東方夢喰録 〜 Have a sweet nightmare!! 〜 作:ODA兵士長
「悪いな。その程度じゃ死ねないんだ」
「ひっ!?」
––––バリッ
「またこの世界も終わりか」
––––●●●の夢は崩壊した––––
鈴仙の言った通り、あれから何度も夢に巻き込まれ、戦わざるを得なくなった。
この世界で死んだものは、現実世界で窒息死する。
その説明は聞いていたが、ニュースになっているのを見て、少しだけ罪悪感が湧いた。
––––私も、人殺しになるのか?
というか、永琳が全部悪いんじゃないか?
情報公開した方がいいんじゃないか?
そう考えたが、思い直す。
もし永琳が情報公開すれば、確実に捕まるだろう。
しかし、そうなってしまっては困るのだ。
ユメクイの殲滅という、単純且つ唯一の解決策が実行不可能となる。
薬を飲まなければ、私もただのユメクイだ。
永琳の薬でユメクイになってしまったことは確かだが、永琳の薬がないと"ただの"ユメクイになってしまうことも確かなのだ。
だから私は、戦わざるを得ない。
––––そしてそれが、私の小さな
「妹紅、朝だぞ〜」
「……むぅんんんっ、ねむぃ……」
「少し前は自分で起きれたというのに、また戻ってしまったな」
慧音が私を起こしに来た。
私は例の薬の効果により、多少の夢を見ることとなった。
その所為か、以前のような寝起きの良さはなくなってしまった。
とは言え、寝つきはそこそこ良い為、不眠に悩まされることは無くなったが。
「そろそろ起きないと、遅刻するぞ?」
慧音が私の肩に触れる。
そして私の体を揺すった。
「うぅ……はぁ、今起き––––」
––––––––––ザワッ––––––––––
「––––るよ……って、またか」
夢を集められた。
先ほどの眠気が嘘のように吹き飛んだ。
「妹紅……?ここは?」
「慧音も巻き込まれたのか!?」
「巻き込まれた?」
「くそ、やりづらいなぁ……」
「おい、妹紅?話が見えないんだが?」
「とにかく私から離れないでくれ。あと、死ぬな」
「な、なにを突然……?」
私は左手から炎を出す。
「も、妹紅!?手が……ッ!」
「ここは慧音の知らない世界だ。でも、慧音は私が絶対に守る。だから、離れないで欲しい」
「……よく分からないが、分かった。妹紅についていれば良いのだな?」
慧音は私から手を離し、納得いかないような顔をした。
「それにしてもここはどこなんだ?」
「簡単に言えば、夢の中だ。そしてこの世界には主がいる」
「主……?」
「ああ。そして、そいつを殺せばここから出られる」
「殺すのか……?」
「仕方ないのさ。
「その主とやらも、私たちを殺しにかかるってことか?」
「正確には喰いかかるんだけどね。まあ、結果は同じさ」
「そうか……私には何が何だか分からない。だから、妹紅に任せよう」
「そうしてくれると助かる。とりあえず、死者を最低限にする為にも、この世界の主を探さないとな」
私は慧音とともに歩き出した。
そこは至って普通の、簡素な森だった。
––––ただ、一点を除いては。
「それにしても……あれはなんだ?」
森の中の木々には、人形が吊り下げられていた––––
「……なによ、あれ」
少女は森の中にいた。
その木々には、少女自身が操作可能な人形が吊り下げられている。
そして、その人形達が得た情報は少女の元へと届く。
そんな中で、その少女––––アリス・マーガトロイドは、不可解な現象を目にしていた。
「人体発火……?ありえないわ」
人間の身体に火がつくなどあり得ない……というより、あってはならない。
それは当然、人間の身体は燃えてしまうからだ。
にもかかわらず、彼女の身体は燃えなかった。
その上、自ら炎を出現させ、操っているように見えた。
まさに、人間業ではない。
「……彼女も、私と同じようなモノだと言うこと?」
彼女は人間ではない何か––––ユメクイを知っている。
それはもちろん、彼女自身がユメクイであるが故だ。
彼女は既に何度かこの世界を創造し、捕食行為を繰り返している。
その度に得られる満足感が、彼女の原動力となり、何度も夢を集めていた。
––––だが彼女は、それが窒息死の原因であることを知らない。
これは自分の夢であり、現実とはかけ離れている物だと解釈していた。
当然、現実と離れていることは確かだ。
しかし、無関係ではない。
ここでの死は、現実世界での窒息死と"ほぼ"同値である。
彼女がそれに気付かない……いや、気付くことができない原因は、まだ窒息死の発生件数が少なく、大したニュースとして取り上げられていないことにあった。
––––彼女にとって、この夢の世界はゲーム会場だ。
如何にして、
彼女の中には、それしかなかった。
「まあ、少し困難があるというのも、悪くないかもしれないわね」
そして彼女はこの状況を楽しんでいた––––
「それにしても、視界が悪いな。焼き払うか?」
「環境破壊は感心しないぞ」
「いや関係ないって」
「良い森じゃないか。空気が美味しいぞ」
「そうか?だとしても、空気なんか楽しんでる余裕ないんだけど」
「私は、こういった自然が好きなんだ」
「ふーん。そのくせして、住んでるのは都会なんだな」
「都会は便利だろう?自然への憧れもあるが、たまに嗜むくらいが丁度良いんだ」
「そーゆーもんか」
「……にしても、自然の物とは思えないモノが私たちを見ているな」
「そうだね。さっきから、ずっと見られてる––––あの人形達に」
慧音も不可解に思っていたようだ。
明らかに自然の造形物ではない人形が吊り下げられているのだから当然だが。
そして何よりも気味が悪いのは、その人形達の視線が私たちに集まっていることだ。
「さっさと出てこいよ……気持ち悪い」
アリスは2人の様子を伺っていた。
彼女は自身の失敗を良しとしない。
彼女はいつでも完璧を目指していた。
それ故に、彼女の"狩り"は慎重且つ丁寧だった。
「さて、どう遊ぼうかしら?」
––––しかし、聊か遊戯的だった。
「はぁ……はぁ…ッ!」
木々の間から、1人の少女が飛び出してきた。
輝かしい金髪に、透き通った白い肌。
まるで精巧に作られた人形のような美しさをもつ少女だった。
それは女の私でも見とれてしまうほどに。
「助けてっ!」
そんな少女が、私たちに助けを求めた。
息を切らし、汗を滲ませながら。
「どうしたんだ!?」
慧音が問う。
只ならぬ状況であることは一目瞭然だった。
「ば、化け物が……ッ!」
化け物––––おそらくユメクイのことだろう。
少女は心底怯えた表情で化け物について語った。
しかしそれは、私の知るユメクイとは異なるものであった。
大きな体に四足歩行。
裂けたような口に剥き出しの眼球。
皮膚には硬い鱗を持ち、手には鋭い爪を持つ。
まさに絵に描いたような化け物の姿を、少女は語った。
私のユメクイに対する認識は、超人的な能力を持った人間であるということだ。
今まで遭遇したユメクイ達は皆、人の形をしていた。
当然だ。
現実世界では、ユメクイも人間なのだから。
そして、奴らは知性を持っている。
人を騙すことも、当然のように出来るだろう。
––––だから私は思う。
「この
「……え?」
私は怯える様子の少女の首を勢いよく掴んだ。
「かはっ!?」
「お前、ユメクイだろ?」
「ユ……ユメ、クイ……?」
「人を喰らう化け物のことさ」
「……ッ!」
「お前なんだろ?さっさと吐いてくれよ」
私は片手で少女を持ち上げ、宙に浮いていた。
背の高い彼女を持ち上げるには、私は飛ぶ必要があった。
今、少女の足は地面についていない。
私はさらに首を締め付ける。
相当キツイのだろう、見る見るうちに表情が苦痛に歪む。
「……?」
しかし、突然少女は笑った。
声は出さずに。
いや、出せないのかもしれないが。
そんな中、苦しみながらも、口角が上がったのが確認できた。
私は意味がわからなかった。
––––え?
その刹那、私の腕が切り落とされた。
肘から先が無くなっている。
私の手は力を失い、目の前の少女は重力に身を任せ、落下した。
「……は?」
激痛を感じる暇もなく、私の心臓が突き刺された。
「妹紅!!!!」
慧音の叫び声が聞こえた。
私の体は"焼失"した。
「げほっ、はぁ…はぁ……」
少女は咳き込みながら、私の"残り火"を見ている。
「……身代わり?」
「それは違うな」
「ッ!?」
少女は声のする方へと振り返る。
私は微笑んで見せた。
「私は、あの程度じゃ死ねないんだよ」
少女は驚愕の表情––––ではなく、嬉々とした様子で言う。
「なら殺してあげるわ」
「妹紅!」
「え、け、慧––––」
慧音が私に突っ込んできた。
抱きつくような形で私を押し倒す。
––––私がいた位置には、スピアを持った人形が通過した。
その人形は勢い余って少女へと向かった。
少し慌てた様子で、少女はそのスピアを躱す。
「慧音、危ないだろ!?」
「危ないのは妹紅の方だった!」
「良いんだよ、私は死なない!」
「……ッ」
「慧音も、さっきのを見ただろ?私は不死身だ!」
「でも……」
慧音は真っ直ぐ私を見る。
「……痛いだろう?」
「え……?」
「そろそろ茶番は終わりにしましょうか?」
そう言う少女は左右に2体の人形を連れていた。
一方は、先ほど私の心臓を貫いた、鋭いスピアを所持した青い服の人形。
もう一方は、私の腕を切り落とした、大きなソードを所持した赤い服の人形。
「退いてくれ、慧音」
「妹紅……」
「気持ちは嬉しい。が、もう手を出すな。黙って見ていてくれ」
私は覆い被さる慧音を退かし、立ち上がる。
「安心しろ。私は死なない」
私は精一杯笑ってみせた。
慧音はそれを見て少し考えた後に、一歩後ろへ下がる。
「慧音は私が守る」
「お熱いのね、お二人さん」
私は少女へと向き直る。
「紹介するわ。こっちの青いのが上海、そしてこっちの赤いのが蓬莱よ」
「なんだよいきなり」
「そして私は、アリス・マーガトロイド。よろしくね」
「いや……意味わからん」
「闘いの前には名乗るのが礼儀でしょう?」
「……そんな容姿のくせに、武士みたいな考え方だな」
「貴女のお名前は?」
「スルーかよ……私は藤原妹紅だ」
「そんな性格のくせに、ずいぶんと和風な名前なのね」
「お前、ムカつくな」
「さて、始めましょうか?」
「お前とは、会話ができそうにないしな」
「ふふっ……楽しいゲームになりそうね」
私たちは不敵な笑みを浮かべた。
*キャラ設定(追記あり)
○藤原妹紅
14歳になる程度の年齢(2年前)
教育に熱心な両親のもとに生まれ、彼らの期待という重圧を一身に受けていた少女。
その反動からか男勝りな口調だが、中身はしっかり女の子である。
○上白沢慧音
24歳になる程度の年齢(2年前)
小学校教諭を目指し、見事にその夢を叶えた女性。
正義感が強く、とても頼りになる存在である。
幼い頃から知っている妹紅を妹のように想っている。
○アリス・マーガトロイド
「私はもう、目の前で人を死なせない」
18歳になる程度の年齢(2年前)
人形のような美しさを持つ美女。
冷静であることを心がけているが、予想外の出来事には若干弱い。
しかし、その予想外の出来事を楽しむことができる。
また、かなりの世話焼きで、子供が大好き。
子供を愛でるのは、人形を愛でるのと同じよう感覚……らしい。
【能力 : 魔法を扱う程度の能力】
主に支援・回復系魔法を使う。
【能力 : 人形を扱う程度の能力】
具現化した人形を武器として用いる。
その人形はまるで生きているかのように行動する。
爆弾を内蔵しているものや、武器を所持しているものなど用途により種類は様々。