『俺は嫌だぜ? せっかく赤龍帝とかいう伝説級の力があるのに、
一切使わずに魔法だけ使ってみっともねえ負けをするのは。だから』
奴が俺の腹に突き刺さっているアスカロンの持ち手に手を置いた。
『俺がてめえになり変って全てを殺す』
徐々に腹からアスカロンが引き抜かれていく―――――肉が引き裂かれ、
全身が激痛という悲鳴をあげ、血という涙を流していく。
アスカロンを引き抜いた時、不意に奴が俺の右腕の肩の辺りに手を置いた。
『ついでにこの腕も貰うぜ? ここにはブーステッドギアが宿ってるからな。
いや、正確には力が集中しているからか。ま、どっちでもいいか』
そう言いながら俺の血液で刃が真っ赤に染まっているアスカロンを、
ゆっくりと俺の肩の上らへんに置いた。
このまま……俺の腕を切るつもりか……俺が死ねば……奴が俺となり……暴れる………。
……………そうなれば………………ダメだ…………ダメだ。
『じゃあな』
こいつに体は渡せねえ! 皆を二度と絶望させない
ために――――――大切なものを護るためにも!
『あ?』
俺はいまにも振り下ろそうとしていた奴の手首を掴んで、振り下ろさせなかった。
直後、下からゴゴゴゴ! という地鳴りのような音が響き、
さらにそれに連動して横に大きく揺れ始め、辺りに立っているビルが大きく揺れ始めた。
『な、なんだ。何が起きている』
「悪いが…………この体は渡せねえ」
『ちっ!』
俺と奴の間にピシッ! とヒビが入り、さらにそのヒビは徐々に大きくなっていき、
奴がその場から飛び退いた瞬間、
一体のドラゴンが下からこちらの階層へと壁を突き破って現れた。
そのドラゴンは真っ赤な鱗を持ち、鋭い爪、大きな翼、長い尻尾、
全てをかみ砕かんばかりに鋭い牙を生やした俺の中に宿る赤いドラゴン。
『バカな……この階層にドライグが!』
「バランス……ブレイク」
その単語を呟いた瞬間、空中で旋回していたドラゴンが赤色の魔力となり、
俺めがけて落下してきて俺を包み込んだ。
『くっ!』
辺りに赤色の閃光がまき散らされ、
今までこの場に俺の血液しか赤色がなかったこの空間を赤一色にした。
それほど、輝きが強かった。
輝きが晴れた時、俺は鎧を身に纏っていた。
いつものドラゴンスタイルの時に身に纏う鎧とは似ているが少し違う……これは、
あのドラゴンの鎧。赤龍帝の鎧―――――ブーステッドギア・スケイルメイル。
奴は今自分の目の前で起きている状況に理解できないのか、
さっきまでの余裕の表情が消え去り、焦りの色に染まりあがっていた。
『コネクト、プリーズ』
空間をつなげ、そこからアスカロンを取り出すと奴が持っていたアスカロンが砕け散り、
塵となって消滅した。
『BoostBoostBoost!』
『Transfer!』
三度、倍加が行われ、何が起きているのかは知らんがアスカロンの刀身が赤色に輝きだし、
聖なるオーラが凄まじい勢いで大量に放出され始めた。
『Jet!』
その音声の直後、ガシャガシャと背中で音を立てながら鎧が変形していき、
直後にそこから魔力が凄まじい勢いで放出され、莫大な推進力を得て、
奴に向かって突っ込んでいく。
そして、そのまま奴が行動を起こすよりも前に奴の胸に―――――。
アスカロンを突き刺した。
奴は俺とは違うのか刺し傷からも血液は出ず、どこからも真っ赤な液体は出てこなかった。
直後、奴の足が徐々に塵となって消え始める。
『ちっ……どうやらお前は……殺意を持たずして……戦う方が良いらしい』
そう言い、奴は俺を睨みつけながら自分に突き刺さっている刃に手を置く。
『だが気をつけろよ。俺を倒し、制したとしてもてめえの心に隙があれば俺は、
すぐさまてめえを暴走させてやる。そして、俺がてめえとなる』
「安心しろ。お前は俺だ。お前が持つ力も、感情もすべて受け入れる。
スキなどはもう二度と生まれない」
『けっ……それとこいつは忠告だ。てめえが思っているほど、
世界はてめえを認めてるわけじゃねえぞぉぉぉぉ!』
そう叫びながら奴は塵となっていき、最終的にその体、
全てを塵と化して完全に俺の前から消滅した。
もうこれで二度と暴走することはない……奴は俺の中へ戻った。
心に隙は二度と生ませない。
『Reset』
その音声が響いた直後に鎧が赤く光ると、徐々に全てが魔力に変換されていき、
その魔力は形を先ほどのドラゴンへと変化していく。
ものの数分で先ほどまで鎧の形をしていたものが巨大なドラゴンと化した。
「ドラゴン……一つ聞く。何故、俺が絶望したとき体を奪わなかった」
あの時―――――母さんが死んだとき、俺は間違いなく絶望していた。
『……さあな』
そう言ってドラゴンは、自分が出てきた穴へとその巨体をゆっくりと、
動かしながら向かっていく。
『ただ……貴様の心に最後の希望とやらが残っていたんじゃないのか?』
そう言い残してドラゴンは、自分が開けた穴へと飛び込み、
自らが住む階層へと戻っていき、穴もドラゴンが落ちた瞬間に一瞬でとじた。
最後の希望……俺にとっての最後の希望は……みんな……か。
すると、外への出口なのか何もない空間に突然、長方形に光が走って一つの扉が出来た。
「帰るか……向こうに」
扉を潜り抜け、目を開けると景色は潜り込む前のものとなり全員が俺のことを見ていた。
この場でいちばん言うにふさわしいと思う言葉はすぐに見つかった。
「ただいま」
「「「「「おかえり!」」」」」
『『ワン!』』
五人と二匹がいっせいに俺に抱きついて来て、
結構な重みが俺の身体に不意にのしかかってきたものだから、
俺は踏ん張りきれずにそのまま倒れ込んだ。
アーシア、小猫、朱乃、リアス、ゼノヴィア、スコル、ハティ、木場、イリナ、
アザゼル……それだけじゃない。
冥界で知り合った奴ら、全員が―――――――――。
「俺の最後の希望だ」
すると、急に全員が驚いたような表情を浮かべて俺を見ていた。
あの木場でさえ、驚きの余り口がポカンと開いている。
それに対し、女子たちはどこか嬉しそうな表情をしながらも驚きを露わにしていた。
「イッセーが笑った」
リアスのその一言に全員が頷いた。
どうやら、今まで顔に感情が出てこなかった俺もこいつらと、
すごしていくにつれて徐々にだが……取り戻しつつあるのかもしれない。
――――――――――笑顔という奴を。
ふぅ