ハイスクールD×D inウィザード   作:kue

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第百十三話

『ハリケーン・スラッシュストライク! ビュービュービュー!』

宝玉が埋め込まれている籠手をアスカロンの刀身に翳すと刀身に暴風が纏い、

そのまま目の前で住居を破壊している量産型の邪龍をすれ違いざまに真っ二つに切り裂くと、

大きな爆発を上げて消滅した。

……すでに吸血鬼の体は消滅済みか。

「東の門に行け。そこが避難場所だ」

「あ、ありがとうございます!」

逃げ惑っている住民に避難場所を伝えながらも次々と現れてくる邪龍を葬っていくが、

いかんせんその数は凄まじいものでなかなか、殲滅には至らない。

それほどの数の吸血鬼が弱点が数多くあり、いつ滅されるか分からない今の存在よりも、

弱点が全くない完璧な生命へと進化を望んだわけか。

「……高みの見物か。ルキフグス」

空を見上げ、ローブを身に纏って宙に浮いているやつへと視線を動かすと、

奴はローブを脱ぎ捨てその姿のまま俺と対峙した。

「彼らは選択したのですよ。たとえ破滅へと向かう選択だと分かっていながらも、

彼らは完ぺきな生命への進化を選択した……それがこの崩壊した国の結末です」

「どの種族でも完璧な生命を望む……だが、不完全であるがゆえに幸福があり、

また不完全であるがゆえにここまで成長した……全てのピースが当てはまるということは、

その存在は死んだという意味だ」

「貴方も良い理解をしている……では、これは理解できますか」

ルキフグスがそう言った直後、奴の腕に普段、

俺の腕でしか見ていない赤色の籠手――――ブーステッドギアが出現した。

「さらにはこんなことも」

『フレイム・ナウ』

そんな音声が鳴り響き、奴の宝玉から炎が噴き出した。

…………なるほど。そう言うことか。

「お前、消滅する前に俺の肉体から情報を抜き取ったな?」

「ええ。おかげで貴方しか使えないドラゴンズマジックとセイグリッドギアが手に入りました」

聖杯を使うことで生命の理へと潜り込み、魔法とセイグリッドギアの情報を抜きだしたのか。

『フレイム・プリーズ。ヒー・ヒー・ヒーヒーヒー』

俺も奴が今、使っているのと同じ魔法を発動させ、奴と同じ条件にした。

「かかってこい。今、お前がしていることがどれほど哀れなことか教えてやる」

「……」

奴は俺の言ったことに怒りを抱いたのか、大量の魔力を消費することで、

巨大な炎の火球を生み出すとそのまま何も言わずに俺の方へと投げてくるが、

奴自身の表情はあまり芳しくなかった。

俺は向かってくる巨大な火球に手を触れるとそれだけで火球は姿を消し、

俺の籠手の中へと吸い込まれた。

奴はその光景に驚きを露わにしながらもさらにかなりの魔力を消費したうえで、

巨大な火球を何個も生成し、その全てを俺に向かって放つが結果はどれも最初と同じ。

奴は火球をいくつか生成しただけにも拘らず、肩で息をしていた。

「バ、バカな……何故、これほどまでの魔力を消費するのですか」

「だから言っただろ。お前がしていることは哀れだと」

「黙りなさい!」

『イエス! キックストライク・アンダスタンド?』

『チョーイイネ・キックストライク・サイコー!』

「はぁ!」

「だぁ!」

同時にキックストライクを発動させ、足にを炎を纏った状態で飛びあがって、

同時に互いの足がぶつかり合うが一瞬にして奴の炎が消えさり、

体勢を崩したルキフグスに俺の蹴りが直撃した。

「がぁ!」

「だから言っただろ。お前がやっていることは哀れなことだと」

『インフィニティー・プリーズ! ヒー・スイ・フー・ドー・ボー・ザバ・ビュー・ドゴーン!』

指にはめていたインフィニティーの指輪を籠手の宝玉へと翳すと音声が辺りに響き渡るとともに、

足もとに展開された銀色の魔法陣から銀に輝くドラゴンの幻影が出現し、

俺の周囲を旋回するとともに魔法陣が下から上へと上がっていき、鎧が完成したと同時に、

ドラゴンの幻影がアックスカリバーとなって手の中に収まった。

「コピーできたのはそれだけらしいな」

『ハイ・ハイ・ハイ・ハイ・ハイタッチ! プラズマシャイニングストライク!』

『ディフェーンド・ナウ』

五回連続、指輪でタッチするとアックスカリバーが光輝きながら俺の手元から離れると、

俺が横に腕を振るうとアックスカリバーがその動きに従って飛んでいき、

ルキフグスが展開したディフェンドの魔法陣を一瞬にして砕き、

奴の腹部にカリバーが直撃し、さらに今度は左へと腕を動かすとアックスカリバーは、

宙で方向転換し、今度は左の脇腹にめり込み、止めとして腕を上から下へ、

突き降ろすとカリバーはルキフグスの頭に直撃し、俺の手元へと帰ってきた。

「ゲハッ! 何故だ……何故、ドラゴンズマジックが」

『エラー』

もう一度、フレイムの魔法を発動しようとしたのかは分からないが腕を突き出した瞬間、

そんな音声が響き渡ると同時にセイグリッドギアに埋め込まれている宝玉の色がなくなった。

奴は血反吐を吐きながらもあり得ないといった様子で何度も発動するが、

音も何も出てこなかった。

「魔法が……使えないっ!」

木場からの報告では俺の魔力を使ってファントムが魔法を発動したのだが、

俺が使っているよりも遥かに威力は弱かったらしい。

「当たり前だ。ドラゴンズマジックは俺だけの魔法……俺以外の奴が、

使えば魔法はそいつを拒絶し、消え去るだけ」

「はっ……ハハハハハ! 魔法に意思があるとでも言うのですか!?」

そう叫び、ルキフグスは己の力で戦おうと手から魔力弾を放つが俺はそれを、

宙に跳躍して避け、奴を見下ろした。

「あんなことを言っているがお前はどう思う……“ドライグ”」

「っっ!」

突然、奴の顔が一瞬にして驚きに染まりあがった。

まあ、無理もない……俺の背後に奴がいるのだから。

『愚かすぎて言葉も出ないな』

「そうだな……行くぞ、ドライグ!」

『チョーイイネ! ドラゴンパレード! サイコー!』

その魔法を発動した瞬間、インフィニティーの鎧が解除され、

それと同時に俺の真下に大きな銀色の魔法陣が出現し、

その中からそれぞれのエレメントの色をした魔法陣が出現したかと思えば、

さらにそこからそれぞれのエレメントを纏ったドラゴンがルキフグスめがけて放たれていく。

「おぉぉぉぉぉぉ!」

全てのエレメントがルキフグスに直撃した瞬間、銀色の大きな魔法陣を思いっきり蹴り飛ばすと、

ルキフグスに向かっていく道中で魔法陣が銀色の巨大なドラゴンへと形を変え、

ルキフグスへと直撃した瞬間!

俺の視界を塗りつぶすほどにまばゆい銀色の光が放たれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

爆発により、大量の砂がまき散らされて視界が閉ざされていたがやがて、

この国に吹く風によって視界がクリアになっていくと向こうの方に、

三つの影が見えた。

「ん~☆Graetest!」

「……眩しい」

完全に砂が消えた時、目の前に現れたのは傷だらけのルキフグスを肩に担いだリゼヴィムと、

片腕を突き出しているオーフィスの姿をしている奴がいた。

……銀色のドラゴンの一撃だけ、オーフィスによってかき消されたか。

「も、申し訳ありません。リゼヴィム様」

「ん~良い良い☆ちみのせいじゃないざんす」

「リゼヴィム!」

上空から奴が光の翼を羽ばたかせながら、凄まじい速度で俺の隣に降り立った。

「なかなかEnjoyしたっちゃ。もうこの国には用はないし、

ドロンしちゃおうぜ。リリスちゃんよ~」

「我、承諾」

「逃がすか!」

怒りに囚われたヴァーリがリゼヴィムに突っ込もうとした瞬間、

リリスと呼ばれた少女が地面に小さな手をつけ、その際に力をほんの少しだけ開放したのか、

大量の砂がまき散らされて再び視界が潰されてしまった。

「待て! リゼヴィム!」

「もうあいつらの魔力はない……お前だって気づいているだろ」

そう言うとヴァーリは舌打ちをして、鎧を元に戻した。

町全体に意識を集中させるともう既に邪龍を感じることはなく、

リアスや木場といった俺の仲間くらいしか、魔力を感じなかった。

あれほどの邪龍を消し去ったのはギャスパーだな……戦いに集中していたが。

「俺は……俺が抱いていた夢は奴と同じだったっ! ……奴とは違う!」

……ここまで感情をあらわにするほど憎しみを抱いているのか……、

リゼヴィム・リヴァン・ルシファー……危険すぎる男だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リゼヴィム達が去り、ようやく静かになったツェペシュの城下町に俺達は集まっていたが、

その被害のあり様は最悪なものだった。

邪龍化した吸血鬼達によってほとんどの住居は破壊され、残っていたとしてももう二度と、

住むことはできないだろうと容易に想像がつくほどの被害だった。

ツェペシュ側、そしてカーミラ側の生き残ったエージェントたちによって、

住民の避難誘導は迅速に行われたものの完全に元に戻るにはかなり時間がいるだろう。

……そして、この少女の精神も。

「そんな……裏切り者がいて…………吸血鬼が祖国を…………」

エージェントに肩を抱かれなければ倒れてしまうほど精気を、

失ってしまったエルメンヒルデが目の前の祖国のあり様にショックを受けていた。

「先生、ヴァレリーは」

「呼吸をしている以上、生存はしているがそれでも医療機器なしじゃ長くはない。

そこら辺はグリゴリで対処しよう……あとはリゼヴィムから奪われた聖杯を、

取り戻せばヴァレリーは完全に復活する」

「……取り戻します。絶対に僕はヴァレリーを取り戻してみます!」

朝日を背に、そう叫ぶギャスパーの姿は今までで見たことがないほど逞しく見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数日後、日本へと帰ってきた俺たちはつかの間の休日を過ごしていた。

まあ、いろいろと大きな問題が発生したことで休日と言えるかは微妙なものだが、

最近はなかった一日休みの日ができたってわけだ。

あれからギャスパーは決意を胸に秘め、以前よりもいっそう鍛錬に励みだした。

「イッセー♪」

そんなことを考えていると後ろからリアスに抱きつかれたが魔力ですでにわかっていたので、

前のめりになることなく、背中で彼女を受け止めた。

「静かね」

「あぁ」

「この前の戦いがうるさすぎたんだけど」

「そうだな……だがあれ以上の戦いがこれから来るんだぞ」

「ええ。分かってるわ……でも、今はこの静けさを楽しみましょ」

リアスがまわしてきた手を優しく握ろうとした瞬間、俺の自室の扉が開かれた音がし

そちらの方を振り向くと朱乃が扉の近くにいた。

「ふふふ、幸せムード真っ最中ですけど指令ですわ。

この地区にはぐれ悪魔が数体、入ってきたらしいですわ」

「行きましょうか、イッセー」

「あぁ……俺たちが…………最後の希望だ」




これにて完結。

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