仮面ライダービースト ~Magic Girl Dinnertime~   作:流離太

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これまで感想をくれた方々、本当にありがとうございます!
とても励みになっております!
さて、今回はハードゴア・アリス……無印まほいくではラ・ピュセルと一、二を争うくらい大好きですw
すごく重い設定なのですが、いい子ですよね。
本編ではそうちゃんと出会うことなく逝ってしまいましたが、誰も死ぬことの無い世界軸だと三人仲良く魔法少女をやっていたでしょう(ほろり

とりあえず、投稿したら「黒い少女と女騎士」を読み返します。


第四章:ハードゴア・アリス~ Forget me Not…~

 漆黒のゴシックロリータドレスに身を包んだ魔法少女「ハードゴア・アリス」の耳に、行方不明の仁藤が見つかったと連絡が入ったのは、燃えるような夕陽が西へと沈みゆく黄昏時であった。

 集合場所である波止場に着くと、そこには先客である三人の人影が。

 

「攻介兄が見つかったって本当!?」

「ああ。見たことのない魔法少女に襲われたらしいが、命に別状は無いってことだ」

 

 竜騎士を彷彿とさせる魔法少女「ラ・ピュセル」の問いに、ひとりの青年が答える。

 年は二十代前半。スラリと背が高く、手掌を思わせるベルトを腰に巻いている。

 彼は「操真晴人(そうま はると)」。またの名を指輪の魔法使い「仮面ライダーウィザード」。

 話によると、人間の絶望から生まれるとされる怪物「ファントム」を追う過程で名深市を訪れ、魔法少女同士の戦いに巻き込まれたという。

 以来、アリスら三人の魔法少女の心強い味方として行動を共にしている。

 

「よかった……本当に」

「うん。早く永夢先生達にも知らせなきゃね」

 

 琥珀色の瞳に涙を溜めて喜ぶ白い学生服の魔法少女「スノーホワイト」を安心させるように、ラ・ピュセルは柔和な笑顔を向ける。

 純白のお姫様と騎士。絵になるその姿に、胸がズキンと痛む。

 気づいたらアリスは、白いウサギのぬいぐるみをぎゅっと抱きしめ、コンテナの陰に隠れていた。

 

「でも、油断はできない。仁藤を襲った魔法少女が、その辺に潜んでるかもしれないからな」

 

 晴人は言葉を続ける。

 

「ファヴは以前『この街の魔法少女の数は十六人』だと言ってたが、仁藤を襲ったのはその誰でもないらしい」

「じゃあ、一体誰が仁藤さんを?」

「もしかして、市外の魔法少女……だろうか」

 

 肩にかかる亜麻色の三つ編みを揺らし、ラ・ピュセルはポツリと口を開く。

 

「市外の魔法少女?」

「ああ。私は以前、市外の魔法少女に……危ないところを、助けてもらったことがある。

 私達が見知った十六人以外がいるとしたら、その可能性が高いのではないだろうか?」

「そういえばこのマジカルフォンを持ってきてくれたのも、チャイナドレスを着た魔法少女だっけ」

 

 なんとはなしに歯切れの悪い口調で話すラ・ピュセルに、スノーホワイトは同意する。

 仮にラ・ピュセルの言うことが本当なら、その魔法少女の目的はなんだろうか?

 もしかしたら、クラムベリーやファヴの差し金かもしれない。だとしたら、厄介なことになるのは間違いないだろう。

 

「そういえば、そうちゃん? 危ないところをって、なにがあったの?」

 

 ビクッと、臀部から伸びたラ・ピュセルの尻尾が震える。

 

「い、いや、その……大したことはないんだ」

「……男の人に襲われた?」

「ッッ!?」

「道の真ん中で裸になったって、どういうことっ!?」

 

 ラ・ピュセルは白磁のような肌を、カァッと朱に染める。

 スノーホワイトの固有魔法は「困った人の心の声が聞こえる」というもの。だから「こんなことを知られては困る」なんて心の中で思った日には、聞かれたくなかった真実を余すことなく聞かれてしまう。

 

「ご、ご、誤解だよ小雪ッッ!! 僕がいつも参加してる『マジマジカルカル』っていう魔法少女サイトに『魔法少女な子』ってHNで参加してたら、いつの間にか女の子と間違われて!! どうしてもそこのオフ会に行きたくて、魔法少女の格好で行ったら」

「レイプされたのっ!?」

「されてないッ!! 断じてされてないからッ!! そこで『みそ焼き』っていう男の人にしつこく言い寄られて」

「レイプされたのねっ!?」

「だから話の腰を折るなよッ!!」

 

 ラ・ピュセルこと「岸辺颯太(きしべ そうた)」は正体が男子中学生男子であることの照れ隠しか、普段は凛々しい女騎士の口調で皆と接している。

 それが幼馴染であるスノーホワイトこと「姫河小雪(ひめかわ こゆき)」の追求を前に、素の自分を曝け出してしまっている。

 

「えぐっ、ぐす……そうちゃん。そうちゃんの処女が……」

「しょっ!? ……いやいやいや、この姿のせいで僕の性別忘れてない!? 僕、男だからね!?」

「関係ないっっ!!! こんな立派な胸しちゃってさぁっっ!!!」

 

 ―― むぎゅっ

 

「ひゃわっっ!!?」

 

 胸元からたわわに実った乳房を鷲掴みされ、ラ・ピュセルは思わず桃色の声を上げる。

 

「なによこれっ!!! 私よりずっと大きいじゃないっっ!!! 女の子の自覚を持たないでそんなところにホイホイ行くから、そんな目に遭っちゃうんでしょっっ!!!」

「やっ、んっっ しゅ、しゅのーほわいとっっ やめっ、へぇ」

「うぇええええんっっ!!! そうちゃんの初めては私だと思ってたのにぃいいいっっ!!!」

 

 涙をぼろぼろ零しながら、むにゅむにゅと両手で胸を揉みしだくスノーホワイトから逃れようと、ラ・ピュセルは必死にのた打ち回る。しかし、馬乗りで地面に押さえつけられているため、叶わない。

 いけない、これは止めねば……とは言っても、いい方法が思いつかない。出来ることといえば、表情筋の死滅したような顔で、手足をわたわたと動かし慌てるだけ。当然、何の役にも立たない。

 

「あの、小雪ちゃん。その辺に」

 

 流石に年長者として止めねばと思ったのか、晴人が口を挟む。

 が、

 

「晴人さんは黙ってて」

「あ、はい」

 

 ただならぬスノーホワイトの剣幕に気圧され、それきり口をつぐんでしまう。

 普段は優しく清らかで魔法少女の中の魔法少女と呼ぶべき存在のスノーホワイトだが、怒らせると怖いということをアリスは思い知った。

 

「ひっく、うっう……ごめん、そうちゃん。そうちゃんはレイプされた苦しみを私に悟られないようひた隠しにして、今まで私を守ろうとしてくれてたんだね……。なのに、私なんにも気づかないで……」

「はぁはぁ……。な、かない……で……。わ、たしが……しゅのーほわい、とのけんに……んぅっ」

 

 両手で顔を覆ってメソメソ泣くスノーホワイト。

 その横でぐったりと四肢を投げ出し、切なげに身をよじるトロ顔のラ・ピュセル。

 眼前の光景に、思わず晴人は苦笑する。

 

「夫婦喧嘩は犬も食わない……って、この場合も該当するのかな」

「はい」

「……って、アリス!? お前いたのか!?」

「はい」

 

 いつの間にか真横に居たことに驚いている様子の晴人を意に介さず、アリスは両手をダランと下げたまま静かに佇む。

 夜闇のように虚ろな瞳の先は一点、ひとりの少女へと向けられている。

 

「スノーホワイト……」

 

 

 

 ハードゴア・アリスこと女子中学生「鳩田亜子(はとだ あこ)」は、自宅の鍵を失くして困っていたところを、スノーホワイトに助けてもらったことがある。

 それ以来彼女に憧れ、彼女と同じ魔法少女に選ばれたと知った時は感激し、スノーホワイトとコンビを組んで活躍する自分を何度も夢想した。

 そして念願叶い、アリスはスノーホワイトと再会を果たす。

 

『スノーホワイトを傷つける者は許さない…』

 

 アリスは新しく購入した武器を手に、悪の魔法少女「カラミティ・メアリ」からスノーホワイトを守りきった。

 そこまではよかった。

 しかし、尊敬するスノーホワイトを前に、アリスは。

 

『何で私を助けてくれたの?』

『気が向いたから…』

 

 違う。本当は、スノーホワイトに少しでも恩返しがしたかったから。

 でも、自分は元々口下手な上、特にあの時は感激のあまりコチコチに緊張していた。

 そのせいで、まごつき、うまく感謝の言葉を伝えることができなかった。

 

『アリス、嘘をついてないか? 他にも理由があるんじゃないのか?』

 

 結果、そのような態度を不審に思ったラ・ピュセルに、あらぬ疑いを持たれてしまった。

 

『そうちゃ……ラ・ピュセル! そんなこと言っちゃダメだよ!』

『だって、もし君の身に危険が迫ったらいけないから……』

『ラ・ピュセル……!』

 

 心配するラ・ピュセル、顔を赤らめるスノーホワイト。

 眼前で繰り広げられるその光景を前に、アリスは呆然とする。

 

 ―― 誰だこの魔法少女は?

 ―― スノーホワイトの相棒?

 ―― スノーホワイトの隣に立つべきは、私なのに。

 ―― この衣装だって、白と黒のコントラストが綺麗だと思って選んだのに。

 

 スノーホワイトを救ったという達成感が、アリスを舞い上がらせてしまったのだろう。

 そもそも自分のような卑小な人間がこんなことを考えること自体、分不相応である。

 しかし一度火がついた嫉妬心は、留まることを知らなかった。

 

『ラ・ピュセル……あなたが何故スノーホワイトと行動しているのか分かりませんが、これからは私がスノーホワイトを守る騎士になります……お疲れ様でした……』

『あなたまでスノーホワイトを守る必要はありません……』

 

 結果、初対面の相手に失礼すぎる暴言を吐いてしまった。

 あの時の自分を全力で殴り倒したい。

 そこからはもう、ドミノ倒しだった。

 

『……スノーホワイトとラ・ピュセルには固い絆があります。だから私は、その中に押し入りたいのです』

『あなたがスノーホワイトを諦めてくれるなら……』

 

 スノーホワイトを独占しようとしてみたり、

 

『そ、その……お二人がいつも一緒に帰るものだから……少し気になりまして』

 

 図々しくも二人の家に押しかけてみたり、その行為は段々とエスカレートしていった。

 それから家に帰って自己嫌悪に陥るという、負のスパイラルが日課になっている。

 

『ふっふっふっ…そうちゃんと亜子ちゃんは、このスノーホワイトママに甘えていいんだよぉ~』

 

 けれどもスノーホワイトは、そんな自分を邪険になどしなかった。

 冷たく当たっていたラ・ピュセルも、アリスを仲間として扱ってくれている。

 

『亜子ちゃんモフモフ~』

『暖かい……です』

『アリスも正体明かしてからは大分積極的になったよなぁ』

 

 二人の側にいると、心がぽかぽかする。

 まるで、春の陽気の下、日向ぼっこをしているみたいだ。

 こんな気持ち、いつ以来だろう。

 

『お父、さん……お母、さん……』

 

 目を閉じれば、遠き日の思い出が浮かんでくる。

 幼稚園の頃、家族揃ってでかけた動物園。

 ふれあいコーナーのうさぎを抱いて微笑む自分に、桜の木の下で手を振る父と母。

 足元に降り積もった桜の花びらは、いつしか

 

 

 

 ――真っ赤な血溜まりへと変わっていた――

 

 

 

 

「……っ」

 

 そこで、アリスは現実へと引き戻される。

 夕陽の赤に染まったコンテナ群は、あの日見た血の色を髣髴とさせた。

 

「ぁ……」

 

 ―― ああ、そうだった。

 ―― 私の体には、穢れた血が流れているんだ。

 ―― あの二人と一緒にいる資格なんて、私にはないんだ。

 

 二人との距離が縮まれば縮まるほど、そら恐ろしくなる。

 あの二人がアリスの素性を知れば、どのような反応をするだろう?

 父のように拒絶するか。

 それともクラスメイトのように、腫れ物を触るような態度をとるのか。

 やはり自分は……迷惑を振りまくだけの不必要な存在でしかない。

 

「おい、どうしたアリス? 顔色が悪いぞ?」

「いつもの、ことです」

「いや、確かにそうだけどいつも以上に」

 

 心配そうな晴人を尻目に、アリスは乱れた心臓の鼓動と呼吸を整える。

 そして、改めて誓う。

 

 ―― スノーホワイトの、盾になると。

 

 一度は捨てようと思った無価値な命だ。

 いつ失っても惜しくない。

 

『私は剣! 君は盾! これでいいじゃないか!』

『いいえ、私が剣も盾も兼ねますから、ラ・ピュセルは別に』

『何で私に役割をくれないんだぁ!』

 

 ふと、ラ・ピュセルと初めて出会った時のやり取りを思い出す。

 あの時は醜い嫉妬心からあのような台詞を吐いてしまったが、あえても今も同じ言葉を綴ろう。

 

 ―― 私が剣も盾も兼ねます。

 ―― だから、あなたはスノーホワイトの傍らにいてあげてください。

 ―― 清く美しく、正しい魔法少女であり続けてください。

 

 自分は、二人のように正しい魔法少女なんかじゃない。

 でもだからこそ、二人の代わりに遠慮なく血に塗れることができる。

 だって、自分はもう――……

 

 

「……――ウゥゥゥゥ」

 

 その時だった。

 耳障りな呻き声が耳に飛び込んでくる。

 

「……――ウゥゥ」

「……――ウゥゥゥゥ」

 

 ひとつ、ふたつと呻き声がそこらに溢れる。

 空気がビリビリと緊迫し、皆は一様に臨戦態勢をとる。

 やがて、のっそりと……人のような黒い影がアリス達の前に姿を現す。

 

 ―― ひび割れた岩のような体表。

 ―― 額に生えた二本の角。

 ―― のっぺりとした顔。

 

 それは、

 

「グール……」

 

 ファントムの一種で、力は弱いが数の多い厄介な相手。

 どうやら、囲まれてしまったらしい。

 

「……―― 仮面ライダーウィザードさんと、お見受けいたします」

 

 そんなグールの群れを掻き分け、ひとつの影が正面に立つ。

 

「雑魚には興味がありません。一対一、シンプルな殺し合いというやつをやりましょう」

 

 ―― 女性的な細身の体躯を包む、純白のローブ。

 ―― 宝石の原石を思わせる、オレンジ色の頭部。

 ―― 腰部分に巻かれた、手掌を思わせるデザインのベルト。

 ―― 手に持つ、赤ん坊の頭ほどある水晶玉。

 

 白いウィザードといった趣の外見ながら、その言動は友好的じゃない。

 新たな敵の登場に、アリスを始めとした魔法少女達は表情に険を寄せる。

 そんな中、

 

「――……コヨミ?」

 

 呆けたような表情で目を見開き、晴人は次の言葉を搾り出した。




このお話のラストを書くため、MOVIE大戦の約束の場所をレンタルいたしました。
本当にあのアンダーワールドでのやりとりは、胸にくるものがありましたね……。

次回、白い魔法使いVSウィザードの執筆がんばりますっ!
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