翌日、本来の予定ならば一人の家で魔法書を読破するはずだったが、
アーシアから一緒に学校へ行くように懇願され、断る気もないので彼女と一緒に学校へ行き、
今は会長と部長のテニス対決を見ている。
「グレモリー流カウンターを喰らいなさい!」
「甘い! シトリー流のカウンターの為のカウンターを喰らいなさい!」
部長が空中に上がったボールを凄まじい勢いで地面に叩きつけるが、
会長はボールが地面に当たってバウンドし、
最高にカウンターを打ちやすい位置に上がるまで待ち、
その位置に来たところで全力(魔力で大幅強化)で弾き返し、部長の顔スレスレを通って―――――。
「きゃっ!」
ボールがフェンスにぶつかるが思いのほか、ボールが強化され、
金網をねじに捻じ曲げて貫通し、
フェンスの外で眺めていたアーシアの顔面に向かってきたが、
俺がギリギリのところでボールをキャッチしたことで難を逃れた。
「お二方。テニスをするのは構いませんが、“人間”の領域で戦うように」
「「……はい」」
どこか、二人の俺を見る表情が引きつっているように見えたが気のせいだろうと自己暗示をかけ、
再び二人の試合に集中した。
部長と会長の一騎打ちが終了し、無事にオカルト研究部として出た球技大会も勝利をおさめ、
祝勝ムードであるはずの部室内にはそれとは正反対の空気が流れていた。
この原因こそ木場の態度だった。
試合中は終始、心ここにあらず。部長が何度怒鳴ろうがそれは変わらなかった。
「いい加減にしなさい、祐斗。いつまでボーっとしているつもりなの!?」
部室内に部長の怒声が響き渡る。
「もう帰ってもいいですか? それと少し疲れたので休ませてもらいます」
しかし、帰ってきた反応はぞんざいなものでその反応に部長自身驚いていた。
一度、木場と目が合うが奴は何も言わずに俺の隣を素通りしていき、部室から出ていった。
「はぁ……あの子の想いがまたぶり返してきたのかしら」
「部長。お二人ほど、置いてけぼりですわ」
「そうだったわね……話さなきゃいけないわね。あの子の過去について」
それから俺は机の上に座り、腕を組んだ状態で木場の過去を聞くがその肝心な話は、
右から左へ素通りし、木場の魔力を追っていた。
すると、突然、木場の近くに強大な魔力……いや、
俺に匹敵する何かしらの力の塊が現れた。
そして木場の魔力も――――――。
「っっ!」
『テレポート、プリーズ』
「イッセー!?」
俺は部長の制止を無視して、木場の近くへと転位先を決定した魔法陣へと飛び込んだ。
着地した俺の目の前で魔剣を持った木場と光輝いている刀を持った白髪神父が、
鍔迫り合いを起こしているが、すでに木場の魔剣のオーラは弱弱しくなっている。
『フレイム・プリーズ。ヒー・ヒー・ヒーヒーヒー!』
「んにゃ!?」
突然の乱入者に驚いた白髪神父はいったん剣を引き、俺たちから距離を取った。
「イッセー君。退いてくれないかな? 邪魔だよ」
「その弱弱しい剣で何ができる。すっ込んでいろ」
『バインド、プリーズ』
木場を魔法の鎖で拘束し、俺は白髪神父と対峙した。
奴が持っているあの剣……あれが噂に聞く聖なる剣か。
そんじゃそこらの魔剣よりも相当強力な力を感じるが……まあ良い。
「取り敢えずうざいから死んじゃいなよ!」
白髪神父は狂った笑みを浮かべ、剣を俺に振りかざすがそれをギリギリで避けると、
ジュワッ! と焦げる音が聞こえ、頬に痛みが走り、
いったん距離を取って頬に触ると擦り傷のようなものができていた。
「ヒャッハー! これに触れれば君みたいなカス悪魔は一瞬で消・滅!
その名も聖剣エクスカリバー! 俺ッチが正義の味方だぜ!」
奴が夜空に向けて聖剣をかざすと凄まじい輝きが発せられ、その光を見た瞬間、
即座に俺は拘束していた木場を担ぎ、その場から跳躍し、離れた。
近くであの光を受ければ悪魔の俺たちは即死だな。
そう感じ取った俺はあの魔法を発動した。
『フレイム・ドラゴン。ボー、ボー、ボーボーボー!』
俺の背後から炎を纏ったドラゴンの幻影が現れ、俺の周りを旋回し、
幻影が消えると俺は赤い鎧を身に纏っていた。
降ってくる雨が鎧に着くたびに一瞬で蒸発し、
ジューっ! という音を出していた。
「あん? なんだそのよわっちい鎧はよぉ!」
白髪神父は未だに輝き続けている剣を振り回しながら俺に駆け寄って来て、
剣を振り下ろすが、それを俺は腕の装甲で受け止めた。
どうやら、装甲でなら聖剣でも一定時間は止められるらしいな。
聖剣の一撃をはじき、隙が生まれた奴の顔面を思いっきり殴り飛ばし、
遠くに吹き飛んだことを確認し、止めの魔法を発動する。
『チョーイイネ! スペシャル、サイコー!』
背後から炎を纏ったドラゴンの幻影が現れ、俺の周りを旋回し、
背後へと戻り、背中にぶつかると鎧の胸の部分にドラゴンの頭部が出てきた。
「燃え尽きろ、カス」
直後、ドラゴンの口が大きく開き、
そこから火炎放射のように炎が伸び白髪神父に直撃し、小さな爆発を上げた。
「……ん? 逃げたか」
爆煙が晴れ、視界がクリアになるがそこに白髪神父はいなかった。
後ろを振り返ると今の状況に納得がいかないと、
表情を見ただけで分かるほどに不機嫌な木場がいた。
互いに互いを睨みあうが木場はすぐに視線をそらし、スタスタとどこかへ歩いて行った。
「……何を怒ってんだか」
『テレポート・プリーズ』
用件も済み、自宅へと転移すると何故か腕を組んで不機嫌な顔をしている部長と、
アーシアが正座をして俺の部屋にいた。
ここ最近のこの二人の仲の良さには驚いていはいるが……いったい、この二人に何があった。
「イッセーさん? そこにお座りになってください」
「……母さんの」
「お母様からさっき電話があって『友達が新作料理をふるまってくれるらしいから、
今晩は女だらけの宿泊大会に参加しま~す』って言う風に連絡があったわ」
車いす生活になってから以前よりも性格が明るいものになった母さん……今だけ、
恨むことを許して下さい。
俺は空気に耐えられず、何も言わずに正座した。
「せっかく、部長さんが木場さんの過去をお話しになっているのに何も言わずに、
転移するとはどういう意味でしょうか」
「その後にソーナがやってきて私の領下で神父が惨殺されているって言う重要なことを、
話してくれたのに……ソーナ悲しんでいたわ。貴方に謝りたかったのにって」
何故だ……何故だ……何故、こんなにも二人からの言葉の一つ一つが、
俺の心を刺している……これぞ、女性の言葉の重みという奴か。
「まあ。貴方のことだから大体の見当はつくけど……さて、
おふざけはここで終わり。本題に入るわ」
先ほどまでのふざけたようで楽しそうな空気は消え去り、
部長の周りから重苦しい雰囲気が辺りに流れ始め、
俺も正座を崩してアグラに変えて話を聞いた。
「明日、旧校舎の私達の部室に教会関係者が二人、来るらしいわ」
「さっきの神父惨殺の件ですか」
「ええ。向こうは神に誓って私たちに危害を加えないと言ってきたけど」
「それは信じるに値する言葉なんですか?」
「こればっかりは向こうの信仰心とやらを信じるしかないわ」
恐らく、教会関係者がこっちにやってくる理由はあの白髪神父が、
持っていたエクスカリバーとかいうことに関係することか。
その日は翌日の対策を話し合い、一日を終えた。
こんばっぱー!×2!