幼女ルーデル戦記   作:com211

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なんかもうミリオタ向け仕様になってる上、状況がわかりにくく…
更に知識が中途半端なんで、もしかしたら間違ってるかもしれませんがご容赦を。
ツッコミは歓迎。

ルーデルの活躍だけ読みたい方はそういう部分を飛ばし読みしていただければ。
そういう部分抜きでも成り立つはずですから。
本番は次の次くらいからなので…()

わからない単語があったら本文最後に用語解説着けているのでそちらもどうぞ


5:低地にて

一等客車の寝台で横になりながら、ルーデルに関することを一つ思い出した。

 

『奴一人で全赤軍戦車の1%強を破壊している』

『仮にルーデルが例の勲章通り12人も居たら単純計算、そいつらだけで赤軍戦車が14%ほど消滅する』

 

――こっちで円卓十二騎士の席をすべて埋めるように、あんなのが12人居たら帝国は無敵だ。間違いない。

 

そういえば、

Fw190かJu87に30mm機関砲を4門載せて弾種をAPCRにした奴があればもっと殺せてたとか言ってたな。

現状のハンナはそれを遥かに凌ぐ継続火力と貫通力を備えている状態なわけで、

これがどこまで戦果を伸ばすのかというのは非常に気になるものである。

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

 

1923年8月8日

 

ブリュッセル郊外 第七強襲戦闘団駐屯地

 

西方方面軍司令部直轄機動打撃群

第七強襲戦闘団、第二〇五魔導中隊。それが私の新しい配属先だ。

 

第七戦闘団は本来北方に配置されていた部隊だが共和国の動員令に伴い再配置となり

ここ西方に配置転換された――と聞いている。

 

 

 

「久しぶりだなデグレチャフ少尉。ようこそ我が中隊へ」

 

「中尉殿、お久しぶりであります」

 

転属先の中隊本部に到着したが、そこには顔見知りが居た。

 

 

「今コーヒーや紅茶は無いから代わりに牛乳を飲め。あと上官だと思わなくていい。今まで通りに接してくれ」

 

「せめてコーヒー牛乳とかは無いのか?」

 

「なんだそれは」

 

牛乳中毒の少女中尉殿は駐屯地の大隊本部テントで私を待っていた。

出されたのは紅茶でもコーヒーでも酒でも水でもない。彼女の常備飲料であるところの牛乳だ。

牛乳瓶を持ってきた。しかもでかい。500ml瓶。

 

「しかしまあ、ここまで短期間でまた昇進とは珍しいどころじゃないな。何があった」

 

「特殊な昇進というやつだ」

 

話を聞けば、遠くないうちに彼女の下に戦技教導隊から2名ほど研修で送り込まれてくるらしい。

現在、その2名は航空隊に派遣されて航空機の操縦訓練と簡易的な空戦の訓練をしているそうだ。

それで階級が逆転していてはまずいということで適当な戦果と引っ付けて昇進したんだとか。

 

要するに上の都合だ。と後付けした。

 

まあ、こいつのことだから既存の戦果からしても大佐辺りまでの昇進は確実と見ていいし、

上もそれを分かってて昇進の前払いなんて事をしているのかもしれない。

――というか、上は本気でルーデルの飛び方を他の連中にも真似させる気らしい。

 

 

「それで、よりによってこの中隊に転属になった理由は聞かせてもらえるんだろうな」

 

「私が人事局に圧力をかけた。戦技教導関連の取引みたいなもんだ」

 

上に圧力をかけて配置に干渉するってどんな手腕を使ってるんだか。

相変わらず上を操るのが得意なようだ。

 

「北方で小隊編成したはいいがやっぱり小隊員が付いてこれないんでな。結局私一人で飛ぶことになった」

これとツーマンセルを組まされた新兵はさぞ苦労しただろう。

 

「ということは私はここに呼ばれた以上、ハンナの小隊で飛ぶことになるのか?」

――しかし、書類には小隊長と書かれてたはずでは…

 

「いや、新規に小隊を編成してもらう」

 

――? 

ルーデル小隊の補充じゃないのか?

 

「待て、それだと呼ばれた理由と矛盾するだろう」

 

「これがまた複雑でな…」

 

 

中隊本部小隊の隊長が、中隊長のイーレン・シュワルコフ大尉。

そこの隊員その1がハンナ・ルーデル中尉。

 

ハンナは研修生が到着次第、新規に小隊を編成するがそれまではこの配置。

 

但しこれは書類上の話であり、実態としてはハンナは第四小隊を名乗ってほぼ単独行動という状態らしい。

 

 

ターニャ・デグレチャフ少尉は第三小隊長。

元々ハンナが隊長を務めていたが、北方に居た頃に隊員が3人共他の中隊に回された。

新兵には無理だという戦闘団本部の配慮だそうな。

 

空っぽになった第三小隊には私と幼年学校から3人新兵の補充で実質新規編成。

――新兵の世話か。生存率が落ちるな…

 

「で、私を呼んだ理由になってないぞ」

 

「名目上、小隊長にしておく必要があるという話だ。別に常時僚機が必要だというわけでもないしな」

 

要するに新兵が増えて不足するであろう士官を一つの小隊に2人以上置くのは

勿体無いと上が言ったのでとりあえず小隊長にしておくと。

 

「今後とも宜しく頼むよ"相棒"」

 

―――――――――――――――――――――――――

 

翌9日早朝

 

 

世界は我々を休ませてくれる気は一切ないらしい。

早朝、共和国軍が越境したとの一報が入り武装状態での待機を指示された。

 

主力の動員が完了しないうちに完全充足の精鋭師団で奇襲とは。

フランスの割には上出来。

 

「さて、中隊諸君。共和国軍は戦車を先頭に自動車、騎兵を多数用いて

リール、ダンケルク方面から多数越境、

航空魔導師の援護を受けており、行軍速度が非常に速く

今日中にブリュッセル、アントウェルペン正面の防衛線に到達する見込みだ」

 

地図を開き部隊を示す駒を配置してシュワルコフ大尉が説明する。

 

 

「我々の任務は、このうちブリュッセルに接近している軍団の防衛線突破を阻止することだ」

 

「こいつは…」

「シュリーフェン・プランか? 攻守方向が逆だが」

 

あっちでは様々な理由で失敗したシュリーフェン・プランだが、

戦車を含む半自動車化騎兵で実行された場合は恐らく成功する。

ブリュッセルを突破されたら帝国はライン川まで後退することになるだろう。

 

「最悪の場合、二〇五中隊はこの駐屯地から撤退する。

その場合は作戦終了後に北に向かって飛んでくれ。ロッテルダムで再編成する」

 

新兵3人を引き連れて数十キロから数百キロを後退する…厳しいな。戦闘後なら尚更。

 

 

「第七戦闘団からは二〇二、二〇四と我々二〇五中隊が制空戦闘を実施する。

但し第三小隊は不参加だ。デグレチャフ少尉は本部小隊でルーデル中尉とツーマンセルを組め」

 

「何故ですか中隊長!」

うちの小隊の伍長が余計なことを言い出した。新兵が口を出す状況じゃない。

 

「やめろハラルド伍長」

 

「ですが少尉! 自分は戦うためにここに来たのです! 新兵だからと「やめろと言ってるんだ!」

死にに来たのかこの愚か者は。

 

「今の貴様らが行っても無駄死にか足手まといになるだけだ! これ以上無駄口叩くようなら抗命で処分するぞ!」

そう言うとハラルド伍長は悔しそうに拳を握りしめながらも黙った。

 

「申し訳ありませんでした」

 

 

「良いかな? では我らのエース、副隊長殿からお言葉を賜わろう」

ハンナにそう問いかけるシュワルコフ大尉。少し楽しそうに見えるのは気のせいだろうか。

 

「こういうときは隊長が言うものだろうが、全く…」

そして上官に向けたものとは思えない態度で応じるハンナ。

 

「新兵達には申し訳ないが、現状においてこれが最善の判断だと考えている。

魔導師との戦闘は体力と魔力を激しく消費し、敵の攻撃ではなく魔力切れで墜落することすらある。

その配分が分かっていない新兵が戦闘後、150km近い飛行を行うことは危険だ」

 

「出撃する諸君は義務を全うせよ。ヴァルハラに転属することは許可しない」

 

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敵の作戦の目的は不明だが、ネーデルランド辺りを帝国本土方面から分断して部分的にでも部隊を殲滅させることにあるならば時代性から考えれば優秀であり、

機械化が不完全ではあるが電撃戦そのもの。

その場合、これはシュリーフェン・プランと言うよりマンシュタイン・プランの方が近いか?

 

仮に作戦目標がネーデルランド分断だった場合はその計画を策定した人物が問題になる。

最悪の可能性は転生者によるものだが、

転生者でなくても一次大戦無しに電撃戦を考えるような奴が共和国軍に居たとすると、

帝国はこの戦争で相当苦戦するか、場合によっては敗北する。

 

それが誰かという点であるが、一人心当たりがある。

 

こちらの世界においても、

数は少ないが聞き覚えのある名前で似たような立場についている奴が居る。

例えばルーデンドルフとルーデルドルフ、

ヨセフ・ジュガジヴィリとヨシフ・ジュガジヴィリ、

 

――そしてフランスのド・ゴールとフランソワのド・ルーゴ。

 

ド・ゴールは電撃戦の提唱者であるが、フィリップ・ペタンやモーリス・ガムランら二次大戦基準での無能共によってその主張は受け入れられず、

逆に敵国ドイツによる電撃戦によってフランス本土を離れることとなったが、

こっちでこのような作戦を実行できるような地位にいるとすれば…

 

考えるのは後で良い、今は出撃準備だ。

 

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『アドラー2(ツヴァイ)からアドラー1(アインス)、第四小隊は先行して敵魔導部隊を奇襲する』

 

『アドラー1了解。ルーデル小隊の幸運を祈る』

我々ルーデル小隊は一番槍として先行するため巡航速度を150から350に引き上げた。

これも九五式でないと実現できない速度。但し例外が一名。

 

「2人だけで奇襲か。普通に考えれば敵は中隊以上の規模だろうが…」

 

「その九五式があれば2人で大隊相手にするくらいなら問題にはならない。事故死しない限り」

 

低地地方に配置されている魔導師部隊は第七と第九、第十一戦闘団。

そのうち最も敵に近く優速なルーデル小隊。そしてそこに正面から突っ込もうとしている。

 

敵も長距離行軍状態だとは言え戦闘団規模で付いていると考えるべきで、

最低でも3個大隊は居るはずで、余裕を見るなら敵も9個大隊もしくはそれ以上。

 

2人で大隊を相手にすると言っていたが、18倍の敵を相手にするということだ。

しかしギリギリではあったものの実績として、既に2個中隊を壊滅させている。

九五式の力を最大限発揮すれば大隊規模なら大したことではない…のか?

 

普通に考えれば、小隊ですらなく班。2人で大隊に突っ込む。

自殺行為以外の何物でもないし、私は自殺願望があるわけではない。あるわけがない。

だが前線に配置された以上、

帝国に宣戦布告すらせず侵入してきている無礼な害虫を駆除しなければならないし、

ここで任務を拒否すれば当たり前だが敵前逃亡。問答無用で銃殺。

 

そして何より、2人で先行して突っ込んだほうが最終的な生存率は高まる。

普通であれば戦力の逐次投入は愚策である。

だが人数が少ないなら奇襲が成功する可能性が高く、

低空高速飛行ができる二人で、なおかつ圧倒的な速度差、性能差。

敵が混乱しているところに第一、第二小隊が到着する図式の方が敵に迎撃される可能性が低い。

 

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用語解説:APCR

高速徹甲弾。HVAPとも言う。

弾心にタングステンなどの重金属を使い、

その周りは軽金属にすることで軽量化し初速を稼ぎつつ、

貫通力を稼ぐための弾。ある意味APDSやAPFSDSの祖先。

 

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用語解説:低地地方、低地諸国、ネーデルラント

オランダ、ベルギー、ルクセンブルクのベネルクス三国の地域を指す言葉。

"ネーデルラント王国"はオランダのことを指す。

 

作中において上記三ヶ国が存在せず、

帝国が実効支配し、帝国と共和国の間で領有権問題が存在するとされている。

 

要するに史実におけるアルザス=ロレーヌの代替要素である。

それにしては広すぎる気がするが。

 

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用語解説:騎兵

 

一次大戦以降の騎兵は軽量の野砲若しくは通常の野砲を装備し、

更に一部を馬から自動車や装甲車に置き換えている

『半自動車化騎兵』というのはそのようなものを指す。

一般に歩兵よりも早く機動できる。

なおサーベルチャージするのは相変わらずの模様

 

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用語解説:自動車化歩兵、機械化歩兵

 

機械化歩兵はロボットの歩兵…というわけではなく、

装甲車や自動車に乗って移動する機動力の高い歩兵のこと。

概ね騎兵の上位互換に当たる。

 

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用語解説:シュリーフェン・プラン

 

一次大戦前に策定されたドイツによる対フランス戦争計画

中立国ベルギーとルクセンブルクに宣戦布告、ここを通過することでフランスの側面を取り、

パリを挟んで反時計回りに進軍しフランス軍の背後を取ることで包囲殲滅。

短期間で対仏戦争を終わらせる戦争計画ではあるが、

反時計回りの最も外側の部隊は一日40km、1日辺り12-14時間の徒歩移動が必要になる計画であり、

荷物を背負ったまま12-14時間ほど歩くことになり、それを10日ほど続ける。無理。

史実ではパリを目前に進軍できなくなり、そこで戦線が膠着し塹壕戦へ移行していく。

 

流石に歩兵ではできないので、騎兵や自動車化歩兵などで実行するべき作戦。

 

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用語解説:マンシュタイン・プラン

 

二次大戦において実行されたドイツによる対フランス戦争計画。

アルデンヌの森を抜けてイギリス海峡まで走り抜けることで

前線に配置された連合国軍を包囲殲滅することを目的とする

 

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用語解説:電撃戦

 

一次大戦後から研究されていた「新しい時代の機動戦」ドクトリン

前述のシュリーフェン・プランは"機動戦"

マンシュタイン・プランは"電撃戦"に相当する

 

戦車を先鋒に、自動車化機械化された歩兵を前線の一点に投入し、

敵前線後方の脆弱な地点、物資集積施設や司令部などを破壊することで

敵の前線における戦闘能力を奪う。

 

機動力の高さから敵の包囲殲滅を同時に行うのが普通。

 

似たようなのに「縦深攻撃」があるが、

こちらは前線を突破した後、あらゆる損害を顧みず前進し敵を包囲殲滅することを目的とするため、

戦略地点の攻撃占領を目的とする電撃戦とは目的の主従が逆になる。

 

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どうしてこうなった!どうしてこうなった!
輸送力とか色々考えてたら原作と戦争の形態が別物になってた!なんじゃこりゃ!

――まあこれで作戦が失敗すればその後は原作と大して変わらんかな…



用語解説を本文中に入れることにしました。
原作でもやってますしいいかなぁと

この世界は諸般の事情で原作から結構ズレてます
全体的に共和国も帝国も連邦も原作よりも強化気味。


そしてターニャのキャラが微妙な気がしてきた…
でもルーデルが居るとこんな感じにならざるを得ない気もする…

今後感想は全部返信していきます。
ただ、ネタバレ回避もあるので遅れたり、順番おかしかったり、
投稿してから返信を編集することがあるかも知れませぬ
結構感想ってモチベに関わりますねこれ

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