……ここは、どこだ……俺は戦っていたはずじゃ。
周囲を見渡して見るが何も見えないように見えた……が、
向こうの方に光が溢れているのに気づき、そこへと近づいていく。
『パパ! パパ!』
そこから父親を呼ぶ声が聞こえ、辺りを見渡すと俺の右の方向に小さな子どもと、
その子供を抱きかかえながら号泣している女性、
そして顔に布をかぶせられている人物がベッドに横たわっていた。
俺はその光景に見覚えがあった……しかも、俺はその光景を経験している。
「あれは……あの日の」
『そう。これは貴様が絶望した日だ』
隣りから声が聞こえ、振り向くとそこには俺自身が腕を組みながら立っていた。
『パパ――――――――!』
『絶望の時だ』
目の前にいる俺はニヤつきながら目の前で泣き叫んでいる俺自身を眺めていた。
俺が俺を見ている……そんな異常な事態にありながらも俺は別のことを頭の中で考えていた。
「……ドラゴン。何故、俺は魔法を使えなくなっている」
『本来、魔力というものはその生物の体内器官で生産され、全身を駆け巡っている。
だが、貴様のようにセイグリッドギアを宿し、
さらにそれに魂を封印されたものの場合は話は違う。貴様の魔力を生産しているのは俺だ』
「……つまり、お前が魔法を使えないようにしたと」
その質問に目の前の俺は気味の悪い笑みを浮かべながら俺を見てきた。
……つまり、あの魔法を――――――チャラ男を倒せる魔法を使えるようにするのもこいつ自身か。
「ドラゴン……この魔法を使えるようにしろ」
俺は手のひらに二つの魔法陣を出して目の前の奴に見せた直後、
目の前の俺の周りから魔力があふれ出し、姿を徐々に変えていき、
光に包まれていきながら俺の何倍もの背丈まで伸び、赤色のうろこ、
鋭い爪を持った足、そして大きな尻尾を生やした赤いドラゴンの姿へと変化した。
そして、ドラゴンは翼をはばたかせ、宙を舞いながら俺に話していく。
『確かにその魔法を使えば貴様は俺の力を現実で使うことができる。
ただ……今の貴様に耐えることができるか』
「……貴様の意思次第で使えるんだな」
『聞いていたのか!? 今の貴様の状態では使えるかすらままならんと言っているんだ!
それに俺は貴様が気に食わん。このまま貴様を殺すことさえできるんだぞ』
俺の真正面でドラゴンはニンマリと口角を上げて、そういう。
「……わかってないな」
『なに?』
「お前の力も俺の希望だ。敵を倒すためのな。
それに俺はこんなところで死ぬわけにはいかない。お前が俺の死を望んでいようとも」
『フハ…………ハッハハハハハハハハハッハ!』
ドラゴンは大笑いしながら大きな翼を羽ばたかせ、空を舞う。
『面白い! 俺の力が希望か! 貴様に興味が湧いた。
どこまで耐えられるか試してやろう! 思う存分! 俺の力を使うがいい!』
「うっ!」
ドラゴンが俺の身体へと入っていく。
すると右腕に籠手が現れ、そこから以前、使っていた炎よりもさらに強力な炎が、
俺の周囲に現れた魔法陣から吹き出し、辺りを明るく照らした。
「さあ! ショータイムだ!」
そう叫んだとたん、目の前の景色が元に戻った。
『フレイム・ドラゴン』
「な!? ぐぉ!」
籠手の宝玉から赤色の魔法陣が飛び出し、その大きさを一瞬で大きくするとチャラ男にぶつかり、
俺から引き離すように吹き飛ばした。
『ボー、ボー、ボーボーボー!』
赤色の魔法陣から炎を纏ったドラゴンの幻影が現れ、
俺の周囲を旋回しながら上へと上がっていき、
ドラゴンが消え去ると同時に辺りに火の粉が飛び散り、俺は赤色の鎧に身を包んでいた。
二階にいる参列者から驚きの声が聞こえてくる。
そして、前にいるチャラ男からも。
「さあ、ショータイムだ」
「ぬぐぉぉぉ!」
俺がゆっくり歩き始めたとたんにチャラ男が背中から炎を噴射して俺にものすごい、
速度で迫って来て、拳を放ってくるが俺はそれを左腕で弾き、
奴の顔面に思いっきり拳をめり込ませ、殴り飛ばした。
「がはっ! ぺっ! まだだ! おおぉぉぉぉぉ!」
チャラ男は全身から炎を噴出させ、己の頭上に全身から噴出させた炎を集め、
球体へと変化させていく。
「これがフェニックスの炎だ!」
叫びながら巨大な球体が俺めがけて放たれる――――――が、
俺がその巨大な火球に触れた瞬間、膨大な量の炎が一瞬にして消えた。
その光景にチャラ男は戸惑いを見せるがすぐに炎の消えた場所を察知し、驚きに顔を染めた。
「ほ、炎を吸収したのか」
「上乗せで返してやる」
手を目の前にかざすと魔法陣が展開され、
そこから先ほど吸収した膨大な炎が火炎放射機のようにまっすぐ放たれ、チャラ男に直撃した。
「んぬぬぬぬぬ! 俺はフェニックス! ライザー・フェニックス!
誇り高きフェニックス家の三男であり上級悪魔であり! 風と炎を司る悪魔だぁぁぁ!」
チャラ男は両腕を振り払うと炎が一瞬にして分散され、会場の一階部分の壁に直撃し、
二階席を大きく揺らし、さらに熱した。
「やるな……ん?」
刹那、籠手に埋め込まれている赤色の宝玉が突然、
俺に何かを知らせるように赤色に輝きだした。
……なるほど、そうか。
『チョーイイネ! スペシャル、サイコー!』
ピーンと何かが来て、目の前に手を翳すと赤色の魔法陣が展開され、
魔法の内容を遠まわしに表現する音声が鳴り響き、
展開された魔法陣から先ほどの炎を纏ったドラゴンの幻影が現れ、
俺の周りを何周か旋回した後、俺の背後へと回り、
背中にぶつかると俺の鎧の胸の部分から先ほど、出会ったドラゴンの頭部が現れ、
俺の身体が宙に浮かびあがった。
「うおあぁぁぁぁぁぁぁ! これがライザー・フェニックス! 最強の技だ!
主であるリアスの前で塵となって消えやがれぇぇぇぇぇ!」
咆哮を挙げるライザーの背中から炎で作られた巨大な翼が一対出現し、
その一対の翼がライザーを包み込むと、奴の家の名前のとおりフェニックスが誕生し、
俺へと突っ込んできた。
「フィナーレだ」
直後、ドラゴンの口が大きく開き、そこから炎が勢いよく噴射され、
ライザーのフェニックスと正面から衝突し、辺りに熱波と衝撃波をまき散らした!
「ぐぅぅぅ! おぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
「お前も負けられないだろうが……俺も負けられないんでね。はぁ!」
ドラゴンの頭部にありったけの魔力を注ぎ込み、放たれている炎を底上げすると、
徐々に俺の炎が奴の纏っているフェニックスを飲み込んでいく。
「こ、この俺が! ハハハハハハハハッハハハハハ! あぁぁぁぁぁぁぁ!」
俺の炎が完全にチャラ男……いや、ライザー・フェニックスを飲み込み、
地面へとぶつけ、大爆発を上げた。
その大爆発は地面に大きな穴をあけ、辺りに熱波だけでなく衝撃波も撒き散らし、
会場を大きく揺らし、大量の粉塵を辺りに撒き散らした。
「ハァ……ハァ」
地面に降り立った瞬間、見に纏っていた鎧とつき出ていたドラゴンの頭部が、
ガラスが砕けるように砕け散り、光の塵となって消えた。
あれほどあった魔力はすでに残り少なくなっていた。
それほどまでに消費しなければ勝てなかったという訳か……ライザー・フェニックス。
痛む体を引きずりながら大きな穴のもとへ近寄ると体のところどころから、
小さな炎をだしているライザー・フェニックスが横たわっていた。
「げほっ……俺が二度も、お前に負けた理由が……ようやく、
分かった気がする……お前にはあって、俺にはげほっ! ないもの……それが、
俺達の決定的な差だったんだ」
そう言い、ライザーは目を閉じ、意識を落とした。
俺はまだやることがあり、それを遂行するまで意識を手放すわけにはいかなかった。
悲鳴を上げる全身に鞭をうち、足を引きずりながら白いドレスを着て、目に涙をため、
俺の先で待っているやつのもとへ、行くために。
「イッセー!」
足が絡まり、地面に倒れた俺に駆け寄ろうとするが、
それはこの勝負を許可した紅の男によって止められた。
俺は最後の力を振り絞り、立ち上がり、一歩ずつ近づいていく。
一歩ずつ、一歩ずつ前へと進んでいき、
ようやくリアス・グレモリーに手が届くところまでたどり着いた。
俺は彼女に手を差し伸べた。
「イッ……セー」
「帰ろう」
「うん!」
この会話により、この戦いは幕を閉じた。
「フェニックス卿。申し訳ない。折角の縁談を」
「いえいえ、構いません。確かに純血同士の縁談は魅力でしたが、
それ以上に価値があるものを見れましたので」
「ライザー君ですか」
「ええ。親としては息子の成長以上に嬉しいものはありませぬ。
それに我らには既に純血の孫が居りますゆえ」
「少し、我らは強欲すぎたのかもしれませんな」
「ですね」
「と、そのような感じでわたくし、
リアス・グレモリーも兵藤家にホームステイさせていただくことになりました」
「あらあらまあまあ! もう両手に花じゃない! これで私も安心していつでも逝けるわ!」
そんな不吉なことを言いながら母さんが俺の背中を満面の笑みを浮かべながら、
バンバン叩いてくる。
母さん……そんな不吉なことを言わないでくれ。
でも、確かに予想外ではあった。まさか、部長までホームステイするとは。
「これからよろしくね。イッセー」
「……どうも」
こんにちわ!