「……もう勘弁してくれ。デートでも何でもしてやるから」
その後、レイナルドさんという車掌が俺達を照合しに来て、冥界へと俺達の情報を登録し、
さらに部長までもが寂しいとこっちにやって来てポーカーに加わり、
さらに後ろの席にいた奴までもがやって来て凄まじい数になったんだが、
それでも俺は負け続けていた。
十五回ほどやったが十五回連続敗北、一つのセットも作れずの完敗だ。
「あら、到着したみたいね」
窓の外へ視線をやるとグレモリーの文様が刻まれた兵服を着た大量の兵士たちが、
列車の前で待機していた。
「みんな、荷物を持って」
それぞれの荷物を持ち、外へ出るとアザゼルは魔王領へお呼ばれされているらしく
そのまま列車に残り、俺達が出るとともに列車が発車し、
更にパンパン! と花火のような音が俺達を出迎えた。
『おかえりなさいませ! リアスお嬢様!』
「ただいま、皆」
「ひぃぃぃぃ! 人がいっぱいですぅ」
俺が持っている段ボール箱の中から紙袋に二つの穴をあけたギャスパーが震えながら、
目の前の光景に驚いていた。
部長が笑みを浮かべれば待機していた奴らも全員笑みを浮かべてかえした。
隊列から銀髪のメイド、グレイフィアさんがやってきた。
「お嬢様、おかえりなさいませ。道中無事で何よりです。
既に馬車は準備しております。卷族の皆様もお乗りください」
「じゃあ、私とイッセー、アーシア、ゼノヴィア、
朱乃で一緒に行くわ。三人は初めてだから」
一番先頭の馬に五人が乗り込み、その後ろに待機していた馬車に残りが乗り込んで、
もう一個後ろにある奴には荷物を持ったメイド達が乗り込んだ。
以外と馬の移動時には騒音がなく、
鳴り響く蹄の音も聞いていればなかなか心地よいものに感じる。
「わぁ! 見てくださいイッセーさん! 大きなお城です!」
「そうだな」
「やはり、まだイッセーの顔には感情がでないものだな」
「これでも驚いているさ」
横に広がっている風景は中々の大自然でほとんど手がつけられていないのか自然が広がっており、
その中でも大きな城が一際、目立っていた。
「あれも私のお家の一つよ」
とりあえず、今の発言はスルーしておくことにした。
俺はとんでもない勢力を持つ上級悪魔のポーンになったのだと改めて感じさせられ、
そんなことを思っていると馬車が止まった。
「着いたようね」
部長に言われ、馬車から下りると両脇に執事とメイドが並んで列を作り、
それに挟まれるようにして赤いじゅうたんが城までつながっていた。
歩き出そうとしたときに列から紅色の髪を持った少年が走って来て部長の足もとに抱きついた。
「リアスねえさま! お久しぶりです!」
「ミリキャス! 大きくなったわね!」
部長は愛おしそうにその少年を抱きしめた。
「この子はミリキャス・グレモリー。お兄様の子供で私の甥にあたる子よ」
ほぅ。つまり魔王の子供で正真正銘のプリンスであると。
「ほら、ミリキャス。この子たちはあたらしい卷族よ」
「ミリキャス・グレモリーです。よろしくお願いします!」
「ポーンの兵藤一誠」
簡単に挨拶を済まし、ガタガタ震えてしまいには段ボール箱まで、
共振を起こしているギャスパーを運びながら、城の玄関ホールにたどり着くと子供数人が、
遊んでも十分なくらいに広い玄関、そして前方には二階へとつながる階段。
「お嬢様、先のお部屋へお通ししたいのですが」
「そうね。先にお父様に挨拶をしたいのだけど」
「ご主人さまはただいま外出中であります。夕食の際には戻られると、
おっしゃっていましたのでその時がよろしいかと」
「そうね。先に部屋で皆に休んでもらいましょう」
「あら、リアス。帰っていたのね」
グレイフィアさんが手を挙げ、数名のメイドが俺達のもとへやって来て、
部屋への案内を受けようとした瞬間、上から女性の声が聞こえ、
そこへ向くとドレスを着た女性が降りてきた。
その姿はあまりにも部長に似ていて……相違点は髪の色が紅ではなく、
亜麻色ということくらいだ。
「お母様。ただ今戻りましたわ」
その瞬間、思わず共振していた段ボール箱を落としかけた。
幸い、すぐにバインドで固定はしたものの少々、ギャスパーには怖い経験をさせてしまった。
あとで文句は聞いてやるからな。
文句を言いたげなギャスパーをスルーして女性の方へ眼を向ける。
「彼が兵藤一誠君ね?」
「……俺をご存じで?」
「ふふ、あの婚約パーティーの時の登場には驚きました。
それと面白い魔法もいくつもお持ちだとか」
かなり優しそうな雰囲気をしている女性だった。
「申し遅れました。私はヴェネラナ・グレモリー。リアスの母ですわ」
数時間後、部長の親父さんが戻られたということで卷族が呼ばれ、
えらい豪勢なディナーが執り行われた。
「ここを自分の家として楽しんでくれたまえ」
そうは言うが正直、かなりきつい。
上を向けば豪華けんらんなシャンデリア、下を向けば豪華そうな装飾が施された椅子。
そして壁際にはメイドがズラリと並んでいた。
「いや~。長年生きてはいるが、君の魔法は見たことがないものばかりだ。
あれは全て君が作ったのかな?」
「ええ、あれは全て自作の物です」
「リアスもすごい男を下僕にしたものだ」
親の言うことに部長は恥ずかしそうに頬を染めるが、どこか嬉しそうでもあった。
「兵藤君」
「はい?」
「私のことをお義父さんと呼んでも構わんぞ」
一瞬、思考が停止したがとりあえず噛み砕くのは後にして、
頭の片隅のなかの片隅……つまり忘却の彼方へと押し込んでおいた。
「あなた。少し性急すぎますわ。物事には順序がありますわよ」
「うむ。だが、紅と赤……まあ、いろいろ色はあるがそれだぞ? めでたいではないか」
「浮かれるのは早いということですわ」
何やら部長のご両親がサクサクと話を進めているようだが特に俺に、
関係はしていないようなので気にも留めずに晩御飯に手をつけた。
特に食文化で違いはないらしく、味はうまかった。
「兵藤さん。これからイッセーさんと呼んでよろしいですか?」
「ええ」
「イッセーさん。これから滞在なさるのですのよね?」
「主がいる間はこちらにいます」
「そう。ちょうどいいわ。これからあなたには紳士的な振る舞いなどを学んでいただきます。
後マナーなどもお教えいたしますわ」
少し引っかかったところで俺の気持ちを代弁するかのように部長がバン! とテーブルをたたき、
立ち上がった。
「お父様! お母様! 先ほどから私を置いて話を進めるなんてどういうことでしょうか!」
直後、部長のお母様の表情から優しい笑みが消え、母親の威厳に満ち溢れた顔になり、
部長を細い眼で睨みつけた。
「お黙りなさい、リアス。今回、貴方がライザーとの婚約を、
破断したことによって周りの貴族の方からは下僕を使って、
無理やり破断した我儘姫と言われているのよ?
どれだけお父様とサーゼクスが手を回したと思っているの?
破断を許したのを破格の待遇と思いなさい」
「わ、私は」
「サーゼクスと関係ないと言いたいのでしょう。しかし、
三種族が協調体制に入った今、組織の末端にまで貴方の名は飛んでいるでしょう。
それに未知の魔法を扱う者を手駒にしているとして自然とあなたにも視線が集中します。
甘えは大概になさい」
部長は何も言えずに悲しそうな表情を浮かべながら席に座った。
俺は基本的にやったことは後で後悔はしないタイプだがこの一件に関しては疑問を感じる。
あの時、俺の行動は最善だったのか?
もしあの時ライザーが俺に再戦を申し込んでいなければ……。
「一つ聞きたい。何故、俺をそこまで重要視されるのですか?
貴方がたの視線には未知の魔法ということを除いた何かを感じるのですが」
「ふふ。貴方は娘の最後の我儘ですもの。親としては最後まで面倒をみますわ」
笑みを浮かべながらそう言い、部長を見ると何故か部長は顔を赤くして、
恥ずかしそうにうつむいていた。
こんにちわ。