瓦礫の山と化した体育館の上空に巫女服を着た副部長がうっとりとした表情で、
電流が迸っている指を一舐めした。
どうやら体育館ごと相手を吹き飛ばすというのが部長が考えた作戦らしい。
『どうやらうまくいったみたいね』
イヤホンから部長の声が聞こえてくる。
『さっきの一撃は朱乃の最大の一撃でね。あれをもう一回使うには少し時間を、
置かないといけないの。数も相手の方が上。
だから朱乃の回復が済み次第私たちも前に出るわ』
「塔城」
「え?」
『ディフェンド、プリーズ』
塔城の腕を掴んでこっちに引き寄せようとしたが一瞬遅く、
突然、彼女が爆発し、俺たちに向かって何発もの火球が放たれた。
俺と副部長に関しては間にあったが塔城は間に合わなかった。
「テイク……私としては雷の巫女も魔法使いも倒したかったんだけど」
声が降ってくる方へ首を向けると副部長よりも高い位置にフードをかぶり
魔導師の格好をしている女性が浮いていた。
塔城に視線を向けると既に彼女は光に包まれており、転送が行われていた。
「もっと……お役に立ちたかった」
「大丈夫ですわ。貴方は十分に活躍してくださいました。
後はゆっくり休んでください」
一瞬、小さな笑みを浮かべた後、完全に塔城は転送されてフィールドから消え去った。
『リアス・グレモリー様のルーク一名リタイア!』
「私たちは駒を犠牲にしても何らダメージはない。でも、
あなた達は少しでも人数が減れば致命傷。さ、とっとと片付けます!」
相手が杖をこちらへ向けた瞬間、夜空を切り裂くように俺たちと、
相手の間に雷がいくつも落ちてきてグラウンドの砂を大量に空中に巻き上げ、
視界を完全に潰した。
「ここは私に任せて行ってください」
「任せた」
「逃がすとでも!?」
魔術師の格好をした女の声が聞こえるが、その直後に雷の爆音が鳴り響き、
激しい戦闘が始まったことを俺に知らせていた。
俺はその爆音に一切振りむかず、次の目的地へ行くために、
木場のもとへ空間をつなげた魔法陣を展開し、
そこをくぐると物置のような場所に隠れている木場の近くに出た。
「待ってたよ。小猫ちゃんは残念だったけど」
「私の名はカーラマイン!」
木場の話声を遮るように女性の甲高い声が聞こえ、
何事かと二人して小さな隙間から外を見ると短剣を持ち、
甲冑を身に纏った女性が運動場のど真ん中に立っていた。
「こそこそと腹の探り合いをするのにはもう飽きた!
いざ尋常に勝負しようではないか!」
良いように捉えれば正々堂々でコソコソするのは嫌いな性格……悪くいえば、
頭脳まで筋肉でできている単細胞。
そんなに強者と戦いたいのか、ただ単に戦いが好きなのか、
それともあの大剣で人を切りたいだけのヒステリックな奴なのか。
様子を見る限りでは最初のだと思うけどな。
そして、木場の性格を考える限りあいつは――――。
「あそこまで言われちゃ黙ってはいられないよ」
予想どおりの木場の行動に内心呆れながらも、木場についていき、
物置から外に出ると甲冑の女が嬉しそうにニンマリと笑みを浮かべた。
「僕はリアス・グレモリーの眷属、ナイトの木場祐斗」
「お前みたいな剣士がいてくれて嬉しく思うぞ。
堂々と真正面から来るのは正気の沙汰じゃないからな」
甲冑を着た女は短剣を木場に切っ先を向けると短剣に炎が灯り、
タダの鉄の剣だったのが炎の剣に変わった。
木場も黒い刀の切っ先を女に向けた。
一瞬の沈黙――――刹那、二人の姿が消え、金属がぶつかり合う音と火花が散った。
「貴様のような兵と戦えて私は嬉しいぞ!」
「僕もですよ!」
鍔迫り合いを続け、さらに高速移動でその場から消え、
また別の場所で鍔迫り合いを繰り広げ、また消えの繰り返しで、
次第にグラウンドの土が二人の移動の際して巻き上げられ、小さな砂嵐ができていた。
「あのような暑苦しい様は嫌いですわ」
後ろから見下したような声が聞こえ、振り返るとこの場には不相応なドレスを着て、
長い金色の髪を二つに縦に巻いた女と顔の半分を仮面で隠した女が立っていた。
あの金髪女……どことなく、チャライ男に似ている。
「兵藤一誠だったっけ?」
「ああ。おれを倒しに来たか?」
「今の状況でそれ以外の理由があるかい?」
確かに仮面の女の言う通り、この状況で俺を倒しに来た以外の理由があるはずがないか。
「その前に、そいつはなんだ。戦う気がないように見えるが」
「ああ、彼女は特別でね。彼女――――レイヴェル・フェニックス様は主の妹さ。
さあ、そんなことより戦おうじゃないか!」
『ウォーター、プリーズ。スイー・スイー・スイー』
『リキッド、プリーズ』
相手の拳が俺に当たる直前、二つの魔法を発動させ、
俺の身体を水へと変化させ、相手からの攻撃が当たった個所が水となり、
攻撃を流していく。
「……報告は受けていたが見たこともない魔法を使う」
相手は一度、距離を取って俺の出方を窺う。
一瞬の沈黙―――――刹那。
『バインド。プリーズ』
俺の背後から四つの青い魔法陣が排出され、相手を雁字搦めに拘束しようと伸びていく。
「くっ! 君は魔法使いの家系なのか!?」
「いいや、普通の人間だ」
『コネクト。プリーズ』
「なっ!」
鎖が伸びている先に魔法陣を出現させ、
さらに相手の周囲に四つの空間をつなげた魔法陣が出現し、
そこから青色に輝く鎖が伸びて相手を拘束した。
ほんと、この空間をつなげる魔法は使いやすい。
『チョーイイネ! キックストライク! サイコー!』
籠手からの音声が魔法の内容を遠まわしに言いきる前にすでに、
俺の脚は拘束されているやつにめがけて放たれようとしていた……が、放たなかった。
「……何故、何もしない」
「今の一瞬の攻防で分かった。私では君には勝てないと……やれ」
そういった直後、奴の腹部に蹴りが入れられ、
ブチブチと鎖を引きちぎりながら後方へと飛んでいき、
校舎の壁を粉砕しながら吹き飛んで行った。
『ライザーフェニックス様のルーク一名、リタイア』
あと何人いるかは知らんが……その前に後ろか。
振り返ると未だに高速移動をしながら鍔迫り合いを二人は繰り広げていた。
若干、木場が押しているように見えるがまだまだどちらが勝つかは分からない。
その時、後ろからぞろぞろと魔力がこっちに近寄ってくるのをかんじ、
振り返ると残りの下僕どもが全員集まって来ていた。
「いくら、貴方が見たことのない魔法を使おうとも数の前では無意味ですわ。
それを今、証明して見せましょう。シーリス、ニィ、リィ。
相手が魔法陣を展開した時、たがいに背を合わせ、それぞれの死角をカバーしなさい」
「にゃ」
「にゃにゃ」
「御意」
ワイルドな出で立ちで背中に大きな剣を背負った女性と、
獣耳を頭部にはやした女二人が俺へと迫ってくる。
「まずは私から」
巨大な剣を片腕で持った女がゆっくりと俺に近づいてくる。
「貴様の魔法はすでに見切っている。
空間をつなげる魔法陣にさえ気をつければ対処できる」
「戯言は良い。かかってこい」
その一言に激高したのか額に青筋を走らせ、
ナイトの特性である高速移動で俺の視界から一瞬で消え去った。
が、魔力が消えたわけではないので魔力の位置を頼りに奴の居場所を探り、
俺の後ろに魔力を感じた瞬間、頭を下げるとそこを剣が通り過ぎていく。
「私たちもいるもんね!」
獣耳を生やした女二人が殴りかかってくるがそれを両手を使い、
いなしながらも斬りかかってくる女の剣も避けていく。
「な、なんで当たらない!」
徐々に奴らの顔に焦燥の色が見えてきた。
焦燥の色が濃くなればなるほど、相手の攻撃にも焦りから丁寧だったものが荒くなっていく。
それに伴い、隙も多くなる。
「シーリス! 二ィ、リィ! 落ち着いて攻撃しなさい!」
「で、でも一撃も」
剣の一撃を魔法陣の壁で弾いた後、獣耳の女の腹部を強めに殴り、相手を飛ばした。
そして、剣を持った女の突きを横に少し飛んだあと、魔法陣を展開し、
そこへ剣が向かっていく。
「しまっ」
相手が剣を引こうとしたときに既に遅く、魔法陣に深く剣が突き刺ささったと同時に、
後ろから肉に何かを突き刺したような音が聞こえ、小さな悲鳴が聞こえた。
「自らの剣で消えろ」
「こんの!」
「ニィ! リィ! やめなさい!」
『コピー、プリーズ』
魔法陣を上に展開すると俺の右隣りに魔法陣が現れ、そこからもう一つの俺が現れた。
「ふ、二人!?」
『チョーイイネ! キックストライク! サイコー!』
同時に魔法を発動し、右足に水の魔力が集まっていき、
こちらへ突っ込んでくる相手へ向かって跳躍し、
回し蹴りを放つと二人同時に首元に蹴りを喰らい、同じ方向へと吹き飛んで行った。
「まだだ」
『ランド。ドッドッドドン! ドッドッドドン!』
『チョーイイネ! キックストライク! サイコー!』
跳躍しながら魔法を二つ同時に発動し、青色だった籠手が黄色に変化し、
足には土の魔力が俺の右足を覆っていた。
『ドリル、プリーズ』
さらに、もう一つ発動するとただ俺の脚を覆っていた魔力が徐々に渦を巻いていき、
最終的に俺の足には一つのドリルが装着された状態へと変わった。
俺のやろうとしていることを察知した木場はすぐさまその場から消え去った。
「貴様! どこへ行く!」
「カーラマイン! 上です!」
チャライ男の妹が声を張り上げ、危険を知らせるが時すでに遅く、
剣を持った女の腹部を隠している甲冑の腹の部分をドリルが打ち砕き、
そのまま姿が見えなくなるくらいに遠くの方へと消えていった。
『ライザーフェニックス様のナイト一名、ポーン二名リタイア!』
「いきなりだから驚いたよ」
「それでも、反応した」
「僕を信じてくれたんだ」
木場はニコニコと笑みを浮かべながら俺の近くにまで歩いてきた。
「……この状況も全て、貴方の頭の中に思い浮かんでいたというのですか」
「さあな……ただ、少なくとも俺達が地に伏せる状況は考えてはいなかった。
それだけだ……ここは任せる」
「あいさ」
『テレポート、プリーズ』
俺はライザーの魔力が感じられる屋上へと転移した。
こんにちわ! 明日からまた学校だ