ハイスクールD×D inウィザード   作:kue

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第六話

翌日の朝、俺はアーシアを近くの河原に連れ出していた。

今の時間帯ならまだ、母さんは起きてこない……だから、

この時間帯の間にアーシアを完全に助けてやれる方法を考えないと。

「イッセーさんは神を信じますか?」

「……俺は目には見えないものは信じない」

「そうですか……私は神はいると信じています。この世界は神によって作られた、

なんてことを仰っている方がいますが……私はそうじゃないと思うんです。

神は……主は私たちに希望を、幸福を与えてくださる方だと思うんです」

「逆にいえばそれだけしかしていないと」

そう尋ねるとアーシアは首を上下に振った。

「この力も主から与えられた希望なんです」

アーシアが両の掌を見ながらそう言うと、彼女の手のひらがポワッと淡く光輝きだした。

そうか……アーシアはセイグリッドギアを宿して。

「この輝きはどんな傷も癒すことができるんです。だから、

私の役目は傷ついた人をこの力で癒し、迷える子羊を主のもとへと導く……私は、

物心ついたときから崇拝してきました……でも」

そう言い、彼女の表情が急に暗く、重いものとなった。

「昨日のことか」

そう言うと、彼女は首を縦に振った。

同じ神を崇拝している者同士、役目は同じだと思っていたが神に仕える身であるはずの神父が、

人を殺した……それが役目だと言った……って感じか。

「イッセー……さん?」

俺は何も言わず、彼女の頭に手を置いた。

「お前の心の支えが神であるならば……お前の最後の希望は俺だ。

心の支えが無くなった時、俺がお前の近くでお前を支えてやる。

神は幸福と希望を与える存在だって言ったな」

「はい」

「人間、誰しも神から与えられなくても希望も、幸福もこの手でつかみ取ることができる。

お前が信じたものは最後まで信じとおせ。疑うな、迷うな。ただまっすぐ信じろ」

「まあ、それが悪魔に言われちゃ世も末よね」

後ろから声が聞こえ、振り返るとそこにはレイナーレがいた。

「レ、レイナーレ様」

「さあ、アーシア。こっちへいらっしゃい。今なら怒らないから」

レイナーレは笑みを浮かべてアーシアに手を差し伸べるが、アーシアは恐怖から身体を震わせ、

俺の後ろに隠れた。

「何か用か」

「ええ、その子を返しなさい。私達の計画に必要な“道具”なのよ」

その言葉を聞き、俺はアーシアを手を握り締めた。

人を平気な顔して道具扱いする奴に、なおさらアーシアは渡せないな。

目の前に手をかざし、魔法を発動しようとした瞬間、体が一瞬だけ右にグラついた。

「は、離してください!」

上からアーシアの悲鳴が聞こえ、

見上げるといつの間にか彼女を抱き上げた紺色のコートを身に纏った男の堕天使が翼を広げ、

滞空していた。

そこにレイナーレも合流し、

二人して俺を汚いものでも見るかのような目で俺を見下してくる。

「アーシアは確かに返してもらったわ。行くわよ」

「ああ」

紺色のコートを着た男性とレイナーレが飛びあがる前に、

俺に向かって光の球体を何発も投げつけてきた。

『ディフェンド。プリーズ』

降り注いでくる全ての光の球を防ぎきった後に空を見渡してみるが既に三人の姿はなかった。

既にアーシアの魔力は記憶してある……後はアーシアの魔力を探知すれば、

自ずとあいつらの城か何かに着くだろ。その前に準備を整えるか。

俺はアーシア奪還の準備を整えるべく、いったん自宅へと戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の晩、母さんが眠りについたのを見計らってアーシアの魔力を探知し、

そこへ空間をつなげて魔法陣を潜り抜けるとそこは以前から、

あまり良い噂が無かった古びれた教会の近くだった。

「流石にアーシアの目の前に行くのは無理か」

教会の扉の前に行くと既に扉が開いており、中を覗いてみると争った形跡が見られた。

試しに教会内の魔力を探知してみると……木場と塔城とかいう奴らの魔力が感じられたし、

さらに下には部長と副部長の二人の魔力も僅かながらに感じられた。

「すでに来ていたのか……だったら」

俺は木場の魔力を探知して、空間をつなげて魔法陣を通り抜けると何故か、

天井に魔法陣が張り付き、真下には大量の神父と木場、塔城が乱戦を行っていた。

『フレイム・プリーズ。ヒー・ヒー・ヒーヒーヒー!』

『チョーイイネ! キックストライク! サイコー!』

「イッセー君!?」

「どけ」

そう一言、呟き、木場達がどいたのを確認すると、

そのまま躊躇なしに大量の神父めがけて急降下していく。

『ビッグ。プリーズ』

「う、うわぁぁぁぁぁ!」

途中で出した魔法陣に足を突っ込むと足が巨大になり、

炎を纏った巨大な足による蹴りが地面を砕き、大量の神父を一瞬にして吹き飛ばした。

「ケホッ。案外、強行突破な面があるんだね」

「……また、部長にお説教です」

「やってくれるじゃない」

声がした方向を向くと、魔法陣の中心で壁に貼り付けられているアーシアと、

ウザったそうな表情を浮かべているレイナーレがいた。

「まあ良いわ。既に準備は出来た……さあ、私が崇高なる存在に昇格する瞬間を、

その目に焼けつけなさい!」

「ああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

レイナーレが掌に光を集め、それを球状に集めた直後にそれをアーシアに触れさせた瞬間、

彼女の悲痛な叫びが教会内に木霊し、

凄まじい光がレイナーレとアーシアのいる場所から放たれた。

なんだ……何が起きているんだ。

やがてその光は収まっていき、そこにあったのは気味の悪い笑みを浮かべているレイナーレと、

おかしなくらいに全身が蒼白になっているアーシアだった。

「……ふふふ……ハハハハハハハハハハ! ようやく手に入れた。最高の癒しを!

この力でシェムハザ様とアザゼル様の傷を癒すわ! あぁ! 

今まで私をバカにしてきた奴らの驚く様が目に浮かぶわ!」

「おい、木場。何が起きている」

「……今、レイナーレはアーシアさんからセイグリッドギアを無理やりはぎ取ったんだよ」

「セイグリッドギアを無理やりはぎ取られた場合、元の所有者は……死にます」

その説明を聞き、慌ててアーシアの方へ視線を向けるとつい数時間前までの彼女とは、

別人かと思うくらいに色白になり、さっきから項垂れたまま全く動かなかった。

死ん……だのか……アーシアは……。

死んだ……あいつが……堕天使が……レイナーレがアーシアを殺した。

「っっ! な、なに?」

ゴゴゴ! と地響きのような音が響き、教会がガタガタとまるで人が恐怖のあまり、

体を震わしているかのように揺れ始め、窓にはピシッ!とヒビが大量に入り、

地面にはいくつものヒビが走った。

『ウォーター・プリーズ。スイ~スイ~スイ~』

音声とともに籠手を包み込むように水が生まれ、さっきまで赤色だったのが

青一色に変わり、辺りに水飛沫が跳ねた。

「へ、へえ。やっぱり凄い魔力量ね。でも、下級のあんたに私が負けるはずがない!」

『リキッド。プリーズ』

レイナーレの手から放たれた槍が俺を貫通するが、

貫通した部分が水になってはじけ飛び、再び元の肉体に戻った。

レイナーレは驚き、もう一度俺に槍を投げてくるが結果は同じ。

「あ、あり得ない。魔法で肉体を変えるなんて」

『チョーイイね! キックストライク! サイコー!』

「だぁ!」

「きゃぁ!」

跳躍し、レイナーレに向かって蹴りを放つがそれはかわされ、

レイナーレの代わりに地面が砕かれ、

彼女に向かって大量の水飛沫と砕けた地面の破片が飛び散った。

「まだ、死ぬなよ」

『ハリケーン・プリーズ。フーフー、フーフーフー!』

直後、籠手を包み込むようにして風が生まれ、青色だったものが全て緑色に変わり、

辺りに突風が生じた。

「消えろ」

「きゃぁ!」

拳に力を込め、レイナーレに向かって拳を前に突き出すと、

籠手からすさまじい強さの風が放出され、レイナーレを吹き飛ばし、

壁に穴をあけて外へと突き飛ばした。

アーシアは木場に任せ、外に吹き飛ばされたレイナーレの後を追うと地面を抉って、

数メートル離れたところまで吹き飛ばされていた。

『ランド。ドッドッドドドン、ドンドッドッドドン』

「嘗めるな!」

先ほどよりも数倍太い槍を手元に作り出し、それを俺に向かって投げつけるが、

投げられた槍を思いっきり籠手で殴りつけるとバキィィン! という音が辺りに響き、

辺りにパラパラと光の粉が舞った。

その瞬間、彼女の表情が余裕なものから焦燥感が見て取れるほどにまで変化した。

「う、嘘よ。下級のあんたが私の槍を」

『コネクト。プリーズ』

「ひっ!」

レイナーレは恐れをなし、翼を羽ばたかせて空へと逃げようとする……が。

『チョーイイね! キックストライク! サイコー!』

彼女の耳に絶望を知らせる音声が聞こえると同時に、

彼女の目の前に魔法陣から現われた黄色の籠手を装着し、

足に魔力を纏わりつかせた状態で急降下してくる俺が映っただろうな。

「わ、私は至高の」

彼女が喋っている途中で魔力を纏った俺の蹴りが彼女の腹部に深く突き刺さり、

そのまま地面に向かって急降下し、大量の砂埃を上げて地面に叩きつけた。

「ガッ! ゲハッ!」

口から血反吐を吐き、痛みに意識を揺られながらも俺を睨みつけてくるレイナーレ。

全身から淡い光が出ているところを見ると既にアーシアから奪ったセイグリッドギアで、

自らの傷の回復を始めているようだが、聊かその傷の回復速度は遅いように見える。

魔力が足りないのか、それとも意識がもうろうとしているからかは知らないが。

「わ、私は……至高の」

「少し黙れ」

『バインド。プリーズ』

「ぐうぅ!」

彼女の傍の四か所から黄色の魔法陣が現れ、そこから土で出てきた鎖が排出され、

彼女を地面にきつく縛りあげた。

「終わりだ」

『ドリル。プリーズ』

右足を挙げると地面から砂が巻き上げられ、それらが俺の右足の周りを高速回転しはじめ、

やがてドリルのような形に変化した。

その姿を見たレイナーレは目に恐怖の色を浮かばせ、涙をためた。

「ま、待って」

「待たない」

「待って!」

「待たない」

上げた右足を下ろそうとした瞬間。

「イッセー。そこまでよ」

部長の声が聞こえ、思わず足を降ろすのをやめて振り返った。

「アーシアはまだ間に合うわ」

そう言い、ポケットから赤い駒を取り出した。

「レイナーレからアーシアのセイグリッドギアを回収したあと、

イーヴィルピースで悪魔として転生を行う」

「ふ、ふざけないで! これは私の」

「あなたのじゃない。アーシアのものよ」

怒った表情を浮かべ、レイナーレに手のひらを向けるとそこに黒い魔力が集まっていき、

徐々にその大きさを増していくとともに、

レイナーレの顔の恐怖の色もそれに比例して濃くなっていく。

「お、お願い。待っ」

部長はその言葉を最後まで聞かずに、魔力を放ち、レイナーレを飲み込ませ、

塵一つ残さずに消滅させた。

レイナーレを包み込んだ魔力が消えるとそこに淡い光を放って浮いている光の球体があった。

「行くわよ」

ブツブツと何かしらも呪文みたいなものを呟くと、イーヴィルピースがアーシアの体の中に入り、

フワフワと浮いていた球体も一緒に彼女の中へと戻った。

その数秒後――――――。

「ん…………イッセー……さん?」

「良かったですわ。間に合って」

基本的に俺はあまりうれしいとか、悲しいとかの感情がないに等しい。

たとえあったとしてもあまりにも希薄すぎて、周りの奴からは何も思っていないと思われる。

でも……そんな俺でも。

「アーシア」

「イッセーさん」

「帰ろう」

――――――――嬉しかった。




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