九日間を鍛錬を終え、一日休みを入れ、体力も完全に回復した決戦当日の今日。
俺はベッドの上で座禅を組み、心の奥深く―――――深層心理と呼ばれる場所へ、
自らの精神を沈み込ませて、目的の物を探していた。
――――――数日前、夢に出てきた赤いドラゴン。
奴には聞きたいことがたくさんある。
その目的を果たすべく、海のように深い深層心理を潜り続けていると、
今までの速度が減速され、ゆっくりと俺の身体が地面に落とされた。
止まったといっても本当に今、俺の脚が付いている場所が地面に当たる場所なのか分からない。
全てが暗く、上を向いても下を向いても同じ場所を見ているような感覚がして、
本当に自分はキチンと立っているのかも疑わしい。
「……来たか」
とんでもない量の魔力を感じた直後、ボボボボ! と炎が集まっていき、
その炎はやがて巨大な形へと変化していく。
炎が爪、牙、翼、尾、足へと変わっていき、それぞれのパーツが出来上がるとそれぞれを、
つなぐかのように炎が線のように伸びていき、
輪郭を描いていくとどこからともなくドラゴンの咆哮らしきものが聞こえ、
その音によって風が生み出され、俺の髪型を崩していく。
やがて全ての輪郭が描かれ、今まで閉じていた目が開かれ、そこに光が灯った。
「会いたかったぞ。ドラゴン」
俺の目の前には以前、夢の中で見た巨大な赤いドラゴンが佇んでいた。
『貴様がここに何の用だ』
「色々あるんだが……お前はなんだ」
『貴様に語ることなど何もない。消えろ』
「うわっ!」
「……強制的に外へ追い出されたか」
目を開けるとそこはすでに元の世界だった。
時間は夜の十時。決戦が開始されるのは真夜中の午前零時、
部室への集合時間は開始時間の三十分前。
だから、あと自由にできる時間は一時間と三十分ほど。
恰好は駆王学園の学生服。
部長曰く動きやすい格好なら何でもいいと言われたものの、恐らく服なんてものは戦いの最中に、
血まみれになったり、破れたりすることが考えられるので比較的、
変えの準備がしやすい学校の制服になった。
「イッセーさん。入っていいですか?」
「ああ、入れよ」
アーシアの声がドアの外から聞こえ、
了承すると部屋にシスターの服を着たアーシアが入ってきた。
以前までは毎日のように来ていたシスターの服……今は悪魔になり、
その時以来ずっと来ていなかった。流石に十字架はしていないようだが……。
「部長さんが一番落ち着く格好で来いとおっしゃいましたので……私は、
この服装が一番落ち着くんです」
そう言いながら、アーシアは俺の隣に座り肩に自分の頭をコテッと乗せて、
全身を預けてきた。
俺の手を握っている彼女の手は少し汗ばみ、小さく震えていた。
今まで戦いとは無縁のところで育ってきたアーシアがいきなり、
戦場に出るとなれば、震えるのも仕方がない。
「怖いです……イッセーさんの隣にいても震えてしまうんです……でも、
私は……頑張ります! イッセーさんという最後の希望があるから」
最後の希望……俺はそんなに大層な存在じゃないんだがな。
そんな気持ちを隠すかのように俺はアーシアの頭を優しく撫でた。
「時間だ。行くぞ」
「はい」
『コネクト。プリーズ』
集合の時間になり、目の前に旧校舎の部室へと繋げた魔法陣を展開し、
彼女とともに魔法陣を潜り抜けると既に部員の全員が集合していた。
皆、各々その時が来るまで暇を潰していた。
部長と副部長の二人は優がに紅茶を飲み、木場は手甲を装備し、
脛当てをつけ、剣の状態の最終チェックを行い、
塔城はオープンフィンガーグローブを両手につけ、ただじっと時間が来るのを待っていた。
いつもの軽い雰囲気ではなく、重く、緊張の色を感じさせる雰囲気が部室の中に充満していた。
そして、決戦開始十分前になると床に魔法陣が現れ、
そこから銀髪メイドのグレイフィアさんが転移してきた。
「皆様、準備はよろしいでしょうか」
その言葉に誰も声を出さずにただ、グレイフィアさんをジッと見つめた。
その視線で準備完了の念を感じ取ったのか、グレイフィアさんは一度、首を縦に振り、
俺たちに魔法陣の上に乗るように言った。
「では、試合会場へと転移いたします」
その一言ともに魔法陣が一層、輝きだした。
輝きがはれ、俺達の目の前に広がっていた光景は転移する前と何ら変わりない部室だった。
『皆様。このたびグレモリー家と、
フェニックス家のレーティングゲームにお越しいただきありがとうございます。
このたび審判(アービター)役をさせていただきますグレモリー家使用人、
グレイフィアであります』
校内放送からグレイフィアさんの声が聞こえてきた。
『両陣営転送された場所が本陣となります。リアス様の本陣が旧校舎のオカルト研究部部室、
ライザー様の本陣が新校舎の生徒会室となります。
兵士の方はプロモーションする際は相手の本陣まで赴きください。
なお、このゲームの制限時間は人間界の夜明けまでです。それでは開始です』
放送からサイレンの様な音が響き渡り、レーティングゲームの開始を告げた。
「じゃ、皆。これを耳につけて」
部長から貰ったものは小型のイヤホンマイクを渡された。
「作戦に関してはそのイヤホンマイクを通じて随時、報告するわ。
まず、序盤は体育館を占拠するわ。ここの取れば新校舎までの道を確保することができる。
イッセー、小猫。お願いできるかしら」
俺は何も言わず、首を縦に振った。
「じゃ、頼んだわよ」
部長に激励を貰い、塔城とともに旧校舎の玄関から抜け出し、
体育館の真正面からではなく、裏側の入り口から入る。
ドアノブを回すと鍵はかかっておらず、簡単に開いた。
「そこに隠れてるのは分かってるわよグレモリー家の下僕さん!
ここに入ってくるのを監視してたんだから!」
そんなことを考えていると体育館から女性の甲高い声が聞こえてきた。
どうやら、俺達が侵入してくるのは筒抜けだったらしい。
「どうするの」
「……バレている以上、入ります」
体育館の中へと入ろうとする塔城の腕をつかみ、静止させた。
「正直に正面から行っても面白くない。ここはひとつ、不意を突こうじゃないか」
『コネクト。プリーズ』
空間をつなげた魔法陣を展開させるが、
視界に入っている場所には魔法陣は見当たらない―――――そんなことを思っているらしく、
塔城はキョロキョロと見渡していた。
「天井に繋げた」
ボソッと言うとようやく気付いたらしく、目を見開いた。
「行くぞ」
「はい」
俺たちは同時に魔法陣を潜り抜けるとそこはすでに
体育館の天井―――つまり、数メートルの高さから落ちるのと同じ。
「さあ、ショータイムだ」
「上よ!」
チャイナドレスを着た女がいち早く気付き、
他の三人の下僕も遅れて上を見るがその時には既に俺たちはいない。
『チョーイイネ! キックストライク! サイコー!』
「ぎゃっ!」
棒らしきものを持った女の背中に炎を纏った蹴りが加えられ、
そのまま壁に激突するまで吹き飛んで行った。
「ミラ!」
「よそ見禁物」
チャイナドレスの女の背後から東城が殴りかかるがギリギリのところで、
チャイナドレスが攻撃をかわした。
上からの奇襲と見せかけ、全員が上を見た瞬間にそれぞれの相手の近くに空間をつなぎ合わせ、
背後からの攻撃。これで一体は倒した。
「こんのー!」
「ミラの仇ー!」
『ウォーター・プリーズ。スイー・スイー・スイー』
『リキッド。プリーズ』
直後、チェーンソーが俺を切り裂くが切り裂いた部分が水となり、
またくっついて元の肉体に戻った。
「な、何これ!?」
「こんな魔法あり!?」
あり得ない事態に驚きながらも双子らしき女たちはチェーンソーで何度も俺を切り裂いてくる。
そのたびに俺の身体が水となって散っていくがそのたびにまた再生される。
『バインド。プリーズ』
「うなぁ!? つ、冷た!」
双子の背後から水で出来た鎖が雁字搦めに拘束し、二人を地面に貼り付けの状態にした。
向こうの方はどうなっているかと視線を送ると既に勝負は決していたようだった。
腹部を抑え、動けないでいるチャイナガールに余裕シャキシャキの表情の塔城。
『イッセー、小猫。そこから立ち退いてちょうだい』
その知らせを聞き、俺たちは理由を聞かずに一目散に出口へと向かって走り出した。
「逃げる気!? ここは重要拠点なのに!」
センター……そんな感じの重要な場所らしいが部長の命令に従い、
相手に目もくれずに俺達が体育館の外へと出た瞬間、
凄まじい爆音と雷光が迸り、体育館が一瞬にして瓦礫の山と化した。
連投です