数日後の晩、ゲームの日が近いこともありトレーニングをしていた俺は大浴場で汗を流し、
部屋へと戻ろうとしたときにふと、トレーニング室の明かりがついていることに気付き、
のぞいてみるとゼノヴィアが木刀を振っていた。
その表情は今まで見たことがないくらいに思いつめたような顔をしていた。
……先日のゲームの影響か。
「イッセーか?」
「邪魔したな」
そのまま部屋から離れようとすると彼女に腕を掴まれ、
そのまま部屋に無理やり気味に引きこまれた。
「少し喋らないか?」
「……そうしよう」
ゼノヴィアの申し出を受け入れ、中に入り、
地べたに座るとその隣にゼノヴィアが座りこんだ。
が、互いに何を話せばいいのか分からないようで時計の針が動く音が聞こえるほど、
部屋の中には沈黙が流れていた。
「イッセーは魔王になるのか?」
沈黙が流れる中、最初に沈黙を破ったのはゼノヴィアだった。
「いや。今のところ、夢はない」
「そうか……なら、将来上級悪魔になればどうする」
「独立だろうな」
「な、ならば」
ゼノヴィアは急に声を上ずらせ、顔を紅潮させて俺の手を握ってきた。
「わ、私もつれていってはくれないだろうか。
アーシアもおそらく、お前についていくだろう」
予想外の頼みに俺は少し驚いてしまった。
まさか、連れて行ってくれとお願いするとはな。
「考えておこう。そろそろ寝た方が良い」
「ああ、そうする。じゃあな、イッセー。お休み」
そう言って、ゼノヴィアは去り際に俺の頬にキスをして去っていった。
「そろそろ時間ね」
部長の一言で俺たちは立ち上がった。
決戦当日、俺達は旧校舎にあるオカルト研究部の部室に集まっていた。
既に舞台へと俺達を転送する魔法陣は展開されており、
俺たちはその中央に乗って転送のその時を待っていた。
相手は現ベルゼブブを輩出したアスタロト家。
二度とアーシアに近づけないほどにボコボコにしてやる。
そんなことを思っていると魔法陣が輝き、転送の準備が行われはじめると俺は、
アーシアの手を優しく握りしめ、転送の時を待った。
数秒後、輝きが最大になり視界が光に埋め尽くされた。
転移された場所はところどころ古びれた様子を見せる神殿だった。
「おかしいわね」
部長は怪訝そうな顔を浮かべ、周りを見渡す。
いつまでたってもアービターからの放送が入らないことも疑念を増幅させる要因の一つだった。
すると、眼前に次々と魔法陣が展開されていき、ローブに身を包みこみ、
俺たちに明らかな殺気を放ってくる悪魔が大量に目の前に現れた。
「偽りの魔王の妹君。ここで散れ」
今の一言で全ての状況を理解した。
今、眼前にいる悪魔たちは旧魔王派に傾倒した奴らか。
「キャッ!」
叫び声が聞こえ、
慌てて振り返ると先ほどまでアーシアがいた場所に彼女の姿がなかった。
上を見上げてみると醜悪な笑みを浮かべているディオドラと、
拘束されているアーシアが宙にいた。
「お前、最初からこれが目的か」
「まあね。君たちはここでカオス・ブリゲードのエージェントに
やられてお終いさ。いくら君たちでもこの数の中級、上級悪魔には勝てない。
じゃあね~。僕は一足先にアーシアと契りを交わすよ」
「させるか」
『バインド、プリーズ』
四つの魔法陣が展開され、そこから鎖が放たれて奴に向かっていくが鎖が、
拘束する前に奴は消え去った。
あの野郎……塵になるまで叩き潰す。
「待ちなさい、イッセー。憎しみに囚われたらそれこそ止まらなくなるわ」
「よう言った。リアス嬢よ」
「オ、オーディン様!? 何故、ここに」
突然のオーディンの出現に部員全員が驚いた。
なんせ、アースガルズの主神さまだ。驚くのはいたしかたない。
「魔法使いの坊主。憎しみに囚われたまま魔法を使えば後に残るのは“無”だけじゃぞ」
残るものは何もない……。
俺は一度、深呼吸をし、気持ちを落ち着かせた。
「ん、それで良い。アザゼルからの贈り物じゃ」
それぞれ、オーディン様が放り投げたものを受け取るとそれはいつも、
ゲームで耳につけているイヤホンマイクだった。
なるほど、奴はこれを見越していたという訳か。
「ここはワシに任せてはよう行かんかい」
「ここは任せます! 皆行くわよ!」
大量の悪魔をオーディン様に任せ、
俺達はイヤホンマイクをつけながら神殿に向かって走り出すと、
イヤホンからアザゼルの声が流れてきた。
『俺だ。聞こえるか』
「ああ、聞こえる」
『端的に話す。旧魔王派がゲームを乗っ取り、現政権関係者を殺しに来ている。
今、俺はレヴィアタンとサーゼクスと一緒にVip席を護っている。
それに、他の組織の奴らも来ているからすぐにこの戦いは終わる』
「他の組織にも秘密裏に示唆したのか……この戦いをあえて引き起こしたのか?」
『……あぁ』
数秒間の空白の後にアザゼルは申し訳なさそうにそう呟いた。
『すでにイッセーからの報告で感づいていた。俺はこれをチャンスだと考えている。
旧魔王派は今後、世界に悪影響を与えかねない存在だ。
その存在を一網打尽に出来るまたとないチャンスはおそらくもうない』
「仮にあえて引き起こした戦いで俺達が死ねばどうする」
『……俺の首で事足りるなら喜んで差し出した』
自らの命を差し出すまでの覚悟か……それほどまでにこの戦いで、
悪影響を与える因子を一掃するつもりか。
そこまでしてこいつは今後、
俺たち若い世代が生きるであろう平和な世界を作ろうとしている。
大戦を戦った故の考えか……。
『戦いは直に終わる。神殿の地下に広い空間がある。
そこで戦いが終わるまで待っていてくれ』
「……アザゼル、一つ言っておいてやる。その頼みを俺達が聞く前提で、
話しているなら見くびり過ぎだ。
ここにいる奴らは仲間を攫われておきながら避難するようなやつはいない』
『…………だな。悪かった。アーシアに関しては聞いている。
お前達の手で助け出してこい! 神殿が吹っ飛ぶくらいに暴れて来い! 責任は俺が取る!』
そこでアザゼルの声は途切れ、通信は切れた。
神殿の奥へと向かって進んでいると広い空間に出た。
その空間に既にディアドラの下僕と思わしきフードを被った十人の悪魔が立っていた。
『やあ、よく来たね』
何処からともなくディオドラの声が聞こえてくる。
どうやら魔力で声をこちらにまで飛ばしてきているらしい。
『破断になったゲームをしよう。君たちが使った駒は僕の所に
来るまで二度と使えない。これで行こう。
ちなみにそこにいる十人のうち八人は既にクイーンにプロモーションしているから』
そこで奴の声は消えた。
「こちらはイッセー、ゼノヴィアを出すわ。好きにやってちょうだい」
部長に言われ、ゼノヴィアとともに一歩前に出る。
「イッセー。すまないがアスカロンを貸してくれないか?」
『コネクト、プリーズ』
彼女の要望通り、魔法陣に手を突っ込んでアスカロンを取り出し、
彼女に渡すと俺は木場からひと振りの魔剣を借りた。
『ハリケーン、プリーズ。フー・フー・フーフーフー!』
魔法を発動し、籠手を緑色へと変えると辺りに風が吹き荒れ、
俺の身体が少し地面から離れた位置にまで浮かび上がった。
「ゼノヴィア、そっちの二人はくれてやる」
「ああ」
「「さあ、ショータイムだ」」
二人同時にその言葉を言い放ち、相手に向かっていった。
「私には友はいなかった」
ゼノヴィアは相手の攻撃を二本の剣でいなしながら独り語りを始めた。
無論、俺も風に身を任せ、
高速で回転しながら相手を切りつけたりしながら彼女の話に耳を傾けた。
「神の愛さえあれば生きていける……だが、それは間違っていた。
神などいなくても生きては行けるが友なしには生きていけない!
貴様らは私の無二の親友を攫った! アスカロン! デュランダル!
この愚かな者たちを! 私の親友を奪った者たちを倒すために力を!」
二つの強大な聖剣が互いに強力な聖なるオーラを放ち、
共振させていくと辺りの地面に大きな穴をあけていく。
その共振はさらに大きくなっていく!
ゼノヴィアは二本の剣を逆手に持ち、
相手の二人に向けて下から上へ勢い良く上げると同時に放たれた聖なる波動が一つとなって、
大きな波となり、相手を飲み込むと一本の白い光を天にまで伸ばした。
『ハリケーン・ドラゴン。ビュー! ビュー! ビュービュービュー!』
ゼノヴィアの決着がついたのを見届けた俺は龍の魔法を発動させた。
「フィナーレだ」
『チョーイイネ! スペシャル! サイコー!』
『チョーイイネ! サンダー! サイコー!』
自身の頭上に緑色の魔法陣を展開し、己に向けて最大威力のドラゴンの雷撃をぶつけると、
雷撃が俺を包み込み、ドラゴンの翼がバチバチと雷撃を纏った形になり、
その大きさを徐々に大きくしていく。
『ドリル、プリーズ』
魔法を発動させ、雷撃を纏った状態の翼のままで高速回転するとさらにバチバチ! と、
強い放電がおこり、回転を止めると雷撃を纏った巨大な竜巻が放たれ、相手八人を飲み込んだ。
竜巻は相手を飲み込み、数秒間、回転を続けた後、
一気にそのサイズを小さくして溜めこんだ雷撃を放出するかのように大爆発を上げた。
ていうか、今日祝日じゃないっぽいのにジャンプが
本日発売のところになかった……自分のミスか?