次の日から俺とアーシアは二人三脚の練習を始めた。
だが、やはり身長差、力の差に大きな壁があり、最初は中々、
うまくいかなかったが何回も回数を重ねていく毎に彼女もコツをつかんだのか、
徐々に長い距離を走れるようになっていった。
五十メートルを走り終え、休憩をしているとアーシアは表情を陰らせたまま、
俺の隣に座りこんだ。
「アーシア、思っていることを言ってみろ」
「……あの時、彼を救ったことを後悔していません」
以前、部長から彼女の過去を聞いたことがある。
アーシアは身に宿しているセイグリッドギアにより教会内では聖女と崇められていたが、
ある日、傷ついた悪魔を癒したことから彼女の人生は百八十度変化した。
教会からは魔女の烙印を押され、彼女は追放処分となった。
「もし……もしも、元の生活に戻れたらどうする」
「――――――――っ」
彼女は声を詰まらせ、難しい表情を浮かべ、考えた。
仮に彼女が今、天界へ行ったとしても協力体制となった今では彼女の待遇は良いだろう。
傷を癒す力を持ち、さらに元来彼女が持っている明るさで知らずと癒される……俺もそうだ。
知らず知らずのうちに俺はアーシアを……実の妹のように過保護と言われるくらいにまで、
護ってしまうくらいにのめり込んでしまった。
「戻りません」
彼女は笑みを浮かべ、そう言った。
「私はずっと、イッセーさんの傍にいます。前に言ったように私は、
イッセーさんから卒業します。でも、それは傍から離れるわけではありません。
イッセーさんに頼らずに自分で生きていく意思表示なんです」
俺は別に頼っていいんだぞと言おうとしたがすぐにやめた。
彼女の真剣な表情に俺は押し負けたんだ。そのまま俺達は練習を続けた。
その日の放課後、俺は小猫と将棋、アーシアとオセロ、
そして木場とチェスを同時に行っていた。
三人が同時に申し込んできたから一手に引き受けてやった。
「チェックメイト、王手、パーフェクトゲーム」
チェス盤には倒れたキングの駒、将棋盤の上には四方八方を囲まれた王、
オセロ盤には俺の持ち色の白色しかなかった。
三人とも今の状況にありえないと言いたげな表情を浮かべていた。
「凄いわね。ソーナとも対等に戦えるんじゃないかしら」
まだ、会長とは戦ったことはないがおそらく今の俺の頭脳じゃ追いこむことはできても、
止めを刺すことはできないだろうな。
それほど、会長の頭脳は凄い。
伊達に三年の中で一番の頭脳を持っているわけじゃない。
「しかも、三つの種類も考え方も違うゲームを同時進行するなんて。
もう、イッセー君の頭は三つの脳でもあるんじゃないでしょうか」
それだと俺は研究機関に連れて行かれるな。
ま、これでも伊達に登校義務免除生じゃありませんからね。
「んじゃ、全員集まれ。若手悪魔のゲームのビデオを見るぞ」
アザゼルの一声で全員がテレビの前に集まり、流れる映像に目を向けた。
俺たち以外にも若手悪魔はゲームを行っていると聞いた。
バアル家とグラシャラボラス家、アスタロト家とアガレス家、
そして先日行われたグレモリー家とシトリー家。
映像が流れ、最初は和気あいあいとした雰囲気だったのが一気に変わった。
雰囲気が変化した地点がバアル家とグラシャラボラス家とのゲーム映像だった。
「狂児……奴はそう呼ばれていた。が、結果はこれだ。
奴はもう終わりだ。精神に恐怖を植え付けられちまった」
画面の端っこでグラシャラボラス家の次期当首がガタガタと、
全身を震わせながらリザインの旨を申し出た。
そこで映像は終わった。
「面白いものを見せてやるよ」
そう言い、アザゼルが魔法陣を発動すると宙にグラフが表示された。
そこには俺、サイラオーグ、部長などのそれぞれのルーキーの主の名前が表示されていたが、
何故ただの下僕である俺の名前が表示されているのかはわからない。
「上が今、注目を集めているやつのパラメータを作ったんだ。
サイラオーグ、ソーナ、リアス、ディアドラ、そしてお前だイッセー。
上役はグラシャラボラスよりもお前に注目している」
そう言うと、グラフから赤い線が天井に向かって伸びていき、
俺とサイラオーグの線が天井に届いてもなお伸び続けていた。
「サイラオーグはパワー、お前はウィザードの部分がこれだ。
リアスはパワーよりのウィザード。ソーナはテクニックの部分が秀でている」
グラフを見ていると突然、
俺達の背後で光り輝く魔法陣が出現し、部室がその輝きで照らされた。
振り返ると見覚えのない文様の転移用魔法陣が展開されていた。
「アスタロトですわ」
朱乃がそう言ったとたん、魔法陣が消え去りそこから笑みを浮かべた男が現れた。
「ごきげんよう、ディアドラ・アスタロトです。アーシアに会いに来ました」
……相変わらずこのニコニコ顔が鬱陶しくて仕方がない。
俺は今すぐにでもぶっ飛ばしたい衝動を何とか抑えて、急遽、
行われることになった話し合いの準備を行い、それを終えると俺たち下僕は部長の後ろで待機し、
部長はディアドラと対面する形で座った。
「単刀直入に言います。ビショップのトレードを申し込みます」
トレード……キング同士で了解が取れた場合にのみ可能な契約であり、
互いの同じ駒を交換するという。
今の場合、向こう側のビショップと俺達側のビショップ――――つまり、
アーシアかギャスパーをトレードするということになる。
「ぼ、僕ですか!?」
「取り敢えず、ギャー君は段ボール箱に」
小猫が片腕でギャスパーを持ち上げ、段ボール箱の中に放り込んだ。
今、この状況でいえば当てはまるのはアーシアか。
「僕が望むのはアーシア・アルジェント」
その瞬間、アーシアが俺の手を握ってきた。
その手からは嫌だという明確な意志が俺に流れてきた。
「こちらが用意するのは」
「ごめんなさい。先に言っておくわ、
私はトレードを呑んだわけじゃないしトレードをするつもりもないわ」
きっぱりそう言うとディオドラは驚いたように顔をキョトンとさせた。
ほらな。部長が早々、アーシアを手放すはずはない。
「それは能力? それとも彼女自身の魅力?」
「すべて。彼女は私の卷属悪魔であり、私の大事な家族よ」
「部長さん!」
アーシアは部長の家族という言葉を聞き、グリーンの瞳を涙で潤わせた。
部長だけじゃない。
この部室にいる全員がアーシアをあいつに渡すことに賛成する奴など誰一人としていない。
「そうですか。今日のところは帰りますが、諦めませんよ。また会おう、アーシア」
そう言い、彼女の手のひらにキスをしようとしたところで俺はすぐさま、
奴のもとへと歩いていき、奴の胸倉を掴んでアーシアから離した。
「何かな?」
「わからないのか? アーシアに触れるな」
「君に命令されることはないな。退きなよ」
「俺もお前に命令されることはない。消えろ」
二人の間に一触即発の空気が流れ始める。
「薄汚いドラゴンが触れるな」
俺が奴に手を出そうとするよりも早く、アーシアがディオドラの頬をはたき、
キッと強く睨みつけた。
「イッセーさんを悪く云わないでください!」
奴はアーシアにはたかれながらも薄らと笑みを浮かべていた。
ここまで来たらもう、驚きどころか不気味さを感じる。
その時、アザゼルの携帯に連絡が入り、奴が通話に出ていくつか返答をしてポケットに直し、
俺達の方を見てきた。
「ゲームの開始日が決まった。五日後だ」
「なら、僕はゲームで兵藤一誠を倒そう。そうしたら僕の愛を――――」
「遺書を書いておけよ。少し、
手がすべってお前の頭を凍らせて砕いちまうかもしれないからな」
その日はそこで終わり、ディオドラは帰っていった。
部員達が帰る中、俺はアザゼルに話があると言って全員が部室から離れるまで待ち、
話し始めた。
「何かあるのか?」
「アザゼル。俺の中に宿るドラゴンを知っているのは」
「俺、ヴァーリ、オーディン、タンニーン……その位だろう」
「……奴は俺のことを薄汚いドラゴンと言った」
そう言うと、アザゼルもそのことについて疑問を感じていたらしく奴は首を縦に振った。
「やつは裏でつながっているかもしれない」
毎日三話更新しても夏休みは持つくらいにありますよ。
良く、書きあげたな……やっぱり、二次創作のほうしか書けないのかね。