東方夢喰録 〜 Have a sweet nightmare!! 〜   作:ODA兵士長

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第21話 成代 –– ナリカワリ ––

 

 

 

 

 

 

 

 

「何から何まで……本当にありがと」

「構わないわ。これからも貴女は病院にいる事が多くなるでしょうし、いつでもいらっしゃい」

「ええ。また喜んでお呼ばれするわ」

 

永琳宅で朝食をとり、私は病院に向かおうとしていた。

 

「じゃあ咲夜。霊夢をしっかり送って行って頂戴ね」

「分かってるわ」

「いや、病院すぐそこだし、送る必要ないわよ。あんたも永琳と一緒に仕事場行きなさいよ」

「この家、結構広いから、意外と迷うわよ?」

「そうなの……?じゃあ、お願いするわ」

「なんだか霊夢。どんどん素直になっていくわね」

「私は元から素直だけど?」

 

永琳と咲夜は笑っている。

なんだかムカついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあ私は仕事に戻るから」

 

結局私は、咲夜に魔理沙の病室まで送ってもらっていた。

ポツリポツリと会話をしながら歩いていた2人の時間は、途中の沈黙の時間も含めて、非常に心地の良いものだった。

 

「ええ、お世話になったわ」

「これからも、お世話するつもりよ?」

「そうね、お世話になるわ」

「ふふっ、じゃあまたね」

「うん。頑張って」

 

咲夜は病室を後にした。

私は魔理沙のベッドの横に、元から病室に置いてある椅子を持って来て、腰掛ける。

 

「こうして、あんたの顔をゆっくり眺めるのは、なんだか久々な気がするわ」

 

昨日の手術により、魔理沙は気管に直接空気を送り込む形になった為、以前とは異なり口が覆われていない。

だから、魔理沙の顔を覆うものは何もない。

ふと、紫を見る。

まだ手術を終えていない紫は口が覆われ、そこから空気が送り込まれている。

私は視線を魔理沙に戻した。

 

「魔理沙」

 

意味もなく、私は呟いた。

頰に触れる。

温かい。

生きてる。

 

「…………ダメね。2人きり……紫も居るから3人か。それでも、こうしてると、どうしても感傷に浸っちゃうわ。私も、ナースとかの仕事をさせてもらおうかしら?」

 

当然、その声に反応するものはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから、少し時間が経った。

昼には咲夜が食事を持って来てくれた。

時計はすでに16時を指している。

私は院内の売店で買った雑誌を読みながら、何もない時間を過ごしていた。

 

 

 

 

すると突然、誰かが扉をノックする。

こちらが返事をするより先に、扉が開かれた。

 

「霊夢さん、魔理沙さん、居ますか?」

「居るけど…………あんた、何しに来たの?」

「何しに来たの?じゃありませんよ!2日も連絡なしに学校休んで、心配したんですよ?」

「ああ……そういや私たち、学校行ってたわね」

「なんですかそれ!学校忘れてたんですか?今日はもう水曜日です!バリバリの平日ですよ!」

「うるさいわね……ここは病院よ」

「あ、す、すみません……」

 

私と魔理沙は、近くの高校に通っていた。

そういえば連絡入れるの……いや、そもそも存在自体忘れてたわ。

そして今、私の目の前でシュンとしている少女––––東風谷(こちや)早苗(さなえ)は私たちのクラスの委員長をしている。

真面目で正義感の強い彼女は、私たちが無断で休んでいることに納得がいかなかったのだろう。

 

「……え?」

「早苗、どうしたの?」

「その……ま、魔理沙さん……?」

「え?あ、あぁ……ここに寝てるのは魔理沙よ」

「ど、どうされたんですか……?」

「最近噂になってるとかいう窒息死よ。死ぬ前に私がここに運んだから、なんとかまだ生きてるけど」

「そんな…………」

 

早苗は分かりやすく驚愕していた。

 

「ご、ごめんなさい。そんなこととは知らず、責め立てるような真似を……病院という時点で察するべきでした。本当に申し訳ありません」

 

早苗は深々と私に頭を下げる。

 

「いいわよ、別に。気にしてないから」

「なら、良かったですけど……この事は、クラスの人に言わない方が良いですか?」

「別に隠したいとは思わないけど。まあ、あまり騒ぎ立てるのはやめて欲しいわね」

「分かりました。先生には言ってもいいですか?」

「構わないわよ」

「了解です」

 

早苗は笑顔を浮かべていた。

早苗なりに気を遣って、重い空気にしたくないのだろうと私は解釈した。

 

「では、私はこれで失礼しますね。見舞いの品も持ってこれず、申し訳ありませんでした」

「いいわよ、そういうの。気にしないで。まあ、貰えるなら貰うけど」

「はい、今度は持って来ますね!」

 

早苗は病室を出る前に、もう一度私に一礼し、そして去っていった。

と思ったら、すぐに戻って来た。

 

「渡すの忘れてました!見舞いの品とは言えませんが……どうぞ!」

「え、何それ?プリント?」

「はい、配られたプリントと課題です。ここに置いておきますね」

「いや、要らないわよ」

「渡さないと、怒られちゃうので。では、今度こそ失礼します!」

「あーはいはい。さよなら〜」

早苗は、そそくさと去っていった。

 

「なんか……嵐みたいなやつね」

 

私は魔理沙に笑いかけた。

 

「まあ、暇つぶしにはなったけどね」

 

私は再び、雑誌に目を落とした。

するとすぐに、再び扉が叩かれる。

聞き覚えのあるノックの音だった。

 

「入っていいわよ」

「失礼しますわ」

「どうしたの?咲夜」

「2人の点滴を交換しに来たわ」

「そう」

 

咲夜が作業に取り掛かる。

 

「さっきの子、同じ学校なのかしら?」

「早苗のこと?そうだけど、どうかしたの?」

「いや、別になんでもないわ。貴女が変なこと言ってなければ」

「言ってないわよ」

「ええ、信用してるわ」

「そりゃどうも」

 

咲夜は作業を終えたようだ。

 

「それじゃあ、また晩御飯の時に来るわ。それとも、またうちで食べる?」

「そうしたい気持ちもあるけど、今日は魔理沙の寝顔でも眺めながら食べたい気分かしらね」

「そう。じゃあ、ここに持って来るわね」

「ええ、ありがとう」

「どういたしまして。それじゃあ失礼しますわ」

 

咲夜は一礼し、病室を後にした。

 

 

 

 

 

「んー、首が痛い……」

 

私は自分で自分のうなじ辺りを揉みながら、誰に聞かせるわけでもなく呟いた。

私は雑誌を閉じ、腰を上げる。

雑誌を棚に置きつつ、早苗が持ってきたプリントを手に取った。

 

「うわぁ……結構量あるわね……」

 

そんなことを呟いていると、扉を叩く音がした。

先ほどとは違い、聞き覚えのないノックの音だ。

 

「開けていいわよ」

「失礼しますわ」

「……あれ、咲夜?」

「ええ、そうだけど。どうかしたの?」

「いや、なんでもないわ。咲夜じゃないと思ってたから」

「……そう」

 

病室に入ってきたのは咲夜だった。

 

「何しにきたの?夕飯にはまだ早いと思うのだけど?」

「いえ、ちょっと薬の補充にね」

「薬の補充?」

「ええ、魔理沙の点滴薬を変えるだけよ」

「え?さっき変えたばかりじゃない」

「……追加薬を、頼まれたのよ」

「追加薬?」

「ええ。詳しいこと言っても、霊夢には分からないでしょ?」

「何それ、馬鹿にしてんの?」

「怒らせるつもりはないわ」

「はぁ……まあ、確かに分からないし。私もあんたのことは信用してるから、勝手にしなさい」

「じゃあお言葉に甘えて、勝手にさせていただくわね」

 

咲夜は魔理沙の点滴薬に手をかける。

 

 

––––違う。

 

 

「……?」

 

私の勘が、何か言っている。

咲夜は魔理沙の点滴薬を外した。

 

 

––––違う。

 

 

「それだけじゃあ、何が違うか分からないわよ」

「え?」

「ああ、ごめん咲夜。独り言よ、気にしないで」

 

咲夜は怪訝な顔をしたが、手は止めない。

魔理沙の点滴薬が交換された。

 

「それじゃあ、また後でね。失礼するわ」

 

咲夜は病室を出るために扉を開けた。

そのまま出ようとする咲夜に、違和感を覚えた。

 

「––––違う?」

「……何?また独り言?」

 

咲夜が振り返る。

 

「あ、いや……貴女に確認したいことを思い出して」

「私に?何かしら?」

 

ドクンッ、と私の心臓の音が響く。

 

 

 

 

––––魔理沙達に思うことがあるのは分かる。私も時々、お嬢様を思って辛くなるわ。

 

––––でも、それこそが私たちの勝手な同情なのよ。そんな同情、受け取る側は果たして嬉しいのかしら?そんな同情、しても失った人は帰ってこないのに、意味があるのかしら?

 

––––あなたに私の考えを押し付けるつもりはないし、魔理沙が私と同じ考えだという保証もない。だけど、少なくとも私なら、そんな同情を受けるよりも、自分が助けた相手が幸せでいてくれた方が嬉しいわ。

 

 

 

 

私は昨日の、咲夜の言葉を思い出しながら言った。

 

「昨日の夜にあんたが言ったこと、考えていたのよ。本当に、魔理沙達を想い続けることが、彼女達への手向けになるのかしら?それは単なる同情にはならないのかしら?」

 

心臓の鼓動が早くなる。

目の前の咲夜は言った。

 

「…………魔理沙達にとって一番辛いのは、忘れられること。だから貴女が想い続けるのは、彼女達への償い程度には手向けになるんじゃないかしら?」

「それは、私が幸せであるよりも重要?」

「霊夢の幸せ……?貴女の幸せが魔理沙達に何の関係があるの?」

「ッ!!」

 

少女は病室を出ようと、視線を廊下へと戻した。

 

「じゃあ失礼するわ」

「……待ちなさい」

「あら、まだ何か用かしら?」

 

私の心臓の音が病室内に響いている気がした。

 

「咲夜の振りをしているあんたは……一体、誰?」

 

少女は振り返らない。

 

「やっぱりカマかけられていたのね、私」

「……」

「でも、今更気づいても遅いわよ、霊夢」

「は……?」

「それでは」

 

少女は駆け出した。

 

「なっ!待ちなさい!!!」

 

私も少女を追い、病室を出る。

 

「…………いない?」

 

しかし、すでに少女の姿はなかった。

 

「さ、咲夜……ッ!」

 

私はそう言いながら、ナースコールを押す。

少しして、咲夜が来た。

開けたままの扉から入ってくる。

今度の咲夜に、違和感は感じない。

私の勘も静かだった。

 

「霊夢?何かあったの?」

「早く点滴を変えて」

「え?どうしたのよ?」

「いいから早くして、じゃないと魔理––––」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

––––––––––ザワッ––––––––––

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「––––沙が……ッ!」

「……あら、また巻き込まれたみたいね」

 

そこは森の中だった。

太陽は出ておらず、夜空が広がっている。

しかし、異様に明るかった。

夜空には大きな星がいくつも浮かんでいる。

それだけじゃない。

森に生えてる木々の上で、まるで電飾が施されたクリスマスツリーのように、星が光り輝いている。

不思議な光景だった。

 

「でも、ちょうどいいかもしれないわ。何があったのか、ゆっくり説明してもらえるかしら?ここならどんなに長く話しても、現実では一秒も経たないから」

 

咲夜が私に言う。

それに私が答える前に、背後から声がした。

 

「––––なあ、霊夢か?」

「……魔理沙?」

「やっぱり霊夢か。私たち、何でこんなところにいるんだ?それに隣の奴は……」

 

魔理沙に会えて嬉しい。

そう思う気持ちより、私の勘が騒いでいた。

私は、私の勘を否定することに必死だった。

 

「あら、この子また巻き込まれたのね。この短期間に何度も巻き込まれるなんて、霊夢ほどじゃなくても、この子も十分撒き夢なんじゃない?」

 

咲夜が、フッと笑いながら冗談を言う。

 

「魔理沙。貴女にとっては初めましてかしらね。十六夜咲夜よ、よろしくね」

 

そして、咲夜が魔理沙に軽く自己紹介をした。

 

「初めましてじゃないぜ?私は咲夜を知ってるからな」

「……え?」

「あれ?でも、私って忘れるはずじゃなかったか?」

 

魔理沙が首を傾げる。

 

「おかしいな。全部覚えてるぜ。咲夜のことも、喰われたことも、その後にもう一度お前らと会ったことも……全部」

 

魔理沙が笑っている。

 

「もしかして私––––「違う!!!」

 

私は魔理沙の言葉を遮る。

魔理沙が私を見る。

私は俯いてしまった。

目に浮かんだ何かを隠すために。

 

「れ、霊夢?どうしたんだよ、いきなり叫んで」

「違う…………魔理沙は…………」

「あ、分かったぜ!現実じゃあ、私は寝たきりらしいからな。こうやって会えて嬉しいんだろ?」

 

魔理沙がニヤッと笑って、私の顔を覗き込む。

 

「霊夢、泣いてるのか?」

「……」

「嬉し泣き、って感じでもないな。何かあったのか?」

「……」

「ごめんな、霊夢。多分私がお前に辛い思いをさせちまってるんだろうな」

 

魔理沙が私の肩に手を置く。

 

「私はお前に……霊夢に泣いて欲しくないぜ」

 

魔理沙は優しく微笑む。

 

「だから私が、その涙を喰べてやるよ」

「ま、魔理沙……?」

「何でだろうな、霊夢。さっきから私、ものすごく––––」

 

 

 

 

魔理沙のような何かが、私を抱きしめる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「––––腹減ってるんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





*キャラ設定(追記あり)

○博麗霊夢
「私は勘で動いただけよ」

年齢 : 17歳くらい
他人に無関心なところもあるが、人との関わりを避けているわけではない。
楽しいことも美味しいものも普通に好き。
勘が鋭く、自分でも驚くほどの的中率を誇る。

【能力 : 空を飛ぶ程度の能力】
文字通り空を飛ぶことができる。
この能力を発展させた技が以下の2つ。
(原作と大きく異なる解釈をする為、必ず参照のこと)

・夢想封印
攻撃技。
武器として出現させた御札に特殊な効果を持たせる。
その札が貼り付いた者は光に包まれ捕食され、跡形もなくなる。
痛みもなく、存在が消える。

・夢想天生
防御技。
ありとあらゆるものから"浮く"ことで、実体を持たない"夢"の状態となる。
相手は攻撃を当てることも出来ず、ただ防ぐ手立てのない御札をその身に受けることになる。
また、その御札は追尾性能を持つ。



○霧雨魔理沙
「おっす霊夢、迎えに来たぜ」

年齢 : 17歳くらい
好奇心旺盛、明朗快活。
男勝りな口調は意識してる。
内面はただの乙女。
霊夢の古くからの友人であり、一番の理解者。

【能力 : 魔法を使う程度の能力】
主に攻撃系魔法を使う。

武器として箒とミニ八卦炉を出現させる。



○十六夜咲夜
「まあ、1番早いのは、私がユメクイを殺すことでしょうね」

年齢 : 19歳くらい
冷静沈着、才色兼備………を装っている。
実力、容姿共に十分だが、自意識過剰。
しかし結構他人想いで、世話焼きな面もある。
また家事全般を余裕でこなせる為、嫁にしたい女子No. 1である。(作者調べ)

【能力 : 時を操る程度の能力】
時間を加速、減速、停止させることができる能力。
巻き戻すことや、なかったことにする事はできない。

武器としてナイフを具現化させる。
その数に制限はない。



○鈴仙・優曇華院・イナバ
「ひ、酷いです師匠!私が師匠を裏切るわけありません!!」

年齢 : 18歳くらい
永琳を師匠と慕う少女。
真面目で陽気な性格。
本来は臆病者だがユメクイ化の影響で少し強気になった。
人は力を手に入れると変わるのである()

【能力 : 波長を操る程度の能力】
光や音の波長を操ることで幻覚や幻聴を起こす。
相手の五感に干渉できる。

武器として弾丸を発射することができる。
自らの手で拳銃のような形を作り、発射する。



○東風谷早苗
「––––この世界では、常識に囚われてはいけないのですよ!」

年齢 : 17歳くらい
霊夢、魔理沙と同じ学校に通う少女。
成績優秀で真面目且つ明朗快活な性格から、学級委員長を任されている。
しかしどこか抜けている。
あと、鼻に付くところもあり、敵を作ってしまうこともしばしば……
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