ある程度戦車を動かせるだけの練度に仕上げたかなは、分家の方が指定した会場予定地に赴き、偵察をしていた。
「市街地で来ると思ったが・・・まさかの湿地だし。」
選ばれたのは湿地・・・戦車全車両が道を間違えれば即座に行動不能になる立地であった。
「快速戦車よりも重戦車タイプで来る可能性が高い・・・し。D.W. 2かマチルダかB1か・・・若しくは駆逐か。」
湿地という工夫の仕方で様々な有利不利が出来上がるフィールドに木々による視界が狭い場所・・・
「まさに私を潰しに来てるし。」
フィールド的には西住流が適しているとは言えないが、対島田流として対策していたためある程度は戦えることをかなは感じた。
また、かなは快速戦車に乗る傾向があり、それを見越した一手であるともとらえられた。
「西住流は私が想像していた以上に強かな場所かもしれないし。」
~ドイツ ムンスター特別軍事研究所~
戦車大国ドイツ・・・それを揺るがす出来事が日に日に浸透していた。
池田流の浸透である。
ルーミアを筆頭としたエース達が活躍し、純ドイツの選手が後塵を拝するのは陸軍大国であることに絶対な自信があるドイツ連邦軍幹部はこの現状を打開するために特別カリキュラムと称して才能ある子供を住み込みで戦車を操る訓練をさせていた。
かなの正反対の才能ある者による戦車道である。
しかし、成果が出るのはもう少し後の話である・・・。
「うー、疲れたぁ~。」
「ただいま~。」
「お疲れ様です。ご飯はできてますよ。」
千葉にある安いアパートに安部菜々は高校生くらいの娘(養子)と3人で暮らしている。
「しっかし菜々さん、本当に外見の年齢と実年齢が噛み合わないよね。」
「ふっふっふっ、心はいつでも17歳。」
「もうアラサーでしょ。無茶するのは古傷にも悪いよ。」
「な!!何を言うんですか鈴仙、古傷なんてへっちゃらですよっ。」
「コルセット巻いてないと日常生活も辛いんだから、本当に無茶しないでよ。菜々さん倒れたら私達また行き場を失うんだから。」
「行き場を作るために頑張っているんですけどね・・・。」
養子と言うより里子というか、養子縁組を前提とした里親というのが正確で、一応高収入と、2人を引き取ったのが中学生だったので、夫不在でも引き取ることができましたが・・・。
片方は鈴仙優曇華院イナバとかいう長い名前で、複雑な家庭環境だったため今は呼ばれるのは鈴仙だけしか呼ばれたくないと私が預かった時に話された。
私を含めて3人の中で一番の常識人。
もう1人は篠ノ之束、セル2の開発者。
なんで里子になったのか決して語らないが、なぜか私に懐いたので引き取った。
タマに見せるポンコツ、ボケで鈴仙に叩かれることもしばしば・・・。
彼女達が公に知られることになるにはもう少し時間が必要であった。