そこからはタグ通り、亀更新となるかと思います。
「いやぁ、凄かったですよキョウヤ!基礎魔力が高い私には及びませんが、素晴らしい爆裂でした!」
メグが興奮した様子で言う。その言葉に、メグに肩を貸してもらいながらふらふらと歩く格好の悪い俺様は何も返さない。いや、返すことも億劫なだけだが。
いやはや………これは辛いぞ……………。
爆裂魔法。魔力を莫大に消費して放つ大魔法。魔力を使うと言うが、高レベルな冒険者ではない俺様やメグが撃つ場合、全魔力を吸い尽くすだけでなく、生命力をも吸っていく。
俺様は生命力のステータスも高かったので、メグのように1歩も動けないという事は無かった。
しかし。とても戦えた状態とは言えん。
トライアスロンの大会で優勝して、100万稼いだことも有った俺様ですらこうもフラフラなのだ。
恐るべし、爆裂魔法………。
「……………大丈夫ですか?」
本気で心配になったのか、打って変わって心配気な表情だ。
ふん…………女に心配をかけるものではないか…………。
「いや、気にするな。…………お前こそ大丈夫か?その身長で俺様に肩を貸すのは大変だろう」
俺様の身長は170センチ。メグはおおよそ150前後と言った所だろうから、かなりの身長差だ。コレで支えるのはかなり大変だろう。
「いぇ、へっちゃらです。仲間の為ですから」
二ヘラ、と笑いながらメグは言う。
はっ……………仲間、ね。
「そうか。まぁメグもレベルが上がって、筋力も少しは上がっているだろうからな。それくらいは楽なものか?」
「えぇ!それも、キョウヤが上手く敵を集めてくれるおかげです!」
「ふっ、まぁな。全て俺様が倒してやってもいい所を譲ってやってるのだ。感謝するのだな!」
「はい!」
ニコニコしながら歩くメグに頼りながら、俺様は歩く。
ふん……………。意外と素直な奴だ。案外、中二はパフォーマンスだったりするのかもな。
…………は、だとすればかなりのやり手だが、ないだろうな………。
「ほら、キョウヤ。着きましたよ」
「む、そうみたいだな。…………俺様も少しは体力が回復したようだ。助かったぞ、メグ」
「………えへへ。まぁ、精精感謝するがいいです」
「あぁ、そうさせてもらおうか。見物でもするか?何か欲しいものでもあるのなら、ある程度考えてやってもいいぞ?」
「本当ですか!?あ、じゃあじゃあ、キョウヤと同じ杖が欲しいです!」
「おいおい、1個100万の高級品だぞ?高い女だな、メグ?」
「ふふっ。1兆近い資産が有って、何をケチくさい事を言っているのですか」
「はははっ!何を言うか。倹約さは、日本人の美徳だぞ?」
アクセルの町を気ままに歩きながら、俺様とメグはそんな風に話をする。
「ニホン………聞いたこともない国ですね。キョウヤは妙に常識の足りてない所が有りますし。どんな所なのですか?」
「そうだな………くく、平和な場所、と言い表すしかないだろうな。学問さえきちんと修めていれば、誰しもが職に困らない。命の危険など、本当の意味では誰も受けることは無い。そんな場所さ」
「へぇ………なるほど。いい場所ですね」
「ふっ、だろう?それを手放してしまったのは、少々惜しかったが………ここでの生活も、まぁ悪くは無い」
「…………なにか、事情があるみたいですね?」
「は、まぁな。しかしメグ。お前がそれを気にかける必要は無い。なに、機会があればいずれ話す」
「…………そうですか。まぁ、誰しも秘密の一つや2つ、抱えているものですしね」
「あぁ。女に限らず、その方がミステリアスで、魅力的なものだ。そこに口を突っ込むというのは、野暮というものさ」
その後、魔道具を売っている店で俺様と同じものを買ってやり、色々と不必要なものをせびってくるメグを適当にあしらいつつ、時間を潰すのだった。
夜になり、俺様とメグがそれぞれの部屋に帰ったあと、俺様は自分の冒険者カードを見ていた。
そこには、今日俺様が取得した一覧が表示されている。
「通常スキルに初級魔法、中級魔法、上級魔法、爆裂魔法。アビリティスキルに魔力量増量、高速詠唱、爆裂魔法強化、上級魔法強化か…………。篦棒に多いな………」
初級魔法(要スキルポイント3)中級魔法(要スキルポイント10)上級魔法(要スキルポイント30)爆裂魔法(要スキルポイント50)。
魔力量増量(要スキルポイント5)高速詠唱(要スキルポイント10)爆裂魔法強化(要スキルポイント8)上級魔法強化(要スキルポイント6)。
さすが俺様と言うか。計算すると122、つまり俺様のスキルポイントは使い切られていた。
「ネタ魔法はバカみたいにスキルポイントを食うな………。その割に使ったら倒れる、1日1発。これでは使い物にならん」
流れで取得したものの、これからも爆裂魔法が必要な時はメグを頼る方が効率的か。
「…………そうだ」
俺様はふと思い立ち、備え付けの金庫の目の前に立つ。
「『ロバースト・ロック』」
俺様がそう言うと、金庫が光だし、金の色の魔法陣を作り出した。
魔法的な干渉を防ぐ上級魔法『ロバースト・ロック』。上級魔法には種別があるみたいだ。
1度で大量の魔法を覚えるため、この魔法を覚えることが、魔法使いの大きな目的であるらしい。
「便利なものだ………。ん、少し眠いな………」
寝ようと思うのだがこの魔法、俺様が寝てしまっても続いているのだろうか。
まぁ、詳しくは明日調べればいいだろう。
「……………………( ˘ω˘ ) スヤァ…」
翌朝。
「キョウヤ!起きてください、緊急事態です!」
「………………なんだ、朝っぱらから騒騒しいな………くぁ………」
少し体にだるさを感じる。睡眠は足りてると思うのだが…………。やはり、昨日の爆裂魔法が効いたのか。だとしたらメグは毎日撃っているのに、元気だな…………。
「寝ぼけてる場合ではありません!今すぐ着替えて、冒険者ギルドに来てください!」
「分かった分かった。今すぐ着替えればいいんだな」
寝間着代わりのジャージを脱ぎ捨て、衝撃吸収素材のベストやレザーに着替える。
ちらりと金庫を窺ってみたが、変わらず魔法陣が浮かんでいた。1度魔力を込めてしまえば、その後は放っておいてもいいらしい。
ベッドに立て掛けている長剣を手に取り、準備を完了させる。
「準備が出来たなら、今すぐ行きますよキョウヤ!」
メグはそう言うと、俺様の手を引っ張り、無理やり歩かせようとする。妙に焦っている様だ。
「全く、なんだと言うのだ?何をそんなに慌てている。緊急事態と言ったが………」
「えぇ………!話はギルドでしますから、とにかく急いでください!」
「……………ふむ………」
本当に何があったのだろうか。
そこまで長い付き合いという訳では無いが、ここまで焦っているメグは初めて見た。
それほどまでに衝撃的なニュースなのだろうか。俄然気になるが………。
釈然としないまま、俺様はギルドへと連れられる。
ギルド内には、数多の冒険者達が所狭しと集まっていた。普段見る人数とは比べ物にならない。この街にはこれほどまでに冒険者がいたのか、と思うくらいだ。
「あっ、めぐみん!その人がめぐみんの………?」
そう言って、黒髪をお下げにした、いかにも地味めな少女が話しかけてきた。誰だこいつは。
「えぇ………。キョウヤ、彼女はゆんゆんです。友達がいないぼっちでも有ります」
「し、失礼なこと言わないでよっ!私にだって友達くらいいたもん!」
「……………ゆんゆんか…………。名前から察するに、彼女も紅魔族なのか?」
「はい、そうなのです」
「ふぅん…………」
というか、妙に怖がられているのだが………。
さっきからメグの後ろに隠れながらおどおどと。何がしたいのだ、こいつは。
胡乱気な表情に気づいたのか、メグが口を開いた。
「この子は重度の人見知りなのです。だから慣れるまでこのまま応対して欲しいのです」
「…………まぁ、構わんが…………。とりあえずは初めまして。俺様はミツルギキョウヤ。こんな剣士風のナリだが、一応は君と同じ、アークウィザードになる」
あまり怖がらせるのもな、と思うので、ある程度優しめにそう言う。別にフェミニストという訳でもないが、メグの友人らしいし、そこまで怖がらせる必要は無いだろう。
件のゆんゆんとやらは、意を決したように奮い立ち、メグの後ろから出てきた。
「は、はは、初めまして……。わ、私、ゆんゆんと言います………」
「あぁ、よろしく。所で。俺様は紅魔族の名前を呼ぶのがあまり好きではなくてな………。もし君がいいなら、何か別の名前で呼んでもいいだろうか?あだ名というか………まぁ本名があだ名みたいなものなのだが」
メグの時と同様に、しかしメグの時とは違って許可を取ってから別の名前を付けることに。
ゆんゆんは何か嬉しそうに顔を輝かせ、勢いよくぶんぶんと首を縦に振った。
「は、はい!」
「ありがとう。そうだな…………ユウというのはどうだろうか?」
「…………!は、はい!それでいいです!寧ろこれからは、本名じゃなくてそっちを名乗ります!」
「いや、そこまでしなくても構わんのだが……まぁいい」
聞いた所、メグは自分の事を普通だと思っているらしい。しかし普通に考えてアレが普通なわけがない。そこから考えて、紅魔の里の連中は皆、『ああいう性格』なのだと推測できる。メグの突飛な性格も、あっちでは普通だったのだ。
だから思うのだが、紅魔族の割にユウはなかなか常識的というか、一般的な人見知りコミュ障な性格をしている様に見えた。ああいうタイプはあまり好みではないが、理解出来ない訳ではない。
「相変わらずゆんゆんは、変な感性ですね。そんな変な名前で呼ばれて嬉しいだなんて」
「や、やっぱり私がおかしいの?そうなの?」
「安心しろ、ユウ。おかしいのは君以外の紅魔族の連中だ」
「で、ですよね!ほら、めぐみん!やっぱり里の皆がおかしいんじゃない!」
「ありえませんね。キョウヤ、遠慮する必要は無いのです。きちんと事実をゆんゆんに話すべきです」
ギャーギャーと騒がしい二人に、いい加減焦れた俺様は口を出す。
「どっちがおかしくてもいいのだがメグ、ユウ。そろそろ、緊急事態とやらを教えて貰っても―――――――」
そんな声を遮る様に、冒険者達ひしめくギルドの中で、唯一一定の広さを保っていた場所から声が出される。
「皆さん!静粛に願います!」
ざわざわと騒がしかったギルド内が、その一言に静寂をもたらされる。
その声元―――――ギルドの職員らしき女は、そのまま話を続ける。
「既に聞いてる方もいらっしゃるかと思いますが、この街の周辺であの悪名高き悪龍―――――『ヴリトラ』が確認されました」
ヴリトラ。
その単語が出た途端、先ほどとは比べ物にならない程の騒々しさが再来した。
ヴリトラ――――――。インド神話の龍か。
大層なお名前だが、どういったモンスターなのか…………。
「なぁ、ユウよ。ヴリトラとは何なのだ?」
「えっ!………し、知らないんですか?」
「あぁ、知らん。だから教えてくれ」
「は、はぁ…………。悪龍ヴリトラ。魔王軍の使役する龍ですよ。凶悪なモンスターで、街一つを一夜にして壊し尽くせる程とも言われています。しかし、高レベル冒険者達が十数人がかりで倒したと聞いていたのですが……………」
少し怪訝そうに、ギルド職員を見るユウ。
他の連中も、似たような目線を向けている様だ。と言うか、どうにも否定的な、迫害的な視線だ。
「皆さんのおっしゃりたい事はとても理解できます。私どももよく分かっていなくて…………しかし、この街の周辺で、かの悪龍が確認されたのは間違いないのです!だからどうか、緊急時には力を貸して頂きたいのです。もちろん、何も起きないのが一番なんですけど………!」
やっぱりか。
そう言って何人かが嘆息し、出て行った。
聞くに、かの龍は強大らしい。『高レベル』が『十数人がかり』でようやっと討伐したのだ。しかしこのアクセルの街は初心者が集まる街だ。高レベルなどほぼいない。
もしかの龍が襲撃した時の為に、冒険者達に協力して欲しいとの事なのだろうが、これでは協力など取り付けられないだろう。
まぁ、どうでもいいがな。
その流れに沿うように、俺様はギルドの出口に足を進めて――――――。
「ちょ、ちょっと!ま、待ってください!」
「ん?なんだメグよ。何か用か?」
「爆裂魔法を炸裂させる絶好の機会ですよ!?もとい、この街の危機になるかもしれませんのです!キョウヤはそれを見殺しにするのですか!?」
「そういう訳では無いが(一瞬本音が見えたな………)。リスクマネジメントも出来ない俺様ではないさ。俺様は高レベルでも無いし、冒険者歴も長い訳では無い。それを分かって挑むほど、正義感が強い訳では無いのでな」
聞く限りそのヴリトラとやらは、物語の終盤に出てくるラインの敵キャラクターの様に思う。
魔王を事実上のラスボスとすれば、中ボスみたいなものである。最初の街に居るのに、いきなりそんな奴と戦いたいと思うほど、俺様は楽観主義でも快楽主義でもない。
「本気で言っているのですか!?キョウヤがそんな人だとは思いませんでした!」
うむ、何故か激怒している。別に俺様は邪智暴虐の限りを尽くしたわけでもないはずなのだが……………。
致し方なし。まぁ、賢しらぶっていても、メグは13のガキだ。ガキの我侭を聞くのも、大人の仕事の内だろう。まだ18なのだが、これが大人の気分か。嫌な事を知ったものだ。
「仕方ないな……………。そんなに迎撃に参加して欲しいなら参加するさ」
「キョウヤ!」
怒りの顔から一転、パァァ、と言うような笑顔。うむ、ガキだ。寧ろ犬にも見える。
ハッハッハッハッ。
踵を返し、ギルドの中を改めて見る。
ふむ。伽藍堂、と言っていいのではなかろうか。
中には殆ど人が居なかった。あれほど居たのにな。残っているのも、そこそこにレベルを上げている連中ばかり。どうにも、だ。
「まぁ、メグよ。やるからにはある程度の矜持を持って取り組ませてもらう。そのヴリトラとやらの情報を聞こうじゃないか」
メグから聞いたところ。
1つ。強力な魔法障壁を全身に纏っている。
2つ。硬質な甲殻を纏っており、神器級の武器でもないと破れない。
3つ。全長数十mの巨躯で、軽いクレーターを作る程度の膂力を持っている。
4つ。動きも巨躯に見合わず俊敏。
以上四つが、悪龍ヴリトラの特徴だそうだ。
うむ。勝てる気がしない。まぁ、追い払うだけなら問題ないやも知れんが。
「まぁいい。少しでも迎撃策を考えておくか………………そう言えば、ユウは何処に行った?俺様とメグが話し始めた所から、姿が見えないようだが」
「ゆんゆんですか?彼女ならあっちにいるではないですか」
「なに?………………む」
確かに居る。遠くの席で、キョロキョロと周囲を見渡して、視線に気付いて目を合わせられると、慌てて目を逸らすという謎の行動を取っていた。
なんだろうか、あの奇行は……………。
というかもしかしてだが、パーティを組んでいないのだろうか。いやまぁ、俺様は類稀なるスペックの高さで、幾つかのパーティに誘われたが、全てなんとなしに蹴ったし。それと似たようなものなのかも知れない。
「キョウヤ、何を考えているか大体察しはつくのですが、彼女はただ人見知りを発動させ続けているだけです」
「なに、そうなのか?ふむ、知らなんだ。友人なのだろう?誘ってやらんのか?」
「いい機会なのですよ。あの内弁慶な性格をどうにかしないと、困るのはゆんゆんです」
「まぁ、そうだろうな。しかしメグよ、ああいうのは簡単に治るものではなくてな。まずは気心の知れた友人の、さらに友人から段々と慣らしていくのがベストなのだ」
スタスタとユウの元へ歩く。こちらに気づいたのか、何だかあわあわしている。
七面倒臭いことこの上ないが、あくまでもスマートに行動しよう。こういった手合は、人とあまり話せない分、良くある人間関係に憧れを持っていたりする場合が多い。それを上手く利用して…………。
………こういった奴が、ちょっとノせるだけで金をボロボロ落すんだよな…………(ホストで大量にぶんどった経験を思い出した)
ちょっと暗黒面に落ちそうだったが。流石に友人の友人から金をふんだくれるほど、落ちぶれてもいない………。
「やぁ、ユウ」
「ミ、ミミミ、ミツルギさん…………」
「キョウヤで構わん。あまり苗字で呼ばれるのも好きではないしな」
「え………あの、良いんですか………?その………私なんかが名前で呼んで」
「構わないと言っているだろうが。まぁ、これから友人になろうというのだ。名前の一つや二つ、呼ぶのが友人というものだと思うが、如何か?」
「ゆ、友人………!あの、その、それじゃ………きょ、きょうや………さん」
「うむ、上出来だ」
まぁ、苗字で呼ばれるのが好きではないというのはまるきりの嘘だが。ま、嘘も方便だ。
さてと…………どうふんだくろうか………。
「(はっ…………つい思考が。いかんいかん、こっちの世界に来て以来、巨額を稼いだことが無いからつい)」
ぶんぶん、と頭を振る。
「きょ、キョウヤさん?」
「む、すまん。少し迷いを振り切っていてな」
「は、はぁ………」
「まぁいいではないか。それよりユウ。見た所、ユウはどこのパーティにも属してないように見えるが」
「は、はい………(´・ω・`)」
「もし良ければ、だが。俺様とメグのパーティに来ないか?」
「え…………」
何とも驚きに満ちた顔を、ユウは浮かべる。
表情の忙しないことだ。
「…………あの…………。わ、私とめぐみんはライバルで…………しかも私、まだ中級魔法しか習得できてない半人前で………」
「そんな事を気にしているのですか?」
ふとひょっこり、メグが俺様の横に現れる。
「全く、ゆんゆんはそんな風にいつも意地を張ってるんですから。そんなんだからいつまでも友達が出来ないのです」
「めぐみん…………で、でも」
「くどいですよ。ゆんゆんはもう少し、正直に話す度胸を持つべきです」
その言葉を聞くと、ハッとしたような表情をユウは浮かべ、意を決した様にギュッと手を握りしめた。
「………………そ、その………キョウヤさん、めぐみん。私を………パ、パーティに…………入れてください…………」
俯きがちに、おどおどとでは有ったが。
彼女ははっきりと、そう言うことが出来た。
ふむ……………。なんというか。こう、はっきり物を言わない奴、特に女は苦手だったのだが…………………。
少しだけ、ユウの事を好きになれそうだった。
「ふっ…………元よりそのつもりだ」
「世話の焼ける自称ライバルですね、ゆんゆんは」
「…………!あ、ありがとうっ…!わ、私、頑張るねっ!?」
うむ。いい話だな。仲が良いのはとてもいい事だ。
似合わないことを言うな、と思うかもしれない。しかし詐欺で稼いだこともあるこの俺様だが、それでも友人からぶんどった事は一度もない。こう見えて友人思いな俺様なのである。だからこういう事も偶には言うのだ。ふはは。まいったか。
「さてと……………まぁ、ユウよ。少し、実力を見せてもらおうか」
クエスト:平原に集団発生した狼を駆除せよ!
場は変わり、平原。
「『ファイアーボール』ッ!」
複数の火球が、狼型のモンスター『フォルトウルフ』に向かっていく。
素早い挙動で狼を囲うと、爆発を巻き起こして狼を倒した。
「なるほど…………。流石紅魔族、か?前にギルドの連中に見せてもらった物よりも遥かに高威力だ」
「あ、ありがとうございます」
「むー…………キョウヤ、撃ってもいいですか?」
「撃っても良いが、またカエルが湧いて喰われても知らんぞ?」
横目で敵影を確認する。
ふん…………。前方30度からフォルトウルフ2体、接近目測3m。前方85度、フォルトウルフの群れ、推定6体。接近目測6m。前方120度、フォルトウルフ2体。接近目測9m。
は―――――容易い。
「『ライト・オブ・セイバー』ッ!」
詠唱を終え、刀の刀身に魔法を流し込む。
うっすらと金色に光る膜が、刀身を覆った。
1番距離の近い2匹に接近する。2匹間の距離が広い。右側の狼に向かって飛び上がり、回し蹴りの要領で左側の狼の方に右脚で蹴飛ばす。2匹はもつれあう形になり、一瞬動きが止まった。
「ギャウンッ!」
回し蹴りで流れた体を流れに沿うように90度回転し、狼の居る側を向く。左足で着地、そのまま上段に踏みこみ、首筋を切り捨てる。2匹。
「次!」
次に近いフォルトウルフ6匹の群れに突っ込む。突っ込むついでに2匹を回転しながら斬り付ける。仲間をやられ、逆上した狼複数が飛びかかってくる。前、左後ろ、右後ろ。右側面。
「甘い!」
「キャウンッ!?」
噛み付こうとする前方の狼の顎を蹴りあげながら、空中高く舞い上がる。目標を失った狼たちはもつれ合い、仲間同士で噛み付きあっていた。
そこに向け、背中に差してある杖を手に取り詠唱を始める。
アビリティスキル『高速詠唱』があるので、それほど時間は要さない。地面に落ちる前に詠唱を終えた。
「『エナジー・イグニッション』!」
青白い鬼火の様な物が狼たちの周囲へ大量に現れ、どんどんとその数を増し、大きな青い業火になって狼たちを燃やし尽くす。
そして着地。次の2匹に向かう。
「ハァッ!」
「グギャッ!?」
逆刃で1匹の頚椎を強打する。光の魔法で強化されたその一撃は、いとも容易く脊髄を叩き折った。
さぁ、残り1匹――――。
さほどの時間も要せず、大量の仲間を蹴散らした姿は、モンスターなりになにか感じ取ったのだろうか。
ブルブルと怯えた様に震えていた。
「(別に見逃してやってもいいのだが…………。)」
この狼、怯えてはいるものの、その場から立ち去ろうとはしなかった。
ふむ…………。仲間の仇討ちでもする気か?
仇討ちをしたい、だが怖い、等という心境なのだろうか。もしそうだとしたら、随分と人間に近い心理をしているんだな。
動物が人間と類似する思考を持つ事は、科学的にも証明されている。モンスターにも同じ心理が適用できるのだろうか。
「(もしかしたら、それで一儲け出来るかもな)まぁ、これも何かの縁だ。仲間と共に――――死ね」
ぶすりと。首元に刀を差し込む。楽に死ねただろう。あのまま天涯孤独で一生を過ごすより、共に死ぬ方がまだ幾分かマシだ。
ドライな様だが、まぁ俺様はもともと、邪智暴虐ではないにしろ、善人であるとは言えない生き方をしてきた人間だ。今更動物の1匹やそこら、殺した所で何かを感じることなどない。
辺りを見回すと、もう平原一帯に狼の群れは居なかった。他に数体残っていた狼も、ユウが全て蹴散らしてくれたらしい。
「す、凄い…………」
ふと、そんな感嘆の声が聞こえた。
ユウが後ろで、キラキラとした目線を向けて居る。
「あ、あの………す、凄いですね、キョウヤさん。あんな一瞬で………」
まだ慣れてないのか、目線は下がってるわ、口調はたどたどしいわ、絶妙に俺様のイラつき琴線に触れまくっている。
まぁ、俺様も大人だ。一瞬の情緒に振り回されるほど、抑えられない訳では無いが……。
「当然だ。所詮は雑魚モンスターだしな」
「で、でも、上級魔法も昨日覚えたとは思えないくらい使いこなしてますよ。本当に凄いです!」
「………まあ、そう言ってくれるのは嬉しい。ありがとう、ユウ」
少し図々しいとは思ったが、ユウの綺麗な黒髪を撫でる。馴れ馴れしいことこの上ないが、まぁこれくらいの方が最初はちょうどいいだろう…………。
「………!きょ、きょうやさんっ!?」
真っ赤な顔で、更にアワアワ度合いが増している。
む、いきなりコミュ障には早すぎるスキンシップだっただろうか。
……………いや、普通にほぼ初対面で頭を撫でるのは嫌がられるか。
なんかこっちに来てから、年下への対処がテキトーになっている。どうにもな………。
「む、すまん。そこまで嫌がられるとは思わなかった」
「い、いえ、嫌ってわけじゃ………!そ、その…………いきなりで、その。びっくりしたと言うか………!」
「ふむ。嫌ではないのか…………」
スッと手を離す。
女の髪というのは、どうしてこうも柔らかいのだろうか。
興味が無かったので知らないが。撫でていると心地よいので、無性に撫でたくなる。なんだろうか、つがいを作るための機能なのだろうか。
女というのは難しいな(構造的な意味で)。
「さてと。少しは肩慣らしも出来たし、そろそろ戻るか」
「そ、そうですね―――――」
どうにも顔が赤いユウを不審に思いつつ、帰宅の途につこうとした、その時。
「『エクスプロージョン』ッ!」
そんな声が聞こえ、爆音が鳴り響いた。
しかも爆発地点が近い。
何をやってるのだ、あのたわけは!
「『プロテクト・オブ・アイギス』!」
俺様とユウを庇うように、障壁の様な形をした盾が現れる。強烈な爆風にミシミシと音を立てていたが、どうにか耐えきった。
魔法を解除し、魔法の発生元であるメグの所に。
「…………何のつもりだ、メグ?」
「……………キョウヤ」
相も変わらずぶっ倒れたまま、メグは言う。
「………これがホントの、『リア充爆発しろ』ですね」グッ
「……………よし、ユウ」
「は、はい」
顔をヒクつかせながら、踵を返して俺様は言った。
「放って帰ろう」
「………ですね」
スタスタと帰途についた。
「あー!ま、待ってください!ごめんなさい、私だけ蚊帳の外で寂しかったんですー!謝るから!謝りますから帰らないでくださいー!」
「あ、メグ。近くにジャイアントトードの姿が」
「ひっ!ほ、ホントにドスドス音がするのは気のせいですよね!?タチの悪い冗談ですよね!?」
ドッスンドッスン。蛙のはねる音が聞こえる。
「ねーんえーき、まみーれーのー。じーんせいー、それーこーそー、おおーばかーの、まつろーかなー」
高らかにそう歌い上げる。
うむ、気分がいい。
「なんて不吉な歌を歌うのですか!じょ、冗談ですよね?キョウヤはそういう人じゃないって、私信じてますか―――――」
ガブリ。
もにゅもにゅ………。
そんな擬音が鳴り響いたのは、もはや言うまでもなかった。