《200円で修理やります》
タンカスロンが行われている会場の近くで工具と資材を持ってビニールシートの上でのんびりしていた。
5年生となり、修理にちょくちょく島田流の道場に遊びに行くことも多くなり、移動費を稼ぎたいのだ。
「誰も来ないか。」
約2時間待っているが誰も来ない。
強襲戦車競技=タンカスロンはルールなしの野良試合なので修理も自由、改造も重量制限に引っ掛からなければ自由である。
「帰るか。」
私は工具を纏めて帰宅する。
帰宅途中にある、とある本屋に時間があったので寄った。
月刊戦車道を買おうと思ったからだ。
私は月刊戦車道のあるコーナーに行こうとした時、何かを感じ、ある本を手に取った。
《シンキングベイスボール》
いつの間にか私はこの本を買って読んでいた。
家に帰って約二時間熟読した結果、戦車道の新しい可能性を持つことができたが、自分に実行できるだけの実力がないことから今は断念せざる終えなかった。
考え続ける戦車道。
この基礎を世界で誰よりも早く見つけるほむであった。
ほむ・・・彼女は今後に必要な人だと手紙を見ればわかる。
「お母様・・・家元は人を見る目が相変わらず無いか。・・・お父様が亡くなってから激しくなった気がする。」
しほは感情を表に出すのが苦手で小中と虐められた事がある。
西住の女性は何かしら欠点がある。
今でこそ完璧超人に見えているらしいが、私と常夫さんの出会いや、在学中に子供を2人産んだことを考えれば世間的にはダメだろう。
「飲むか。」
「しぽりん誘うなら数日前にしてほしいよ!!」
「ちよきち、私はダメな母親だよー!!」
ちよきち・・・島田流次期家元の島田千代のことであり、中学、高校、大学、社会人でも凌ぎを削ったライバルである。
千代の子供が生まれてからはママ友に関係が変わった。
2人とも飲むと表向きの鉄仮面が剥がれ《見せられないよ》の顔に変わる。
「ほむ~、許してほむ~!!糞ババアと分家を説得できなかった私を!!」
「しぽりん落ち着いて、ちゃんと手紙を毎月送ってくれるんでしょ。許してくれるわよ。」
「うわぁぁぁん!!味方は夫とちよきちだけだよ!!」
(逆レして産んでゴールインしたから分家、母親の当たりが強いんだよねしぽりん。・・・良かった思い止まって。)
「まほさんとみほさんはどうなの?」
「まほは指導面で難が有ることが中学に行ってから解ったし、戦車乗りとしてはドイツに行ったらゴロゴロ転がってるレベル。小隊指揮能力はダントツで良いけど・・・。」
「戦略レベルだと厳しいのね。」
コクン
「みほは戦車乗りとしても戦略眼もあるけど、性格の弱さでとてもじゃないけど家を任せられない。何より姉に隠れて本来の実力が出せてない。」
「2人を協力させれば良いじゃない。なに、それでもほむさんが良いの?」
「彼女は戦車乗りとしては5流以下だけど、戦車の性能を2人よりも熟知してたの。それが無かったら4歳くらいには追い出されていたわ。・・・ただ、私に送ってきた手紙に書いてあった事が・・・。」
「なに?誓うわ。ほむさんの不利益にはしないわよ。今は島田流の次期家元じゃない千代個人だもの。」
「考え続ける戦車道。」
「え?」
「前面の補強→側面及び背面の対策→装甲の厚い戦車の補充→鈍足による突破力の低下→連係の強化による突破→駆逐戦車等の高火力戦車の待ち伏せ→偵察車両の増加→全体的装甲厚の低下→前面の補強。」
「繰り返しているわね。」
「これを打破する為の対策が書かれていたのよ。・・・重心点の誘発。これだけで戦車道は変わる。」
「でもそれを改善されたら・・・これが考え続ける戦車道。」
「彼女だけ次元が違うのよ。私達の15年は先を行ってる。」
「飲みましょう。強烈すぎて忘れたい。」