『クゥゥゥ!』
「そうか。案内しろ」
小猫を捜索させていたガルーダから見つけたとの報告を受け、
ガルーダについていくと小さな広場のようなところに出た。
その広場の中心に小猫と黒色の着物を着た女が向かい合って立っていた。
「一匹の黒猫を入れるだけでお姉ちゃんの所に来てくれるなんて感動だにゃん」
よく見ると女の頭に猫耳、そして尻尾が生えているのが確認できた。
そうか、奴が小猫の話していた力に呑まれた姉という訳か……あまり、
雰囲気では狂っているようには見えないんだがな。
「悪魔になって少し経ったから様子を見に来たけど、随分と悩んでいるようにゃん」
姉だから分かるのか、はたまた同族だからかは知らんがどうやら、
彼女が抱えているコンプレックスを全て見通しているらしい。
「何の用ですか」
「にゃにゃ。悪魔がこんなところでパーチーを行っているって聞いたから、
それに参加しようかにゃ~って。私も悪魔だにゃん」
「ハハハハ! そりゃ無理っしょ」
上空から聞き覚えのある声が聞こえ、上を見上げると金色の雲に乗った猿のような風貌で、
背中に棒を背負った奴が小猫の姉の隣に降り立った。
たしか、やつはフェニックスとヴァーリを迎えにきた……美猴だったか?
「その量の魔力を消せるなんてすげえな。出て来いよ」
その声を聞き、安心しながら俺は奴らの前に姿を現した。
「安心した。気づかれなかったらどうしようかってな」
「話は聞いてるぜ?
フェニックスもヴァーリもお前にメロメロだったぜ?」
「それは困る。そんな奴らに襲われたらうっかり殺すかもな」
冗談のような内容を言い合ってはいるが、互いに牽制の眼差しは忘れず、ジッと睨みあった。
「いっやほぉぉぉぉぉぉう!」
「「「「っっっっっ!」」」」
突然の方向にこの場にいる全員が驚き、
上を見上げると背中に炎で作られた翼を生やした存在が地面に降り立った。
この魔力、この炎……やつか。
「兵藤一誠! 魔力も回復したし戦うぞ!」
「う、裏切りのフェニックス!? どうして」
「教えろ、こいつは何だ」
「私も文献でしか読んだことはないけど、彼はお兄様と同期の悪魔よ。
ライザー達とは兄弟だったんだけどまだ、
戦争真っ只中の時に消息が分からなくなって……死んだって言われていたけど」
そうか、確かこいつはフェニックスが俺に砕かれてからグラウンドに来たんだったな。
こいつを知らないで当り前か。
フェニックスの登場に肝心の敵側までも驚いていた。
「また、あんた命令違反して」
「はぁ? あんな私恨の塊の奴らに命令されて動くと思うか?」
フェニックスが二人にそう問うと、
二人はすぐに首を左右に振ってフェニックスの質問を否定した。
そこまで、奴の性格は知られているという訳か。
『フレイム・ドラゴン。ボー・ボー・ボーボーボー!』
魔法陣を展開すると、そこから炎を纏ったドラゴンの幻影が現れ、
俺の周りを数周旋回すると消え去り、俺は鎧を身に纏っていた。
奴が全身から炎をあふれ出すとそれに呼応してか鎧からも炎が噴き出した。
「部長。下がれ」
「え、ええ」
小猫を部長に任せ、後ろに下がらせた。
奴と戦う際に手を抜けば、一瞬で俺が殺されてしまう。
「ひゃあ!」
狂ったような叫びを発し、腕を前に向けたと同時に俺も腕を前に向けると、
そこから炎が火炎放射のようにまっすぐ放射され、二つの炎がぶつかり合い、爆発した。
その爆発時の爆風で周囲の木々の枝がバキバキと、
折れるんじゃないかと思うくらいの悲鳴を上げた。
「やるじゃねえか。一度、お前に倒されてから復活して強くなったんだが、
お前も強くなったらしいな。面白いぜ!」
『コネクト、プリーズ』
奴は手に炎を集め、真っ赤な剣を出現させ、
俺は魔法陣からアスカロンが保管されている空間へとつなげ、
そこから取り出し、同時に駆け出して真っ赤な剣とアスカロンがぶつかり合った。
ぶつかり合ったことにより、熱風と聖なるオーラがあふれ出し、
辺りの地面を大きくえぐる。
「てめえと戦って以来よ。他の奴らをぶっ殺しても楽しくねえんだよ。
だから、俺はてめえをぶち殺す! うらぁぁぁぁぁ!」
「ぐぉぁ!」
ゼロ距離で奴が放出した炎を喰らい、そのまま大きく吹き飛ばされた俺は空中で態勢を整え、
木を蹴って奴にアスカロンで切りかかるが奴の周りから炎が展開され、
壁のように立ちはだかり、俺がアスカロンで切り裂こうと振り下ろし、
刃が炎の壁に当たった瞬間、炎の壁が爆散した。
「ぐっ!」
『バインド、プリーズ』
「あ? こんなもん!」
俺は奴の周りの地面に四つの魔法陣を展開させ、
鎖を放出して拘束するが奴はそれを炎を吹き出しながら、無理やり引きちぎった。
ちっ! 一度、死んだあとの復活して強化された状態は厄介だな!
『ウォーター・ドラゴン。ジャバジャババッシャーン、ザブンザブン!』
『チョーイイネ! ブリザード! サイコー!』
青い魔法陣を展開し、そこへ手を置くと冷気が放出され奴に放たれるが奴は、
全身から炎を最大にまで放出し、それに抗った。
「フェニックスの俺に二度も同じ技は通用しねえ!」
「それはどうかな?」
『チョーイイネ! キックストライク! サイコー!』
足に水の魔力を集中させ、魔法陣へ突撃するように跳躍して飛行し、
魔法陣を通過した瞬間に、足に纏っていた水が一瞬にして凍りつき、
まるで巨大な足にでもなったかのような状態に変化した。
「だぁぁぁぁぁ!」
奴の最大の炎と氷の蹴りが直撃し、辺りに凄まじい爆風と冷気と熱風が放出された。
『ドリル、プリーズ』
「ぐぅぅぅ! 回転まで加えやがって!」
さらにドリルの魔法を発動させ、文字通りドリルのように回転するが、
それでも少し、奴の最大の炎の壁に食い込んだだけで未だに俺の蹴りと炎は拮抗していた。
「はぁぁ!」
「ごっ!」
「っ! 小猫!」
突然、フェニックスが息を吐きだし、魔力を大きく減らしたかと思うと、
奴の背後で拳を握り締めて殴った後のポーズを取っている小猫がいた。
「私は…………私はイッセーさんの傍に居たいんです!」
「ガキがぁ! 俺の魔力を削りやがって!」
魔力が大きく減った今の奴なら行ける!
「だぁぁぁぁぁぁぁ!」
「ぐぁぉぁぁ!」
力が弱まった炎の壁を完全に打ち砕き、そのまま氷の蹴りを加え、
奴を蹴り飛ばすとそのままアスカロンの刃に手を添えた。
『ウォーター・スラッシュストライク。ジャバジャババッシャーン!』
「だらぁ!」
「うあぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
水の斬撃が放たれ、奴を真っ二つに切り裂くと大爆発を上げた。
例え、今倒しても奴はまた強くなって蘇る……だが、完全に復活するまで時間がかかる。
その間に強くなればいいだけのこと。だが、今はこの状況だな。
「ひゅ~。ヴァーリの言う通り、魔法使いだね~。セイグリッドギアの力も、
イーヴィルピースとやらの力も使わねえ。こりゃ、手ごわいねえ~」
だが、そう言う奴の表情には楽しそうなものが見えた。
「フェニックスは後で蘇るから放っておくとして………美猴。帰るにゃん」
「良いのか? お前、妹さん持って帰るんじゃなかったのか?」
「興が削がれたにゃん。それにいつでも持って帰れるし」
ふと、小猫の姉は俺と視線を合わせ、口パクにも等しいくらいの小さな声で俺に、
『妹を頼むにゃん』と言ってきた。
恐らく、後ろの二人にも聞こえはしないほどの小さな声。
何故、俺にだけ聞こえたのか……偶然か、はたまた奴の力か……だが、
どちらにしろあいつは俺を選んだ。妹を任せる相手として。
だから、俺も言い返した。二人には聞こえない声量で。
『任された』と。
まさかのこの作品が原作に追いついたし。(書きためがね)