まだ太陽が上がり始めてそう時間も経っていない、肌寒い時間帯の街を、
俺―――兵藤一誠は自転車で爆走していた。
何故、こんな朝早くから自転車を爆走させているかというと、
とある事情から結構な金額のお金を稼がねばならないので、
俺はアルバイトを何個も掛け持ちしてお金を稼いでいる。
食費、光熱費や高校の諸々の費用、そして治療費など。
「おっ! 兵藤君!」
「おはようございます。今日の分の新聞です」
「いつもありがとね!」
犬の散歩から帰ってきた六蔵さんに今日の分の朝刊を渡し、
ようやく今日の分の新聞配達を終わらせた。
腕につけてある時計を確認すると、現時刻は朝の五時三十分だった。
この時間帯だとまだ、母さんは爆睡中か……あの人、
一回寝たら本当に何をして起きない人だからな。
「あ、兵藤君! これ!」
自転車を漕ごうとしたときに六蔵さんから呼び止められて、
後ろを振り返ると自転車のかごに紙袋を入れられた。
中を見てみるといくつかのタッパが入っており、取り出してみると昨日、
作ったであろうカレーライスが並々と入れられていた。
それに結構な大きさのタッパに入れられているからかなりの量だ。
「昨日、食べようと思ったんだが孫から外食に誘われてね。
結局、食べなかったから持って行きなさい」
「……よろしいんですか?」
「構わんよ。君も大変だろ。君のお母さんには昔からよくしてもらっているし、
近だけの量はワシにも食べきれん。作り置きの分はちゃんととってある。
これは昔、よくしてもらったそのお礼だ」
「……感謝します」
ニコニコと笑っている六蔵さんに深々と頭を下げ、俺は感謝の意を示して、
次のバイト先へと向かった。
数時間後、新聞配達のバイトの後にあるコンビニのバイトを終わらせた俺は、
学生が歩く道を逆走して家へと向かっていた。
本来なら俺も周りの学生と同じように学校へ向かっている時間帯……でも、
とある事情から俺は登校義務を免除されている。
登校義務免除の条件――――それはどんなテストでも満点を取ること。
学力テスト、実力テスト、全国模擬テストなどですべて、
満点を取れば登校義務を免除するという全国でも珍しい制度を利用した。
その結果、学園史上初の登校義務免除生となった。
本当だったら高校なんて行かずにバイトばっかりしていればいいんだが母さんが、
『せめて、高校は行きなさい』と言われ、もともと頭の出来はそこらよりも良かったことから、
入学試験を全教科、満点を取り、首席で入ったので授業料などはすべて無料になった。
まあ、教科書代、制服代、そして細かいお金などはかかってしまったが。
「ただいま」
「イッセ~」
家に入ると母さんの声が、二階から聞こえてきた。
俺は服もそのままで、二階へと上がり、母さんの寝室に入ると車椅子に、
もたれかかるような格好の母さんの姿が目に入った。
「……いつも、俺が帰ってくるまで待ってっていってるでしょ」
「いやね~。いつもイッセーの手を借りちゃダメかなって思って」
申し訳なさそうにそう言う母さんの両ひざの裏側に手を回し、
首元にも手を回して持ち上げ、車いすに乗せた。
「いつも、ごめんね」
「良いよ。気にしないで」
そう言い、母さんが乗っている車いすを持ち上げ、階段を下りていく。
「イッセー。そう言えば、今日学校じゃないの?」
「……まあ」
「今日はお手伝いさんが来てくれる日だからいってらっしゃい」
「…………分かった」
お手伝いさんが来てくれるまで母さんのそばにいた後、
すぐに俺は身支度をして学校へと向かった。
久しぶりに着た制服の着心地に戸惑いながらも久しぶりに歩く通学路を進み、
学校へとたどり着くや否や、周囲から何やらクスクスと小さな声で、
笑っているような声が聞こえた。
これがただの笑いなら良いんだが俺の場合は嘲笑だ。
そんな声を気にも留めず、外靴のまま教室へと向かっている最中にも、
先ほどと同じものが聞こえてくるがそれも無視しながら教室へと入った。
「兵藤~。今日はママとイチャイチャしなくていいのか?」
「バ~カ。昨日はやり過ぎて気失ってんだよ」
教室に入るや否や、馬鹿どもが俺を茶化しにやってきた。
どうも、俺が学校に来ていない理由が歪曲してママと離れたくないからというものになり、
俺が重度のマザコンになっている。
毎度、無視しているんだが逆にそれがあいつらを調子に乗らせている要因らしい。
「は~い! 邪魔邪魔!」
「バカは退いてろ!」
すると、後ろから茶化しにやってきた奴らを押しのけて二人が俺の傍にやってきた。
学校では超絶に変態だと噂されている松田と元浜。
なんでも女子が着替えているところに必ずいるとまで言われ、
忌み嫌われているエロすぎる二人。
別に俺は嫌いではないんだが……。
「イッセー! 是非、お前に見て欲しいものがある!」
「ひっ!」
ドン! と俺の机の上に置いたものを見た女子が恐怖に顔を引きつらせ、
俺の周りからズザザザ! と一斉に後ろに下がった。
俺の机の上に置かれたもの……所望、世の男性があまりある性欲を、
発散させるために作られた18歳以下は見てはいけない……ストレートに言えばAVだ。
「是非、これを見てイッセーも俺達の世界に」
俺は卑猥なビデオ群を鷲掴みにして窓の外に放り投げようとすると、
二人が涙を流しながら俺の腕に飛びかかってきた。
「あー! 何すんだ! これ、限定品なんだぞ!」
「何故、十八禁の物を買っているかについては何も言わん。流石に学校に持ってくるな」
「これを見ればイッセーも変わると思ったんだが」
ブツブツ言いながら二人は卑猥なビデオ群を持っていき、
二人でエッチで熱い話を展開し始めた。
登校義務を免除されている俺が何故、今日学校に来たか……それは、
校長が流石に毎日こないのはダメだから一年の間に五回は来いと言われたからだ。
正直、来なくてもよかったんだがな……。
「何か用か」
窓の外をボーっと見ていた俺に近づいてくる奴の気配を感じ、
そう言いながらそっちの方を向くと驚いたように微笑を浮かべた男子が立っていた。
「気配でわかるもんなんだね。僕は木場祐斗。放課後、
僕と一緒に部長……リアス・グレモリーさんのところに来てほしいんだ。
名前くらいは知ってるよね?」
リアス・グレモリ-。学園で一、二を争うほどの美貌らしく、
その髪は紅、見るものを全て魅了するらしい……が、
学校にほとんど来ていない俺は彼女の姿を写真などでしか見たことがない。
確かにそこらにいる女子よりかは美人だとは思うが……心を鷲掴みにされるかと言われれば、
NOと即答できる。
「行く必要はない。俺は忙しいんだ」
「あるさ。むしろ、君には義務がある」
「……分かった。行ってやる」
そう言うと笑みを浮かべながら俺に待ち合わせ場所を言ったあと、
木場祐斗とかいうやつは教室中の女子たちからの黄色い声援を受けながら出ていった。
あいつも学校の中で一、二を争うイケメンだといわれている。
「……俺に会わなければならない義務があるのは父さんに会うことだけだ」
誰にも聞こえないようにそう呟いた後、俺は机に突っ伏して眠りについた。
「……寝過ぎたか」
ふと、顔を上げると窓から入ってくる太陽の光の色が変わっており、
教室にはすでに俺以外に誰も生徒はおらず、
外からクラブ活動をしているらしい活気の良い声が聞こえてくる。
「……帰るか」
無論、俺が約束した場所へ行くはずもなく木場とかいう奴に出会わないように、
周囲に注意を配りながら歩き、近くの窓から飛び降りて、外へと出た。
「兵藤君」
「何か御用ですか? 会長」
いざ、帰ろうとしたときに声をかけられたが後ろを振り向かなくても、
俺に声をかけた奴が誰なのかはその声を聞くだけで分かった。
駆王学園生徒会長……女子生徒からの人気はリアス・グレモリーとかいう奴と、
同じくらいらしいが二人の人気の理由は全く違う。
リアス・グレモリーはその美貌と誰にも優しいことで、
生徒会長はその美貌で誰も寄せ付けない氷のような冷たい雰囲気が、
女子からすればカッコ良く見えるらしい。
会長が廊下を歩けば女子は皆、敬意を評して頭を下げる。
「いささか、先ほどの行為は見逃せませんね」
「少々、急ぎの用があるもんですから」
「貴方の事情は理解はしていますがいくらなんでも二階から飛び降りるという、
危険極まりない行為はしないでください。それで怪我をすればもともこもありません」
「ソーナの言う通りよ」
第三者の声が聞こえ、そちらのほうを向くと朝に教室に来た木場って奴と、
噂の一、二を争うほどの美人様のリアス・グレモリーがいた。
……あの二人の感じだとどうやら俺が逃げないかどこかからか監視していたらしいな。
「イッセー。放課後に来てって言ったのに」
「行く義務はないし俺にはやらなきゃいけないことが」
「大丈夫。そんなに時間はとらせないから」
「……十分で終わるなら」
「決まりね。迷惑をかけてごめんなさい、ソーナ」
「構いません」
そんなわけで俺は木場とリアス・グレモリーに連れられ、
今は使われていない旧校舎へと案内され、一つの部屋へと入れられると地面には大量の魔法陣、
壁のいたるところには不気味な髑髏や紙が長すぎて顔が見えない人形、
そしてそこらじゅうに蝋燭なんかが立てられて物々しい雰囲気が流れていた。
……とてもじゃないが高校生が放課後に行う活動の場所とは思えないな。
「座ってちょうだい」
そう言われ、ソファに座ると対面する形でリアス・グレモリーが座り、
その後ろに待機する形で木場が立った。
「兵藤一誠君。貴方は命を狙われています」
「…………んじゃ」
「まあまあ! 話しは最後まで聞こうよ!」
あんまりにも馬鹿らしい話しに帰ろうとした俺を、
いつの間にか俺の後ろにまわっていた木場が静止させた。
こいつ、いつの間に俺の後ろに……。
無理やり気味に木場に座らされ、小さな笑みを浮かべつつも再び話し始めた
「続けるわね。この世界には貴方達人間が普通に暮らしていれば全く気付かない事実があるの。
その中の最たるもの悪魔、天使、堕天使の三種族。人間界ではそれら三種族は、
空想上の存在として語られているけど……その真実は違う。
私を含めたオカルト研究部に属している人物は皆、悪魔よ」
そこまで言いきった直後、木場とリアス・グレモリーの背中から黒い一対の翼が生えた。
なんというか……驚きを越してもう冷静になることしかできなかった。
「この世界にはセイグリッド・ギアと呼ばれるものが存在しているんだけど、
その中でもとびっきり強いものが貴方の中に宿っているかもしれない」
「そうですか、じゃあ宿っていません。はい論破」
「……それでね」
続けるのかよ。
「それを潰すために堕天使が貴方を殺そうとしているの」
「よ~く分かりました。あなた方の脳の中はお花畑ということがよく分かりました。
バイトの時間なのでそろそろ帰ります。二度と近づかないでください」
そう言い、二人の返事を聞かずして俺は部室から出た。
「どうします? 部長」
「ん~。なかなか手ごわいわね。一応、朱乃と小猫に見張らせようかしら」
「その方がよろしいかと。堕天使側も彼を殺そうと必死になるでしょうから」3
こんばんわ。一応、二巻の内容までお試し投稿してみて
受けが良ければ連載を続けます。