運が良かった。
メグミさんは性格は策謀を使うような人じゃない。
けれども、行動したことが、結果的に策となり、相手に恩を与えていることが解った。
なぜなら・・・
「手紙?」
切手の無い手紙が寮のポストに入っていた。
宛先は私。
問題を起こした記憶は無いが、戦車のガレージ(屋根が無いため別名青空車庫)に来てほしいとのこと。
私はせっかくなので入部届けを持って青空車庫に放課後、移動した。
「おー。」
チラチラ
「うん。」
「自己完結しないで。」
「いや、なに。メグミから継続に凄い新入生が来るって聞いてたからどんな子かな?と思ってね。・・・継続高校3年、戦車道部部長であり、隊長のルミ。池田ほむちゃん、よろしくね。」
手に持っていた入部届けを見て私に微笑んだ。
「よろしく。ルミさん。」
シュー ジジジ
「ほむちゃんそろそろ夕食の時間だよ。食べよ?」
「うん。」
「あたいも一緒に食べて良いですか・・・部長。」
「ええっと・・・南か。と言ってもジャムパンだぞ。」
「少し分けますよ。」
南は食事の量がとんでもなく多いため、弁当箱も4つくらいある。
(ルミさん・・・料理苦手なのかな?)
中学生と高校生が弁当を食べる奇妙な光景だが、上下関係が無いに等しい継続は日常的らしい。
「ほむちゃん、何を造ってるの?」
「KVシリーズの車体。」
「KVか。なんで?」
「シャーマン5両はジャンボとイージーエイトにできる。T-34の3両もT-34-85、SUシリーズに改造可能。ただ、重戦車が無い。」
「プラウダに賭け戦すれば奪えるけど?」
「後々難癖つけられる。プラウダとは友好的にいてほしい。」
「ドイツ車両は?」
「3号は突撃砲にして、2号はルクスにする。」
「残りのBT-7の5両もBT-42にしたり、BT-7artにする。改造無しのも有るけど。」
「15両だから準決勝までは同等の数で戦えるけど・・・やっぱり金持ち高校が羨ましい!!」
「部長落ち着いてください。」
KVシリーズの車体を造る意味は他にもある。
プラウダに入学するにあたり、KVしか触る機会が無かったので、ISシリーズまでの進化の過程を辿るためにKVを造ることに決めた。
「あ、ほむちゃん、ゴールデンウィークからなんだけどBC自由学園に行ってくれない?アズミに協力しないと後が怖いから。」
アズミ・・・BC自由学園隊長で第四共和策(サンダース、継続の外圧的結束策)という特殊な手腕でチームの分裂を防ぎ続けているが、今年からは対黒森峰をスローガンに纏め上げている。
そのため戦力の増強が急務で、頼りないが、本校マジノ女学院に戦車をまわしてもらおうとしている。
(サンダースの昨年の援助はシャーマン5両、本校からはルノーNC1両の産廃だけ。・・・ここと本校マジノもテコ入れしないと・・・。)
べつに弱者救済のためにテコ入れをしている訳ではない。
ただただ黒森峰を倒すことだけを考えればプラウダを強化すれば良い。
それだけではつまらない。
西住を見返す、後悔させるのは10年後、20年後で良い。
そこまでに戦車道を発展させ、自分が教える考え続ける戦車道が日本一・・・いや、世界でも認められる今の西住と島田を倒せると認めさせることで初めて私の目標は達成になる。
(今は自分の腕しかない。・・・考えを広めるためには私の考えを理解している者に活躍してもらわなければならない。更にその考えを昇華させる為に必要な個人的なライバルが必要。・・・世界ルールが変わるかもしれない今、這いずり回りながらでも進むしかない。姉達のようにレールが有るわけでもない。一寸先も見えない暗闇を・・・協力してくれる味方もいない状態を・・・。)
5月・・・世界ルールの変更により日本では大学、社会人どちらも乱世となった。
《終戦までに、戦線で活躍または設計が完了し試作されていた車輌、装備品はそれらに搭載が計画されていた物に限る。オープントップ車は今までのように協議を続ける。・・・》
(・・・弱い国は猛反発しているけど無駄。これで独ソの戦車の価値がうなぎ登りになったし、今までサンダースが供給してきたシャーマンも大学や社会人に回さないといけなくなる。・・・何よりアメリカがルール変更に賛成したからには覆らない。日本で対策していたのは西住と島田だけ。他の流派は死に体になったか。えげつない。)
ルミさんからもらった特別艦外出許可書、BC自由学園滞艦許可書を持ってBC自由学園に向かう。
フランス系戦車の設計図も持って・・・。