ハイスクールD×D inウィザード   作:kue

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第三十五話

鍛錬最終日の前日の夜、俺はタンニーンから過去の話を聞いていた。

俺の中に眠るドラゴン―――――ドライグの話もそうだが、戦争中の冥界の話などを。

その遥か昔、まだ三種族が戦争を続けている時代、

ドラゴンは我関せずというスタンスを取っている個体が大多数を占めていたらしいが、

どちらかの種族に手を貸す連中もいたらしい。

そんなとき、ドライグとアルビオンが三種族が争っているど真ん中で戦いをはじめ、

三種族は戦争どころではなくなり、協力して二体のドラゴンを撃破した。

それがきっかけで戦争は休戦となったらしい。

「ドライグは相当、倒されたのを恨んでいるらしい。

ドラゴンはその巨体、その強大な力ゆえに下を見下すところがある。

ドライグはその性格を巨体規模の物を持っていたのさ。

だから、魂だけになっても奴は憎んでいる。人を、悪魔を、天使を。

その鬱憤をアルビオンとの戦いで発散しているのさ。その点、お前は不思議だ」

「何がだ」

「自然とドライグを宿したものはブーステッド・ギアという比類なき力のみ使用して、

または頼って闘ってきた。だが、お前はギアではなくドライグの体を、技を利用している。

まあ、流石に雷やら冷気やら重力やらはなかったがな」

ただのドラゴンがそんなものを使えるのならば少なくとも三種族に倒されて、

魂だけにされることはなかったさ。

だが、この魔法を作ったのも奴の魔力で作った。

つまり今は俺のものでもあり、奴の物でもあるということか。

「兵藤一誠。お前は白いのと決着をつけるのか」

「ああ……だが、運命とかそんなのはなしだ。俺はただ単に一度、

味わさせられた屈辱は何千倍にもして返す主義だ。次は確実に奴を倒す」

だが、その為にはあの魔法を完成させなければならない。

ドラゴン単体の魔法では奴を追い詰めることはできても完全に地に付すまで出来ない。

全てのドラゴンを……四種類のドラゴンを一つにまとめる必要がある。

そうすれば奴を倒すことができる……あくまで理論上はだがな。

何せ、反発がひどい。

炎、水、風、地。四つの基本属性が一つにまとまるということは森羅万象など目ではない。

だから、反発し、一つになることを拒む。ゆえに合わされば絶大な力が手に入る。

木を燃やし、辺りを明るく照らしている炎に魔法で生み出した炎を加え、

弱りかかっていた炎を強くする。

「いつの時代も争いはあり、その中で白と赤は戦い続けてきた。

今は小さな争いはあれど、昔のような大戦はない。その中でどう、

白と赤が決着をつけるのか、楽しみでもある」

タンニーンは口角を少し上げて、笑うと大きないびきを上げて眠りについた。

「……決着をつけないという場合は考えないんだな」

そう呟き、魔力で生み出した水を炎にかけて消火してから俺も眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

 

鍛錬の期間も終了し、

数日の休息期間の最終日にある魔王主催のパーティーの準備を俺たちはしていた。

とはいっても俺は学園の制服で済ましたのだが他の奴らが、

パーティー用の服装を着るらしく準備に時間がかかっていた。

「あら、兵藤君」

「会長」

ソファの背もたれに項垂れていると声をかけられ、

そちらへ目を向けるとパーティー用のドレスに身を包み、

若干の化粧を済ませた会長がやってきて、そのまま俺の隣に座りこんだ。

「今日はちゃんと着ているのですね。普段は少し、緩い感じでしたから」

「部長のお母様にこっぴどく叱られましてね」

会長はあぁ、とだけ言って黙った。

「……以前は匙が貴方に迷惑をかけました」

その話しに該当する出来事はすぐに思い出した。

俺が挨拶をしようとしたときに無理やり潰すように割り込んできたときのことだ。

どうも俺は奴に嫌われているらしい。

「彼は本当にあなたのことが嫌いらしくて……何度、

あの子を説得しても変わらない状態なんです」

恐らく会長は俺の事情を話していない……あの反応はいたしかたないのかもしれない。

そりゃ、そうだ。全部のテストで満点を出す代わりとして、

登校義務を免除する高校なんざ俺が通っている高校しかない。

一年前、会長もその制度をなくそうと動いたのだが上から圧力がかかり、

止めざるを得なかったらしい。そんな噂が去年は蔓延っていた。

「匙は今度のゲームにかなり気合が入っています」

「そうですか……気合いを入れようが入れまいが叩き潰す。

ゾンビのように何度も立ち上がろうが強制的に転移されるまで叩き潰す」

そう宣言した時に奥の方から部長達の魔力がこちらに向かって近づいてくるのを感じた。

その中には会長の卷属も含まれていた。

……アーシアにちょっかい出せば、この場で叩き潰してやる。

「お待たせ、イッ……どうしたの? そんな顔して」

「アーシア、なにもされていないか?」

「へ? ずっと、部長さんと一緒にいましたけど」

「なら良い。外でタンニーンが待っている。俺達を運んでくれるそうだ」

既に外で待機しているタンニーンのもとへ、

両卷属を案内するとタンニーンの卷属ドラゴンが外で待機しており、

待たせ過ぎだと叱られてしまった。

とりあえず、それぞれ何人かに分かれてドラゴンの背中に乗り、

パーティー会場へと向かった。

「ねえ、イッセー」

夜空を飛び、気持ちのいい風が俺達の頬を撫でる中、

後ろから部長が俺の腹に腕を回して抱きついてきた。

「……なんだ」

「さっき、ソーナに言われたわ。絶対に負けないって」

「そうか……なら俺たちも負けない」

「うん……この戦いは絶対に勝ってみせる」

その言葉には部長の強い意志が現れていた。

もう二度と負けたくない……そんな意志が今の言葉には感じ取られた。

安心しろ。二度とお前に負けを寄越す気はない―――――そんな言葉を口から言葉としては吐かず、

ただ部長の手に手を重ねた。

「良い雰囲気だが着いたぞ」

風がやみ、タンニーンが地上へ降り立った。

タンニーンの背中から降りると遠くに豪勢な作りのホテルがそびえたっていた。

そこはグレモリー領の端の方にある大きな森の中にぽっかりと存在しており、

辺りは木に覆われてホテルの方へと向かっていく毎に明るくなっていた。

「おれたちは大型の悪魔用のスペースに行く。兵藤一誠、あまり主を妬かせない方がいいぞ」

そう言い残して、タンニーンは自らの下僕とともに夜空へと消えた。

妬かせる……いまいち分からん。

それから俺達を迎えに来ていたホテルの従業員に連れられ、

高級そうなリムジンに乗せられ、ホテルへと向かった。

窓の外にはやたらと貴金属が光っており、どいつも高そうなドレスを着ていた。

……どうも、ここら辺は金の嫌な部分が凝縮されてそうだ。

「ひぃぃぃぃ! 今日は段ボール箱はないんですか?」

「ない。段ボール箱も紙袋もない。修行の成果見せてみろよ」

「よ、よぉぉぉし! 今日一日がんばりますぅぅ!」

ギャスパーの気合いとは裏腹に、

俺は『たぶん、数秒で涙目になって五分も経てばガタガタ震え始めるだろう』と考えていた。

その後、リムジンはホテルの入り口の前で止まり、

従業員の先導のもと会場になっている大きな部屋に案内され、

中に入ると一斉に視線が注がれた。

「……おい、足を震わすな」

「だ、だってぇぇぇぇぇ」

右足がやけに震えると思い、

下を向くと涙目でガタガタふるわせたギャスパーが俺の脚を共振させるほどにまで、

ガタガタさせていた。

まだ、泣き叫ばなくなった時点で成長したというべきか。

「さて、イッセー。あいさつ回りするわよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ」

疲れから思わず、息を大きく吐きながら壁に設置されている大きなソファに座りこんだ。

両隣りにはギャスパーとアーシア、木場が座っており二人とも疲れた様子であり、

ギャスパーにいたっては寝ている。

「色々と取ってきたぞ」

「悪いな」

ゼノヴィアに持ってきてもらった何種類かの食事に手をつけようとしたとき、

視界の端にドレスの裾が見え、

そちらを向くとそこには金色の髪を両方でドリルのようにセットした女が立っていた。

「お、お久しぶりですわ」

「……誰だっけ」

「ラ、ライザーフェニックスの妹のレイヴェル・フェニックスですわ!

まったく、下級悪魔はこれだから」

ああ、思い出した。

確かライザーの妹で、戦いにも参加していなかったビショップだ。

なるほど、フェニックスといえば悪魔の家の中でも上位の貴族だ。

こんなパーティーなんかには参加しないとおかしいか。

「まさか兄貴の仇撃ちか?」

「いいえ……貴方に敗れて以来、兄は変わりましたわ。

過去のゲームの映像を見るなり、

山へ行ってくると言って修行みたいなことを卷属でするようになりましたわ」

ほぅ。あの調子乗りのボンボンでいかにも坊ちゃんみたいな奴が、

山に籠ってまで修行をするまでになったのか。

今まで金持ちで上位で質のいい生活をしてきた奴は質は上げることができれど、

下げることはできないといわれていたが、

どうやら全員がそれに当てはまるわけではないらしいな。

「母も父も嬉しそうにしていますわ……家があれほど明るくなったのも久しぶりに見ました。

全ては貴方のおかげです……あ、ありがとうございました」

「……それだけを言いに来たのか?」

「なっ! こ、この私がお礼を申しておりますのよ!?」

「顔を見るからにそれ以外にもあるように思うんだがな」

図星なのか、顔を真っ赤にして悔しそうに服の裾を握っていた。

「あ、貴方という人はぁぁぁ! ……んん! わ、私とお茶でもしませんこと?」

「最初からそう言え。お茶くらいいつでもしてやる」

そう言いながら軽く凸ピンをしてやるとレイヴェルは顔を真っ赤にしてお凸を抑えながら、

驚いた様子でこちらを見てきた。

「よ、よろしいんですの?」

「構わん。お茶会ならむしろ行かせてもらう。静かなところが好きなもんでね」

「レイヴェル。旦那様の友人がお呼びだ」

レイヴェルの背後に立って、彼女に話しかけたのは仮面で半分、

顔を隠している女……イザベラだったと思う。

「わかりましたわ。では兵藤様」

「イッセーで構わん」

「で、ではイッセーさんまた」

上品そうな雰囲気を出しながらスカートを少し摘まんで、

広げて向こうの方へと走っていった。

「やあ、久しいね」

「そうだな」

「君も本当に強くなったものだね。あの時の一発はまだ記憶に新しい。

私の話も有名になるかな?」

「さあな」

「よい宴を」

そう言って、イザベラもレイヴェルが走っていった方向へと向かって歩いていった。

そこで、ようやく食事に手をつけようとしたときにまたもや視界の端に、

何かに集中した小猫が走っていき、エレベーターに乗り込んだ。

「……少し、席をはずす」

木場にそう言って、エレベーターに乗り込むと部長までもが入ってきた。

「……行くぞ」

「ええ」




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