チートによる自動股 作:さよならデータさん
暗闇の中でふと意識が覚醒する。
なにも見えないその真っ黒な景色、その一点で輝いている場所があった。
近づくとその輝きが辺り一面に広がり、黒の背景を塗り潰した。
「……。 公園、か」
そこは遊具の並んだ、かなり昔に見た公園。
ある意味自分たちの始まりの場所でもはや色褪せた記憶の残り香。
ふと声のする方に視線を向けるとジャングルジムの上で三人の子供が話し合っている。
━━━なるほどな。
ようやく理解が追いついた。
あぁ、そうか、これは夢だ。
だってその三人の内の二人はもうこの世界にはいないのだから。
「━━━いつか、うちらで夢を叶えようよ。
━━━くんは科学者でロボット作って、━━━くんは正義のヒーローやろ!
うちは━━━くんの作った宇宙船に乗って宇宙人とかと仲良うなるんや。
頼りにしてるで、未来の科学者さん?」
一人の少女が興奮したように二人の少年に話しかける。
それに対して気だるそうにした少年は少し自慢気に懐から紙を出して二人に見せびらかすように広げた。
「ふっ、ばかめ。 現時点で超発明してる俺にそれは無意味でござる。
見よ、この新しき我が発明の設計図を!!」
「いや、完成品を見せろよ、そこは。」
「いや、国から色々言われてて造れんのだ。
安全性とか技術検証とか予算とか━━━」
「まぁええわ、うちの生きてるうちに宇宙船おねがいなぁ」
「俺もヒーローやりたいから秘密基地と変身セット早く作ってくれ」
「……君たち俺任せにし過ぎでしょう。
こうなんか手伝ってくれるとかないの?」
「「ない!!」」
「こ、コイツらは……」
わなわなと震えて、遂には二人を追いかけ回した男の子。
他の二人の少年と少女はキャーキャー言いながら、その子から逃げ回る。
なんて懐かしいんだろうか。
このままだとあの子達に引き離されてしまう。
追いかけようとして身体が動かない事に気付いた。
景色がボヤけ、塗り替えるように激しい光が此方に向かってくる。
「まっ━━━!?」
咄嗟に呼び掛けようとして背景が変わったことで無駄だと気付いた。
辺りを見回す。
今度の景色は散らかった研究室の個室みたいだ。
そね個室のデスクに繋いである受話器に向かって少し成長した少年が怒声をあげていた。
「なんでだ!? なんでそんなことになる?
なんでアイツに脳腫瘍なんか━━━」
「俺だってわかんねぇよ!! アイツの調子がおかしいからって検査したら……。
なぁ、どうしたらいい?
どうすればいいんだ?! なんとかなんないのかよ!?」
「━━━こっちでなんとかしてみる。
金も俺から出す、取り敢えず待たせてくれ。
きっと治るさ、絶対」
あぁ、この記憶は━━━。
少年は大丈夫だと繰り返し友人に告げて明るい声で受話器を置いた。
彼は急いでネットから医学書、論文、そういった物を流し読みし、目にも止まらぬ早さで脳へと情報を積み込む。
ここまでしか映ってないがあの少女の病状は高グレードで何とか自分が金を払って病院にいれたものの容態は良くならなかった。
ヘタをすれば半年も持たない。
そこでこの最年少の科学者としてここにいた少年は急速に医療分野の知識を詰め込み、ナノマシンによる治療技術の確立を推し進めた。
特典として得た知識は彼をありとあらゆる面で背中を押し、遂には歴史にも書かれる程の医療発展を成功させた。
開発は僅か1週間、だがその歴史的な発明はその時点では使えるはずもなかった。
━━━その技術は本当に安全なのか?
臨床試験もテストケースすらない、その新技術はあらゆる意味で早すぎたのだ。
成功例の無いものを試す訳にはいかない。
だからこそ、彼は急いで様々な末期患者の元へ走った。
頭を下げ、様々な保障をして、死に物狂いで駆け回り、━━━そして成功した。
テストを受けた全患者の治療率が10割、つまり全員成功という結果を叩き出した。
この結果を受けて彼女へのナノマシン投与は決定する。
間に合った、ベッドで眠る彼女を前に友人とその家族に説明し、次の日に投与手術が始まる事に決まった。
すべては上手くいっていた。
その日の晩に彼女が亡くなる事さえなければ。
容態の悪化、まだ自分の転生前まで進んでいない一部の医療技術による二次白血病と新しく転移したと思われる腫瘍。
ナノマシン治療という新しい分野に傾いていた彼はその病状に気づくことは出来なかった。
検査も十分したというのにだ。
「あっ、えっえ? はっ? な、何で?」
端から見ても分かるその絶望感。
あと数日、いや数時間あれば助かった命。
頭が真っ白になった。
どうして? 何故こんなことが?
あと数時間だったんだぞ?
たった一つのアンプルを打つだけだった。
なのに、なのに━━━。
「ふざけるなぁ!!」
彼は自室に閉じ籠ると周囲の物に当たり散らした、新しい論文、書きかけの技術理論、患者からの感謝の手紙。
手当たり次第に破り、叩きつけ、踏み潰した。
そして、ある設計図が目に入り、そのまま怒りに任せて破ろうとして手が止まった。
かつて三人で集まった時に見せた宇宙船の設計図、そこに彼女の文字で『うちらの宇宙船!』と赤色の鉛筆で書かれていた。
少年はひたすらそれを眺めて号泣する。
どれくらいたっただろうか?
涙を拭い、それを胸に抱くとデスクの上を叩き落として設計図を広げた。
このままでは終われない、あの子の夢を叶えよう。
そう決意して、━━━また場面が変わる。
急に場面場面が跳んで分からなくなってくる。
コマ送りにみたいに景色が移動し、止まった。
だがそこにはまた少し大きくなった少年とその友人達がいた。
どうやら完成した宇宙船の艦橋にいるらしい。
彼等は口々に色んな事を話し合っている。
その輪に近づいていく人影を見てそれが自動人形だと気付いた。
しかも、見覚えがある。
副官、そして他の初期ロット。
懐かしい、確かにあの頃の記憶だ。
そう、宇宙に出て間もない頃だったはずだ。
「艦長、救援信号だと思われる反応があります!」
その声に先程まで楽しそうに話していた彼等は直ぐ様自分の持ち場につく。
「どこだ?」
「すぐ近くに反応があります、どうやらこの宙域で発信されいるようで……」
それを一緒に眺めていた少年が彼へと言った。
「行こう、初めての知的生命体との交流としては十分だ。
○○、アイツに出来なかった事を俺たちがやってやろう!」
その言葉に彼は頷く、当然だ。
そう返答して彼等は救助挺に乗り込んだ。
もしもの為に自衛の為の武器と医療物資を詰め込んで━━━。
やめろ、その船に近づくんじゃない!
咄嗟に声が出た、これはもう変えようのない過去だというのに。
最悪のファーストコンタクト。
救助に向かった人員、自分以外が全て殺害された最悪の事故。
宇宙へと向かった無知な自分たちへと無慈悲な悪意が襲い掛かる瞬間だ。
「やめてくれ、夢なら覚めてくれ、早く」
多少トラブルはあったがドッグらしき場所に船をつけると彼等はそのまま船内に入った。
「……どういう事なんだ、これは」
多少、停電もしているのはいい。
だがこの大量の血痕はなんだ?
「嫌な予感がする、各自火器使用自由。
気をつけろ!」
そう指示を出すと各班に別れ、行動する。
その宇宙船は異様すぎた、言葉は自分たちの英語と同じであり、時折日本語で表示されているイシムラという文字。
探索すればするほどにその異様さが増してくる。
大量の死体袋と損壊が激しい死体。
そして、
死体の化け物と遭遇した。
▽
『助けてくれ!! コイツら銃が効かない!!
があぁぁっ!?』
「二番班、何があった!? 二番班!!」
突如各班に伝えられた通信、二番班からの緊急連絡。
そこから聞こえた奇声と人員の断末魔。
なにか不味い。
直ぐ様確認の為に回線を開く。
「至急二番班の救助、三と四番班で状況を確認して対応を━━━」
ガンッ、
そんな音共に通信は妨げられた。
次いでダクトから奇声を上げ、【ナニカ】が現れた。
そして、状況は瞬きする間もなく変化した。
逃げ出す者に戦う者、とにかくそれが出てきてからは皆、必死だった。
銃が得意な部隊員がヘッドショットをソイツに決めたが逆にそれで暴れまわるようになり、その部隊員はソイツの鋭い爪で切り刻まれた。
同伴していた自動人形が何とか応戦するも戦闘モデルではないために乏しい攻撃手段でじり貧となり、途中で音声ログとやつらの手足を切り落とせという血文字を見つけなければ抵抗も出来ずに殺され、誰も助からなかっただろう。
だが、その時点でもう半数も人員が惨殺され、何とか対処方を伝えたのはいいが持ってきたのは対人用の火器。
あの化け物にはストッピングパワー自体明らかに不足しており、現地で何とか武器を調達し、現地の生存者と協力して━━━。
━━━あぁ、光が迫ってきた。
▽
「━━━いやな夢だ」
不快に汗の感触に最低の夢を見て最悪な寝起きとなってしまった。
身体を動かそうとして、肩にもたれ掛かっている女性に気が付いた。
どうやらあの攻撃でもうダメだと思っていたのだがこの砂漠が見える洞窟にいる所を見るに助けられたようだ。
よく見れば入り口にも身体から紫電を走らせ倒れているもう一体がいた。
近場で倒れている二人の女性型アンドロイド、この二人が俺を助けたのだろうか。
近くにあった自分が取り出したらしい医療ボックスを見るとどうやら無理矢理開けたようで一部の回線が焼き切れていた。
このボックスには型落ちとはいえ、医療用に強固な防御プログラムが組み込んであったのだがそれを無理矢理に解いたのだろうか?
特定のコードさえ打ち込めば開くのだが知らないなら無理に開けるしかないが彼女たちに解けるとはオモエナイガ……。
「とにかく借りは返さないとな」
立ち上がると直ぐに彼女たちを収納し、先程までいた団地へ向かう。
あそこにあったアンドロイドの死体を使えば修復は出来るはずだ。
そう考えて量子ストレージから予備のスーツを装備し、ステルス機能を展開させた。
しかし、アレはなんだったのか?
口ぶりからしてこの星を守っていたような感じではあったが……。
また謎が増えてしまった。
もしかするとアレも元は人間━━━。
……。 後にしよう、先ずは借りを返す所から。
そう決めたのだから。
▽
結局、こんな所にあるこの死体では修理は儘ならなかった。
どうにもあの機械生命体はアンドロイドからもパーツを取って自己強化しているらしく、どう考えても修復するには部品が足りない。
直す方法はある、だがこれは駄目だ。
一応、命の恩人である二人にこれは出来ない。
だが見殺しにするにも━━━。
「━━━すまない、せめて量子ストレージに壊れている部分さえなければ」
再度、謝りの言葉を口にして男は動き出した。
姉妹の身体の横に別の義体を設置する。
本当にまじで許してくれっ!!
姉妹の身体からパーツを剥ぎ取り、その義体に移していく。
ここで唐突に明かすことになるが彼が謝っているのは姉妹の身体を裸にしてパーツとりしていることではなかったりする。
原因は今、移している義体。
それは彼がアンドロイドを産み出したと同時にアダルトメーカーに打診され、作った人類の夢。
かつて人々の間でパソコンが普及したのは何が要因だったのであろうか?
インターネット? コミュニケーションツール? 情報端末?
━━━それもあるだろうが自分は違うと断言する。
スッと取り出したのは一枚のフロッピーディスク、これだ。
中身はドットで彩られた【エロゲー】である。
そう、人はエロスで進化したのだ!!
この義体は彼がそういったメーカーと「嫁を作ってほしいなりぃ!」と叫んだ自分を引き取ってくれた独身の義父に同士たちの心の叫びに応えて作った最強のアダルトグッズ、オナホロイドとセクサロイドシリーズである。
当初これを作った時は様々な課題があった。
というよりも義父の注文が煩くて何度も作り直したことなのだが━━━。
『アイドルはう◯ちしないのと一緒で俺の嫁はトイレなんてしない』だの、物騒だからと戦闘力をつければ『◯◯タンはこんな力は持ってない可憐な乙女なんだ! 力を元に戻して!!』とかあって制作は難航した。
世話になっていたせいか余計にその注文にも応えて作ったから一際思い出もあるのだが……。
何もここで出ないでも━━━。
おまけに生体義体しか積んでいなかったからかアンドロイドに使えそうな部品は先の通りにこれだけ。
故障で一部取り出せないストレージにあるかも知れないが無理な物は無駄だ。
ふとその義体に残ったログを流し読みしてみる。
『我慢できなくなった時はどうぞ』
澄ました顔でドヤ顔しながらこちらを見る副官を幻視した。
「変な気を遣うんじゃねぇー!!」
持っていたパーツが乾いた砂に八つ当たりで叩きつけられたが乾いた音を
たてる以外に特に何もなく終わった。
何故か虚しい、そんな気持ちになりながら彼は二人の修復を開始した。
先程までの事は忘れるように言い聞かせて。
すまんな、大分遅れてしまった。
でもボクはガンバったよ、残業の時も本社から至急と書かれた製造所が渡されてもボクは頑張ったんだ!!
という訳で嘘予告。
「デボル、これは━━━」
「ああっ、間違いない。
産んでほしいんだ、私達に、子供をッ!!」
「げえっ、これ最高級モデルのマルチロールタイプで人工子宮搭載型━━━って卵子生きとるやんけっ?!」
犯した過ち、間違えた選択、訂正されぬ誤解、都合のいい虚偽。
人類復興の時は来た!
迫る双子! 迫るヨルハ! ついでにパスカルと全裸の兄弟!
「やめろー、それ以上近づいたらここからとびおりるぞぉー!!
やめ、やめろー!?」
次回「ニンゲンサンアヤマチオカシテパパニナルッ!!」
勿論嘘である。
おまけ
「こ、これは━━━」
「いや、そんな、でもっ━━━」
学校という唐突なイベントが終わり、自宅として設定された拠点の民家へと戻った二人。
何度か時間が止まり、チュートリアルによるヘルプ画面の説明を受けて帰宅した彼女たちは母親として設定された人物から今日の夕食を受け取っていたのだが、
「ちゃ、茶色い!?」
「ま、まさかこれって!!」
彼女たちはつい最近これに似た物をとあるオペレーターから見せられていた。
何時もなら彼女たちに助言を与え、
『これはカレー。 人類に好んで食べられた複数の香辛料を調合した薬膳食である』
と教えてくれるだろうがここは仮想空間の中、頼れる彼等はここにはいない。
「2B、覚悟を決めましょう。
ボクは腹を括りました……」
悲壮な覚悟で言う9Sだがこれはただカレーを食べるだけである。
その覚悟は別な所で使うべきではないだろうか?
「━━━一緒に行こう9S、私達は仲間なんだから」
こっちもこっちで壮大な覚悟をしているが勿論意味はない。
ただ彼女たちは急に浮かんできて手にブツを持つ6Oに少し苛つきながらそれを口に含んだ。
━━━ガツガツ、ガツガツ。
「「はっ!?」」
気づけば皿は空になっていた。
二人は嘗めていた、人類の、日本人の食文化を。
食べたら死ぬという魚のフグの食べ方を見つけ出し、海外の料理ですら自分たちの舌に合うように魔改造する一部からHentaiと呼ばれたその一族の料理を!
ただやはり彼女たちは勘違いしていた。
なんせ二人して調理してできたての人類の◯◯はおいしいと思っていたのだから。
この二人の勘違いはあと少し先まで訂正されることはなく、母親に叱られ説教されるまで続くことになる。
「なんて下品な事を言うの2B!
これはカレー!! 貴方達の好物だったでしょうに!!」
「「ご、ごめんなさい母さん」」
初耳なんだけど。
奇しくも同じ事を思いながら二人は怒られたとさ。
勿論、その誤解をしたのは彼女たちだけではなかったがこれは余計な話。