ハイスクールD×D inウィザード   作:kue

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第百七話

履歴書を貰った日から数日後の夜、ついにその時がきた。

純血で高位の吸血鬼が特使として派遣され、オカルト研究部の部室へ、

向かっていると連絡を受け、旧校舎でその特使とやらを待っている間、

俺達はオカルト研究部の部室で普段通りの状態で待っていた。

悪魔側からは俺たちと会長、そして副会長が来て堕天使側からはアザゼルが合流し、

そして教会側からも誰かが来るらしいが……。

その時、扉が開く音が聞こえ、そちらへ視線を向かわせるとベールを深くまで、

かぶったシスターが部屋の前で立っていた。

……あれが教会から送られてきたメンバーか。

と、その姿を見るや否やゼノヴィアは俺の背後に隠れるようにして入り込んだが、

ツカツカと静かに歩いてきたシスターは俺の後ろにいるゼノヴィアの耳を引っ張った。

「ゼノヴィア。上司が来るや否や殿方の後ろに隠れるとはどういうことですか?」

「イダダダダ! だ、だってシスター・グリゼルダはしゃべれば小言ばかりだろうし」

……グリゼルダ……聞いたことがある。

名前をグリゼルダ・クァルタ―――――女エクソシストの中でも五指に入るほどの強さを持ち、

ガブリエル様のハートのクイーンでもある人物。

それほどの地位が高い者をこちらへ送ってきたということは教会側も今回の話し合いを、

重く受け止めているということ……今度こそ来たようだな。

その時、部室に冷たい感じが漂った。

木場が立ち上がって迎えに行き、数分ほど経ってからドアが開いて、純血の吸血鬼が入ってきた。

「ごきげんよう。私はエルメンヒルデ・カルンスタイン。ご招待いただき感謝いたしますわ」

御姫様が着るような衣装に身を包んだ少女の背後には二人の男性がスーツを着て立っていた。

曰く、吸血鬼は十字架や聖水に弱く、流水を嫌い、ニンニクも嫌う。

そして鏡に影が映らず、招待されたことのない場所には入ることができず、

己の棺で眠らないと自己回復が出来ない。

「お話をする前に……ウィザード。

この場での発言権が貴方にもあることをお教えいたしましょう」

「珍しいな。何故、発言権を?」

アザゼルはエルメンヒルデを軽く睨みながらそう聞いた。

吸血鬼は地位のない者の発言には一切耳を貸さない……それが奴らの本質ともいえるもの。

「彼はウィザードです。我々は地位がある者の意見は聞きますもの」

「そうか……単刀直入に聞く。一体、何が起きている」

「吸血鬼には二つの勢力があります。カーミラとツェペシュ。

後者のグループに聖杯であるセフィロト・グラールを宿したハーフの吸血鬼が出てきたのです。

彼らはその力により滅びにくい体……吸血鬼の弱点がないに等しい体を手に入れました。

それならば我々も何かしようとも思いませんわ……ですが彼らは私たちに攻撃を仕掛けてきた。

我々の意見は……眠っていた力が目覚めたギャスパー・ヴラディの力を借りたいのです」

ギャスパーの眠っていた力を使って、

吸血鬼サイドで起きている争いを止めたい……それが奴らの意見か。

ハァ。なんで、俺達の代はこんなにも面倒くさい出来事が次々と起きるのかね。

そんなことを思っているとエルメンヒルデがある一枚の紙を目の前のテーブルに静かに置いた。

遠めだが見えた……要約すればカーミラ側の和平だ。

今まで抗争状態が続いていた吸血鬼との和平を結ぶことができれば

それはかなりの手柄になる……だが、面倒なのはそれを拒否した時だ。

せっかくのチャンスを蔑にしたということでリアスだけではなく、

兄のサーゼクス様の信用さえも傷つく恐れがある。

それを見越しての和平か……ずる賢い連中だ。

「……聖杯を持ったのはヴァレリーですか」

ようやく言葉を吐きだしたギャスパーにエルメンヒルデは首を縦に小さく振った。

「……ぼ、僕……僕、行きます! 行って吸血鬼の争いを止めてみせます!」

「……この子を派遣する前に主たる私がヴラディ家とテーブルを囲むわ。

現状をこの目で見ておきたいからね。構わないわよね?」

「構いません。ヴラディ家の橋渡しは私共がいたしましょう。

今回は招待していただき感謝いたしますわ。

この地に従者を置いておきますので用があればそちらに。それでは」

そう言い、エルメンヒルデはこの旧校舎を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

その数日後の深夜、兵藤家の地下に常時展開されている巨大な転移魔法陣にリアス、

木場、アザゼルの三人が乗っていた。

ここからルーマニアまで転移魔法陣で転移し、そこから小型ジェット機をチャーター、

さらにそこから車で山道を登っていくらしい。

よほどへんぴなところに奴らの王国はあると聞く。

残った俺達は一時的に俺が主としてグレモリーチームを統括することが決まっており、

会長もサポートしてくれる。

「イッセー、行ってくるわ」

「ああ。お前がいない間のこの街は任せておけ」

「ええ……じゃ」

朱乃が巨大転移魔法陣を発動させ、地下室をまばゆい光が一瞬だけ支配したあと、

三人は転移されていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その数時間後、朝日が昇り学生たちが教室で勉強をしている時間帯、

俺は駆王学園の屋上にてその時を待っていた。

既にあのことは会長を含めた関係者全員に流しており、

それに対する準備も全て万全。だが、一つ気になることがある。

この街を覆っている結界は相当なものだ……気づく気付かれない以前に、

結界を壊すことができるのはそんなに数はいない……壊すだけでなく俺以外のやつらに、

気づかせないレベルで破ることができるのは相当の実力の奴だ……。

だが俺が知る中ではそいつらは今は死んだか所在不明の状態だ。

曹操の可能性もあったがあれ以来、ヴァーリ達も遭遇していないという報告から何かあったか、

それとも本当にどこかに飛ばされたのか。

フェニックスという選択肢も考えたが太陽の中から出れば俺が反応する……それにあの時、

一瞬だけ感じた魔力はあの人に似ていた。

「来たな」

俺の視界にはグラウンドに入ってきたローブを着こんだ魔法使いが三人。

どうやら俺という存在をかなり甘く見ていたらしい……お仕置きだ。

「さあ、発動だ」

俺がパチンと指を鳴らすと校舎全体を覆うほどの魔法陣が一瞬だけ展開され、

俺とグラウンドに入り込んできた三人の魔法使いがいた場所はまったく関係のない荒れ地になった。

三人は相当、焦っているのか突然変わった景色に驚きながら周囲を見渡していた。

新たな魔法は相手に幻影を見せるイリュージョン。駆王学園の幻影を作り出し、

相手が入ってきたと同時にテレポートを発動させ、戦闘ができる人気がない場所へと転移させた。

今頃、本物の学園は不審者が入ったということで、

不審者に扮した木場が大勢の生徒の前で拘束されているだろう。

それで一般生徒は帰宅させられているはずだ……俺の財布から諭吉さんが何枚か、

飛んだのはいたしかたのない代償だろう。

「てめえ何しやがった!」

「敵に魔法の内容をぺらぺら話す気はないんでね……とりあえずお前たちは俺が潰す」

『フレイム・プリーズ。ヒー・ヒー・ヒーヒーヒー!』

「さあ、ショータイムだ」

一人の魔法使いが後ろに下がり、それをカバーする形で二人が前に上がって、

二人同時に火球を放ってくるがそれらは俺に当たる前に籠手に吸収され、消滅した。

……どうやら魔法使いの中でも下位のレベルらしい。魔力が上がった感じがしない。

「出来たぞ!」

そんな声が聞こえ、後ろに下がった奴が大きめの魔法陣を展開すると、

そこから真っ白な体毛を生やし、鋭い二つの牙を出しているライオンのような獣が出てきた。

「なるほど。俗に言う召喚魔法か……俺もそう言う類の存在は体の中にいるんだ。遊んでやってくれ」

『ドラゴラーイズ・プリーズ!』

頭上に赤色の魔法陣を出現させるとそこから膨大な量の炎が放出され、

その放出された炎が形を変えていき、一匹のドラゴンが姿を現した。

『あれが相手か』

「あぁ。気楽に行け」

『ふん』

面白くなさそうに息をはいたドラゴン……いや、ドライグは翼を羽ばたかせて近づき、

ライオンの頭を咥えてそのまま上空へと上がった。

「よそ見か」

「ごあぁ!」

あり得ないと言いたげな顔をしている奴に近づき、そのまま腹に炎を纏わせた拳を突き刺し、

殴り飛ばすと距離を取ろうとした二人の魔法使いをバインドで拘束し、

コピーで分裂した後に同様に殴り飛ばして意識を刈り取った。

俺の戦いが終了すると同時に上空から地面に何かが落ちてきた。

それは首のないライオンだった。

「エグイことをする……お疲れさん」

疲れてもないわと言いたげな表情のまま、ドライグは炎に戻って俺の中に帰っていった。

「……ん?」

帰ろうとしたとき、拘束された状態で倒れている魔法使いの耳元に、

連絡用の魔法陣が展開されていた。

『繰り返すぞ。目的は達成された』

目的……レイヴェル達か!

「あ~。もしもし」

『だ、誰だてめえ!』

「一つ言っておく……俺の後輩に手を出したお前たちに作戦成功という四文字は出てこないと思え」

俺は魔法陣を握りつぶし、大至急会長のもとへと転移した。




すみません。更新順番間違えました。
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