ハイスクールD×D inウィザード   作:kue

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第五十一話

イッセー君が封印されてから数日後、イッセー君の自宅に思わぬ来訪者が来た。

「来たぞい」

「朝早くから申し訳ありません」

その思わぬ来訪者とはアースガルズの主神、オーディン様とその付き人らしき女性だった。

凄い人の来訪に口をあけて驚いている僕の後ろから先生が不意に、顔を出してきた。

「お、来たか爺。木場、全員を集めてくれ」

「わかりました」

全員が集まるか分からないという不安を抱えながら僕は先生の言う通り、

各部屋にバラバラにいた皆を最上階に設けられているVipルームに集合させた。

中でも一番苦労したのが朱乃さんだ。まるで死んだように虚ろな表情をして、

どこを見ているか分からなかった。

どうにかして朱乃さんを連れてVipルームに入るとオーディン様と、

御つきの人以外にもう一人、来客がいた。

その来客を朱乃さんが見た瞬間、

今までの死んだような顔が嘘のように鬼のような形相に変化した。

どうやら先生も朱乃さんと対面させる気はなかったのか、

しまったっと言いたげな顔をしていた。

「え、えっとはじめまして。私はオーディン様の付き人を

していますロスヴァイセと申します」

今、僕達の状況を全く理解できていない付き人の女性――――ロスヴァイセさんの自己紹介を、

聞いても、誰も顔すら向けずにただただ、悲しい表情を浮かべていた。

僕は動けない皆を代表してそれぞれの紹介をしていくけど……正直、

僕もかなりギリギリの精神状態だ。

今こうやって動けている事態が凄いと思う。

「なんじゃなんじゃ? まるで通夜のようじゃな」

「爺。そんなことを話しに来たんじゃないだろ。皆、聞いてくれ。

今、爺は日本の神々と会談をすることになっててな。

日本にいる間、爺を俺達で護衛することになった」

だから、オーディン様が僕たちを訪れたのか……ただ、

時期的に最悪なタイミングなのは間違いない。

恐らく先生もイッセー君を入れた前提で計画を練っていたに違いない。

もう、彼は―――――――。

「最近、英雄派はどうじゃ?」

「困ったもんだ。やっていることはどの派閥よりも残酷だよ」

その後も最近のカオス・ブリゲードの動向などについて話され、

オーディン様が日本の街を下見に行くと言って出ていったことで小さな会議は終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「朱乃。話が」

台所で水を飲んで、部屋へと帰ろうとしたときにふと曲がり角の向こうから、

バラキエルさんの声が聞こえてきた。

バラキエル……アザゼル先生がトップを務める堕天使の中枢組織であるグリゴリの幹部で、

朱乃さんの父親でもある。

朱乃さんが雷の巫女と言われる起因はバラキエルさんが非常に、

強力な雷を使えるところから来ていると思う。

朱乃さんの才能もあったかもしれないけど……9割以上が、

バラキエルさんの遺伝子を持っているからだ。

少し顔を出して窺って見るといまにも襲いかかりそうな目つきをした朱乃さんが、

バラキエルさんを睨みつけていた。

「何か用」

「お前と話がしたい」

「笑わせないで。今更な貴方と話をする気なんてないわ。

こんな会話をしているのも嫌なんだから」

そう言って、朱乃さんはそのまま自分の部屋に入ってしまった。

やっぱり…………イッセー君を心の支えにしていた人のほとんどが荒れてしまっている。

アーシアさんと部長、朱乃さんがそれが顕著に表れている。

ゼノヴィアや小猫ちゃんも表には出ていないけどいつもとは違う。

「貴殿は兵藤一誠のことはどう思う」

っっ…………気づかれていたのか。

僕はバラキエルさんの前に出た。

「彼は……イッセー君はこの卷族の最後の希望でした」

「最後の希望?」

「はい。皆、彼を心の支えとしていました。ですがその支えが今はなくなり、

皆の心はグラグラに揺れています」

これがグラグラに揺れているだけでもまだマシな方だ。

心が完全に崩れ去ったら今度こそ本当に、グレモリー卷族は機能を失って瓦解していく。

「そうか……すまない、時間を取らせた」

「いえ」

そう言って、バラキエルさんはアザゼル先生がいる最上階へと上っていった。

 

 

 

 

 

 

 

翌日、僕たちは日本上空にいた。

僕たちは今、バラキエルさん、部長、アーシアさん、小猫ちゃん、オーディン様、

御つきのヴァルキリーであるロスヴァイセさんが乗っているスレイブニルという

軍馬の馬車を飛行しながら警護していた。

一時は機能しないと思っていたグレモリー卷族だけど今はなんとか機能している。

でも、朱乃さんは先生の言うことを聞かない、部長も時折ボーっとしている。

「――――っ!」

その時、背筋を何か冷たいものが走り、動きを止めて上空を見上げると空高くからローブを、

身に纏った人物がゆっくりと僕達の目の前に降りてきた。

若く、目つきが少々悪い男だった。

突然のことに驚いて停止したスレイブニルの馬車から続々と乗っていた人たちが出てくる。

ロスヴァイセさんがその男性を確認すると驚きに顔を染めた。

「やあやあ! 我こそは悪神ロキ!」

男性はマントをバット広げ、声高々に叫んだ。

ロキ! なんでこんなところに神が! いや、

それよりもこの馬車には主神が乗っているということを知っての行動なのか!?

「これはこれは、ロキ殿。何かご」

直後! 空から雷撃が降り注いでロキに直撃した!

っっ! この雷撃は朱乃さんのだ!

僕は慌てて朱乃さんの方を向くと鬼のような形相で、

にらみつけている朱乃さんが手をロキの方へ向けていた。

「ハハハハ! なかなか好戦的な女だ!」

雷撃を直撃したにもかかわらず、ロキは無傷だった。

これが神か!

「ここに俺がいるということはもう分かっているな?」

その一言で全員が戦闘態勢に入った。

この人は間違ってここに来たんじゃない! 

他の神話体系と和平を結ぼうとしているオーディン様を殺しに来たんだ!

「ロキ様! このような行為は重罪です! 反論するならば公正な場でしてください!」

「一介の戦乙女が俺に指図か。偉くなったものだ……まあ良い。

どうせ、貴様らはわが息子に喰い殺される運命だ」

そう言いながら腕を広げたロキの背後の空間が歪んでいく!

な、何が起きているんだ。何がここに来るっていうんだ!

「来い! わが息子! フェンリル!」

ロキの背後の空間のゆがみから現われたのは大きな灰色の狼だった!

しかも、奴はさっきフェンリルって言っていた! 

もし、それが本当なら僕たちはとんでもない存在と対面していることになる。

神喰狼―――――その牙は神をも殺すと言われている。

「おいおいおい! これはどんな冗談だ!?」

先生は手の光の槍を握り締めながら、目の前の存在に驚いていた。

「さて、どいつから殺す? フェンリルよ」

『Half Dimension!』

そんな音声が聞こえ、フェンリルを中心として辺りの空間が歪んでいく!

だが、フェンリルは噛みちぎるようにその空間から脱出した。

「やれやれ。最近の神はかなりバカのようだ」

上からの声に顔をあげるとそこには白い鎧を着た男性、

そしてその背後には仲間らしき数人の人物が待機していた。

そのうちの二人は以前、三種族の会議の時に来たやつともう一人は、

小猫ちゃんのお姉さんであり、冥界ではSS級の犯罪者として手配されている黒歌だった。

「ヴァーリ! てめえなんでここにいるんだ!」

「ほう、白龍皇か。それにその背後の人物たちもなかなかできる存在のようだ……。

オーディンもいることを考えれば少し分が悪いな。フェンリル、引くぞ」

そう言い、マントを翻すとフェンリルとともにロキは消え去った。

フェンリルが消えて、ようやく剣を握り締める腕の震えが止まった。

「ヴァーリ、てめえのチーム引きつれてまで何の用だ」

「アザゼル、安心しろ。お前たちと戦う気はない。

俺達はお前たちに提案を示しに来たんだ」

「提案?」

「フェンリルとロキ。これらを倒すために共同戦線を張ろうじゃないか」




ワッフル~
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