「――――グングニル」
オーディン様の左手に槍が出現し、それを持ってイッセー君めがけて斬りかかるが、
イッセー君はそれをアスカロンで防ぎ、先ほどの全てを破壊する魔力弾を放つが、
オーディン様は寸前のところで首を傾けることでかわし、右手にもう一本の槍を生み出し、
それを握り締めてイッセー君めがけて放とうとする――――――。
「むっ!?」
オーディン様は突然、放つのをやめ、上空へ上がるとオーディン様がいたところに、
さきほど避けられた魔力弾が通過し、地面に着弾して巨大な穴をあけた。
慌ててオーディン様の周りの空を見てみると離れた所に空間を繋げる魔法陣が展開されていた。
避けられた魔力弾を空間を繋げることでもう一度、オーディン様に向けたのか!
そこからイッセー君の姿が消え、オーディン様が徐に槍を交差させたものを後ろへ、
とブーメランのように投げつけるとそこへイッセー君が現れ、
槍が直撃し、地面にたたきつけた。
「ふむ。中々の強さじゃったがいかんせん、魔力が禍々しすぎた。
それでは自分の位置を教えているようなものじゃぞ」
そう言いながらオーディン様は地面に足をつけ、地上に降り立った。
たった、数分の出来事だった。
これがアースガルズの主神の力っっっ!?
突然、凄まじい圧が僕たちに襲いかかった! す、すごい圧だ!
「……あれを直撃してまだ立ち上がるか」
オーディン様の驚いた声が聞こえ、何とかして顔をあげるとそこには左の脇腹か、
ら円状に抉られたイッセー君が立っていた。
さらにそこから何かグジュグジュと音を立てながら排出され、
穴をふさぐように動き出し、最終的に元の状態に戻った。
「―――――グングニル」
オーディン様はもう一度、槍を投げつけた……が。イッセー君は避けようともせず、
先ほどと同じ個所に直撃する――――が、あっけなく槍は砕け散った。
「超回復か」
オーディン様は小さく呟いた。
筋力トレーニング後に二十四~四十八時間くらいの休息をとることによって、
起こる現象で休息の間に筋肉の総量がトレーニング前よりも増加することを指す。
それをイッセー君は怪物級の規模に拡大して行っているということか。
刹那、イッセー君から凄まじい明かりが放たれた!
くっっ! こ、この光はイッセー君の魔法!
さらにそこからギュゥゥゥゥ! という魔力が凝縮される際に聞こえる音が響いた!
ま、またあの破壊弾を放つつもりなのか!?
そう思い、目が見えないなりにも力を入れて衝撃に耐えようとした瞬間、
僕たちの目の前に感じたことのある魔力が四つ現れた。
「なんだありゃ。俺の予想では覇龍を発動したと思ったんだがな」
声から察するにアザゼル先生らしく、目の機能が回復してから前を向くとそこには、
レヴィアタン様、サーゼクス様、アザゼル先生、そしてヴァーリが立っていた。
す、すごいメンツだ。さっきの魔力弾もあの四人の誰かがはじいたのか……。
「おい爺。ちょいと向こうから帰還命令が来てるぜ?
なんでもバカがいざこざを起こしているらしい」
「ふん。そうか……気をつけろ。奴は相当じゃぞ」
そう言い残して、オーディン様は姿を消した。
「さて、アルビオン。どう見る」
『そうだな……結論からいえば覇龍だ。
奴はヴァーリと同じように莫大な量の魔力を代償として発動している。
だが、ヴァーリとは少し違う……覇龍を発動すればドラゴンらしさが出るが、
奴にはそれが感じられない。言い表すならば……覇人』
アルビオンが僕たちにも聞こえるように宝玉から声を響かせてそう話した。
「そうか。では、未確認の力と見た方がいいか」
「私もサーゼクスちゃんに賛成♪」
頼もしい。四代魔王のうち、二人も来て下さり、
さらには堕天使総督の先生、それに白龍皇のヴァーリが来てくれた。
ここにオーディン様も加われば本当にすごかった。
「それにしても凄まじく禍々しい魔力だ。アザゼル」
「なん」
そこで一瞬、全ての音が消失した。
一筋の光がアザゼル先生の耳の近くを通った。
なん……今何が……。
慌てて周りを見渡すと僕たちが集まっている場所よりも、
ほんの少し離れた所に深いひび割れが走っており、
そこからはすでに異次元の狭間の無のオーラらしきものが出ていた。
アザゼル先生は耳を押えながら、イッセー君から離れた。
先生ですら反応できない速度で移動するなんて!
「みんな! ここから脱出するんだ! ここは直に崩壊する!」
サーゼクス様の言葉に全員が同時に転移用魔法陣を展開させ、
転移の準備を始めた。無論、僕たちも準備を始めている。
「イッセーさん!」
「アーシア! もう転移が始まるわ!」
「でも、イッセーさんが!」
アーシアさんが部長に止められ、イッセー君に手を伸ばした瞬間に魔法陣の輝きが、
最大となってゲーム会場であった空間から脱出した。
「イッテ~」
「大丈夫かアザゼル」
僕たちは冥界のはずれにある未開発の更地へと転移し終わり、
今はアーシアさんがアザゼル先生の耳を治療していた。
どうやら至近距離での爆音のせいで鼓膜が破れたらしい。
「サーゼクスが俺を呼んでなかったら今頃、
耳の鼓膜じゃ済まなかったぞ……来たか」
突如、空間にビキビキと音をたててヒビが無数に放射線状に走り、
バキィィン! とガラスが砕けたような音が響き渡ると、
そこから禍々しいオーラを放ちながらアスカロンを持ったイッセー君が現れた。
「まさか次元の狭間を直接通って出てくるとはな……次元の狭間の“無”すらも、
防ぐほどの魔力か……面白い。それでこそ俺のライバル」
イッセー君がこちらへと一歩一歩、
歩いてくる毎に体の芯が凍え、体全体がガタガタ震えてくる。
ギャスパー君にいたってはすでに泣いている。
「んじゃ、開戦の合図は俺がしてやる!」
そう言い、先生は手に極太の光の槍を生み出すとイッセー君めがけて放つが、
突然、彼の背後から炎が吹き荒れ、槍を飲み込み、燃やしつくした。
離れている僕たちのところにまで熱風が届いた。
なんて火力なんだ……フェニックスを倒したのも分かる。
『DividDividDivid!』
「ちっ。ほとんど変化なしか」
ヴァーリは上空へ飛びながらセイグリッドギアの能力を発動するが、
ほとんどイッセー君の魔力量が変化しないことから諦め、すぐさま
吸収した分の魔力で巨大な魔力弾をイッセー君めがけて叩きつけるが、
彼はそれを片腕で抑え込んだ。
例え半分にされてもそれを上回る速度で回復しているのか?
「そのままにしておいてくれ!」
サーゼクス様が掌に滅びの魔力を凝縮したものを球状に変化させ、
そのままイッセー君の腹部に押し込もうとするけどそれは、
彼の足蹴りで腕を別方向に向けられたことで不発となった。
「ていやぁ!」
今度はレヴィアタン様が細長い氷の槍をいくつもの作り出して、
イッセー君めがけて放つが、彼の前に魔法陣が展開され、そこから冷気が放出された。
「はっは~ん。冷気ならお姉さん負けないぞ♪」
そう言い、レヴィアタン様も目の前に青い魔法陣を展開させて冷気を放出し、
冷気と冷気がぶつかり合ったことで周囲の温度がガクンと下がり、
僕が吐く息が白くなって見えた。
それに周囲の地面は凍りついている……凄い。これが魔王の力か。
「うぉ!」
イッセー君は今まで支えていたヴァーリの巨大魔力弾を向こうの方へ投げ、
同時に飛びかかってきたサーゼクス様と先生を相手取った。
サーゼクス様の滅びの魔力の球を態勢を崩してかわし、先生の槍での攻撃をアスカロンで防ぎ、
背後から迫ってくるヴァーリの魔力弾を足蹴りで違う方向へと受け流した。
……もう、正直僕たちとは異次元の戦いだ。
「っ! イッセーから離れろ!」
先生の掛け声に従い、全員がいっせいに彼から離れた直後!
彼の足もとから巨大なドラゴンの形をした雷撃が放出され、
四人を睨みつけるように四体の雷撃のドラゴンが生まれた。
「もぅ! 魔法使いちゃんは手品が上手なんだから♪」
そう言い、ドラゴンに向けてレヴィアタン様が手のひらを向けたとたん、
ピキピキとドラゴンが音をたてて凍っていき、最終的に完全に凍り付いた。
ぶ、物質だけじゃなくて魔法すらも凍らせることはできるのか!
すると、イッセー君は標的を先生に定めたらしく、先生に斬りかかった。
「はっ! お前の考えはあってるぜ! この中じゃ俺が一番、
倒しやすいからな! だが、教え子には負けねえぞ!」
先生はイッセー君のアスカロンの剣撃を全て光の槍でいなしながら彼の脇腹に、
足蹴りを加えて蹴り飛ばした。
「三人とも手を出すなよ。今は俺がやる……うぉ。力持ち」
イッセー君は飛ばされた場所の地面を大きくくりぬいた、巨大な岩石を片腕で持ち上げると、
宙に浮かびあがってから先生めがけて思いっきり投げてきた。
「こんな程度じゃ俺の注意は引けねえぞ!」
叫びながら先生は光の槍を岩石にぶつけた瞬間! イッセー君が凄まじい速度で、
拡散する破片から姿を現わし、アスカロンでいまにも先生を切り裂かんとしていた!
「先生!」
「ぅぬぅぉぉ!」
ギリギリのとことでかわした先生はすぐさま、距離を取り、
光の力を最大限にまで注入した極太の光の槍をイッセー君めがけて投げようとするが、
高速で先生の所にまで移動したイッセー君が素手で先生の槍を掴んだ!
辺りにはバジバジィと音が鳴り響く!
う、嘘だ! 遠くにいる僕たちでもチクチクとした痛みを感じるのに、
あれを素手で受け止めるなんて!
直後、彼はそのまま光の槍を握りつぶし、爆発が起きた。
『グゥゥゥゥゥ』
「っっ!」
「アザゼル!」
サーゼクス様がアザゼル先生のもとへ駆け寄ろうとした瞬間!
アスカロンが振り下ろされ、先生を切り裂いた。
眠いぜ! ていうか夏休みもあと二十日くらいしかない!