ハイスクールD×D inウィザード   作:kue

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第百十一話

あの謁見から翌日、俺は一人で吸血鬼の街を歩いていた。

アザゼルからは十分、気をつけろという忠告をいただいた上での散歩だった。

庶民の暮らしにはクーデターによって政府が倒れた影響はまったく届いておらず、

水面下でクーデターを成功させたことが窺えた。

……おそらく、邪龍を復活させたのもあの聖杯を宿したヴァレリーを酷使させたからだろう。

そして酷使された聖杯を宿したヴァレリーは異形なものとの出会いを何度も繰り返すうちに、

自らの気づかぬうちに意識を聖杯に飲み込まれてしまった。

ふと、視線を動かした瞬間、俺は今まで見たことがある奴を見つけてしまった。

そいつは露店に置かれている商品をジッと見つめ、店主を困らせている様子だった。

オーフィス……の吸収された力を再びオーフィスとした存在だった。

俺の家に残りカスであるオーフィスが滞在していることは最重要機密であり、

世間的には今俺の目の前にいる奴がオーフィスとなっている。

するとオーフィスは視線を俺に移したかと思えば、露店から離れて、俺に近づいてきた。

「……懐かしい匂い。赤くて大きなドラゴン……」

そんな言葉を呟くとオーフィスは再び、どこかへと消え去った。

その直後、通信用の魔法陣が俺の耳元に展開され、そこへ耳を傾けると、

相手は小猫からでギャスパーとヴァレリーとの対面が許されたらしく、

そこへ急遽、来てほしいという内容だった。

……恐ろしく、あやしい匂いがするがな。

『テレポート・プリーズ』

俺はそう思いながらもテレポートで小猫達の魔力のもとへと転移すると、

既にギャスパーとヴァレリーは何らかの話しをしたらしく、

ギャスパーが嬉しそうな顔をしながら俺のもとへと駆け寄ってきた。

「聞いて下さい先輩! ヴァレリーと一緒に日本に帰ることができますよ!」

……そうか。お前はそこまでして……。

俺は一度、ギャスパーの頭を撫でてからヴァレリーの傍に立っているマリウスを睨みつけた。

恐らくこいつはただでヴァレリーを開放するはずがない……俺はそんな考えのもと、

この対面が終わった直後にアザゼルへと報告し、その日はそのまま眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日の朝、全員で集まっていると突然、天井に魔法陣が展開され、

そこからいなくなっていた二人の会長の下僕とエルメンヒルデが落ちてきた。

もっとましな転移方法はなかったのかよ。

「お知らせがあります。近々、ツェペシュ側はヴァレリーから聖杯を抜きだし、

城下町の吸血鬼達を変えるという密告がありましたわ」

その一言で全ての真相を理解したのかギャスパーは眼から涙を流しながら、

首を左右に振って今聞いたことを否定しようとしていた。

せっかく日本へ一緒に帰れると聞いた中でのこの一言だ……。

―――――その直後だった。

まだ日の出には早い時間帯にもかかわらず、真っ暗な外の景色が光に照らされ、

俺達のいる部屋も明るくなった。

「どうやら先手を打たれたらしいな。このままだと聖杯を抜き取られ、

この国はお終いだ……エルメンヒルデ。お前はそれでも介入を拒むか?」

「……そう言いたいですが我らが王はあなた方の援助をお認めになられました」

俺の一言に目を瞑りながら嫌々、そう言うと各々が同時に己の得物を手に持ち、

戦闘準備は万端というオーラは俺にはなってきた。

アザゼルの方を向くと既に準備はできているらしい表情、会長の下僕たちも言葉には出さないが、

既に戦いの準備は整っている様子だった。

「リアス」

「ええ。みんな! ヴァレリーを助けに行くわよ!」

リアスのその一言の直後、全員が声を上げるとすぐさま木場がこれまでの滞在時間で把握した、

護衛達の位置を地図に示し、木場の先導のもと俺達はヴァレリーがいるであろう、

地下へとつながる階段を下りていった。

どうやらこんな事態も予測していたらしい木場には感謝だな……さて。

階段を下りきるとそこは広い空間があり、その空間に百名ほどの吸血鬼達が俺達を待っていた。

相手は元人間の吸血鬼達だが人間では手も足も出ないほどの力を持ち、

さらに今は聖杯によって弱点がなくなっているだろう。

《ここはあっしたちにお任せあれ!》

そう言うや否やベンニーアが俺達のところから消え去ったかと思えば、

次々と兵士たちが倒れていき、

その周囲を凄まじい速度で分身を生み出しているベンニーアが通過していく。

その手には死神の鎌。あれで切られれば魂に傷が入るというが……聖杯で、

強化済みの兵隊を倒していく実力は本物だ。

そしてルガールは目の前の兵団を見据えながら服を脱ぎ捨てると体が次々と変化していき、

口からは鋭い牙が生え、指からも鋭く、長い爪が生えると同時に全身が銀色の体毛に覆われていく。

その姿に吸血鬼の兵団達はざわめき立った。

ルガールの正体……狼男。

ルガールは凄まじいスピードでその場から消え去ると紙を切り裂くように簡単に、

兵団達をなぎ倒していく。

「まさか死神に狼男を下僕にするなんて……凄いわね、ソーナ」

さらにルガールの両腕に文様が浮かび上がったかと思えば、両腕を覆うほどの炎が発せられ、

炎を纏った腕で豪快に兵団をなぎ倒していく。

《ヘッヘッヘ。高名な魔女と狼男とのハイブリッドなチートガイでっせ》

瞬く間に百人ほどの兵団は倒されていき、物の十分で兵団は全滅した。

「ここは俺たちに任せてリアス殿達は先へ」

リアスはその言葉に頷くと俺達を連れて、さらに下の階へとつなぐ階段を下りていくと、

大きなドアにぶち当たり、それを蹴飛ばして開くと数人の吸血鬼がいた。

さっきの奴らとはオーラが違うな……上役に可愛がられたやつらか。

「ここは私に任せて下さい。姉さま直伝の技を使います」

そう言うと小猫の周囲に淡い城の光が集まっていくと彼女の闘気が漲っていき、

輝きが彼女を覆ったかと思えば、光が突然、消え去った。

『パンパカパーン』

いつもの小猫の声……だが、かなり成長した体つきだ。

『私のオニューな必殺技……火車』

そう言いながら小猫が腕を横の振るうと腕に火の輪が生み出され、

その輪が吸血鬼のもとへと向かっていく。

「こんな輪がいったい」

直後、そう言った吸血鬼が灰になって一瞬で消え去ってしまった。

「あれは全ての悪しきもの浄化する力だ。匙の力とは反対だな」

「バ、バカな! 吸血鬼である我らがこんな下等な種族ごときに!

させぬ…………させぬぞおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

残りの吸血鬼も火車がかすっただけでそこから灰になっていき、

消滅すると最後に残った奴が激昂しながら直接、

小猫に攻撃を仕掛けるが彼女に触れた瞬間、一瞬で灰になってしまった。

「小猫に触れるものは皆浄化か」

『どうですか先輩? 綺麗ですか?』

「……あぁ」

そう言うとリアスから頬を思いっきり抓られたが小猫は嬉しそうな顔を浮かべながら、

元の姿に戻って意識を失った。

「まだ慣れない力だ。一気に力を使ったんだろう……先へ行くぞ」

小猫はアザゼルに任せ、俺達はさらに下の階へと向かい、

ドアを蹴飛ばして中に入るとそこにいたのは邪龍の一匹――――グレンデル。

『やっと来たのかよぉぉぉぉ! おせぇんだよ!』

「みんな。少しだけ時間を稼いで頂戴……あれをやるわ」

あれ……リアスが編み出した必殺技か。

「ゼノヴィア。行くよ」

「あぁ!」

ゼノヴィアと木場が目の前から消えると若干だがグレンデルの身体から青い血が噴き出した。

『うぉ!? すばっしっこいハエが!』

グレンデルはその巨大な拳で二人を叩き潰そうとするが拳による攻撃は一切、

二人には当たらずに地面にしか当たっていない。

木場はもとい、ゼノヴィアがあそこまでの速度を出せているのは、

エクス・デュランダルの七つの能力の一つで自身を神速で動かしているから。

だが、その速度を出しながらも木場と息のあった攻撃ができているのは、

かなりの間、木場と一緒にあの速度で走りまわっていたということか。

「俺のもくらっときな!」

アザゼルの手元から放たれた太い光の槍は放たれると意思があるように、

グレンデルの攻撃を避け、幾つもの小さな槍に分かれると奴の全身に拡散し、

そのまま全身に突き刺さった。

『イッデェェェェェェ! このくそがぁぁぁぁぁぁ!』

「堅牢なりし壁よ!」

「我らを守護する壁よ!」

グレンデルが腹を膨らませて俺たちに火球を放つがロスヴァイセと朱乃が同時に、

大きな光の壁を作り出すと完全ではないが、奴が放った火球を防ぎ、

残った火球は全て俺のディフェンドで防いだ。

『なんで……なんでこんなクソどもに俺の攻撃が避けられるんだよぉぉぉぉぉぉ!』

グレンデルは目の前でヒュンヒュン動いている二人めがけて何度も腕を振り下ろしたり、

足で踏みつぶそうとするが二人にはまったく掠ることもなく、

ただ単に地面に傷をつけるだけだった。

「物は出来たわ」

そのリアスの一言から全員がグレンデルから離れると、

宙に浮かんだ巨大な滅びの魔力の塊を持ったリアスがグレンデルへと近づいていく。

「消えさりなさい!」

リアスは大きな声を上げながら巨大な塊を放つとその塊はゆっくりとグレンデルへと、

近づいていくとグレンデルを徐々に引きつけはじめた。

『な、なんだこりゃ! か、体ゴガァァァァァァァ!』

グレンデルが固まりに触れた瞬間、すぐさま全身が引きこまれ、

奴を削りながらその塊はサイズを小さくしていく。

「その塊は耐性とかそんなの関係なしに消し去るわ……いわば、

ブラックホールの滅びの力Verね―――――消えなさい!」

『ゴアァァァァァァァァァ!』

奴の断末魔が響き渡るとともにその塊も大きさを縮小していき、塊のサイズが完全に、

小さくなった頃には既にグレンデルは顔を半分残した状態でしか生存していなかった。

滅びの魔力で生み出したブラックホール……やはり、リアスは凄い奴だ。

『グ、グゾ! こ、この俺が……ハハハハッハハハ! こんな状態でも戦って』

グレンデルがそこまで言った瞬間、突然上空からグレンデルを押しつぶすように、

黒いローブを身に纏った男が急降下してきてグレンデルを地面に押し込ませて黙らせた。

「選手交代だ。グレンデル」

その声はあまりにも俺たちからすれば重い声だった。




あぁ、もうすぐこの作品も終わりか。
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