ハイスクールD×D inウィザード   作:kue

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第五十六話

翌日、俺たちに特別に割り当てられた鍛錬専用の空間に部員全員がいた。

『くぅん』

俺の使い魔となったスコルとハティが心配そうなオーラを醸し出しながら近づいてきた。

どうやら俺達の言葉を理解できるくらいの知能を持っているらしい。

「安心しろ……すぐに戻る」

そう言うと待ってる! と言わんばかりにその場でお座りをした。

「……二度と皆を傷つけないために……俺はあいつを制する」

皆の方を向きながらそう一言言うと、

俺は地面に座禅を組んで俺の精神の奥深いところへと海へ潜るような感じで意識を落とした。

今まで明るかった景色が真っ暗になり、下へ下へと行く感覚が俺を包み込んだ。

俺は必ず――――――奴を倒す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼が潜り込んでから五分。突然、彼の顔に仮面の一部らしきものが作られ始めた。

それを見ただけで私――――リアス・グレモリーはそれが、

彼が彼であることの制限時間であると感じた。

仮面が完全に生成されたとき……彼は居なくなる。

「……イッセー」

私は神にも祈る気持ちで彼の名を呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

潜ること数分、速度が徐々に遅くなっていき、

感覚がなくなったと同時に地に足がついたが周りはまるで、

どこかの町のような作りをしており、いくつもの高いビルばかりが立ち並んでいた。

その中のうちの一つのビルの屋上に太陽を背にして立っている人の影が見えた。

直後にその影は数十メートルはあるであろう屋上から身を投げ、

地面へと落ちていくが地面に黄色い魔法陣が出現し、

徐々に落ちる人間の速度が落ちていき、やがてはゆっくりと地面へと降り立った。

『よう。もう来るころだと思ってたぜ』

俺が探し求めていた存在が目の前にいた。

「お前を倒しにきた」

『その前に。お前、俺の力を破壊のために使う気は?』

「さらさらない」

ハッキリとそう言い、いつものように魔法陣を展開しようと、

手を翳すが……ライザーの時と同じように魔法陣が出現しなかった。

っっ! どうなってんだ……何故、魔法が使えない!

『この階層はドライグの魂が住む階層と魔力を生産する階層の間にある部分だ。

魔力からは遠く、魂からも遠いこの場所でお前は魔法を使えない。俺以外はな』

直後、全身に鳥肌が一気に立ち、何も考えずに反射的にその場から立ち退いた瞬間!

空から爆音を響かせながらドラゴンの形をした雷がさっきまで、

俺がいた場所に容赦なく降り注ぎ、地面に大きな穴をあけ、突風で俺を吹き飛ばした!

「くっ!」

突風に吹き飛ばされながらもどうにかして受け身を取り、

衝撃を受け流しながら地面に落ちるが、最悪な状況だった。

相手は魔法を使える、俺はなにも使えない。

この状況でどうやって俺がこいつに勝つって言うんだよ。

『ほらほら! 俺を倒すんだろ!?』

次々と空からドラゴンの形をした落雷が落ちてくる。

ビルを盾にしても一撃で大きな穴を開けるし、

奴に近づこうとしてもドラゴンのせいで遠ざかることを強制されてしまう。

「ぅぉ!」

ドラゴンの雷撃を避けようとした瞬間に突然、

全身に重りをいくつも付けている時のような感覚に陥った。

まさかと思い、上を見上げれば俺の頭上に黄色の魔法陣が展開されていた。

グラビティ!

『よそ見してていいのか?』

「っ!」

奴の声を聞き、重い体をどうにかして動かそうとした瞬間!

ドラゴンに飲み込まれ、全身に凄まじい強さの電流が流れ込んできて、

いたるところの感覚が一瞬飛び、四肢が一瞬だけ大きく痙攣した。

「がっ」

動けなくなり、そのまま地面に倒れ込んだ。

『おいおい。お前がいつも使っているサンダーよりもだいぶ弱めたんだぜ?』

これで弱めたのか……全力でやられたら確実に即死……。

精神が死ねば俺の意識はなくなり……奴に乗っ取られる。

『お? 立つか』

「当たり前だ……俺が死んだらお前が俺になるだろ」

そう言い、奴に向かって一直線に駆け出す!

『もう、うざい』

奴が俺に手を翳した瞬間、俺はその場から前に飛びこむと、

さっきまでいた場所の地面がベコッ! と音をたてて大きく凹んだ。

あいつが使っている魔法は俺だって使ってんだ。

その時の状況なんかであいつがなんの魔法を使ってくるか判断できる。

『やるねぇ』

もう一度、奴が魔法陣を展開したのを見て、跳躍するとちょうどその下を通り抜けるように、

ドラゴンが通過していき、ビルをいくつも破壊しながら向こうの方へと飛んでいった。

「ぅうぁ!」

高い所から落ちる勢いを利用して、

奴に強烈な踵落としを喰らわそうとするが魔法陣に阻まれた。

俺はすぐさま次の攻撃を警戒し、その場から離れていったん距離を取った。

『なかなか必死にやるねえ。弱いくせに』

「弱いから必死にやるんだよ」

『ふぅん……うざいから死ね』

再び奴は目の前に魔法陣を展開し、そこから雷のドラゴンを放った。

俺はすぐに姿勢を低くして、ドラゴンを避けて奴に殴りかかろうとしたときに、

俺を囲むようにして赤い魔法陣が展開された。

直後、一つの魔法陣から炎が噴き出された!

「っつ!」

かすりながらもどうにかして避けるが、

次は後ろにあった魔法陣から先ほどの炎が噴き出された。

こいつ、まさか周りにある魔法陣それぞれに攻撃が行くように空間を繋げて!

よく見れば、奴の右横に大きな赤色の魔法陣が二枚重なっていた。

大本の魔法陣はあれか!

根元の魔法陣を破壊すべく奴のとことに駆け出そうとするが、

周りから次々と放出されてくる炎によって徐々に行き場がなくなっていく。

『倍にしたらどうなるかな~?』

奴は悪魔のような笑みを浮かべながら魔法陣を倍に増やした。

必死に奴に手を伸ばそうとしたときに、視界が完全に炎に覆われた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イッセーが精神世界に潜り込んでから十五分。

その十五分の間に彼の顔に生成されていく仮面は徐々にその形を露わにしてきていた。

さっきまであごの部分しかなかったのがもう、耳のあたりまで出来ている。

それに彼が戦っているせいか、さっきから彼の全身から魔の波動が最大出力で放たれていて、

ずっと私たちに重くのしかかっていた。

アーシアにいたってはもう顔色が悪くなっている。

「アーシア、少し休憩した方が」

「大丈夫です、部長。イッセーさんが帰ってくるまでずっといます」

笑顔を浮かべながらアーシアは額から落ちてくる汗を拭いてそう言った。

ギャスパーも小猫も朱乃もゼノヴィアも祐斗もロスヴェイセもスコルもハティも、

誰一人として動かない。

そんな中でキングたる私が動いていいはずがない……私も、

彼が帰ってくるまでずっと待っている。

「イッセー」

私は彼の名前を呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『世界で一番使えないのって魔法が使えない魔法使いだよな』

奴は笑みを浮かべながらそう言う……全身から夥しい量の血を出しているせいで、

頭まで酸素が回っていないのか意識が朦朧としてくる。

鉄くさい匂いをさっきから何分間感じているだろうか……さっきから、

何分間この場に横たわっているだろうか。

「ぐっ……ぶっ!」

痛みを我慢しながら立ち上がろうとすると腹の底から何かが逆流してきて、

そのまま口から吐き出したら、それは血だった。

『イッセー。なんで、てめえが俺に負けるか分かるか?』

奴は手に持っているアスカロンを器用に手首の辺りでくるくる回しながら俺に尋ねてきた。

……俺が……負ける理由…………。

『俺が魔法を使えるだとか、アスカロンを持っているとかじゃねえぞ?

答えは一つ――――――――殺意だ!』

殺……意……だと?

『相手をグチャグチャにして殺すという殺意! ズタズタにして殺すという殺意!

てめえにはそれが足りねえ! ただ単にてめえは頭で考えてこいつが、

悪だから倒そうとか考えてるから白いのに負けるんだよ! 全身で! 

目で! 鼻で! 血液で! 骨で! 

自分という存在を作りだしているすべての細胞で相手に、

殺意を持たなきゃ勝てる戦いも勝てねえんだよ! なあ! イッセー!』

腹にズン! と重い衝撃が走った――――――さっきから、

ボタボタと血は滴り落ちていたがそれよりも多く、ポタポタと音がした。

 

 

 

 

 

 

アスカロンが―――――――腹部を貫いていた。




夏休みが終わってしまうぅぅぅx!
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