーシャは七つの竜頭(セブンスヘッズ)を発射した。

七つの竜頭(セブンスヘッズ)から放たれた赤い光線を、ルクスは何とか避けた。その赤い光線は演習場に展開された障壁を一瞬で粉砕し、空の彼方へ消えていった。ああ、これはやばい威力だな…あれを喰らったら灰になるどころじゃ済まねぇな…。

 

 

「ルクスさん…。」

「あっちゃ~…空挺要塞(レギオン)七つの竜頭(セブンスヘッズ)まで使われちゃ、勝負にならないよ!先生に言って止めさせないと…!」

「まさかこんな戦いになってしまうとは……すまないルクス君…。」

 

 

ノクト、ティルファー、シャリス先輩が不安な表情で、追い詰められていくルクスを見ていた。

 

 

「その必要はありませんよ。元はと言えば、兄さんが余計な仕事を請け負ったがためにこうなってしまったのであって、皆さんのせいじゃありません。完全に自業自得です。」

 

 

ルクスが追い詰められている状況の中、アイリは落ち着いた表情でそんな事を言っていた。

 

 

「そんな兄さんですが、一つだけ私も認めている事があるんです。」

「ああ、俺もルクスとは一緒に過ごしていた時期があるから、ルクスの良点は理解してるさ。」

「それは…?」

「「一度決めた事は、必ずやり遂げる。」」

 

 

俺とアイリの声が重なった。確かにルクスは余計な仕事を請け負ってトラブルに巻き込まれる事が多い。だがそれでもルクスは、一度決めたらその仕事を確実にやり遂げてきた。これが俺とアイリが認めている良点だ。

 

 

「それに、王女様はもう気づいているはずだ。ルクスの異名…『無敗の最弱』の本当の意味を…。」

 

 

俺がそう言いながら観戦していると、空挺要塞(レギオン)を操ってルクスに攻撃を繰り出しているリーシャに焦りの表情が浮かんでいた。

 

 

「『無敗の最弱』の本当の意味?ただ一度の敗走もなく、ただ一度の勝利もないから『無敗の最弱』なんじゃないの?」

 

 

ティルファーがどこぞの赤い弓兵みたいな事を言ってきた……いや、この言葉はどっちかと言うと衛◯士◯の方が正しいか…。

 

 

「まぁ…ダイレクトに例えるならそうだろうね…でも本質はそれだけじゃない。どんなに攻撃して装甲を壊そうが、障壁の出力があと僅かだろうが、“倒しきれるイメージ”が湧かない事なんだよ。」

「倒しきれるイメージが湧かない…?」

「こればっかりは実際に戦ってみないと分からないさ。」

 

 

俺の言葉を聞いて三和音の三人が首をかしげた。ルクスの模擬戦での戦闘スタイルは、ただ一度の攻撃もなく、ひたすら防御と回避に徹し、模擬戦の時間内まで耐え凌いで引き分けに持ち込む事だ。ワイバーンが防御特化のカスタムなのもそれが証拠だ。

当然、この決闘にも制限時間が設けられており、ルクスはこの決闘を引き分けに持ち込む構えのようだ。リーシャの焦りはどんどん大きくなっていく。神装機竜という圧倒的な力を以てしても、ルクスを容易に撃破する事が出来ないからだ。

力の差は歴然…にも関わらず、ルクスはジリ貧になりながらもリーシャの執拗な猛攻を耐え抜く。絶望的な極限状態を生き残る…それこそが『無敗の最弱』の本質だ。

決闘は残り三分、時間切れになれば引き分けは確定する。だがそんな事をリーシャが許す訳がなかった。

 

 

「神の名の下にひれ伏せ! 《天声(スプレッシャー)》!」

 

 

圧倒的火力を以てしてもルクスを倒せない事に痺れを切らしたリーシャが、演習場の上に巨大な魔法陣を展開させると、機攻殻剣(ソード・デバイス)をルクスに向けて指して高らかに叫んだ。

次の瞬間、空中に浮遊していたルクスが突然地面に叩きつけられた。機竜が地面に叩きつけられた勢いで、風圧と土煙が発生した。

“神装”…それは神装機竜だけに秘められた特殊能力…言うなれば切り札だ。その神装の数は神装機竜の種類だけ存在するが、その個々の能力までは殆ど明かされていない。

リーシャの操るティアマトの神装は《天声(スプレッシャー)》と呼ばれる重力を制御する能力のようだ。

墜落したルクスを、空挺要塞(レギオン)が360度包囲する。追い詰められたルクス。だが同時にリーシャにも疲労の顔が見えてきた。

ルクスに止めを刺すべく、リーシャは七つの竜頭(セブンスヘッズ)を構える。これでチェックメイト……………とはいかなかった。

理由は簡単。突然、リーシャの操るティアマトが傾き始めたからだ。その証拠にルクスにかけていた《天声(スプレッシャー)》の効果が解除されていた。

 

 

「何が起きたの…?」

「“暴走”しかけているんだ…。」

 

 

シャリス先輩の言う通り、リーシャのティアマトは暴走しかけていた。

機竜の操作方法は二つある。身体に纏った装甲を自分の手足と力加減で動かす肉体操作、機攻殻剣(ソード・デバイス)を経由した思念で行う精神操作の二つだ。この二つの操作を巧みに使って機竜を操作するのだが、極度の疲労と負担によって使い手のリズムが狂うと、機竜が想定外の行動を取ってしまう。

これを“暴走”といい、基本的かつ最も注意しなければならない現象だが、リーシャは殺意の感情に飲まれて完全に忘れていた。

 

 

「まずい!早く機竜から降りて!」

「こんなことで…私が負けるかぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 

暴走による周りへの被害はもちろん、使い手でリーシャの危険を感じたルクスは、リーシャにティアマトから降りるよう言ったが、それをリーシャが聞くもなく、機攻殻剣(ソード・デバイス)を振るって空挺要塞(レギオン)を落下させた。どうやら空挺要塞(レギオン)を解除して負担を軽くしたようだ。あのバカ……そこまでしてルクスを倒したいのか…?

 

 

『メビウスよ。』

 

 

すると、再びバルファルクが精神会話をしてきた。

 

 

「(どうした?)」

『接続の準備をしておけ。』

「(ティアマトがまた暴走した時のためにか?)」

『いや違う。こちらへ“何か”が近づいてくる。』

「(え…?)」

 

 

バルファルクの意味深に疑問を抱いたその時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ギィィィィィェェェェェェェェェェアアアアアアアア!!!!

 

 

 

 

 

獣のような雄叫びと共に、上空から乱入者は現れた。この世界に転生し、この世界の知識を学んだ俺は知っている。機竜使いの敵は同じ機竜使いだけじゃない。それよりも厳重に警戒しなければならない、人類に牙を剥く天敵が存在した。

幻神獣(アビス)”…機竜が発掘された遺跡に、十余年程前に時折出現するようになった謎の化け物。種類は無限大であり、見つけた人間や動物を無差別に襲うと言われている。獣と違うのは、どこぞの火星で超進化を遂げたゴキブリの如く桁違いの戦闘力、不可解な生態、そして特殊能力だ。

その危険性故に殆どの大国では遺跡の近くに砦、関所、城塞都市(クロスフィード)を幾つも配置。さらに機竜使いを配備して不測の事態に備えている。この城塞都市(クロスフィード)も王都と遺跡の間にある防衛拠点も兼ねた都市だ。王立士官学園(アカデミー)には機竜使いの士官候補生も多くいる……が

 

 

「きゃあああああああ!?」

「な、なんでこんなところに幻神獣(アビス)が…!?」

「あれって…本に載ってた“ガーゴイル型”!?どうして警報が鳴ってないのよ!?」

「落ち着け!下級階級の生徒は機攻殻剣(ソード・デバイス)を抜くな!慌てずにまとまって校舎へ退避しろ!」

 

 

機竜使いの士官候補生とはいえ、実戦経験が浅い者が殆どだ。今回出現した幻神獣(アビス)は翼人のフォルムの“ガーゴイル”。観客席にいた女子生徒達は、演習場に突然出現した幻神獣(アビス)に怯えていた。

幻神獣(アビス)の出現率は低いが、先程も言った通り、その戦闘力は桁違いであるため、並の機竜使いが挑もうとすれば機竜の装甲ごと肉体をバラバラにされかねない。しかも城塞都市(クロスフィード)から数十kmも離れた遺跡から飛んでくるのだから、通常なら周囲の砦や関所から幻神獣(アビス)出現の連絡が届くはずだが、今回はその連絡がない。

そして機竜を召喚しようにも、観客席という密集地帯では手間取るのは確実。敵前でリロードするのと同じだ。

観客席の障壁を張るために配置されていた機竜使いの八名も、この緊急事態に身動きが取れていない。

 

 

「やっぱり唐突な事態には弱いか…。」

 

 

俺は硬直してしまっている八名の機竜使いを見ながら呟く。出現した幻神獣(アビス)はガーゴイル一体だけ…とはいえ、油断は決してできない強敵。ただでさえ油断できない状況に、現実は“無慈悲”に状況を悪化させる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ギィィィィィィィィエェェェェェアアアアアアアアアア!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

演習場にもう一体のガーゴイルが出現した。当然、生徒達は余計パニックになり、教官達も判断を躊躇していた。

二体も現れるなんてな…一体だけならまだしも、二体となると流石に二人が危ない……そろそろ俺も動くか。

 

 

「…。」

「メビウスさん…?」

 

 

アイリが俺の様子を気にする中、俺は二体目のガーゴイルが出現したのを確認すると、バルファルクを召喚するために観客席の前方へ行こうとする。

 

 

「待てメビウス君!何処へ行くつもりなんだ!?」

「決まってますよ。ルクスと王女様を助けに行きます。」

「無茶だ!ただでさえ危険な幻神獣(アビス)を相手にするのは自殺行為だ!君もすぐに避難するべきだ!」

 

 

俺が二人を助けに行こうとすると、シャリス先輩に止められ、校舎への避難を促された。俺は一旦ルクスの方に視線を向ける。ルクスは折れた機竜牙剣(ブレード)で二体のガーゴイルを相手に応戦していた。いくらルクスとはいえ、このまま放っておけばルクスがやられる。それどころじゃない、王立士官学園(アカデミー)の皆が危ない。

 

 

「大丈夫です、信じてください。」

「っ!?待つんだ!」

 

 

俺はシャリス先輩にそう言うと、観客席の前方へ歩いていく。俺は右腕の袖を捲り、右腕に隠していた腕輪を取り外すと、袖を直してからその上に付け直す。

 

 

「準備はできてるか?バルファルク。」

『もちろんだ。メビウス、すぐに装着だ。』

「ああ。」

 

 

バルファルクにそう言われた俺は機攻殻剣(ソード・デバイス)を抜剣すると、剣のトリガーを引く。

 

 

「ーー飛翔せよ、銀翼を以て宙を翔る天彗龍。一筋の凶星となりて、渺芒たる宙に紅き軌跡を描け、《バルファルク》!」

 

 

詠唱符(パスコード)を唱えた瞬間、俺の背後にバルファルクが召喚された。

 

 

「『接続開始(コネクト・オン)!』」

 

 

俺はバルファルクを纏うと同時に、龍気が結晶化したパワードスーツを装着した。

俺はふと見ると、ルクスと戦っていた二体のガーゴイルの内の一体が観客席の方に振り向き、光弾をばら撒こうとしているのが見えた。

 

 

『チャージ開始。』

 

 

バルファルクの声と共に、パワードスーツの胸部や機竜各所にある吸気口に空気が取り込まれ、“龍気”が生成される。

“龍気”…バルファルクが攻撃や音速移動に使用するエネルギーであり、龍氣炉核(ドラゴ・リアクター)と呼ばれる機関に空気を取り込み、何らかの化学反応を起こして生成する。機竜各所や俺のパワードスーツの胸部に吸気口があるのもそのためだ。この仕組みはジェットエンジンに似ている。

 

 

『ギェェアアアア!!』

 

 

龍気をチャージしていると、ガーゴイルが翼から光弾をばら撒いた。その狙いは、やはり観客席。ガーゴイルの習性は肉食動物と似ており、主に攻撃してくる者と逃げる者を優先的に狙う傾向が強い。このガーゴイルは、もう一体がルクス達の相手をしている隙に逃げ惑う人達を狙ったのだろう。

 

 

「ブースト!」

 

 

俺はバルファルクで生成された龍気を、“翼脚”の爪の先から勢いよく噴射。一気に加速し、今いた場所から大勢の生徒達がいる観客席の上へ一瞬で入り込む。

 

 

「ふっ!はっ!でやあっ!」

 

 

俺はバルファルクの右腕に装備された片刃の大剣を用いて、ガーゴイルがばら撒いた光弾を弾いていく。弾かれた光弾は、真っ二つになるか、別の方向へ飛んでいくかした後、小規模の爆発を起こした。

 

 

『ギャオオアアア!』

 

 

光弾をばら撒いたガーゴイルが、今度は俺に向かって急接近してきた。俺は大剣を構える。そしてガーゴイルが攻撃の間合いに入ってきたところで

 

 

「喰らえぇぇ!」

『ギャアオ!?』

 

 

俺は大剣の刃をガーゴイルにぶつけた。その際、大剣の峰から龍気が噴射され、速度加重によって威力と攻撃速度が強化された。カウンターを喰らったガーゴイルはそのままリングまで叩き落とされた。

龍星剣(スティールハーツ)》…片方に刃がついた大剣型の特殊武装であり、噴射口が設けられた峰から龍気を噴射することにより、斬撃の速度と威力を高めることが出来る。さらに剣自体の切れ味も凄まじく、並大抵のものならばこれで一刀両断出来てしまう。

 

 

「ルクス、王女様、聞こえるか。」

『うん。』

『貴様、一体誰だ!?』

『まぁ…言うと思ったよ…メビウスですよ。』

『メビウス!?』

 

 

俺は竜声…機竜を介しての通信機能を利用してルクスとリーシャに話しかける。俺がパワードスーツを纏っているため、リーシャに誰なのか疑われた。

 

 

『何故お前が神装機竜を…!?』

「話は後にしよう。俺が片方の幻神獣(アビス)を相手にする。だからもう片方を頼む。」

 

 

リーシャが俺に質問してきたが、今はそれどころじゃない。俺は二人に片方のガーゴイルを相手にする事を伝える。

 

 

『分かったよ、メビウスも気をつけてね。』

「ああ。お前もな。」

『おい待て!話はまだ…。』

『リーズシャルテ嬢よ、事情は後で説明する。今は戦闘に集中しろ。』

『!?…今の声は…?』

 

 

疑い深いリーシャに、バルファルクが竜声を使って手短に言った。そうこうしてる内に、地面に叩きつけられたガーゴイルが再び飛翔した。

 

 

「という訳で王女様、また後で。」

 

 

俺はそう言って竜声を切ると、態勢を立て直したガーゴイルに向かって接近する。

 

 

「うおおおおおっ!」

『ギャオオアアアア!!』

 

 

俺の龍星剣(スティールハーツ)とガーゴイルの鋭い爪がぶつかり、火花が散る。並大抵のものなら一刀両断できる龍星剣(スティールハーツ)だが、幻神獣(アビス)は耐久力も桁違いだ。流石に容易くは斬れない。

 

 

『ギャオオッ!』

「おっと…!」

 

 

ガーゴイルの爪の降り下ろしに、俺は後方へジェット噴射を利用しての宙返りで回避する。

 

 

「やっぱり一筋縄じゃいかないか…。」

幻神獣(アビス)との戦闘だ。たとえ一体だろうと油断ならん。』

「まぁ正論だな。これ以上被害が出たら溜まったもんじゃない。速攻で片付けようぜ、バルファルク。」

『よかろう。』

 

 

俺がバルファルクとそう会話していると、ガーゴイルは再び翼から光弾を放ってきた。

 

 

機竜咆哮(ハウリング・ロア)!」

 

 

俺は幻創機核(フォース・コア)のエネルギーを利用しての障壁を展開して光弾を防御する。ガーゴイルはさらに突撃してきた。さっきのパターンと同じって訳か。

 

 

「そりゃああ!」

 

 

俺は障壁を解除すると、再び龍星剣(スティールハーツ)を構え、突撃してくるガーゴイルにジェット噴射による強力な一撃を振るう…が

 

 

『ギャオオッ!』

 

 

あれを喰らったらまずいと判断したガーゴイルが、攻撃と見せかけて上に上昇した。ガーゴイル型は戦闘力だけじゃなく、知能まで優れている。

俺の背後に回り込んだガーゴイルは、そのまま爪を降り下ろそうとしてきた。背中は機竜にとって最大の弱点だ。機竜は急な方向転換が出来ないため、背後を突かれたら“通常”は対処が出来ない………そう、“通常”は…。

 

 

「甘めぇよ!」

『ギャア!?』

 

 

俺は右側の翼脚から強烈なジェット噴射を起こし、その勢いで素早く振り返ると同時に、翼脚の前方でガーゴイルの体を貫いた。

白銀の槍翼(シルヴァリー・オービタル)》…バルファルクのもう一つの特殊武装で、俺が“翼脚”と呼称する装備だ。通常時は翼爪の先端部から龍気を噴射して音速移動を行うが、その状況に応じてオールレンジに対応可能な武器にもなる使い勝手がいい武装でもある。

 

『ギィィィィィッ…!』

 

 

ガーゴイルは身体を貫かれても尚、俺に攻撃をしようと爪を構えるが、翼脚による一撃が致命傷になったか、動きが鈍い。そろそろ終わらせるか。

 

 

「そらよっ!」

 

 

俺は翼脚で貫いたガーゴイルの身体を上空に放り投げると、翼脚の爪の向きを真上にする。そして爪の先端部にコアのエネルギーと龍気が溢れ、スパークしながら二つのエネルギーが融合する。

 

 

「これでフィニッシュだ!」

 

 

俺は真上に放り投げたガーゴイルに向けて、6発の光弾を発射した。放たれた6発の光弾はガーゴイルに命中し、ガーゴイルを跡形もなく消し飛ばした。

 

 

「ふぅ、ところでルクス達は…。」

 

 

ガーゴイルを倒した俺は、ルクス達の援護へ向かおうとするが、その必要は無くなった。何故なら、一筋の赤い光線がガーゴイルを消滅させたからだ。どうやらルクスが囮としてガーゴイルの注意を引いている間に、リーシャが地上から七つの竜頭でガーゴイルを仕留めたようだ。

ルクスはガーゴイルの攻撃を受けたのか、気絶している。リーシャもかなり疲労していた。

 

 

『向こうも終わったようだな。』

「ああ。とりあえずまずはルクスを運ばないとな。」

 

 

俺は機竜を解除すると、気絶したルクスを運ぶべく、ルクスのもとへ行く。その後は……忙しくなりそうだ…。

 




今振り替えって、今回なんか会話描写少なかったorz
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