仮面ライダービースト ~Magic Girl Dinnertime~   作:流離太

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プロローグを経て、いよいよ一章です!
時系列としては本編「第33話 出陣・鎧武」くらいとなります。
仁藤と永夢が大天空寺へ到着する前です。
そして、今回登場の魔法少女はこの方になります。

【花売り少女 袋井魔梨華(ふくろい まりか)】
・魔法:頭にいろんな魔法の花を咲かせるよ
 魔法少女育成計画JOKERSに登場。
 森の音楽家クラムベリーと師を同じくする魔法少女。


第一章:ビースト~Flower of Japan~

「―― 向日葵砲(ソーラー・キャノン)ッッ!!!!」

 

 閃光が迸り、正義のヒーロー仮面ライダーこと「仁藤攻介(にとう こうすけ)」は吹っ飛ばされた。

 

「ぐぉおおおッッ!!?」

 

 その日、仁藤は同じく仮面ライダーである「宝生永夢(ほうしょう えむ)」らと名深市にある「忠犬オートバジン像」前で待ち合わせをしていた。

 目的地は聞かされていないが、永夢は「精進料理が食べられるところ」だと言っていた。

 精進料理なんて今まで食べたことがない。野菜を使った料理だと聞くが、マヨネーズとは相性がいいのだろうか。

 そんなことをマヨラーの仁藤が考えていたところ、突如として

 

 ―― ビームを喰らった。

 

「なにすんだよ、コノ野郎ッッ」

 

 黒焦げのボロボロになりながらも、仁藤はいきり立つ。

 マトモな人間なら死んでいたかもしれないが、ビームくらいのことで怯んでいては仮面ライダーなどやってられない。

 

「ヒャハッッ!! 祭の舞台はここみたいだなァ!!」

 

 仁藤の眼前で、ひとつの影が仁王立ちしている。

 それは、小柄な少女であった。赤茶と緑のグラデーションが鮮やかなショートヘアーに、カボチャパンツのように膨らんだアラビアン風スカート。頭の頂に咲き誇る大輪の向日葵が、勝気な性格を如実に現している。

 見覚えのない容貌だが、花の妖精を思わせる奇抜な出で立ちから、どうも魔法少女らしい。

 

「私の不意討ちをよく凌いだ!! お前はこの私『花売り少女 袋井魔梨華(ふくろい まりか)』と戦う権利を得たぞ、魔法少女ビーストォ!!」

 

 ズビシッ、と真っ直ぐ仁藤を指差す少女―― 袋井魔梨華。

 どうやら先程の攻撃は、こいつによるものらしい。

 ……いや、そんなことよりも。

 

「いやいやいや誰が魔法少女だよッ!? お前、なんか勘違いを」

「ハッハァ! 皆まで言うな!」

 

 ああ、決め台詞(?)を取られてしまった。

 

「私の知り合いから連絡があったのさ!! ここにビーストっていう、森の音楽家を倒した強い魔法少女がいるって」

 

 ひゅん、と魔梨華は残像を残して消える。

 次の瞬間、

 

「なァッ!!!」

 

 ―― 降り下ろされる踵落とし。

 ―― 腕をクロスし受け止める仁藤。

 

 いや、その姿は、金色の獅子を彷彿とさせる古の魔法使い「ビースト」へと変わっていた。

 

「もしかして、お前もファヴとかいうやつにそそのかされたクチか!? 言っておくけどなあ、俺はマジカルキャンディなんて持ってないぞ!!」

「飴玉なんかいらねェ!! あたしが欲しいのは、お前みたいな強敵だッ!!」

 

 瞬時。

 二人は距離をとる。

 

「ハッハッハァッ!! 行くぜ行くぜ行くぜェッッ!!」

 

 魔梨華は植物の種のような物を口に放り込み、ビースト目掛けて突進してくる。

 頭の頂きに咲いていた向日葵が枯れ、代わりに紫の花弁が花開く。確かあんな花を祖母が園芸で育てていた。仙人草や鉄仙とかいう名前だっけ。

 

鉄線のキンポウゲ(クレマチス)ッッ!!!」

 

 頭の花を振りかざし、魔梨華は一直線に突っ込んでくる。

 どうやら人の話を聞かない猪突猛進タイプらしい。だったら、それなりの対処をしてやるまで。

 

「こいつで頭を冷やしやがれッ」

 

 ―― ゴーッ!

 ―― バッバ、ババババッファー!

 

 ビーストの右肩アーマーが、水牛の頭部を象った装飾へと変化する。闘牛士のマントを思わせる布が右腕部を覆う。

 突進力が強化されたビーストの一形態「バッファマント・スタイル」だ。

 

「がッ!!?」

 

 ビーストの右肩に頭突きをかました魔梨華は、あまりの堅さに身を仰け反らせる。

 当然だ。鋼鉄の塊に激突したような衝撃を受け、脳震盪を起こしているはず。

 しかし仁藤に余裕は無い。

 

「マジかよ」

 

 マスクの下の素顔をサッと青ざめさせる。

 時速数百キロの突進に耐え、綻び一つつかない魔法のマント。

 そのマントが、

 

 ―― ボロボロのズタズタになっていた。

 

 猛牛を象った肩アーマーも、角の部分に亀裂が入っている。

 

「……ヒャハ」

 

 眉間から血をだらりと垂れ流し、魔梨華は立ち上がる。

 その口元は確かに、

 鮫のような歯を剥き出しにして。

 カッと見開いた目を血走らせ。

 

 ―― 笑っていた。

 

「最ッッ高だぜお前よォ!! 久しぶりに骨のあるやつだァ!!」

 

 魔梨華は再び花の種を口に放り込む。

 

奇妙な果実(ストレンジ・フルーツ)ッ!!!」

 

 頭からは無数の触手が伸び、ビースト目掛けて襲い掛かる。

 

「くっ」

 

 ―― ゴーッ!

 ―― ファッファッファッ! ファルコ!

 

 ビーストは隼の能力を持つ「ファルコマント・スタイル」にフォームチェンジし、大空へ飛翔。

 逃がすまいと触手はぐんぐん追いかけてくる。

 

「いい加減にしろッ!! 大概にしないと、食っちまうぞコラァ!!」

 

 ビーストは触手をサーベルで捌きながら文句を垂れる。

 対し、魔梨華はゲタゲタと狂ったように笑い。

 

「いいぜいいぜその意気だッ!! 私は歯応えがあってうめェぞォ!! ただし、毒が混じってるけどなァ!!」

 

 駄目だこいつ……本当に人の話を聞いてくれない。

 しかし嘆いている場合じゃない。迫り来る無数の触手をいなし、相手を見極める。

 

「あの頭の花……あれがあいつの魔法みたいだな」

 

 魔法少女にはそれぞれ固有の魔法があると、同じ魔法使いである「操真晴人(そうま はると)」が教えてくれた。

 先程の向日葵、鉄仙、そして今の奇妙な果実と、花の種類によって違う攻撃を繰り出せるのだろう。

 

「オラオラ、逃げてばっかじゃつまらねーだろッッ!! 降りてきて戦えコノ野郎!! そして私を笑顔にしやがれェええええッッ!!!」

 

 下界で魔梨華が吠える。

 まるで獣みたいな女だ。自身の相棒キマイラを思わせる。

 魔梨華は戦い、キマイラは食事と求めるものこそ違えど、飢えを満たそうとするシンプルな行動理念は共通している。

 その強さは、誰よりもビーストが知っていた。

 

「仕方ねえ……もうすぐ永夢のやつが来ちまうしな」

 

 カメレオンの装飾が施された指輪を、ビーストは腰のベルトに差し込む。

 

「さっさと決めるか」

 

 途端。

 

 ―― ビーストは姿を消す。

 

「あ?」

 

 標的を見失い、魔梨華は辺りをキョロキョロ見回す。

 

「おい、逃げたのかテメェ!! せっかく盛り上がってきたのに、萎えることしてんじゃねーぞッッ!! この卑怯者!!」

 

 卑怯者かもしれないが、逃げた覚えはない。

 魔梨華の背後でサーベルと翠色のマントを構え、ビーストは息を殺す。

 身体を透明化させるフォーム「カメレオンマント・スタイル」だ。

 

「このまま正面からぶつかったら、俺かあんたのどっちかがくたばりそうなんでな」

 

 ビーストは小声で呟きながら、サーベルについたルーレットを回転させる。一から六の出た目で威力が変わる仕様だ。

 結果は六、最高値。

 

「おっしゃラッキィ」

 

 ビーストはサーベルを構え、必殺技「セイバーストライク」を放

 

「……いや、野郎近くに隠れてやがるな」

 

 魔梨華の言葉に、ビーストの動きが止まる。

 

「拳を交えてわかったが、お前は戦闘中に背を向けるようなタマ無しじゃねェ。……なら、」

 

 いつの間に種を飲み込んだのか、新たな花がまりかの頭上に花咲く。

 

「こいつで炙り出してやるよ」

「ぐ、ッッ!!?」

 

 ビーストは口と花をマスク越しに押さえ、よろめく。

 原因は、とてつもない悪臭によるもの。まるで「おばあちゃんちの裏庭にいたシマヘビとかアオダイショウのニオイ」と「洗ってないザリガニの水槽のニオイ」と「有機溶媒のピリジンをより強烈にしたニオイ」と「洗わないで放置した柔道着を詰め込んだカバンを開けた時のニオイ」を混ぜたような激臭。

 涙が溢れ、胃液が喉までこみ上げてくる。

 

 ―― そして、見た。

 

 ラフレシア。

 ジャングルの奥地に群生する、腐りかけた肉のような色をした毒々しい花。汲み取り便所の臭いに喩えられる腐臭を発することで有名な植物だ。

 それが、魔梨華の頭上で花弁を広げている。

 

「だ、め……だ……」

 

 ―― 体がふらつく。

 ―― 力が入らない。

 ―― 意識が遠くなる。

 

 よろよろと、ビーストは後ずさる。

 そして、不覚にも土手で足を踏み外し……背後の河に転落していった。




池ポチャ……あの高さならまず助かるまい(トオイメ
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