中学受験から一週間、今日は合格者発表の日。
朝から父はそわそわしていて落ち着きがない、母はいつも通り落ち着いているが意識の波はいつもより大きく揺れていた。
「それじゃあ行ってきます」
「行ってらっしゃい渚、合格してたら直ぐに電話するのよ」
「分かってるよお母さん」
「そろそろ行ってくるよ」
「うんお父さん、お母さん直ぐに電話するからね」
「ほらあまり遅いと道が混んでしまう、それじゃあ行こうか渚」
「うん」
椚ヶ丘中学校まで今日は父の運転で行くことになった。
「今日受かってたら渚は一人暮らしするんだよな」
「そうだよ」
「渚が決めた事だしな、それにもうアパートはキープしてもらってるから、合格してたら正式に申し込みに行かなきゃだからな」
「うん、良い場所に有ったよね中も広かったし」
「そうだな、近くに色々あったしな」
「でも私は今日受かってたらお寿司食べにいくんでしょ?そっちの方が楽しみだな」
そんなのんびりとした会話を続けていると椚ヶ丘中学校が見えてきた。
「それじゃあ車止めてくるから先に見ておいで」
「でもお父さん、ちゃんと来れる?凄い人込みだよ」
「大丈夫だと思う……よ?」
「…やっぱり不安だから一緒に行こう」
父は少々方向音痴みたいで人込みの多い所や、入り組んだ道ではよく迷子になる、それを探すのは、今では私の役目になっている。
車を指定された場所に止め合格者発表の紙を見に行くと先ほどよりもたくさんの人がいることに気付いた。
「一緒に来て正解だったね」
「……そうだな、渚の言う通りだった」
「ここで待ってて見てくるから」
「一人で大丈夫か?」
「私は小さくて小回りが効くから、番号見つけて写真撮ってくるよ」
「父さんはあそこのベンチに居るからな」
「分かったよそれじゃあ見てくるね」
父と離れて合格者発表を見に来ている生徒(親)を見て入れそうなところがないかをじっくり見たあと、気配を消して隙間から入り、なんとか合格者発表の紙を見ることが出来た。
「え~と、私の番号は2624番だから~」
自分の番号を探していると後ろから声を掛けられた。
「2624番ならあったよ、写真が欲しいなら送ってあげよう」
後ろを見ると浅野君がいた。しかし気軽に浅野君などと呼べるわけがない、こちらがマンガで知ってても向こうは?マークを浮かべるだろう。
「えーと確か浅野 学秀君、だったよね本当に私の番号の写真撮ってるの?」
「ああ、丁度僕の前だったから、写真を撮った時に映ったんだ、見せてあげるからあっちに行こうここでは邪魔になる」
「そうね」
浅野君はマンガではそんなことをする人ではなかった、自分の合格は絶対だと確信していただろう、そんな浅野君が写真を撮るはずが無い、だったら何か他の目的があるに違いない、私は浅野君に付いていくことにした。
連れて来られたのはあまり人もいない場所で直ぐに何かあると思った。
「これだよ」
「本当だ、私に送ってくれる?」
「勿論そのつもりだよ」
メールアドレスを交換し写真を送ってもらった、送られた写真はやはり私の受験番号が構図に成っていた。
「ありがとう、それで本当の目的はなに?写真は建て前でしょ?」
「どうしてそう思うんだい?」
「写真の構図が私の番号だったから、普通自分の番号を構図にするはずでしょ?」
「その通りだよ、実は理事長から言われてね、新入生代表の挨拶には入試で一番成績のいい人がするだろ」
「成る程、私と浅野君の点数が同じって事ね」
「そう言う事だ」
「なら代表挨拶はお願いしても良い?私あまり目立ちたくないから」
「分かった、代表挨拶は僕がしようこれから宜しく」
浅野君はそう言って戻っていった。
父の元へ行くと、居ると言った場所にいなくて焦ったが、辺りを見回すと自動販売機の所にいた。
「お父さん」
「渚どうだった?」
「受かってたよ、ほら」
浅野君にもらった写真を見せると父は頭を撫でて、よくやったな、と言った。
「母さんには連絡したか?」
「これからするよ」
・・・・・・・・・・・
『もしもし、渚どうだったの?』
「お母さん?私合格してたよ」
『よくやったわね流石私の子、夜は前から言ってた様にお寿司食べに行きましょう』
「ありがと、これからキープしてるアパートに行って住めるようにするに申し込みに行くところ」
『帰ってきたら夜までショッピングにでも行きましょう、新しい服を買ってあげるわ』
「ありがと、ショッピングに行くなら服を選んでくれる?」
『勿論よ、じゃあね渚』
母の携帯に電話をしたら直ぐに出て、結果を報告したら喜んだ様子で普段より少し高い声を出していた。夜までショッピングに行くことも勝手に決めてしまった、この状態の母に何を言っても無駄なことは分かっているので大人しく従うことに決めた。
父の車に乗ってキープしているアパートに向かい大家さんに入学式が終わってから住むことを伝え入居料を渡し鍵を貰った。
家に帰ると母が待っていて直ぐに着替えさせられた。母はセンスが良いので服に興味の無い私は全て任している。さっそく着替えてショッピングに行くために再度車に乗り込みデパートに向かった。
「渚、合格祝いでお母さんがコーディネイトしてあげるわ」
「ありがとう」
正直に言えば着せ替え人形としてじっとしているこの時間はあまり好きではないが仕方ないと諦めている。
「よく似合ってるわよ」
試着した私を母はいつもそう言う、まあ自分でも似合ってると思っているので良いのだが。
「そろそろ時間だし食べに行くか」
「そうね行きましょ、あ、これ着たままでも良いかしら?」
「はい大丈夫です、今タグをお切りしますね」
店員は直ぐにハサミを持ってきて私が着ている服のタグを切り始めた。タグを全て切り終わり、会計を済ませお寿司を食べにいつも食べてるところより少し高い所に来た。
「やっぱり美味しいわね」
「そうだな、渚何か食べるか」
「それならサーモンの炙り食べたい」
和やかな雰囲気で食事を終え家に帰った、両親に寝る事を伝え部屋に入った。
やっとここまで来たそう言うしかない、転生して12年前世ではそこまで長いと思わなかった小学生時代だが、今世では凄く長く感じた、授業の内容が簡単すぎたというのもあるだろうが早く中学3年生に成って暗殺教室をしたいと思ってるからだろう。
ともあれ4月から椚ヶ丘中学校に通う事になる、早く2年が過ぎ暗殺教室が始まれば良いのにと思いながら眠りに堕ちた。