仮面ライダービースト ~Magic Girl Dinnertime~ 作:流離太
そしてお待たせいたしました、主役なのに空気だったビーストさんがいよいよ次回から活躍です!
と言っても、この物語は厳密に言えばビーストが主役なのではなく、登場人物全てが主人公の群像劇です。
話は物語の冒頭まで遡る。
ある日、とある事情で傷心状態だった私のマジカルフォンから、ファヴが飛び出してきた。
「クラムベリーがピンチだぽん! 助けてほしいぽん!」
聞けば、殺しあいの試験を開催していたところ、仮面ライダーに邪魔をされたという。
同じ人材発掘部門所属の魔法少女ということで、私を頼ってきたらしい。
「すみません、聞かなかったことにしてあげます……」
私はやんわりと断った。当然だろう。あろうことかファヴは、魔法の国の目を盗み、本来平和的であるべき魔法少女試験で殺しあいを行っているというのだ。
監査部門に報告すれば、投獄は免れない案件。良識あるマトモな魔法少女なら、同様の返答をするであろう。
しかし、
「……あんたに拒否権は無いぽん。同じ穴の狢の、あんたにはね」
ドスの利いた声色を放つファヴに、私の表情は凍りつく。
知られていた。よりにもよってこんな羽饅頭に、私が良識あるマトモな魔法少女で無いことを。
「人材発掘部の権威たるあんたが、クラムベリーの真似をして、殺しあいの試験をいくつも実施している事実……こいつをバラされたくなかったら、大人しく言うことを聞くぽん」
私は、渋々頷いた。
ファヴ曰く、今回の作戦のため「騙しやすそうな馬鹿」と「クラムベリーの本性を知るクズ」の二人に協力を依頼したという。しばらくしたら馬鹿の方から連絡が来るから、以降はそちらのサポートに回ってくれとのこと。
ナチュラル&ストレートなクズにクズと呼ばわりされた事実にカチンと来るが、言われた通り待機する。
その間、ファヴから送られてきた仮面ライダーの資料に目を通す。
「ウィザード、ビースト……」
この二名、聞き覚えがある。確か、魔法の国を創設した三賢人の師たる「始まりの魔法使い」を倒した二人じゃないか。
そのように思った直後、私のマジカルフォンから着信音が流れ出す。どうやらファヴの言う「馬鹿」から連絡が来たらしい。
「はい、もしもし」
間もなく返ってきた電話相手の声を聞き、「ああ」と私は納得する。
流石ファヴ、人材発掘部のエースクラムベリーの相方だ。実力、信用共に納得の人選である。
「ファヴからお話は伺っております。私のことは手足として遠慮なく使ってください」
「そがこっだが……」
通話相手の魔法少女は、難色を示す。
ファヴの作戦はこうだ。カラミティ・メアリという魔法少女が明後日起こすテロに乗じて暗躍。闇に乗じて仮面ライダー共を暗殺するというもの。
しかし、通話相手は「それでは、まず失敗する」と言うのだ。
「……でしょうねぇ。私も同感です」
ファヴとクラムベリーはかつて「ウロボロス」という超弩級ファントムをライダーに差し向けた。しかし鎧武という仮面ライダーによって、退けられてしまったという。
恐らく、私達二人の戦闘力を足しても、ウロボロスには届かない。そもそも私は非戦闘型魔法少女である。
仮面ライダーひとりの戦闘力は侮れないものがある。それを全員まとめて相手取るなんて無理だ。
となれば、
「各個撃破……それが現状、もっとも妥当な打開策かもしれませんね」
「んだ」
通話相手と考えが一致したことで、私は目を細める。
彼女の名誉のために言っておくが、電話相手の魔法少女は決して頭が悪いわけではない。むしろ、惑わし、騙し、欺くための戦略を立てることに関しては一目置いている。
しかし、クラムベリーを崇拝し、その一言一句を信じて疑わない愚直さがある。そのためには人殺しすら厭わない彼女の姿勢は、確かに盲目の馬鹿かもしれない。
「では、まず最初に誰を狙うかですが……」
通話相手は、ウィザードを推した。
ウィザードは今いる仮面ライダー達の中心的存在で、戦力面から見ても厄介この上ない。逆を言えば、彼を倒せば敵側にかなりの動揺と損失を与えるだろう。
しかし私は、
「それなら、ビーストがよろしいかと思います」
意見としては、通話相手とほぼ同じだ。
しかし、我々二人は仮面ライダーとの戦いに慣れていない。いきなりウィザードを相手取り、どこまで戦えるものか。
ならば、似たような能力を持ち、実力がやや劣るビーストで小手調べをした方がいのではないか。
それに、
「データによれば、ウィザードこと操真晴人は精神的に脆いところがあります」
長年共に戦ってきたビーストを失えば、ウィザードは心に浅くない傷を負ってくれるはず。そうなれば、作戦成功率は上昇するだろう。
そんな私の意見に通話相手も納得し、我々二人は最初のターゲットを仮面ライダービーストへと絞ることにした。
次の日になり、私達は作戦を実行に移す。
まずは第一段階。仮面ライダービーストの戦力分析&魔力消耗を狙い、手ごろな戦力をぶつける。
通話相手は、以前無音歩行術を教えたという魔法少女「袋井魔梨華」に連絡をとり、ビーストを強襲させた。
「―― 向日葵砲ッッ!!!!」
「ぐぉおおおッッ!!?」
私の魔法は「水晶玉に好きな相手の姿を映し出すよ」というもの。目標の髪の毛を自らの指に巻きつけると、持っている水晶玉の中に目標の現在が映し出される。
その魔法を使い、私は魔梨華とビーストの戦いを、淹れたての珈琲を飲みながら見学した。
「いいぜいいぜその意気だッ!! 私は歯応えがあってうめェぞォ!! ただし、毒が混じってるけどなァ!!」
「オラオラ、逃げてばっかじゃつまらねーだろッッ!! 降りてきて戦えコノ野郎!! そして私を笑顔にしやがれェええええッッ!!!」
結果、ビーストの全能力を引き出す前に、戦いは終わった。
花丸満点ではないが、流石は袋井魔梨華。ビーストの魔力を、きっちり削ってくれた。
まずまずの戦果に満足し、私と通話相手は作戦を第二段階に移す。
「……―― 仮面ライダーウィザードさんと、お見受けいたします」
「雑魚には興味がありません。一対一、シンプルな殺し合いというやつをやりましょう」
救援に駆けつけそうな仮面ライダーの足止めをして、ビーストを孤立させる。
あまり手の内を見せたくない私は、ファヴから借りた「ワイズドライバー」で白い魔法使いに変身し、ウィザードの前に立ち塞がった。
だが、ここでも計算外が生じる。
「はぁ……あなたには、欠片もときめかない」
びっくりするくらい、ウィザードとの戦いはそそらなかった。耐えられなかった。虚しさが胸いっぱいにこみ上げ、気づいたら戦闘を放棄していた。
やはり戦いというものは、美しく可憐な魔法少女同士で行うものだ。
「まぁ、足止めは指輪で召喚したライダー達に任せてきましたし、広義の意味では作戦成功と言えましょう」
「言えるわけねぇぽんっっ!!!」
「うるさいですねぇ。テレビを見ている時くらい、静かにしてくださいよ」
自宅にて、急にマジカルフォンから飛び出してきたファヴに対し、私は不快感を隠さずに物申す。
「大丈夫ですよ、ウィザードがあの仮面ライダー達を倒す頃には、ビーストはきっちり始末されていますから」
「戦線離脱したことじゃないぽんっ!! 足止めなら、なんでスノーホワイト達を見逃したぽん?」
ああ、そっちか。
「所詮彼女らは魔法少女の卵。何人集まろうと、計画の支障にすらなりませんよ」
「まったく……あんたは本当に勝手なことを。奇襲作戦だって、結局事後承諾だったし……」
ファヴはぶつくさ文句を言う。
しかし私はそ知らぬ顔で、お茶請けのかりんとうをポリポリと齧る。
そんな時、私のマジカルフォンがけたたましく鳴る。
「はい、もしもし」
それは、通話相手の魔法少女が、いつでもビーストを襲える位置に就いたとの報告だった。
「では、これより最終段階へと踏み込みましょう。……ああ、その前に」
私は思い出したように、一抱えほどあるアタッシュケースを部屋の隅から持ってくる。それをおもむろに、水晶玉の中へ突っ込んだ。
私の魔法は前述した通りだが、このように水晶玉に映った相手に物を手渡したり、逆に水晶玉に映った物を掴み取ることもできる。
「今送ったのは、魔法の国が取引きしている企業『財団X』が開発したウィザードリングです。あなたのドライバーとも、相性は悪くないはずです」
アタッシュケースを受け取った通話相手は、ペコリと会釈する。
賽は投げられた。あとは、彼女を信じ、ここで見守るのみ。
「あいつひとりで大丈夫かぽん? 相手は一応、クラムベリーを倒した相手だぽん」
「だから、彼女にドライバーを与えたのでしょう? 始まりの魔法使い『アマダム』が開発した、最凶最悪のアーキタイプを?」
「でも、あんたが一緒に行った方が……」
「問題ね」
マジカルフォンから、彼女の声が聞こえた。
「おれざ、クラムベリーと違わ。そっが勝機ざある」
クラムベリーとは違う。実力は及ばなくてもそこに勝機がある。
そう語った彼女は、更にこう言葉を結ぶ。
「
はい、ファウが雇った協力者二人とは「変態」と「メルヴィル」でございましたw
袋井魔梨華とメルヴィルが知り合いだという設定は、JOKERS本編で語られております。
ちなみに、以下がデータとなっております。
【メルヴィル】
・魔法:色を自由に変えられるよ
魔法少女育成計画restartに登場。
人間名は東北の山奥で生活する猟師の娘「久慈 真白」。
森の音楽家クラムベリーの殺し合い試験を突破した魔法少女で、以降クラムベリーの試験をたびたびサポートしてきた。
魔法によるステルス迷彩と無音の移動術での奇襲を得意とする。