バカだ……オレってバカだ、バカだ、バカだ!バカだ!!バカだ!!すっげぇバカだ!!
何もかもオレばっかりで佐為のことをお前のことなんてって後回しにばっかりして!!
神さま!お願いだ!はじめにもどして!
アイツと会った一番はじめに時間をもどして!!
そしてアイツが消えない様に、虎次郎と同じ様にオレもオレの碁を全部佐為に捧げるんだ……。
そうした方が塔矢先生だって緒方先生だって和谷だってみんなだって……塔矢だって喜ぶに決まってる……。
オレなんかいらねェよ……。
――――その願い、確かに聴き受けた――――
誰!神さま?神さまなの!?
お願いだ!!アイツと、佐為と一番はじめに会った時にオレを戻して!!
――――承知した。しばし眠れ――――
嗚呼……神さま、ありがとう。
アイツも蘇る度にこんな気持ちだったのかな……
今度こそオレの全てを佐為の為に使うんだ。
そうした方が絶対イイんだ……
もう消えたりなんてさせないからな、佐為……
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「――ㇽ!――――――――い!!」
んー……うるさいなぁ……
「――ル!―――と―――さい!!」
オレは眠いんだよ……
「ヒカル!さっさと起きなさい!!」
「うわああ!!ってお母さん!?」
「何驚いてるのよヒカル?」
「……お母さん何か若くなった?」
「っもう、どこでそんな言葉覚えてきたのよ。そんなこと言ってもお小遣いはあげないわよ」
まさか……もしかして、本当に?
「ほら、さっさと着替えて朝ごはん食べないと遅刻するわよ」
「はーい」
今はお母さんの相手なんてしてる場合じゃない。
適当に返事をして洗面台へ走る。自分の姿をちゃんと確認しておきたい。
やっぱり!背も縮んでるし声も高くなってた!
ってことは戻ってこれたんだ!佐為と出会うあの日に!
……って、ん?なんか違和感があるなぁ……
ま、いっか。
「顔洗ったら早くパジャマから着替えなさい」
「あ、はーい……ってん?」
何でオレのパジャマがピンク色なんだよ……
この頃こんなの着てたっけかなぁ……
どうにもおかしい。
違和感の正体を探りながら部屋に戻ると、そこは壁紙とカーペットは花柄、ベッドはピンクで机とランドセルは赤、他にも本棚やクローゼットが黄色やオレンジだったりと前とは全然違う色合いの部屋で……
極め付けにはくまのぬいぐるみや花瓶など前の部屋には無かったものがあったりもした。
着替える為に恐る恐るクローゼットを開けるとそこには、ワンピースやカーディガン、スカートなどが大量にしまってあった。
「……ぎゃああああああああああ!!!」
「ヒカル!どうしたの!?」
「オレの……オレの部屋が……服が……オレは変態になっちゃったのか?」
「何を訳わかんないこと言ってるのよ。朝から叫んだりドタバタしたりしないでよね。ご近所に迷惑なんだから」
認めたく無かったがトイレに行ったらもう認めざるを得なかった。
オレはどうやら女として時を戻ったらしい。
……いいさ、あかりや奈瀬や桜野さん達だって碁は打ってたんだ。
女だからって打っちゃいけないなんてことはない!佐為に迷惑をかけることもない!
そう開き直ってオレは新しく「女としての進藤ヒカル」の人生を歩むことに決めた。
勿論碁は全部佐為に打たせる。その為にまずは今日の学校の帰りにじーちゃんちのお蔵であいつの碁盤を探さなきゃ!
…………それにしても前は女みたいでイヤだって言ってた時もあったけどいざ女になったらオレ、「ヒカル」って名前で良かったなぁ……
自分で読みにくいと感じたので改行を加えました。