翌日、俺は昨日のデートのことが未だに忘れられずに仕事をしていた。
あの後、昼飯を食って、北上の服とかを買って(大井への口止め料)、帰宅し、今日は北上とモンハンの約束をしておる。まぁ、もちろん仕事が終わってから。その為、北上が執務室に仕事を手伝いに来てくれるから、それを待ちながら仕事をしていた。
すると、ノックの音が聞こえた。
「どうぞ」
キターーーーーーー‼︎と、言いそうになった声を抑えて、あくまで冷静に返事をした。
入って来たのは、大井だった。
「………へっ?」
あ、ヤバイ、狩られる、と速攻で勘付いた。。大井はニコニコしたまま手元のボードを持って言った。
「では、昨日のデートの採点を致しますね」
「えっ、なにそれ頼んでない」
「昨日の会話の内容を盗聴器、または北上さんからの惚気話から基づいて、採点させていただきました」
「やっぱ付けてたんだ、盗聴器」
「では、発表しますね」
大井は手元の紙を読み上げた。
「デートの相手を待たせる、減点10」
「うん、まぁそれは少し納得してるよ。減点の量はともかく」
「デートの相手を差し置いて、他の女性と話す、減点20」
「うん、それも減点されるのはわかるけど減点20ってなんだよ」
「ウブ過ぎ、減点20」
「うん、だから減点のペース考えよう」
「ゴチャゴチャうるさい、減点10。ここまでが、昨日提督に言ったところです」
「あ、それ結局引かれたんだ。ていうか、もう半分切っちゃってるし」
「バイクでの移動、加点5」
「おっ、初めて加点されたよ。でもたったの5ですか?アレだけ引いて来た癖に?」
「バイクでの二人のり。減点15」
「待て待て待て。危険なのは分かるけど加点したものを3倍で引くかよ普通」
「ゲームを買った直後に帰宅の進言、減点20」
「あ、やっぱそれダメだったんだ……」
「北上さんとプリクラを撮る、羨ましいので減点80」
「80⁉︎てかマイナス張り切ってますけど⁉︎」
「プリクラでウルトラマンのポーズを二回決める、減点50」
「いや、うん。それは良いや」
「プリクラの途中、北上さんの胸を触る。減点酸素魚雷」
「どういう事だ⁉︎待て待て待て酸素魚雷ってお前何するつもりで……‼︎」
その後も、次々に点を減らされていった。
「北上さんとデートする時点で、減点867」
「と、とうとう減点5000に………。てか半分以上が私怨だったじゃねぇか……」
「以上です。何か不満な点は?」
「減点だけにってか?」
「減点一億」
「ごめんなさい!」
ち、畜生………。何されるんだ、俺………。マイナスに振り切るなんて………。
「最後に、北上さんが楽しそうに私に惚気話を語っていたので、加点100です」
「………あ、ありがとうございます」
それは少し意外だった。この女、クレイジーサイコレズじゃなかったのか?思わずお礼言っちゃったし。
ていうか、北上のやつ、楽しそうに惚気話してくれたのかぁ………。
「ふへへ」
「すこぶるキモいので今の加点は無しに」
「ごめんなさい待って下さい‼︎」
「良いですか、提督。本当なら、減点を一億も超える人なんて、私は酸素魚雷で沈めようと思っていました」
「ほとんど私怨だけどな」
「ですが、アレだけ楽しそうに北上さんが惚気ていたら、私には止めることは出来ません。私は、北上さんの幸せが全てですから」
「………………」
意外だ。他の鎮守府の大井は北上の為なら提督に魚雷をダンクシュートして来るらしいのに。
「と、いうわけで、提督を北上さんの足元に及ぶくらいまでには届くように、これからしばらくビシバシしごこうと思います」
「えっ………?」
それはつまり、協力してくれるってことか?
「まじで?」
「はい。言っておきますけど、北上さんのためですからね?提督がどうなろうとどうでも良いですが、北上さんには幸せになってもらいたいんです」
「…………」
おいおいまじかこれ。ひょっとして最強の味方を手に入れたんじゃないの?
すると、コンコンとノックの音が響いた。「スーパー北 北上様が来てあげたよー」と、声が聞こえて来た。
「では、提督。後ほど」
大井は軽く会釈すると、出て行った。………そういえば、俺に協力してなんで北上が幸せになるんだ?
++++
「で、提督。大井っちとなんの話ししてたの?」
仕事を開始して一時間、北上が喧しい。なんか真面目な顔ですごい聞いて来る。
「いや、大した話じゃないって」
「提督、大井っちと仲良いよね。昨日も、待ち合わせ場所で私ほっとかれたし」
「いや、あれはなんか大井が採点始めたからでしょ。てか仕事しようよ、モンハン後でやるんでしょ?」
「………むー」
なんでそんな真剣なのかな。怖いんだけど。すると、北上はニヤリと微笑んで、俺の腕にしがみついてきた。
「っ⁉︎」
「提督、教えてくれないと、このままずーっと張り付いてよっかなー」
「の、乗らないぞ!そんな脅しには乗らないぞ!」
「ふぅん?あ、顔真っ赤にしてる。慣れないねぇ、提督も」
し、仕事が終わらねぇええええええ‼︎このままじゃ、北上とのモンハンタイムが……‼︎
「わ、分かったよ……言うよ………」
まぁ、嘘を言わなければ何とかなる。俺は目を逸らして、呟くように言った。
「れ、恋愛相談、だよ………」
バレないよねこれ、大丈夫なんだよねこれ。
おそるおそる、北上の方を見ると、固まっていた。
「…………ごめん、聞こえなかったも。もっかい言ってくれる?」
「だから、恋愛相談」
「……………提督、好きな人いるの?」
お前だよ、お前。と、思ったが、そんなこと言えるはずもない。俺は目を逸らして、そっぽを向くと、北上は俺の腕から離れて、真っ白になって白目を剥いた。ぽえっと口から魂が出て来そうな顔になった。
え、なんか俺やらかした、かな……。俺が狼狽えてると、俺の10倍くらい狼狽えてる北上はふらりふらりと立ち上がり、執務室の出口に向かった。
「き、北上………?」
「帰る」
「えっ?ちょっ、仕事は⁉︎モンハンは⁉︎」
「知らない」
「嘘でしょ⁉︎」
北上は出て行ってしまった。